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「理想的な海水水槽」 2.1. 歴史を振り返って


デュプラメソッド「理想的な海水水槽」

2.1. 歴史を振り返って


1953年、私は水量が15ℓの海水水槽を持っていた。その中ではムラサキガイ、2匹のスナクルマエビ、ぜん虫類、その他のいくらかの生物を飼育していた。照明は白熱球で、かなり素敵な水槽に見えた。小学生だった私はその水槽にとても満足していたし、問題点があるなどとは考えもしなかった。もちろん時々ムラサキガイが死に、水が腐って驚くことはあった。そこであらたにきれいな水を足すと、別のムラサキガイが死ぬ。そんなことの繰り返し。まるで運試しのようなものだった。そして最後には部屋中があまりに臭くなり、その水槽をあきらめなければならなかった。

それから数年が過ぎ、私は部屋に13,000ℓの海水水槽を設置した。中には2tの白雲石と約800kgの死んだサンゴの骨格を入れ、水槽の底はサンゴ砂で覆い、魚の体表のヌメヌメした粘膜を取るための設備を納めたボックスがそこに埋めこまれていた。そして、4,000ℓの水を動かすことができる3つのポンプで強力な水流を作り、藻やコケが生えることを恐れて5つの50Wスポット照明だけを当てていた。
その後5匹のイソギンチャクと50匹ほどの魚を入れると、それはなかなかの眺めだった。40色に着色された人工のサンゴ(ポリエステルハーツ)はまったく自然な印象を与えた。しかしそれは見かけだけだった。すべてが不毛で、すべてがバイオロジーに反していた。

体長13cmほどの10匹のChaetodon collare(コラーレバタフライフィッシュ)はすいすいと泳ぎ、満足げに見えた。しかしエサを与え始めてから、この魚が私の大きな水槽にいる時と、例えば500ℓの小さな水槽にいる時ではまったく違う行動をとることに気づいた。彼らはお互いに突つき合い、ボロボロになっていった。そしてしばらくするとイソギンチャクからエサを奪うようにさえなった。
その後水槽のすべての魚がウーディニウム病(※コショウ病)に罹ったので、私はイソギンチャクだけを水槽から出して、水槽に銅を入れて治療を行った。この間の銅濃度の管理は、当時Hilena社が販売していた銅試薬を用いた。最終的にすべての魚のウーディニウムは治ったが、この水槽で始まりかけていた様々な生物の自然な成長は、銅治療によって失われてしまった。
私はコケで覆われた人工サンゴの美しい色が見えるように、毎週水着をつけて水槽に入り、それらすべてにブラシをかけなければならなかった。これは自然との闘いだった。そして私はこの闘いに敗れた。
イスラエル、アフリカ、エジプト、タイ、地中海などへの潜水調査旅行から帰り、この水槽の前に立つと私はいつも恐怖に襲われた。そこで私は決断した。水槽の魚にトランキライザーで麻酔をかけ、水槽の水をすべて出してしまおうと。



幅6m、13,000ℓの海水水槽。1969年。2t以上の石雲岩と800kgの死んだサンゴの骨格が入っている。この人工サンゴは40色の様々な色に着色され、ポリエステルとサンゴ砂を混ぜたもので石雲岩に接着してある。無菌状態と人工性がこの水槽にとって致命的だ。2年後、この水槽は全面的に撤去された。




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