デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

西直樹に北北西のいい風が吹いた1980年

2017-02-12 09:23:01 | Weblog
 過ぎた雑節の話で恐縮だが、節分といえば「鬼は外、福は内」の豆まきと相場は決まっている。ところがここ数年恵方巻なるものが流行のようで我が家の食卓にものぼった。福を呼ぶ方角を向いて太巻きを食べる関西の風習がコンビニの商業ベースに乗って全国に広がったようだ。今年の恵方は「北北西」とか。これを「きたきたにし」と読み間違えた女子アナウンサーがいたという。

 北北西といえば「北北西に進路を取れ」というヒッチコック監督の名作を思い出すが、ここは間違ったついでに「来た来た西」でレコードを探した。西直樹がライブ録音するイイノ・ホールに到着が遅れたので、共演する山口和与と猪俣猛が言ったと仮定しよう(初リーダー作なのでおそらく一番乗りしたと思われる、誤解なきよう)。録音は1980年で、その年のSJ誌国内最優秀録音賞を受賞している。フュージョンが跋扈する時代ならではのヒップなジャケットだが、内容はストレートなピアノトリオだ。当時、まだ日本のジャズは大丈夫だなと思ったのを覚えている。

 猪俣のバンド、ザ・フォース時代から注目されたピアニストのデビュー作は期待通りの素晴らしい内容だ。ダイナミック且つ繊細なタッチでグイグイ気持ちよく引っ張る。アルバムタイトル曲をはじめ「Doxy」、「A Train」という王道を行く選曲に加え、「Billy Boy」があった。曲名を聞くだけでマイルス・バンドを去るガーランドの胸中を察したくなるが、西は初めて鍵盤に触れた少年のような驚きで音を重ねていく。手塩に掛けて育てたピアニストの背中を優しく押す猪俣のサポートも見逃せない。ベテランの仕事で最も大事なのは若手の育成である。

 久しぶりの日本人ジャズマンの登場だが、日本人といえば1976年に渡米中の菊地雅章と日野皓正が結成したバンドに「東風」がある。デイヴ・リーブマンやスティーヴ・グロスマンも参加した意欲的なグループだったが、「Wishes」というアルバム1枚で消滅した。実験的なジャズはいつも逆風が吹く。このバンド名で「こち」という読み方を20歳を過ぎて初めて知った。件の女子アナを嗤えない。
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12 コメント

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ビリー・ボーイ・ベスト3 (duke)
2017-02-12 09:26:46
今週もご覧いただきありがとうございます。

「ビリー・ボーイ」は、元はイギリス民謡ですがアメリカでも古くから知られている曲です。今週はインストでこの曲のお気に入りをお寄せください。

管理人 Billy Boy Best 3

Miles Davis / Milestones (Columbia)
Hampton Hawes / Everybody Likes Hampton Hawes (Contemporary)
Naoki Nishi / My Little Suede Shoes (Trio)

他にもオスカー・ピーターソンをはじめアーマッド・ジャマル、ピアノのベニー・グリーン等、ピアニストに人気のある曲です。
今週も皆様のコメントをお待ちしております。

Billy Boy 吉岡秀典(p)鈴木良雄(b)ジミー・スミス(ds)
https://www.youtube.com/watch?v=aSQ4LLjcon8

顔芸といえばトム・ハンクスですが吉岡さんは顔からも音を出しております

岡副麻希アナ「北北西」を「きたきたにし」に誤読
https://www.youtube.com/watch?v=QAipJVOyPvY

生放送は怖い
東風~こっちはサンマ。 (宵闇散歩)
2017-02-13 00:14:40
dukeさん、こんばんは。

西さん21歳ですかぁ、最初のピアノとドラムの会話に余裕すら感じます。いかんせん私は吉岡秀晃派なので(笑)タモリがチラリと?ジミーのいつものクラッシュシンバル、ケリーテイストですがギルド・マホネス、ジャック・ウィルソンの流れを汲むフレーズが魅力的です。

Milestones / Miles Davis (Columbia)
この疾走感は凄いんですが張りつめた空気にいつも胸がつまってしまい、本来ならRevisited!が持ち味だろうかと。MilesのLive In Saint Louis1956でのフィリーが最初からスティックで煽るラフな疾走感も、後年の名手リロイを迎えてのリユニオンの大味さも嫌いではないのですが。

Jamal At The Pershing vol.2 / Ahmad Jamal (Argo)
イズリールとヴァーネルというトリプルAクラスのリズムに腰が浮きます!このアレンジでベニー・グリーンのベニー・バイ、否(否定はしません)ビリー・ボーイも確かにあの時点で必然のライブ新譜でしかも当時最強のコンビだったクリスとカール…結果はジャズ研がんばったね!程度で、まだアンソニー・ウォンジーのThe Thangのがドラムがいかしませんが魅力的です。ピーターソンレパートリーも披露できるゲイを持っているのに勿体ないベニー君。

Down To Earth ~Plays Music From The Soil / Ramsey Lewis Trio (Mercury)
ジャマル同様、変わったようで変わっていないスタイリストの魅力的な通俗の偉大さ。デヴィッド・マシューズの同曲の低俗なこと!

次点に大隅寿男さんのオンザロードと山本剛さんのLA LA Luを。
実験的といえばJLGの東風を思い出します。
元をたどるとジャマル (duke)
2017-02-13 18:14:56
宵闇散歩さん、こんばんは。

場所が変わればルールも変わりますが、どうにも3人麻雀は馴染めません。変わらないのは恨まないのがルールでしょうか。

紹介した西さんの映像はタモリさんの番組のようです。ジミーに似た日本人がいましたが名前を思い出せない。

ガーランドはRevisited!やキーストン・コーナーもありますが、やはりこれですね。ジャズ喫茶でB面しかかからないレコードが何枚かありましたが、これもその1枚です。
1956年のセントルイスは音が悪いのが残念ですがいい内容です。これを聴くとこの曲はライブでもトリオ用だったことがわかります。それにしてもこのDJは酷い。紅白歌合戦で加山雄三が仮面ライダーと紹介したのを超えております(笑) 

そしてジャマル、これもいいなぁ。マイルスはジャマルを聴きにいった時、この曲を演奏していたのでガーランドにやらせたようです。そのガーランドを聴いたのがホーズで、これを録音しております。ジャマルが取り上げなければ大隅寿男さんや山本剛さん、ベニー・グリーン、アンソニー・ウォンジーも録音することはなかったでしょう。

ラムゼイ・ルイスもありましたね。レコードは持っておりませんが聴いたことはあります。

>デヴィッド・マシューズの同曲の低俗なこと!
敵を増やしましたね(笑)シティジャズに出ているせいか札幌では異常に人気があります。ススキノの居酒屋でサインを見ました。

ゴダールは「とうふう」ですね。よくわからん映画です。
歯切れの良さ (azumino)
2017-02-13 23:07:22
こんばんは

西直樹さんの実演を、比較的最近2回聴きましたが、落ち着いたプレイぶりで、上品なものでした。若い頃に、こんなジャケットのレコードを作っていたとは、ちょっとびっくりです。

お題ですが、そうヴァージョンを持っていませんでした。今まで出ているので尽きていると思いますので、

Miles Davis / Milestones (Columbia)
Ramsey Lewis / Down to Earth (Mercury)
Hampton Hawes / Everybody Likes Hampton Hawes vol.3(Contemporary)

出だしを歯切れよくやってもらいたいので、こんな順番ですが、ガーランドの演奏が圧巻です。ジャマルのものは持っていないので、挙げませんでした。
ビビリー・ボーイ (宵闇散歩)
2017-02-13 23:09:40
再度投稿失礼します。
シティジャズ連帯表明者達ではなく、デヴィッド・マシューズを嫌いなわけではないと。黒い音というのが7割は売る側とリスナーの思い込みだと私に気づかせてくれた彼の仕事(リン・コリンズのフライミートゥ等)の良きリスナーですので、あの自転車のアルバム…録音は良いですよね(笑)
ワニのウマさん (duke)
2017-02-14 22:03:32
azumino さん、コメントありがとうございます。

西直樹さんのライブを聴かれましたか。私はかなり昔に聴きましたが素晴らしかったですね。身体が反応するスタイルはジャズの王道をいくものです。

このレコードは当時、大型新人デビューの文字が広告を賑わしておりました。フュージョン全盛でしたのでジャケットから受ける印象はそれ系ですが、聴いて驚いたのを覚えております。

トップはこれで決まりですね。ガーランドのこの演奏がなければこの曲は埋もれていたかも知れません。マイルスの選曲は定評ありますが、トリオ用に選ぶとはさすがです。

そして、ラムゼイ・ルイス、アルバムタイトルのような演奏でしょうか。

ハンプトン・ホーズのワニは私も挙げましたが、ジャケットがいいですね。そしてスウィングするザ・トリオ、乗るスタンダード、楽しいのが一番というレコードです。
チャリンコ・ボーイ (duke)
2017-02-14 22:10:09
宵闇散歩さん、再度ありがとうございます。

敵なしかと思いましたが、ビビリー・ボーイとはうまいですね。

17日にマシューズとダンスとのコラボ企画があるのですが、チケットは完売だとか。八代亜紀とのライブも即日完売でしたが、果たしてジャズファンは何人いたのかと。

録音のいい自転車のアルバムがありましたね。しっかり鍵でつながれていますので、これではデックスも乗り逃げできません(笑)
やっぱりマイルズ! (M54)
2017-02-15 18:46:57
dukeさん、こんばんは。
宣言します! 今年は日ハムを応援します(笑)

Miles Davis / Milestones (Columbia)
Hampton Hawes / Everybody Likes Hampton Hawes (Contemporary)
The Piano Scene Of Ahmad Jamal (EPIC)

この曲は以前、拙ブログでも話題にしましたが、ノリノリの曲ですね。
出処はジャマルですね、このエピック盤は1952年の音源ですので、こんな感じで演ってたのでしょうね。

そうであっても、やっぱり、マイルスのフィルターを通せばそれが最高じゃないかと思ってしまいます。 マイルストーンズのガーランドトリオが一番ですね。
ホーズはマイルスを聴いてますからその流れでしょうね、僕はこれも好きですが・・

ラムゼイ・ルイスを未聴なんですね、これは欲しいと思っていますが未だに縁がありません。
ガーランドの意地 (duke)
2017-02-15 20:33:59
M54 さん、こんばんは。

我らが日ハムを応援していただけるとは嬉しいですね。連覇がないチームですので今年こそと願っておりますが、下馬評通りソフトバンクかも。オープン戦のチケットも発売されましたので、いよいよです。

トップは揺るぎないですね。ライブのアクセントのトリオ演奏ですが、スタジオでも録音するほどガーランドがよかったのでしょう。マイルスもジャマルのように弾けと言ったものの自己のスタイルを貫いたガーランドへの称賛も聴き取れます。ガーランドの意地に天晴です。

そしてこのガーランドのライブを聴いて録音したホーズもなかなかのものです。ホーズも勿論、自己のスタイルです。ここがジャズの面白いところですね。

ラムゼイ・ルイスのこのレコードはアメリカでは相当売れましたので中古市場でも安いはずですが、意外に高いですね。EmArcyの高値の影響で、Mercuryもそれなりかも知れません。
大ファンです (あんぱん)
2017-02-16 14:42:19
こんにちは。
大好きな西直樹さんの話題が出て嬉しいです。
このジャケットは、持っているのが猪俣猛さんの靴である事がまたいいですね。

Naoki Nishi / My Little Suede Shoes (AMJ)
Naoki Nishi Piano Trio + 1 / People (Skip Records)

どちらも西直樹さんです。
1980年録音の「My Little …」の時は軽やかなタッチの印象で、1998年録音の「People」の時は力強くダイナミックな印象です。
同じ曲で同じピアニストの演奏でも、だいぶ雰囲気が変わりますね。
ご本人はアルバム「People」に収録された「Billy Boy」について、アルバム「My Little …」の時のリベンジだと仰っています。

西さんを好きになったのは、コーラスグループ「サーカス」のコンサートがきっかけでした。
コーラスへの絡み具合が絶妙でフレージングもカッコ良く、“バックでこのオシャレなピアノ演奏をしているのは誰なんだろう?”と
かなり気になり調べて西さんだと分かりました。
その後も何度か生で西さんの演奏を聴きましたが、最近は北海道で聴ける機会がほとんど無く残念に思っています。
久しぶりに生で聴きたいです。

アルバム「Laid Back Mind」の1曲目「コンドルは飛んでいく」を初めて聴いた時、この曲のこれまでのイメージを覆すようなアレンジと演奏で衝撃的でした。
思わず一人で “何だこれは!”と呟いてしまったのを覚えています。
バラードのような始まりなので、そのままいくのかと思いきやドラマティックに盛り上げて本編に突入し、歯切れ良く勢いのある演奏を聴かせてくれます。

西さんが参加している山口真文さんのアルバムや、大山日出男さんのアルバムも持っています。
西さん目当てで買いました。

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