謎の日常

 「観光」に”感動”などといった余計な”感情”は必要ない・・・
 ただ”事を終わらす”とだけ考えれば良い・・・

ブラック・ウィーク(東京某所:日本)

2009-11-01 21:30:24 | 労働収容所・ただ今収監中
日本


2009.11.01(日)


 雇用契約も労働契約書も結ばず、タイムカードを押す事だけを証拠にして働き始めて早くも一週間が経過した。
 面接時に感じた胡散臭さ、働き始めるとその異様さはどんどんと目に付いてくる。
 何故こんなブラック会社を選んだのか?
 思い当たる理由があるとしたら「暇に耐えかねた」というのがそれなのかもしれない。


 これをきっかけに今までの契機を振り返ってみようか・・・


 まずは募集から見ても異常さが目に付く会社だった。転職サイトには

 「忠誠心のある素直で正直な方募集・・・」
 と、ある。
 なんだ?これは・・・

 そして人物重視の採用。
 うーん・・・

 条件はというと月給30万保証、但し土曜日は出勤、そして残業あり。となると時給千円いくのか?これで??
 待遇面は雇用保険のみ。正社員になった所で労災もつかないというのはちょっとおかしい。

 ブラックの香がなにやら漂ってくるようだ。

 印刷業者にはいるこの会社はホームページを持っていた。

 そこを覗いてみると普通の印刷の広告のほかに「愛の言葉」や「心を豊かにする」等という項目も設けられている。

 変だと思って覗いてみると、そこには人間を再認識するということで色々な言葉が集められている。どうやら社長が書いているようだ。

 何気なくページをめくるとそこには「会社の面接試験への提言」なようなページもある。

 読んでみると人間性を重視、自己主張をしない人、あまりしゃべらない人、不自然さのない人等5項目ぐらい書かれている。これで気付いた事はこの社長は単なる「YESマン」を欲しがっているという結論だ。

 まあホームページを見ただけでは良く分からないというのが結論だし、どうせ暇なのでこの通りに面接を受けたら受かるかどうかも試したくなったのでとりあえず募集してみることにした。そんな経緯だった。


 そして面接。

 転職サイトの募集要項には「面接ではあなたの話をじっくり聞かせてください」とあったが、実際は相違してただひたすらに社長の話を聞き続けるだけだった。最初に渡されたのは3枚のペーパー、お断りしたい人や理想の秘書、タブーな人、そして人間性に関するアンケート。このうちアンケートには丸をして社長に渡すことになる。
そのあとは時間にして1時間ほぼ社長の今の従業員は社長をないがしろにしている等といった愚痴に近い事を聞かされる。そしてこちらが聞かれた事のメインは「おしゃべりかどうか?」や「残業や早出もあるが文句は無いか?」とか、試用期間は日給一万、交通費500円だがそれでも頑張るか?やお金をもらうようになったら人間性が変わるか等だった。
 それに履歴書も私の最初の就職が大手電機会社だったのでそこに喰いついている。権威や肩書きに弱いタイプの男だという事も見て取れる。

 こちらとしても受かっても受からなくてもどうでも良かったのでホームページ通りにハイハイだけいってその場を後にした。


 会社を後にして少ししたら電話が入っている。かけなおすと「採用」という話だ。
 随分あっさりとしたもんだがこれも何かのきっかけだろう。
 それにブラック会社に勤めるというのは中々に出来ない経験だ。元旅行者の血が無駄に騒ぎ出し、私はそこで働いてみることを決意した。


 翌、土曜日からいきなり勤務。

 ここで先ず驚いたのは朝礼、社長の話を30分ぐらい聞く事だ。
 そして業務、私は印刷オペレーターで入ったのでひたすら印刷だ。この日は8時くらいに退社。まあ初日はこんなものだろう。


 そして月曜日から怒涛の一週間が始まった。

 朝礼は毎日30分以上。

 これでよく分かったのが社長の人間性。

 話のバリエーションはそれほど多くは無い、25分ぐらいは似たような話で5分はちょっと変わっているといった程度だ。

 社長が求めているのはただの忠実な下僕。部下がYESマンだけになったら社長が天才で無い限り会社は潰れるだろう。

 そして「白い物でも社長が黒いといったら黒と思え」、「俺が読んだら客の前だろうが電話中だろうが走って来い」「金を多くやるようになったら人間性が変わり社長を大事にしなくなる、そうなったらすぐに首を切ると思え」、「俺の話は一時間100万円以上の価値がある、そして3分間の話なら3万円以下の話はしない」などの数多くの名言集が・・・

 それに気になるのは何か話をする時に有名人や有名企業の話を持ち出す事、自分の言葉だけで語れない肩書き至上主義者の典型だ。私は一応大企業に2年程いたのだが、私を誰かに紹介する時には「彼は前にこの会社にいて・・・」と前置きをする。もう17年ぐらい前の話しだし、2年程度勤めた所で仕事が分かるレベルまでいたわけでは無いのでそんなことをいちいち触れてくれるなとも思うが、そこは彼の中で「こんな会社にいた人間が今は俺の部下だ」というのがステータスになるのだろう。

 さらに試用期間の人間に対しても「能力の無い奴はいらない」、「20日以内なら一方的に就社をご辞退してもらっても労働基準法上問題ない」、「会社に損害を与えたら損害請求出来る」等などと追い込みをかけてくる。
 そういえば労働契約書もなにもなく、タイムカードだけで働いている今は恐ろしく不自然な状態、正社員になれる可能性のあるアルバイトというのが実情だ。日給1万円、この一週間は朝0930時開始、夜は毎日10時過ぎに退社。正社員を餌にして、いまある業務をこなさせて、ダメなら何時でも切り捨ててOK、それが面接時の残業早出して文句は言わないかという質問の本意だろう。1100時まで残業したら東京都の最低労働賃金は下回る計算だがそこがミソと思っているのだろう。

 ちなみに今会社は猛烈な勢いで新入社員を採用、というか実験しているようだ。私が入社してから新しい人が2人増えている。さらに月曜日からまた二人増えることになっている。10人以下の規模の会社(現在は試用期間中の3人をいれて8人)でこれは結構な勢いだ。不況にかこつけて人材をテストしてみてダメなら直ぐに棄てるというのが考えだろう。ちなみに私が入ってからすでに二人の退職者もみている。一人は1ヶ月、一人は1日、さらに私が入る前の日も1日だけ入社して退職した人がいるそうだ。

 最後に社長がいうには彼は「世界一の事を3つ」やっているそうでそれに対する強烈な自尊心がある。

 だから彼が言うには「彼は世界一の人間」という結論だ。 

 一つは印刷で「世界一安くて早くて綺麗」でもう一つは「愛の言葉を集めて公表」そして最後の一つは「名言を集めて公表」だそうだ。

 「・・・」

 ゆってぃでもここは「きょうれつぅ~」と相槌をうってくれることだろう。

 彼の過去の話を朝礼時に聞いたら子供の頃から付き人がいる家で育ち、わがまま放題に成長してきたというのが良く分かる。一言でいうなら子供のまま現在の年齢(今は70を越している)まで来てしまったのだろう。

 「愛や名言」を語る、というよりも騙っているというのが私の出した結論だ。

 言行不一致で出鱈目、ということだろう。

 この会社は一番長い人でも4年、社長が言うには「金を多く払うようになったら人はおかしくなって社長をないがしろにするようになるから辞めていく」というのがその説明だったが朝礼の内容を考えると社長は人間を大事にする気は全くないと言ってもいい。それに金を多く貰うといっても社長の話では年収600万円。土曜日を潰して毎日10時、11時まで残って働くとしたらそれ程たいした金額とも言えない。それに正社員後の最初の月給30万にしても土曜日が潰れると考えると日給にしたら1万2千円。労働時間を考えると時給1000円は割る金額だ。それに会社の組織上従業員を守る、安心させる体制は皆無で正社員になった所で社会保険はつかないしなによりも労災がついていない。この劣悪な条件を考えるとある程度金が溜まったらこんな人間に何時まで仕えても報われることがないと知って馬鹿馬鹿しくなること請け合いだ。社長が部下を大事にしないし成果を出しても報わないということが長期勤続者のいない原因だということを社長は気付かないのだろう。


 ここまで書くと文句ばかり言っているようになってしまったが・・・

 だからといって悪い事ばかりではない。

 朝礼の時間を覗けば後は社長と離れてコピー機の前で印刷オペレーターをしてればいいだけなので、重労働ではないし何よりも接客がないので仕事そのものからストレスは来ないので気に入ってしまったし、同僚や先輩には悪い人はいない。これは大事なポイントだ。それに元世界旅行者としては普通の会社で働くよりも毎朝30分面白い見物が見れるというのは萌えるポイントだ。そしてブラック会社に独裁者のワンマン社長等というのもアフリカ旅行を思い出して笑えるのがいいことだろう。
 それに何よりもこちらはまたいつか残された国へ行くための資金稼ぎだから下手にトップが人格者でこの人の為なら働かなければと思ってしまうよりも辞める時に良心の呵責なく辞められる所というのは都合がいい



 と、いう事で・・・



 社長に飽きるか?解雇を宣告されるか?面倒になって朝起きられなくなるか?それまでは頑張ってみようか・・・