デュプラメソッド「理想的な淡水水槽」
9.1.3. 熱帯河川のpH
熱帯の小川に生息する水草を研究するにあたり、現地での化学的・物理学的な水と土壌の調査は絶対に欠かせない。我々は熱帯地方への生物の調査旅行の際には、詳細な調査を必ず行っている。そしてより高度な調査・分析については現地からサンプルを持ち帰り、我々の実験室で行った。水においては、調査旅行のたびに現地で精密な保存作業及び分類を行い、数百に及ぶサンプルをドイツへと送った。
これらのサンプルのpHを測定した結果、酸性のみならず、中性あるいはアルカリ性を示すものが存在した(pH7が中性、それより下が酸性、上がアルカリ性)。水草が生い茂るタイ南部の小川から採取した水は一様にpH値は5.7~6.2であり、セイロン(スリランカ)のとある小川ではそれより高い6.6~7.9のpH値を示した。
このpH値の差異は、その場所の地質の特性の違いによるものである。本書で既に述べたように、石灰岩を含む土壌が多い地方では、河川の水がアルカリ性を示す。例えばタイ南部のパングンガ(Phangnga)地方では、水中の石灰質含有量の多さから8というpH値が測定されることも稀ではない。こういった場所でクリプトコリネを探すという努力は当然徒労に終わったが、そのかわり我々はOttelia alismoides(ミズオオバコ)やCeratopteria thalictroides(アメリカンスプライト)などを見つけることができた。
我々が行ってきた熱帯地方の河川における水質分析の結果は、pH値が水中の炭酸塩硬度(KH)や遊離二酸化炭素(CO2)の濃度、あるいは腐植酸やその他有機酸の量に影響を受けているということを示している。
腐植酸と同様に、二酸化炭素も水中植物の成長に非常に大きな役割を持つ。腐植酸は、水中において鉄やマンガン、銅、亜鉛などの重要な栄養分とトレーサー元素の集合体の供給源として機能する。これらの有機物質がない状態では、この集団は不溶性の化合物として沈殿し、水草の栄養素とはなり得ないのである。
自然の生態系における水の分析は綿密に計画された作業工程を経て
行われなければならない。現地で最初の分析が行われた後、もう一度
同じ検査が宿泊施設にて実施される。そしてより高度な分析を行うために、
サンプルはアンプルへと詰められてドイツ・デュプラ社の実験施設へと空輸される。
トレーサー元素に関しては特に精密な分析が必要となる。
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