ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』

2012-08-30 11:00:06 | 新作映画
----『踊る大捜査線』って前作で終わりかと思ってた。
今回、副題に『THE FINAL』が入っているってことは、今度こそ打ち止め?
「おそらくね。
これまでテレビシリーズから続いていた
“俺たちで変えていこう”という青島(織田裕二)と室井(柳葉敏郎)の約束も、
ひとつの結実を見せるし…」

----ふうん。じゃあ、テレビからのファンも満足?
「少なくともぼくはね。
実はこの劇場版4作目は前作
『THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』とセットで考えられていたらしい。
いわゆる続きものということだね。
でも、それだったら、ぼくはつまんなかったと思う」

----どういうこと?
「この劇場版第一作『踊る大捜査線THE MOVIE』は、
犯人に小泉今日子を起用。
そこまではよかったんだけど、
映画版ということでスケールもアップ。
『THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』は、
そこに毒ガスなども加わり、
いよいよ犯罪は、刑事という個人の手を超えたものとなってくる。
だから、他の刑事ドラマ、
たとえば『交渉人 THE MOVIE 高度10,000mの頭脳戦』あたりと
似たような絵づくりになっていたんだ。
ところが、今回は、
派手な爆破もカーチェイスもなし。
でも、その分、“踊る”ファンを満足させる名台詞がボンボン飛び出し、
青島はよく走り、最後にはチャリで駆けずり回る。
そしてこのシリーズが教えてくれた
本店と支店の関係もじっくり描かれる。
組織の維持の前には個人は虫けらのようにつぶされる・・・。
それは室井でさえも太刀打ちできない大きな力。
それを象徴する、あるシーンでは、ちょっと涙が滲んだものね。
ネットシステムと肥大化する組織の前に、
青島、室井があまりにも無力に見えて…」

----ある意味、君塚良一らしい脚本だよね。
「おっ。そこなんだよ。
君塚良一の監督作『誰も守ってくれない』では、
ネットによって、ひとりの少女が追いつめられていく姿が描かれた。
『THE MOVIE』でネット犯罪を取り入れた彼としては、
実は、このネット社会を、あまりよくは思っていないということだろうね。
それは本作のオープニングにも表れている。
『なくもんか』に出てくるような商店街で繰り広げられる人情喜劇。
まるで、それはあの『男はつらいよ』の寅さんのよう。
話それるけど、
このシーンを観たとき、
ぼくは寅さんを思い出したんだ。
『男はつらいよ』はオープニングで寅さんの夢が描かれることが多い。
ここはそのパロディかと…。
そう、夢を見ていた寅さんが、ついに夢に見られる立場になったと・・・。
感慨深かったね。
この映画『THE FINAL 新たなる希望』は、
もちろん監督本広克行の手だれの演出もあるけど、
そういう、昭和怪奇的な君塚良一の思いが感じられてならなかったね。
テーマとして打ち出される“正義”にしてもそう。
“正義”が巧く機能しないことに対して
この映画の犯人たちは実力行使に出る。
でも、本来、“正義”、正しいと思うことは人それぞれに違う。
だからこそ、青島の次の言葉が生きてくる。
『正義なんてものは、胸にしまっているくらいがちょうどいいんだ』






フォーンの一言「『これは俺たちの事件だ』なのニャ」ぱっちり

※これでシリーズが終わっても文句はない度


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2 コメント

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こんばんは (ノラネコ)
2012-09-10 22:58:40
オマージュ大好きのこのシリーズですから、冒頭のあれは絶対に寅さん意識してますよね。
エンドクレジット最後の写真もなぜか唐揚げ屋の二人でしたし。
回を重ねる事に大きく、しかし拡散してきた印象があったので、最後の最後での原点回帰は良かったです。
巨大な隠蔽を阻止したお祝いが、ビールというちっちゃな隠蔽というさり気ない皮肉も君塚良一らしかったと思います。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2012-09-27 22:10:30
冒頭のあれは、やりすぎと思って最初はしらけたのですが、
寅さんだということに気づいた瞬間、
これはいけると、スイッチが切り替わりました。

>巨大な隠蔽を阻止したお祝いが、ビールというちっちゃな隠蔽

まさに、君塚良一の面目躍如ですね。
返信する

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