緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

腹痛を外来で!②薬を組み立てる

2009年07月13日 | 医療

今週の木曜日、7月16日、横浜の整形外科学会・骨軟部腫瘍学会の
ランチョンセミナーに行きます。

骨がん性疼痛に対する、各オピオイドの反応性の違いを経験した症例を私から提示させて頂き、
その後、それを裏付けるような基礎データを他の講師の先生が報告してくださり
私からみても、かなり面白い内容だと感じています。


先日からの続きです・・・・・・・

画像:JPAPのWHO方式がん疼痛治療法(http://www.jpap.jp/gen/cont04/cont03a.html

まず、今どのような薬剤を
内服しているかたずねます。

結果、ジクロフェナク(ボルタレン)坐薬を
疼痛時に使用。
がまんして1日1回。
でも、痛くてうずくまる・・





疼痛の原因は、

腹部単純写真で疼痛部位に便塊とニボーをみとめ、
疼痛が、管腔臓器の疼痛の特徴である間欠的な疝痛であることから

肝門部の癒着による腸の通過障害であろうと病態評価しました。




少量のステロイドを先行させ、
癒着や炎症性浮腫をできるかぎり軽快させ、
通過を維持したうえで
緩下剤で排便を促してみることにしました。



痛みは、ステロイドでやや改善すると思われますが
再発などによる内臓痛の混在を考えると

基本に立ち戻って
まずは非ステロイド性抗炎症薬の定期投与。


これをまず行って再評価としたいところでしたが
外来であり、また、訪問医、看護師がいるので
いつでも始められるように
オピオイドも処方しておくこととしました。




で、処方は。
(数年前のことですので、NSAIDsやオピオイドにやや古い感がありますが・・・)

① ザルトプロフェン(ペオン)   3錠 分3
(今なら、セレコキシブ(セレコックス) 400mg 分2とするでしょう)  
② ベタメタゾン(リンデロン)    2錠 分2 朝、昼
③ 酸化マグネシウム (0.5mg) 1包~2包
④ ラキソベロン 5滴開始 

このラキソベロン
排便ない日の夜は2滴増量し、
排便ちょうど良い日はその量を維持。
出すぎた日の夜は2滴減量
としました。

その上で、
上記4薬剤で腹痛が起こるときは、⑤⑥を開始としました。

⑤ モルヒネ(アンペック)坐薬 (10mg) 3個 分3 8時間毎
⑥ プロクロルペラジン(ノバミン) 1錠/回 3回分

いつものWHO方式3ステップスラダーを紙に書き
非ステロイド性抗炎症薬として
ボルタレン屯用ではなく
疼痛がなくても定期投与とするために
ザルトプロフェンを毎食後内服すること

癒着や狭窄を改善させるために
ステロイドを開始すること

兎に角、便を出すことを試みること
排便を促すと腸蠕動の疼痛など
新たな痛みが出る可能性があるので
万一蠕動痛が増悪した際には
モルヒネの坐薬を開始することを説明しました。



モルヒネの副作用は、便秘、嘔気なので
開始はできるだけ先延ばししたいのですが
痛みの悪循環に陥らないように
早めに用いていったほうが
結果的に少ない量ですむことも説明。

でも、使うかどうかは
Aさんの判断と訪問看護師さんや
在宅医との相談で決めてよいこととしました。
(つづきます)



尚、本処方は、この患者さんに適切でありましたが
他の類似症状の患者さんに必ずしも奏功するとは
限りません。主治医の指示に従ってください。


コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なるほどー (jun)
2009-07-14 16:54:56
こんにちは。ありがとうございました。大変勉強になりました。
ステロイド、全く頭にのぼっていませんでした;;;
ブログで恐縮ですが、ザルトプロフェンを選ぶのはなぜですしょうか?あまり処方をみたことがありませんでした。胃腸の副作用が少ないとかいてありますが、このためでしょうか
そうか! (gachyon)
2009-07-14 20:07:59
aruga先生こんばんは。確かにsteroidsですね、おっしゃられると理解はできるのですが・・自分の実力を量る意味でも何も見ずに回答してみたのですがまだまだです。
コメントありがとうございます (aruga)
2009-07-16 21:45:34
junさん
ザルトプロフェンは、ご指摘の通り、胃腸障害が少ないのでよく用いておりました。
前々任地におりました時、易潰瘍形成のガストリノーマの患者さんが内服されていたのですが、まったく潰瘍を生じないことに驚き、その感を強くしました。消化器系の患者さんには積極的に投与していましたが、最近はセレコキシブが登場しましたので、ほとんど処方しなくなりましたが・・

gachyonさん
けして、これが正解というわけではないです。色々な方法があると思いますが、この時は、このような選択をしたという範囲です・・・

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