ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『デンデラ』

2011-05-20 23:34:10 | 新作映画
----あれっ。この映画、
確か、観ないとか言っていなかったっけ?
「うん。最初はとても観る気が起こらなくって…。
だって、これって姥捨伝説が基になっている話じゃない。
確かに、今の高齢化社会のことを考えるには、
テキストとして重要なのかもしれないけど、
酷すぎて正視できないと…」

----だから「軟弱」って言われるんだよ。
でも、それなのになぜ?
「ひとつは、この映画が
姥捨て伝説の傑作『楢山節考』を世に遺した
今村昌平監督の長男、
天願大介監督の作品ということ。
それと、これはどこかで目にしたんだけど、
どうやら姥捨てにあった婆たちのテロの映画らしいと…」

----それはまた穏やかじゃないニャあ。
どういうこと?
「つまり、婆たちが
自分を捨てた村の人たちに復讐に行くんだ。
主人公は、斎藤カユ(浅丘ルリ子)。
姥捨てに会った彼女が気づくと、
なぜかそこには既に姥捨てに会った、
つまりはあの世に旅立ったはずの婆たちが大勢いる。
『ここは極楽?』
しかし、そうではなかった。
ここは姥捨てに会った婆たちが共同で生活し、
生き延びているデンデラという場所…」

----へぇ~っ。よく生き延びられたね。
みんな歳とっているはずだし、
それに雪深い山奥で
見るからに寒そうじゃニャい。
「そこに、この映画のひとつのポイントがある。
彼女ら婆たちは、他の村の人たちを生かすべく、
つまり喰いぶちを減らすべく
姥捨てという目に遭う。
自分で働くこともできなくなっているし、
もう無用の存在というわけだ。
しかし、実際はこうして生き延びている。
木の実や虫を食べ、冬は、干し魚などを備蓄する。
食べるものがないと嘆きあきらめている村の男たちより、
はるかに逞しい。
しかも、村を襲撃するために、
日々、体を鍛え武闘訓練に励んでいる」

----でも、現実的じゃニャいなあ。
「確かに。
でも、この映画に出演している女優たちは
みんなかなりの高齢。
倍賞美津子、山本陽子、山口果林、赤座美代子らは
みんな60代後半。
このデンデラを作り上げた
100歳のメイを演じる草笛光子至っては77歳。
そんな彼女らが、氷点下にもなる山形県庄内の極寒の地で、
飛んだり跳ねたり走ったり、
かなりのアクションを見せてくれる。
だから、嘘っぽさが消えてゆくんだ。
それどころか小気味いい」

----ニャるほど。
他に、どんな女優さんが出ているの?
白川和子、山口美也子
ふたりは、初期の日活ロマンポルノを
背負って立った女優さんたちだ。
さて、話を先に進めよう。
このデンデラには、復讐を誓うメイたちのほかに、
“意気地なし”と呼ばれる者たちがいる。
彼女らは、ここで暮らしてゆけばいい。
なにも、人を殺めに行くことはないという立場なんだね。
だが、それは少数派。
ついに決行の日がくる。
しかし…」

----ゴックン。
「次々と思いもかけぬ出来事が彼女らに襲いかかるんだね。
食べるモノがなく冬眠ができなくなった熊の出現、
行く手を阻む雪崩…。
つまり、人間の思惑とは別のところで“生きるための闘争”が行われ、
大自然の猛威が振るわれている。
今回の大震災。そしてそれ以降の人々の営み。
偶然とはいえ、これは今の時代とリンク。
“生きる”ということについて
改めて考えさせられる映画であることは間違いないよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「親子で一つのテーマを連作したわけだニャ」身を乗り出す

※それにしてもパワフル。女の生命力強しだ度

コトリ・ロゴ「母の日」には、こちらのお花屋さんもよろしく。

こちらは噂のtwitter。
ツイッター
「ラムの大通り」のツイッター



blogram投票ボタン

ranking.gif人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは (ノラネコ)
2011-06-10 22:10:34
御覧いただけて良かったです。
私はこの映画と多少かかわりがあるので、レビューするかどうか悩みましたが、やはりこれは時代に呼ばれた作品だと思い、書いてみました。
仰る様に、人間のちっぽけな思惑と、そんなものとは無関係に存在し続ける壮大な自然の理とのコントラスト。
正直言うと熊の出来栄えとか、草笛さんの回想シーンをあそこに入れて良いのかとか、気になる点もいくつもあるのですが、震災を経て、いかに生きるかを考えさせられる作品であることは間違いないと思います。
■ノラネコさん (えい)
2011-06-16 22:54:57
こんばんは。

>人間のちっぽけな思惑と、そんなものとは無関係に存在し続ける壮大な自然の理

なるほど。デヴィッド・リーンですね。
でも、日本だからそこまで雄大にならないところがまたオモシロいです。

熊の出来栄えは、
逆に懐かしかったです。
こんにちは。 (みぃみ)
2011-06-29 21:05:21
草笛さん、御年77歳なんですね。びっくりしました。
確かに、お年は召されていますが、1人で山を歩き回ったり、お花を見つけたりする場面では、娘さんみたいに見えたりもしました。

村への復讐を決めた途端、襲いかかる脅威達。
「いくじなし」達の罠なのかも?と思ったりもしましたが、デンデラで穏やかに暮らしていれば、もしかしたら起こらなかったのかもしれない。傲り高ぶった者への天罰なのかも?と思ったり。

なんにしても、「生きる」ために戦う者達の姿に、凄まじいパワーを感じ、鼓舞されました。
■みぃみさん (えい)
2011-07-02 18:25:59
こんにちは。

これだけの大物女優が、
こういう企画に多数参加したというのがスゴイ。
あの雪崩は、予想外でした。
みんあんで、復讐=惨殺という展開かと思っていたので…。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。