東埼玉病院 リハビリテーション科ブログ

国立病院機構東埼玉病院リハビリテーション科の公式ブログです

*表示される広告は当院とは一切関係ありません

脳卒中者の歩行をどう定量化するか?【専門職向け】

2017年05月15日 | リハ科勉強会
昨年12月に実施したリハ科勉強会の概要になります。

臨床においては。一般的に脳卒中片麻痺者の歩行はどう評価しているでしょうか?

もちろん状況や設備、セラピストによっても異なるとは思いますが、代表的なものは、
• 歩行様式・パターン
• 歩行自立度(安全性)
• 歩行の運動学的パラメータ(関節角度や肢位・速度・歩幅など)
• 特徴の列挙
• 短期的な変化
• ビデオ撮影
• 歩行の評価シート
• 機器を用いた解析
といったところでしょうか。
「評価=客観的に伝わる方法」であり、それはカルテなどを通して情報が蓄積できるものであるべきです。(主観に基づく評価ももちろんありますが)

歩行評価における問題点はいくつかあると思いますが、以下私見になりますご注意。
• いわゆる歩行分析は一人のセラピストのフィルタを通したものであって、評価結果は評価者により差異が生じる
• ベテランによる歩行分析は、臨床経験・知識に基づく要点を得たものであって、一般的には共有にしにくい(言われてみれば…的で厳密な解析結果と一致しない)が、治療に直接繋がる(それが本当に正しいかは疑問もある)
• セラピストの解釈を加える(フィルタをかける)前の、「ありのまま」の歩行評価(誰がみても異論がないもの)をまずは(なるべく)定量化しておく必要がある
• その解釈は後でもよいのでは? というのも治療へ繋げる速度は落ちるが、本当の歩行データを蓄積する経験は長期的に活きるはずだからです。
つまり、歩行評価が上手な人に答えを聞いてしまっては、セラピスト個人の成長はいまいちになってしまうかもしれません。
まずは各セラピストがフィルタをかける前のありのままの歩行をどれだけ理解できるかが重要です。
そもそもセラピスト間における歩行観察の信頼性も今までの先行研究を渉猟すると意外にもほとんど信頼性はありません。
しかも経験年数が高い人ほど歩行観察の信頼性が高いかというとどうもそうでもないのです(奈川、2014)。
このありのままの歩行評価が難しいところは、時間がかかることと、治療に直接結びつきにくいことが影響しているかもしれません。
いまだに歩行観察は学生の高いハードルになっているようです(実習では患者さんの歩行のマネを忠実にできる=歩行観察できている、と判断することが個人的には多いです)
このありのままの歩行評価は、どれだけその評価が定量化できるかどうかが重要になります。



まずは、
「歩行様式・パターン」です。
当たり前と思われますが、この大前提の情報は意外に明記されておらず他人が記載をみてもよくわからないことがあります。
歩行様式は、
・歩行条件:自由歩行・努力歩行・介助歩行など
・下肢条件:裸足、靴(種類)、装具(種類)など
・上肢条件:フリーハンド、杖(種類)、歩行器(種類)など
歩行パターンは、
・動作:2動作、3動作
・前型、揃え型、後型、変動型など

次に、
「歩行自立度」です。これも細かい観察以前に概要把握のためにも重要です。
歩行安定性を反映した指標になることが多いです(高次脳機能を無視すればですが)。
・臨床分類:自立・修正自立・監視・介助(介助量)・不可
・Functional Independent Measure(FIM)の歩行:1〜7点
・Barthel Index(BI)の歩行・車いす移動:0〜15点
・Functional Ambulation Categories(FAC):0〜5点
このうち、どれを使用するかは目的により変化しますが、FACは日本ではあまり使われていないですかね。
最初の臨床分類が理解しやすいですが、回復期病棟のアウトカム評価がFIMになっていることを考えるとFIMで間違いないかもしれません。

「歩行の運動学的パラメータ」も基本情報として重要です。
・歩行速度(至適・最大)
・歩数
・歩幅(重複歩距離)
・歩行率
・予備歩行能
に加えて、観察による関節肢位や関節角度も必要です。
これらは、ストップウォッチくらいで簡便に定量化できるので有用です。最近はスマホアプリなどでも歩行解析系が多く出てきているのでそれらの利用も良いかもしれません。

近年では「ビデオ撮影」がより手軽になってきました。
・デジカメ、iPadなどで手軽に保存できる時代になった
・特にスロー再生(コマ送り)、2画面同時再生が強み
・カメラの特性を把握しておくことが必要:歪度など
・前額面、矢状面を明確に撮影することが必要
・撮影条件は常に規定しておくことが必要:変化観察のために
・被写体が常に中心に等倍で映り続けることがベスト
・機能が良ければトレッドミル歩行撮影も効果的
・オススメの撮影は、10m歩行(計測同時実施)×2 or TUG×2


次に多く出回っている「歩行評価シート」が多いので、観察に基づく評価シートのみ紹介します。
その利点は、有効に用いれば必ず長期的に活きる評価につながることに有ると思います。評価が共有できる、蓄積できることになり、研究にも流用できます。

そのうち、歩行に課題(指示)を課してスコア化するものが、
• Dynamic gait index(DGI)
• Rivermead Mobility Index(RMI)
• Tinettiの歩行評価
• Emory Functional Ambulation Profile などなど
ですが、今回は観察による歩行分析に焦点を当てますと、
• Rancho Los Amigos Centerによる歩行分析表
• O.G.I.G. 歩行分析基本データフォーム
• Rivermead Visual Gait Assessment(RVGA)
• 中伊豆リハビリテーションセンター式歩行所見表
• Gait Assessment and Intervention Tool(G.A.I.T.)
などがあります。

この中で、最も推奨されるのは、G.A.I.T.になります。
というのも、観察による歩行評価におけるシステマティックレビューで推奨されているからです(Ferrarello F, et al.: Tools for Observational Gait Analysis in Patients With Stroke: A Systematic Review. Phys Ther 2013; 93:1673-1685)。
このG.A.I.T.も評価方法が明確に提示されていて、特徴的なのは動画撮影を前提としているとこと。
私もとりあえず実際に使ってみようと思いますが、非常に長い(項目が多い)です(評価表をすべて訳しましたが著作権の都合上掲載しません)。

そうなんです。観察による歩行評価は、信頼性が問題となります。
検者内・検査間信頼性が高くなければ定量的なデータとは言えないため、そのための評価にはスコアリングの基準の明確化と環境設定が重要になります。
なので、最近の評価はどんどん長く、めんどくさくなっている気がしてならないですが…
ちなみに個人的には要点を絞った治療志向型の評価表を自作しています(研究をする暇も人手も足りないので、世には出ないと思いますが)。
その方が、片麻痺患者においてありがちな問題点を細かくチェックして、変化のモニタリングや治療方針へ直接結びつくと思います(信頼性は一旦おいておきます)。

最後に、「機器を用いた解析」です。



以上です。
広く(本当に)浅く、触れた形ですが、まとめとしては、
① 簡易的なマーカーやバンドで観察精度を向上させる。
② ビデオ撮影&歩行パラメータ(歩行速度、歩数など)取得
③ リアルタイム or ビデオ観察による歩行評価表の完成
の3つを臨床統一すると有用で面白いのでは? と思います。
もちろん、この観察を解釈するのが歩行分析の本題で、一番面白いところですが、紙面の関係上割愛します。

M1(PT)

東埼玉病院リハ科ホームページはこちらをクリック
『埼玉県』 ジャンルのランキング
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« ナースコール・特殊スイッチ... | トップ | フットサルの練習試合をやっ... »

リハ科勉強会」カテゴリの最新記事