江戸前ラノベ支店

わたくし江戸まさひろが書いた中二マインド溢れる小説の置き場です。

斬竜剣外伝・騎士の在り方-第2回。

2017年05月14日 00時02分37秒 | 日記
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-有 事-

 建築されてより100年以上の歴史を重ねるクラサハード王国の王城──城としての歴史こそ浅いが、クラサハード王国自体は1度アースガルに併合されたとはいえ、千年近い歴史を持つ。
 その歴史に見合う荘厳な造りの城の廊下を、2人の少年が歩んでいた。
 1人は、今年14歳になるクラサハード王国第2王子。その名はショーンという。
 一見小柄で体の線も細い印象の少年だが、よく見ればその体は引き締まっており、弱々しい印象は無い。ただ、整った顔立ちだけを見れば、その幼さも相俟ってまるで少女のようにも見える。
 そんなショーンの心の内には、常に一人の少女の姿があった。それは4年ほど前にただの1度だけ、城の中庭で出会った名も知らぬ銀髪の少女のことである。少女本人はその素性を語らなかったし、彼女と別れた後に城の人間達に聞いても、誰も「知らない」と答えを返す謎の存在であった。
 いや、両親や一部の人間は半笑いなどの複雑な表情で答えたので、何かを隠しているようにも見えたが、結局誰なのかは未だに謎のままである。
 しかしだからこそ少女はショーンにとって忘れがたい存在になっていたが、それ以前に少女から貰った言葉が彼の精神的な支柱になっているとことが大きい。
 英雄のようになりたいのに、その為の充分な修行が出来ない──。そんな少年の夢や悩みを言葉巧みに聞き出した少女は、こう言った。
「自分一人だけで強くなろうとしても誰も救えないわよ?」
 ──と。
 昔話にある英雄達だって仲間達の助けを受けてようやく目的を達成している。だからあなたも人との繋がりを大切にしなさい。特にあなたは王族なのだから、その立場を利用した方が多くの人間を助けられる。むしろその立場を疎かにすると、国が乱れて多くの国民が犠牲になる──少女はショーンにそう説いて聞かせたのだ。
 少女に対して一目惚れに近い状態になっていたショーンは、彼女の言葉に反発することもなく素直に受け入れた。
 そしてその言葉通りに態度を改めた結果、「堅物で扱いにくい子供」というショーンの周囲からの評価は一変し、彼を好意的に評価する者が増えた。
 尤も、以前の彼ならばそのような評価には興味が無かったし、欲してもいなかったが、結果として彼の味方が増え、自身の意見が通り易くなったり、優秀な剣術の指導者を紹介されたりするなど、思わぬ効果があった。
 これによりショーンが抱えていた不満は、大部分が解消されたと言える。だから彼は少女に感謝していたし、そしていつか直接礼を言いたいと願っていたのだ。
 今宵、その機会がついに訪れたのである。
「随分と機嫌が良さそうだな、ショーン」
「それはそうですよ、兄上。今この城に、あの銀髪の御方が来ていると聞きました」
 隣を歩む兄に問われ、ショーンは少し興奮した様子で答えた。
 ショーンより4つ年上のアルベルトは兄弟なだけあって、明るい金髪など、ショーンと似通った特徴が多い。だが、彼には何処か軽薄な印象があり、見た目から受ける性格の印象が真逆な兄弟であると言えた。尤も、根の部分では両者とも善人であるというところは共通している兄弟でもある。
「おいおい、今がどういう時なのか分かっているのか?」
「あ、ハイ。そうでした」
 本気で責めている調子ではない兄の言葉に、ショーンは必要以上に畏まった様子で頭を下げた。そんな弟の態度にアルベルトは苦笑する。
「まったく……お前は本当に硬いなぁ」
 以前よりもマシになったとはいえ、あまりにもショーンは生真面目過ぎた。必ずしもそれが悪いことだとは言えないが、人の上に立つ王族が融通が利かないのでは民衆はついてこない。
 それを改善させる切っ掛けとなった銀髪の少女に対して、アルベルトは密かに感謝していた。だがその一方で、真実を知ったショーンがどうなってしまうのか──彼はそんな不安を抱えている。
 そう、時期国王という立場の彼は、銀髪の少女の正体を既に知っていた。それはこのクラサハード王国の根幹に関わる秘密であり、今はまだ弟にも話してはいない。
 ……が、今アルベルトが危惧しなければならないことは別にある。現在この国は有事に見舞われていた。その対策会議に出席する為に彼らは会議室に向かう途中であったのだ。
 その会議に件の銀髪の少女も参加することになっている。
 今この国は、隣国からの侵攻を受けていた。


 次回へ続く(※更新は不定期。更新した場合はここにリンクを張ります)。
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