ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

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『亀も空を飛ぶ』

2005-05-18 19:56:57 | 新作映画
------この映画の監督、バフマン・ゴバディって、
近年、とみに注目されてるよね。
「世界最大の少数民族クルドにスポットを当てた
『酔っぱらった馬の時間』が彼の長編監督デビュー作。
まず、これがカンヌで高い評価を受けた。
カメラドール新人監督賞と国際批評家連盟賞のW受賞だ」

------あの映画って、厳寒の中、密輸品を馬(ラバ)に運ばせるために、
酒を飲ませるというところにタイトルの由来があったよね。
今度はどんな意味があるんだろう?
「それを言うと、ネタバレになるからなあ......。
とは言え、この映画、冒頭からショッキング。
一人の少女が目も眩む高い崖に近づく。
果たして彼女はそこから飛び降りるのか否か?」

-------mmmmm。
「舞台はトルコ国境に近いイラクのクルディスタンの村。
主人公はアメリカびいきの戦争孤児で、
みんなにサテライトと呼ばれている利発な少年。
アメリカのイラク侵攻が現実的なものとなる中、
彼は、情報を欲する村人たちのため、アンテナを据え付けたり、
村の子供たちのアルバイトの元締めをしている」

-------アルバイト?
「アルバイトと言っても、
村を取り巻く土地にばらまかれた地雷を掘り出して、
それを地主に売るという危険なもの。
そして彼は近くの難民キャンプの子供たちにもこの仕事を与えている」

------う~~っ、ニャンだか難しくなってきそう。
「もう少しだけガマンガマン。
ある日、彼はハラジャブからきたひとりの難民の少女に声をかけられる。
ロープを欲しいと言うその少女アグリンこそ、
問題の冒頭のシ-ンで、崖に立っていた少女。
さてアグリンの兄ヘンゴウには実は両腕がない。
そして二人は失明している赤ん坊を連れて難民キャンプにいる....」

------うわあ。確か『酔っぱらった馬の時間』でも
成長障害の少年が出てこなかった?
「ゴバディ監督、映画のためとは言え、こんな撮影許されるの?
と言いたくなるほど苛酷な撮影をやっちゃう。
『酔っぱらった馬の時間』では、障害を抱えた男の子を、
あの厳寒の地で撮影したということが、ぼくには得心できなかった。
今回もネタバレになるし、また特撮の可能性もあるから
強くは言えないけど、かなりショッキングな映像が出てくる」

------ふうむ。それは難しいところだ。
「でも、中東の映画を観るたびに、いつも思うのは、
自分は本当にあの地域のことを知らないなということ。
まず、劇中に出てくる映像が実景なのか、
それとも映画のための特殊な設定なのか、
あまりにも自分がいま住んでいる世界と違うため皆目分からない」

------たとえば?
「このゴバディ監督が俳優として出演した
『ブラックボード 背負う人』では、
爆撃で学校を失った教師たちが
子供に読み書きを教えるために教師のいない村を回っている。
これだって、現地で実際に生じているできごとなのか否か、
ぼくには全く判断できない。
また、ゴバディ監督の二作目『わが故郷の歌』には
女たちだけのキャンプが出てくる。
この『亀も空を飛ぶ』では、山岳地帯の中、
子どもたちは自分たちの親との交流がなく、
まるで自活しているかのように描かれる。
さらには子供たちが青空市に機関銃を買いに行き、
値段交渉するなんてシーンもある。
これだって日本映画だったら虚構と断言できるけど、
この映画だったらどっちか分からなくなる」

------なるほどね。
「いったい、あの地域の子どもたちはどんな生活をしているのか?
まず、それが分からないから、映画をリアルに受け止めるべきか、
多少なりとも誇張が入っていると見るべきか、
ぼくにはそこが判断できなかったんだ。
しかし、今回、ゴバディ監督がプレスのインタビューの中で
このぼくの疑問に明快に答えてくれていた。

『これは子ども時代を持たないまま、
大人にならざるを得なかった若者たちについての映画なのです。
ヨーロッパなどの地域の大人たちが決して知ることのない苦しみを、
この子どもたちは彼らの短い人生で経験しているのです』。

そう、虚実の如何は別として、
そこに呈示された世界を、まずは謙虚に受け止めるべきなんだろうね。
この映画には、ユーモアもあるし淡い恋もある。
でも、ある深い傷を受けることで主人公の青春は終焉を迎える。
その衝撃の内容と描写に対して、
人によっては拒否反応が起こるかもしれない。
しかしその背後には、監督のコメントにあるような
悲痛な現状があることを、まずは知るべきだと痛感したね」

           (byえいwithフォーン)

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10 コメント

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TBありがとうございます。 (あかん隊)
2005-10-18 21:00:04
いつも、お世話になります。

良い映画をご紹介くださって、ありがとうございます。少なくとも「知る」ことはできました。自分なりに謙虚に受け止めたつもりです。その上で、現実には何もできない自分の無力に思い至っています。「何かできないのか」と考えることすら、奢った意識のような気にもなりました。こうした映画が製作されていることだけでも、「救い」は残されているのではないか、とも思います。
■あかん隊さん (えい)
2005-10-19 18:49:08
正直、ぼくもこの監督の

『酔っぱらった馬の伝説』を観るまで、

クルドのことについては、

知らないも同然でした。

このような映画を観ると、

自分がアメリカ的な文化=世界の通念と

勘違いしていたということを

改めて思い知らされます。

TBありがとうございます (M.)
2005-11-14 11:46:05
確かにあの場に行かない限りどこまでが真偽かという

如何はつけがたいとは思いますけれど

送り続けるには送る方も辛いメッセージではありますよね。

遙か彼方であるとはいえ同じ空が続いている下で起きていることを

きちんと皆が知ることが何より大事なんだろうと思います。

もっと観るべき人間はどっかの国にいるだろとは思うけど

かの国でこういった作品が一般の目に触れる事なんて

滅多にないでしょうし、困ったもんですが。

ちなみにTB、時間差で2つ頂いてしまいましたけれども

ひとつ削除しておきますね

今後とも宜しくお願いいたします。

■M.さん (えい)
2005-11-14 18:03:40
すみませんでした。(汗)



先ほど『~消しゴム』のTBへのお礼でうかがったとき、

「あっ、この映画も……」と、よく確かめもせずにTBしてしまったようです。

でも、けがの功名(?)でM.さんからコメントがいただけました。

ありがとうございました。

「同じ空が続いている下で起きている」……重い言葉です。



これからもよろしくお願いします。
TBありがとうございました (ミチ)
2005-11-18 23:40:48
こんにちは♪

「ブラックボード背負う人」や「酔っ払った馬の時間」を見たときにも子供たちのたくましさと生活の厳しさにショックを受けましたが、この作品はそれ以上でした。

仰るように日ごろなじみの無い地方を描いた映画を見ると、まず事実か虚構かということが気になります。

けれども、監督のインタなどを読んでその姿勢からやはり限りなく現実に近いことなんだと認識しています。

彼らのような生活をしていると、「自殺」という概念は無いんじゃないかな?と思いましたが、アグリンの絶望はそれほど深かったんでしょうね。

■ミチさん (えい)
2005-11-19 16:02:01
こんにちは。



なるほど、確かにそうですね。

あの子供たちに「自殺」の概念は似合わない。

なのに……。

思い起こせば思い起こすほど衝撃的な映画でした。
こんばんは (朱雀門)
2005-12-10 21:58:06
本日見て参りました。

中東の映画を観るのは初めてです。

衝撃というか・・・うーむ、自分の中でどう受けとめたらいいのかと戸惑ってしまう作品でした。

サテライトの張りのある声が印象に残っています。どんな状況であれ生きていかざるを得ない子供たち。まずはその存在を知るべきなのでしょうね。

*TBがダブってしまいました。一つ削除して頂ければ幸いです。
■朱雀門さん (えい)
2005-12-11 00:43:18
こんばんは。



朱雀門さんのブログ、お邪魔させてもらいました。

とても真摯な文章に頭が下がりました。

中東の映画は、独特の魅力を放っています。

なかでもこの作品は一頭抜きん出ていた気がします。



※TBの件、了解です。

これからもよろしくお願いします。
映画ご紹介ありがとうございました (ガナッシュ)
2006-04-29 11:39:55
見る機会はないかと思っていた作品でしたが、職場の近くで上映される予定になっていましたので、楽しみにしていました。で、行ってきました♪



私は、国境を挟んでトルコ側の風景しか見ていません。だから地雷を集めて売ったり、子供が機関銃を買いに行ったりする光景を目の当たりにしたことはありません。…が、国境を挟んでイラク側では、実際にそうなんだろうなぁ、と思いました。



トルコ側に住むクルド人の暮らしぶりも、映画で見たイラク側と似たような感じですが、それでもイラク側よりはマシな気がします。でも、そんな程度の暮らししか出来ない現実があるんですよね。。



■ガナッシュさん (えい)
2006-04-29 20:25:25
こんばんは。



ついに観に行かれたのですね。

ガナッシュさんの言葉には

行かれた人のみが発することができる重みがありますね。

ぼくみたいに暗闇で何かが起こることを待ち受けている人間としては

恥じ入るばかりです。

これからもよろしくお願いします。

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