不精者の秘密基地

不精者れいくが、日々のもろもろを、こっそりこっそり書き綴ってみる

願い叶えたまえ

2008年07月09日 | 本(マンガ・小説・その他)レビュー

西田東「願い叶えたまえ」全3巻
最初にお断りを・・・このお話はBLです

絹川はクラブのピアノ弾き(あまり上手くない)、ある日絹川のいる店に暴力団幹部である深見がやって来る。深見の視線の先にいたのは・・・絹川だった
ある日、深見に「ピアノを教えて欲しい」と言われ、絹川は毎週深見のマンションに通うようになる
次第に深見に惹かれていく絹川・・・しかし深見は同性愛に激しい嫌悪感を抱いていた。そして深見に惹かれる一方で、ヤクザの幹部という顔を目の当たりにする度に恐怖を覚える絹川・・・しかしそれでも傍らにいる事をやめようとはしなかった

マンガ仲間である、こたりんさんからお借りしました。いや~、まさかBLでこれ程泣かされるとは思わなかった!正直言って何もかもが衝撃的でした
まず表紙、恐いっす(笑)多分本屋で見かけても目に止まらないというか、私は興味は抱かないタイプの表紙です
けどね、読み始めたら止まらないというかその中身の濃さに圧倒されました。もうね怒涛の展開というか1冊ごとにカラーが違うというか、1巻はまだ大変だけどお気楽な部分が多い、2巻になるとふたりにとってあまりにも重い「事件」が起きる、そして3巻は・・・
ヤクザの世界なんて一般人にはまずご縁のない世界、絹川にとっても深見に出会うまでは別世界の事で当然それに対する恐怖が常に付き纏うのだけど、それでも深見を好きだという思いを懸命に貫こうとするんだよね
余談だけど、任侠系ホ○と聞いて最初に思い出すのは、私が大好きな米米CLUBのこの曲「男同士-POSTホモ伝説-」この歌詞、半分はセリフです(笑)しかし、改めて文字になって読むと・・・むちゃくちゃ濃いなぁ、いいのか?(爆)
ちなみに米米には「スノー・ボール」というこれまた○モな曲があったりする(笑)
(個人的には「男同士-POSTホモ伝説-」の方が断然好きだ♪)

さて閑話休題、表紙の深見・・・見るからに強面でおっかないんだけど、かわいい部分(というか、ちょっとアホな部分)も結構ある
深見の部下に掌を刺されピアノが弾けないためクラブに出なくなった絹川を訪ねて、絹川の実家であるケーキショップに客を装いやって来る深見・・・浮いてる、浮きまくり(笑)
絹川が夕食を作るからと食材を買いにスーパーへ、好き(らしい)パプリカを買い物カゴに入れる深見。更に怪しいキノコや怪しいフルーツをカゴに入れる深見(笑)
・・・そしてその怪しい食材を料理してしまう絹川はかなりの料理上手か!?
なんだかそういう事を「素」でやってしまう所が深見という人物の純粋な部分というか(笑)

さて、ここから力いっぱいネタバレ感想です、まっさらな気持ちで「願い叶えたまえ」が読みたい人は段落空いた部分まで読み飛ばしてください

先にも書いた怒涛の急展開
深見に思いを寄せる絹川、同性愛に嫌悪感を抱く深見に自分の思いを受け入れてもらう事は叶わなくても、自分が弾くピアノが深見の心を癒す事が出来れば・・・共に心穏やかな時間が過ごせれば、そう思うようになった時、深見の組織と敵対する有島社長が深見を監禁し陵辱する
その出来事から深見と絹川の関係に亀裂が生じ始める
望んでもいない体の関係を絹川に迫り、絹川に抱かれる深見。精神と肉体の均衡を保てず、麻薬に溺れ次第に狂気に身を晒す
もうこの辺りに来ると読むのが辛くて辛くて(泣)
心から深見を愛してしまった絹川、当然深見と関係を持ちたいと思っていたけれどそれは互いの心が通いあっての事。けれど深見は苦行のように体を強張らせて絹川に強要するんだよね、そんな深見をどうする事も出来ずせめて眠る時くらい心安らかになって欲しいとピアノを弾く
そして深見を傷付けた有島の所に単身乗り込むのだけど、その時の絹川のセリフが泣かせます
その後深見は中国マフィアとの撃ち合いで流れ弾を頭部に受け、一命を取りとめたものの記憶障害を起こしてしまうわけですが、なにもかも忘れてしまったのに絹川の事を「ピアノを弾いてくれた人」と覚えていた。その事に喜びを感じる絹川だったけど「空港で誰かを殺さなければ」という、強烈な記憶も残った
ここがね、なんだかパンドラの箱のようで。記憶をなくした事でヤクザの世界から足を洗う事となり平穏に暮らして行けるはずなのに、狂気の箱が少しずつ開いていくみたいで・・・こんなに傷付いてもまだ深見は(そして絹川は)幸せになれないのか!
けれどそんな狂気にとらわれかけた深見が最後の最後にたどりついたのは・・・
そしてどうでもいい事かもしれませんが、私途中まで絶対に深見×絹川だと思ってたのに絹川×深見だった、精進足りませんね(笑)

ここで一応ネタバレ終了
実はこの話の中で一番泣かされたのは深見の側近である工藤のラストのセリフなんですよ
普段はあまり感情を出さない工藤の心の叫びに滂沱しました。本のタイトル「願い叶えたまえ」・・・工藤の願いがそれだったんだ、と
そして絹川の願いは有島にぶつけた言葉がそれだったのかなぁ、ならば深見の願いは?
それはやはり最後の行動がそれだったのだと思います

これ、BLというジャンルではありますがマンガ好きな方には是非一度読んでいただきたい!出来れば男性にも読んでもらいたいくらいです
BLだから「そういうシーン」もありますが、一般的なBLとは明らかに違う意味での「そういうシーン」なのでBLとしての拒絶感は低いのでは?と勝手な推測をしています(もちろん「そういうシーン」自体を拒絶される方には勧められませんが)
もし読める機会がありましたら是非読んでみてください
あ、なんだかやたら重い作品に見えちゃうけど、所々に散りばめられたギャグセンス(お茶碗の柄とかやりとりとか)もすっごく私のツボでした(笑)

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10 コメント

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これがうわさの・・ (アガサ)
2008-07-10 07:01:50
このお話はすごくよかった!ということを
聞いていて、
とっても気になってました。

こんな話で、こんな絵柄の人だったんですね。

確かに、タイトルは印象的なんだけど、
絵柄が好みじゃないので
立ち読みもしないかも?

任侠ものも私が読まないジャンルなんだけど
こんな風にかかれると
読みたくなってしまうわ。
古本屋で探してみます!

で、恋愛マンガの好みが
ばっちり重なるレイクさんのお勧めなら
間違いはないかも?
(BLは恋愛マンガって思ってます・・笑)
いいっすよ♪ (でぃ~れいく)
2008-07-10 14:04:25
あがささん
お、気になってたのね
ならば是非ご一読を!同じ恋愛マンガのツボ持ってるあがささんなら気に入ると思うの
これ読むと、決していちゃつくだけが愛じゃないって思うわ~
ちなみに工藤のその後の話が「青春の病は」に載ってますよ
BLは恋愛マンガ・・・当然ですって(笑)
西田東さん、 (くま)
2008-07-10 17:12:26
アッシも大好きです~~!!
以前にトミーさんのブログでお名前が出てたのを拝見して、この「願い叶えたまえ」を最初に購入したんですが、ホントに全3巻とは思えないほど濃密なお話と言うか…切なくて激しいんですよね~…
アッシも最初はてっきり外見から「深見×絹川」だと思ってました。
読み進めていくうちに「絹川×深見」が納得されましたけど。

それから!↑のあがささんへのコメレスを拝見したんですが、
「青春の病は」って単行本に工藤のその後が描かれてるんですか~~!!
全然知らなかった~~!!
貴重な情報をありがとうございました~~!!
さっそく買って読みます♪
さっそく (でぃ~れいく)
2008-07-10 17:31:03
くまさん
腐っ腐っ腐っ、やはりくまちゃんも読んでたのか
いいよね、師匠に西田東さんをごそっとお借りした中で西田さん作品ではこれが一番気に入ったのでした
最初は何にも気が付かず、先に「青春の病は」を読んで後であれっ?と思い再度読み直した次第です
前後編の他に数ページの描き下ろしまでありました、西田さんも工藤がお気に入りなのか?
ほっほっほ (母宮)
2008-07-10 20:18:25
持ってるよ~!!
師匠やなごいくさんのブログで見て、、。
最近だけど、、作家買い(笑)
どれもこれもヒューマンだわ。。
私もラストに涙したよ~ (こたりん)
2008-07-10 23:03:30
腐っ、腐海は深いな大きいな♪

れいくさま、ステキなレビューをありがとう

うんうん、この本ってさ、最初読むとゲイ=マイノリティである絹川が主人公なのかなと思って読むと、深見が主人公なのかな…と。ゲイを毛嫌いする人は深層心理でゲイだったりして、自分のそこに罪悪観がすごくあって、すんごく嫌悪感を出してしまうってことがあるんだよね。まさに深見がこれ。
BLの小説では「ヤクザ」ものってもうすでに確立されたジャンルなので、作品も山ほどあるんだけど、マンガだと少ないほうかもね。鹿乃しうこさんというマンガ家さんの初期の頃の作品にもあるけど、こっちもおもしろいよ。

西田さんの何気ないふきだしとか擬音とかがなんだかツボでおかしんだよね~
Unknown (でぃ~れいく)
2008-07-11 10:38:00
母宮さん
コメ見てなごいくさんの所に飛んで行ってしまった(笑)
なごいくさんの感想に頷きまくったよ

こたりんさん
“腐海の底には地上以上の清浄な世界がある”・・・東京オフでの師匠の言葉を実感する毎日です
>ゲイを毛嫌いする人は深層心理でゲイだったりして
なる程・・・深い言葉だ
BL小説のヤクザもの・・・やはり「漢(男)の世界」であり「不条理が罷り通る世界」だからなんでしょうか
今回小説ももろそちらにハマった私は思うツボなのか?(笑)
西田さん・・・深見に殴られた工藤が絹川に大丈夫だといいつつ深見のパンチの威力のフォローするシーンとか笑った~
これはね~ (なごいく)
2008-07-13 20:38:34
もう号泣モノというジャンルを作ってもいいくらいと最近私は思ってるのだけど、その中の一つですね!MY BEST NISHIDAHIGASHI はうちでも紹介した「影あるところに」なんだけど、最初に西田さんにハマったのはコレなのよ♪
スーパーでの買い物シーン…これはツボったわ~。

最後の工藤さんのセリフはもちろん号泣シーン。途中で、麻薬に溺れた深見がなんとか自分を取り戻すシーン(3巻)あたりの工藤さんの深見への言い訳の数々(へたに謙遜すると深見が言いがかりをつけるので)も爆笑しました。

BL、BLと言うけれど、正直ひとくくりにするなー!と叫びたくなるくらい良い作品がいっぱいありますよね~。でもたまにクソみたいな作品もあるのだけど。こないだ32冊セットを落札した時、お目当てのモノ以外はほとんどそうだった…(涙)。
書き忘れ (なごいく)
2008-07-13 20:41:48
3巻の有島のシーンの数々も泣かされました…。

えっと、「青春の病は」の工藤さんの話ってどっか外国の話?
それとは別に、ちょろっとだけ工藤さんが出てくる作品も、どっかにあったよ。こたりん師匠、ヘルプ~!!

私が完全作家買いしてるのは川唯さんだけなのよ~だから分からないの~。
志水ゆきさんと山田ユギさんは約半分所有。
号泣モノ (でぃ~れいく)
2008-07-14 17:46:41
なごいくさん
「影あるところに」のレビュー読んだよ!これも良かったね
>BLとひと括りにしたくない!
要は男同士が必然かそうでないかだね、なんというか少コミのえっちマンガみたいに「それ」ありきだと萎えるというか、最終的にはそういう事だと思うのよ
>えっと、「青春の病は」の工藤さんの話ってどっか外国の話?
それそれ!米国に行った時の話です♪
>それとは別に、ちょろっとだけ工藤さんが出てくる作品も、どっかにあったよ。
およっ?ひょっとして私が借りてる中にあるのか?さっそく捜索してみるわ

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