-----これって『たそがれ清兵衛』や『隠し剣 鬼の爪』と同じ藤沢周平の原作だね。
主演は市川染五郎で、ヒロインが木村佳乃だっけ。
「うん。その二作は御大の山田洋次が松竹で監督。
でも今度は東宝。監督も『渋滞』『英二』の黒土三男ということで、
申しわけないけど、観る前はあんまり期待してなかったんだ」
-----その話し方だと、予想に反してよかったってこと?
「送られてきた案内やプレスでの評を見ると
やたらと『日本人の〜』を強調。
最近ブームの右回帰の風潮に乗った映画かと思ったら
そういうわけでもなかったね」
-----どんなお話なの?
「主人公は牧助左衛門(緒形拳)を養父に持つ牧文四郎。
寡黙ながら実直に生きる父を尊敬していた文四郎だが、
彼が15歳の時、父は世継ぎをめぐる派閥抗争に巻き込まれ
『謀反』の汚名を受けたまま切腹させられてしまう。
藩の命令で長屋に移り住んだ文四郎と母だが
数年後、筆頭家老・里村左内から名誉回復が言い渡される。
だがその間に、文四郎の幼なじみ・ふく(木村佳乃)が殿の側室に。
やがて子供を身ごもったふくは里に戻り、身を隠して出産。
そんな折り、文四郎(市川染五郎)は左内に呼ばれ、
ふくの子をさらってこいと命じられる。
罠と知りつつも、文四郎はふくの隠れ住む欅屋敷へ向かう....というような話だ」
-----ふむふむ。権力抗争の中で踏みにじられる個というヤツだな。
「そうなんだ。それだけを取り上げると
日本だけでなくどこの国でもある話になってくる。
でも四季折々の風景・風土がほんとうに見事に捉えられ、
その中で生まれるいくつものドラマを際立たせていく」
-----“いくつもの”って?
「一つは逸平、与之助といった子供時代からの仲間と文四郎との固い『友情』、
そしてもう一つは、文四郎のふくへの『想い』。
それらが軸となり、父から受け継いだ文四郎の『生き方』が描かれていく。
そこに、藤沢周平文学の映画化には欠かせない殺陣が映画をピシッと引き締める」
-----あっ、そうか。殺陣もあるんだ。
タイトルだけ聞いてると、もっとのどかな感じがするけど。
「これがなかなか激烈。
いわゆる『痛みを感じさせる殺陣』。
この感覚は五社英雄監督の『雲霧仁左衛門』を観たとき以来だな。
血しぶきも派手に飛ぶし。
でもよく考えるとこの監督って『英二』でもそうだったもんな」
-----でも不思議なんだけど、あんまり人を斬ると
刀って斬れなくなるんじゃないの? 脂がついて。
ニャあんて、あんまりこんな話したくないけど。
「うん。この映画、そこもなかなかよく考えてある。
畳に何本もの刀を突き立てて用意しておいて、一本ずつ抜いて使うんだ。
ま、こういうのは原作にあるのかも知れないけどね。
そうそう、後半、文四郎とふくが夜の闇に紛れて
赤ちゃんを抱いたまま敵陣を突破するシーンがあるんだけど、
ハリウッド映画だったら、
いつか赤ちゃんが泣き出すんじゃないかというのを
サスペンスの小道具に持ってくるはず。
でもそうはしないところが日本的?」
-----皮肉っぽい人だな?気に入ってないの?
「いや、そんなことないよ。
この映画、俳優たちの演技もいいし、
時代劇としては及第点以上だと思う。
特に犬飼兵馬を演じる緒形幹太が秀逸。
蒼い狂気を湛えた怜悧な剣豪。
昔のチャンバラ映画で観た懐かしいイメージだ」
------先ほどテーマは『想い』と言ってたけど。
「うん。キャッチコピーの
『二十年、人を想いつづけたことがありますか』に凝縮されるように
映画は『想い』を描いている。
その告白がなされるシーンの市川染五郎と木村佳乃がいい。
ふたりの目に浮かぶ涙。
でも、それはまぶたいっぱいに広がるもの、決して落ちはしない。
(※ネタバレ注)
ラストはお互いの愛の確認が終わった後、去っていくふくを
湖に浮かぶ小舟の中で見守る文四郎を暖かい陽の中で捉えた遠景ショット。
やがて文四郎は小舟の中に身を埋める。
その顔は果たして泣いているのか、それとも?
岩代太郎のスコアが情感を湛えて、これも絶品としかいいようがない。
でも、これはほんとうにつらい映画だよ」
-----つらい?
「だって『文四郎さんのお子が私の子で
私の子どもが文四郎さんのお子であるような
道はなかったのでしょうか』なんて言われてごらんよ。
それに対する文四郎の答は、さすがにここでは書けないけどね」
(byえいwithフォーン)
※思わず見入ってた度


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主演は市川染五郎で、ヒロインが木村佳乃だっけ。
「うん。その二作は御大の山田洋次が松竹で監督。
でも今度は東宝。監督も『渋滞』『英二』の黒土三男ということで、
申しわけないけど、観る前はあんまり期待してなかったんだ」
-----その話し方だと、予想に反してよかったってこと?
「送られてきた案内やプレスでの評を見ると
やたらと『日本人の〜』を強調。
最近ブームの右回帰の風潮に乗った映画かと思ったら
そういうわけでもなかったね」
-----どんなお話なの?
「主人公は牧助左衛門(緒形拳)を養父に持つ牧文四郎。
寡黙ながら実直に生きる父を尊敬していた文四郎だが、
彼が15歳の時、父は世継ぎをめぐる派閥抗争に巻き込まれ
『謀反』の汚名を受けたまま切腹させられてしまう。
藩の命令で長屋に移り住んだ文四郎と母だが
数年後、筆頭家老・里村左内から名誉回復が言い渡される。
だがその間に、文四郎の幼なじみ・ふく(木村佳乃)が殿の側室に。
やがて子供を身ごもったふくは里に戻り、身を隠して出産。
そんな折り、文四郎(市川染五郎)は左内に呼ばれ、
ふくの子をさらってこいと命じられる。
罠と知りつつも、文四郎はふくの隠れ住む欅屋敷へ向かう....というような話だ」
-----ふむふむ。権力抗争の中で踏みにじられる個というヤツだな。
「そうなんだ。それだけを取り上げると
日本だけでなくどこの国でもある話になってくる。
でも四季折々の風景・風土がほんとうに見事に捉えられ、
その中で生まれるいくつものドラマを際立たせていく」
-----“いくつもの”って?
「一つは逸平、与之助といった子供時代からの仲間と文四郎との固い『友情』、
そしてもう一つは、文四郎のふくへの『想い』。
それらが軸となり、父から受け継いだ文四郎の『生き方』が描かれていく。
そこに、藤沢周平文学の映画化には欠かせない殺陣が映画をピシッと引き締める」
-----あっ、そうか。殺陣もあるんだ。
タイトルだけ聞いてると、もっとのどかな感じがするけど。
「これがなかなか激烈。
いわゆる『痛みを感じさせる殺陣』。
この感覚は五社英雄監督の『雲霧仁左衛門』を観たとき以来だな。
血しぶきも派手に飛ぶし。
でもよく考えるとこの監督って『英二』でもそうだったもんな」
-----でも不思議なんだけど、あんまり人を斬ると
刀って斬れなくなるんじゃないの? 脂がついて。
ニャあんて、あんまりこんな話したくないけど。
「うん。この映画、そこもなかなかよく考えてある。
畳に何本もの刀を突き立てて用意しておいて、一本ずつ抜いて使うんだ。
ま、こういうのは原作にあるのかも知れないけどね。
そうそう、後半、文四郎とふくが夜の闇に紛れて
赤ちゃんを抱いたまま敵陣を突破するシーンがあるんだけど、
ハリウッド映画だったら、
いつか赤ちゃんが泣き出すんじゃないかというのを
サスペンスの小道具に持ってくるはず。
でもそうはしないところが日本的?」
-----皮肉っぽい人だな?気に入ってないの?
「いや、そんなことないよ。
この映画、俳優たちの演技もいいし、
時代劇としては及第点以上だと思う。
特に犬飼兵馬を演じる緒形幹太が秀逸。
蒼い狂気を湛えた怜悧な剣豪。
昔のチャンバラ映画で観た懐かしいイメージだ」
------先ほどテーマは『想い』と言ってたけど。
「うん。キャッチコピーの
『二十年、人を想いつづけたことがありますか』に凝縮されるように
映画は『想い』を描いている。
その告白がなされるシーンの市川染五郎と木村佳乃がいい。
ふたりの目に浮かぶ涙。
でも、それはまぶたいっぱいに広がるもの、決して落ちはしない。
(※ネタバレ注)
ラストはお互いの愛の確認が終わった後、去っていくふくを
湖に浮かぶ小舟の中で見守る文四郎を暖かい陽の中で捉えた遠景ショット。
やがて文四郎は小舟の中に身を埋める。
その顔は果たして泣いているのか、それとも?
岩代太郎のスコアが情感を湛えて、これも絶品としかいいようがない。
でも、これはほんとうにつらい映画だよ」
-----つらい?
「だって『文四郎さんのお子が私の子で
私の子どもが文四郎さんのお子であるような
道はなかったのでしょうか』なんて言われてごらんよ。
それに対する文四郎の答は、さすがにここでは書けないけどね」
(byえいwithフォーン)
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山田監督とは違った味を頂きたいです。。。
同じ原作者の世界でも、
監督によってこんなにも違った映画になるという好例だったと思います。
いやあ、これは拾いものでした。
がちょ〜んさんにも、きっと気に入ってもらえると思います。
私は山田監督ならキャスティングも含めてどうなったかなぁなんて思いました。
せっかく2作撮られたので、藤沢3部作として山田監督にやって頂きたかった・・・というのは個人的な望みです(笑)
上の感想もいろいろです。
周平作品は、女性的なやさしさを感じるますが、氏の代表作品でテーマは青春映画として正義も貫かれていますね。
iinaとしては、おすすめの一本に押したいです。
お気持ち、よく分かります。
しかし、エンディングロールで席立つ人いたんですか?
最近はずいぶんと、マナーがよくなったと思ったのですが、
この映画でそれをやるなんて信じられませんね。
■ミチさん。
こんにちは。
山田洋次監督だったら、<ふたりの愛>と
<権力に立ち向かう個>、どちらを軸においたのか、
少し興味があります。
前者だったらこの映画よりもっとウェットに、
後者だったらもっとドライになっているかもしれませんね。
■iinaさん
ぼくも、この映画はおすすめですね。
ほんとうは、最初まったく期待していなかったんです。
山田洋次監督くらいの巨匠じゃなければ、
この世界は描けないと決め込んでいました。
黒土監督にあやまらなければ…。
テレビ・ドラマのラストもよかったけれど、
静かな余韻の残る映画のラストは秀逸だったと思います。
ただ少し残念だったのは、物語前半のテンポがやや緩慢で後半が端折りすぎたこと。
時間的制約があって仕方なかったのかもしれませんが、
風景描写は幾分控えてもよかったのかなぁと。
ぼくはテレビ・ドラマを見ていないので
なんとも言えないのですが、
どんな終わり方だったのか、気になります。
映画としては、ぼくも正直前半はあまりノレませんでした。
石田卓也が「固いな」、と感じたりして、前半は、自分もなぜか「まだか、まだか」と思ってしまいました。風景の映像は、きれいでしたが、小さくても「人間のいる」風景がよかったかな…などと考えたりしました。
ぼくは、風景はあまり印象に残っていないです。
あかん隊さんのおっしゃるとおり、
これは「人間」の映画だと思います。
特に、ラストは
「それでも、人生は続いていく」
あるいは
「そして、人生は続いていく」
という、
生きることそのものを描いた、
長く記憶に残るシーンとなっていたと思います。
キムタクが主演というニュースを観ました
そのために、これ監督しなかったのかしら?っと
ふと思えてしまった^^;;;
山田監督の高倉健とであったとき以来の主役の器・・・みたいなことばに
健さんかぁ〜・・・と変なところで同感
(ある意味カリスマみたいなもの?)
健さんは・・・どこまでいっても健さんだし、そんなとこが共通してるかも(笑)
うわあ、それは知らなかったです。
どんな感じになるんだろう?
ちょっと怖い気も…。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ubukata/20051010.htm
生方史郎さんの論評、拝見させていただきました。
演劇を始め芸術各方面に精通されている方とお見受けしました。
またよろしければお越し下さい。
文四郎とふくの場面、せつなかったですね。
ふくの美しさが印象的でした。
木村さん、すごくよかったです。
木村佳乃ってなかなか頑張ってますよね。
三池崇史監督の新作『ジャンゴ』でも
泥まみれで奮闘していました。