ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

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『サッド ヴァケイション』

2007-09-24 22:43:57 | 映画
----今日は、久しぶりにフォーンも一緒に観に行った映画の話だね。
まず聞きたいんだけど、えいの好きな『八月の濡れた砂』、
この音楽、どこで使われていたの。まったく気づかなかったニャあ。
「この歌はね。
宮あおい演じる梢が
住み込みで働くことになった間宮運送で口ずさむんだ。
あの映画はぼくの邦画の生涯のベストワンだけに嬉しかったな。
ここでまず襟を正したね」

----梢って『EUREKA ユリイカ』の女の子だよね。
「そう、この映画は『Helpless』の後日譚が中心になっているけど、
そこに『EUREKA ユリイカ』の“その後”が絡んでくる。
いわゆる“北九州サーガ”の完結編ということのようだ」

----えいは、『Helpless』、
テレビで飛び飛びにしか観ていなかったよね。
それでもこの映画に感動していたようだけど。
話は分かったの?
「うん。こんなインディーズ的な映画で
一つの世界を作るなんて、
ついていけるか心配だったけど、
話はきちんと分かるようになっている。
でもそのことよりも、気になったのは北九州の方言。
ぼくは博多の方の生まれだからまだいいけど、
みんな、あの言葉分かったのかな。
茂雄(光石研)と明彦(斉藤洋一郎)の会話とか、
そのセリフのニュアンスが分かる者にとっては、
ここはたまらないくらいにおかしいんだけどね」

----おかしいと言えば、主人公・健次(浅野忠信)が
最初に冴子(板谷由夏)の部屋を訪れるところも。
「あ~。あそこね。
この両方のシーンに通じるのは、
くすくす笑いのユーモア。
途中から千代子(石田えり)を始め、
女性のたくましさが前面に出てくるとこともあって、
今村昌平の重喜劇を思い出してしまった。
この映画は、
それまでどちらかというと
男性的な匂いが強かった青山真治の
ターニングポイントになるんじゃないかな」

----阪本順治で言えば『顔』って感じかニャ。
「そんな感じ。
今村昌平の春川ますみ、阪本順治の藤山直美。
そして青山真治の石田えり」

----そういえば俳優はみんなよかったね。
「うん。高良健吾、とよた真帆、山口美也子。
みんな適材適所。
なかでも、自称免許を剥奪された医者を演じた川津祐介は
人なつこそうな顔の裏に
居心地の悪い偽善を見え隠れさせていて絶品」

----フォーンは、千代子の再婚相手で間宮運送の社長・繁輝を演じた
中村嘉律雄がよかったニャ。
「そうだね。
彼はこの映画で唯一、イノセンスな男。
最初はそれでもどこかに裏があるんじゃないかと思いながら
観ていたんだけど、
結局はそのままだったね。
したたかな女性たちと対立させるには
彼は必要なキャラだったんだろうな。
でも、それだけに秋彦が繁輝に言う一言は泣かせたね」

----「こういう言葉はほんとうは好きじゃない」と前置きしながらも
「頑張ってください」というシーンね。
「そう、これは
『EUREKA ユリイカ』の『生きろとは言わん。死なんでくれ』に匹敵したね。
青山真治は、こういう“決めの一言”の使い方が実に巧い。
普通にはなかなか言うのが難しい、
どちらかというと赤面するようなセリフを
映画の中で、ぐいっと入れてくる」

----そういえば、この二本は疑似家族という点でも共通点があったね。
「そう。
実を言うと、こういう
セミドキュメンタリー的なリアルな映画は、
ぼくはあまりタイプではない。
映像的に作りこみをしている映画の方が好きなんだ。
でも、この映画の緊張感には引き込まれていった。
最初はジャンプカットがあまりにも多く、
正直、おいおいと思ったんだけどね」

----でも、ラストは思いっきり作りこんでいなかった?
「うん。あのシャボン玉ね。
あれこそCGの正しい使い方だろうな。
いったい、このヘビーな映画をどうやって終わらせるのかと思ったら、
あの巨大シャボン玉。
これは素晴らしかったね」


     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「まったく長さを感じなかったニャ」身を乗り出す

※これは今年のベストテン級だ度

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こんばんは♪ (miyukichi)
2007-09-24 23:53:58
 TBどうもありがとうございました。

 「Helpless」と「EUREKA」、観たくなりました。

 最後のシャボン玉、おっしゃるように効果的でしたね。
 ああいう「作り物」はアリだなーって思いました^^
■miyukichiさん (えい)
2007-09-25 09:33:19
こんにちは。

あのシャボン玉、
全編があの感覚だと、
ちょっとついていけないのですが、
ここというところで出してきたのが巧い。

最後までドキュメンタリー・タッチだったら
ちょっとやりきれなかったです。
よかったです (かえる)
2007-09-28 01:55:15
こんばんは。
えいさんって、九州男児だったんですね♪
女性の話す九州弁がよかったです。
石田えりさん素晴らしすぎ。
■かえるさん (えい)
2007-09-29 17:48:20
こんにちは。
もう、九州男児とは似ても似つかない男です。
あの「北九州の空気」(?)が苦手で東京に逃げたようなもんです。
でも、ふるさとから遠く離れると、
こういう言葉はとても懐かしく感じてしまいます。
青春残酷物語 (にら)
2007-10-03 22:47:19
培った「演技」の集大成を小道具も駆使して披露する川津さんと、演技に見えない「演技」を手ぶらで披露する浅野くん。
この対比を楽しみつつも、青山監督の残酷さに鳥肌立ちました。

あくまで個人的な妄想ですが、時々目くばせしあうあたり、川津さんと石田えりさんが実はできてる、って裏設定があったんじゃないでしょうか。
運転もできない男を置くなんて、実の息子すら見捨てる千代子のキャラらしくないですよ(笑)。

てなわけで、TBありがとうございました。
■にらさん (えい)
2007-10-03 23:48:38
こんばんは。

そうそう、書き忘れましたが、
タバコの使い方が久しぶりに印象的な映画でした。

その一つが川津祐介が浅野忠信の前に差し出すシーン。
昔は、下手な監督ほどタバコを使いたがったものですが、
これには感服しました。

石田えりとの関係は不覚にも気づかなかったです。

石田えりは、『遠雷』からのファンです。
社長 (たいむ)
2007-11-05 18:29:55
こんにちは。
前2作を見ないままの鑑賞でしたので、最初から押しつぶされそうになってしまいました(笑)

とにかく圧巻です。
ラストのシャボン玉での土砂降りは、「水を差す」とか「雨降って地固まる」なんてワケワカンナイことをちょっと思ったりしてました(^^;
■たいむさん (えい)
2007-11-07 00:00:33
こんばんは。

この映画は、今年の邦画の大収穫だと思います。
青山真治は苦手な方ですが、
たまにこういうことやってくれるから、
目が離せないですね。

シャボン玉の意味、なかなかオモシロい解釈ですね。
誰かに話したくなりました。
お暑うございます。 (オカピー)
2008-08-05 19:53:53
TB致しました。

>ジャンプカット
あはは、やっぱり。
この調子で2時間以上も続いたらたまらないと思ったのは僕だけではなかった(笑)。
続かないと承知しつつ、この手の作品は独善的になりがちですから、そっちが心配でした。

母親の母性も、あそこまで行くと、怖い気がしませんでしたか?
■オカピーさん (えい)
2008-08-06 08:55:09
こんにちは。

あのジャンプカットは、
役者たちの掛け合いによって醸し出される
場の空気をそのまま捕えてしまいたかったんでしょうね。

撮り直しなんかしないぞという、
監督の意気込みがよく出ていました。

強い女性、このスゴさは、
まるで今村昌平を思わせました。
ぼくも怖かったです。

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