ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『フィクサー』&アカデミー賞感想

2008-02-27 10:44:09 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:Michael Clayton)

----これって、アカデミー賞にも
たくさんノミネートされていたよね。
結果はティルダ・スウィントンの助演女優賞だっけ?
「う~ん。これは大穴じゃないのかな。
少しビックリしたね」

-----えっ、どういうこと?
「その前に、他の賞についても少し。
作品賞の 『ノーカントリー』は、まあ大方の予想通り。
主演男優賞 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のダニエル・デイ=ルイス、
助演男優賞のハビエル・ハルデム。
このふたりは、共にスケールのでっかい“怪物”役。
あと、やはり意外と思われているのが
『エディット・ピアフ 愛の賛歌』のマリオン・コティヤール。
ここは激戦区だっただけど、
やはりこのヒロインも一種の“怪物”。
ティルダ・スウィントンもその流れだね。
これまであまりハリウッドが描かなかった役。
あっ。ここまでじゃないけど
やはりアカデミー主演女優賞を受賞した
『ネットワーク』のフェイ・ダナウェイが近いかな。
話は変わるけど、
『ヒトラーの贋札』が外国語映画賞を取って、
いよいよ意気盛んなドイツ映画だけど、
やはりこれはハリウッドの多くを占める
ユダヤ系の人たちの琴線に触れるということもあるのかも」

-----そんな中での『フィクサー』。
「うん。
このタイトルは止めてほしかった。
『フィクサー』というと、
どうしてもジョン・フランケンハイマーの名作が頭に甦ってしまう。
脚本はダルトン・トランボ。
主演のアラン・ベイツがアカデミー主演男優賞にノミネート。
今回のこの映画でそれが忘れられてしまわないかと心配」

-----へぇ~っ。そんな映画あったんだ。
ところでこちらはどういう内容ニャの?
「ここで言うフィクサーは
法律事務所に所属しながらも
決して表に出てくることはなく裏で仲介にたって交渉をまとめる
いわば“もみ消し屋”。
主人公は、そのフィクサーであるマイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)。
彼の今回の仕事は
製薬会社の弁護を担当する同僚の弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)が
良心の呵責に苛まされて、
事実の暴露を決意しようとするのを止める役目。
いつものように活動を開始したマイケルだが、
数日後にアーサーの死亡を知る。
かくして映画は、企業の隠蔽工作にとどまらぬ
予想を遥かに超えた巨大な陰謀に自らが巻き込まれていることに気づく…」

-----あれっ。ティルダ・スウィントンは?
「でしょ?
これが信じられないくらいに出番が少ない。
海外評でも、クルーニーやウィルキンソンの演技は絶賛されているのに、
スウィントンについての言及は少ない。
ただ、今回のアカデミー賞の流れから言っても彼女の役柄も“怪物”。
実は思っていたのと全然違っていて、終わってみて
なるほどあのときの“あれ”はそこからきていたのか…と分かったって感じ」

----う~ん。よく分からないニャあ。
「そうだね。
海外では『大統領の陰謀』『コールガール』『コンドル』など
70年代のスリラーを引き合いに出している。
この映画、実を言うと最初からクルーニーが狙われ、
アーサーの暗殺現場も描かれて、
その<闇>が観客に見える形になっている。
その分、ここではそれ以外の情報を喋るのは
抑えようと思ったわけ。
でも観た人の意見も聞きたいなあ。
そうそう、マイケル・クライトンが弟の借金に追われていて
自らもギャンブルにハマっているというのも
キャラクター作りとしてはオモシロかったね」


        (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ちょっと興味がわいたニャ」ぼくも観たい

※クルーニー、この役にあってる度

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19 コメント

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アメリカ・オフィシャル (gajumaru)
2008-02-27 19:55:20
いつも楽しく拝見させていただいております。
アメリカ・オフィシャルサイトのリンクが張ってあったので飛んでみましたが,HD-DVD一応発売されるんですね^^;
なんだか寂しい・・・
何で邦題を原題のままでなく「フィクサー」にしたんでしょうかね?ジュラシックパークの原作者と間違えるから?スペルが違いますね;;

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■gajumaruさん (えい)
2008-02-28 09:26:33
こんにちは。

コメントありがとうございます。

そうか、HDーDVD。そこには気づかなかったです。

ぼくは、この映画、
まだタイトルが『マイケル・クライトン(仮)』だった昨年11月に、
某誌に紹介記事を書いたことがあったのですが、
そのとき編集部から2008年公開映画の一覧表をいただいて、
てっきり
マイケル・クレイトンの伝記かと勘違いしていました(爆)。
返信する
こんばんは! (パピのママ)
2008-03-17 20:23:45
先日試写会で観てきました。
私には、ストーリーが綿密に練りこまれて、緊迫感にあふれ、全ての登場人物が魅力的に見えましたね。
もみ消しや、マイケルを演じたジョージが、交通事故のもみ消しの後、ティルダの仕向けた殺し屋による車の爆弾、あの時何故、丘の上にいる馬3頭に気をとられたのか?
それと、アーサーが殺される前の晩に、マイケルの息子ヘンリーから教えられた「王国と征服」の本の中の、黄色、ピンク、水色の線を引いてた箇所は何だったのだろうか?
製本コピーの領収書を見つけたのは、ラッキーでしたね。
ラストのどんでん返しのような、ティルダとの対決シーン(お金をゆする)は面白かったです。
返信する
■パピのママさん (えい)
2008-03-18 09:09:27
こんにちは。

丘の上にいる馬3頭-----
あそこは印象的なシーンでしたね。
静謐なあの情景のバックでまさかあんなことが起こるとは!?
ぼくは、この映画、
それ以外にもマイケルの家族や借金など、
サイドストーリーはオモシロく観れたのですが、
その分、分散された感じで
肝心のメインのお話があまりノレませんでした。
逆にメインのお話にもっと集中させて描く手もあったのかも…。
でも、いまの時代はそれだけじゃ持たないのかもしれませんね。
返信する
こんばんわー。 (minori)
2008-03-29 23:38:27
えいさん、こんばんわー。
なかなか深みのある映画でしたねー。
マイケルがなかなか興味深い人物だったので色んな方向から彼を見ることが出来た反面、確かにちょっと分散された感じはしましたよね。
馬三頭は画的にとても印象的でしたが、なぜあそこに降り立ったのか、これは後から解明するんだろう、と思いつつ過ぎ去り結局「あれは何だったんだ」と未だに思います(笑)あくまであれは単になんとなく降り立った、だけなんですかねー。

というわけでTB失礼しますね!
返信する
■minoriさん (えい)
2008-03-30 15:43:20
こんにちは。

馬三頭の謎…(笑)。
あの馬がいなければ、
この映画はまったく違う方向に行っていたわけで…。

最初に出てきたときは、
「?」という感じでしたが、
二度目に写されたとき、
なんとなく分かったような…。
社会の汚濁の中に生きていた彼にとって
あの馬の姿は心洗われると言うか、
凛とした空気の中で
ハッとくるモノがあったのではないでしょうか?

なんて、思ったりもしました。
返信する
えいさん、こんにちは~ (rikocchin)
2008-04-04 10:50:15
三頭の馬のことがみなさん気になっているみたいですね~
私も思いました・・・
まったく先入観を入れずに観に行ったので、マイケル・クレイトン自体のシチュエーションも知らずに見ていたこともあって、あの馬のシーンが時間をかけて印象的に映されていたので、違う展開を想像しながら観ていました・・・
脚本がトニー・ギルロイだから、きっとこれは計算尽くされた敵の罠だなっと・・・・
ところが、結局あれはそうじゃなかったし、アーサーの殺害のときに見せたような綿密なプロフェッショナルな仕事をしそうな敵が結構ドジだったので、その点ではちょっと肩すかしな感じもしないではないですけどね・・
頭脳明晰で才能もあるのに私生活では他人の借金のために自分の店を手放すことになってしまう事や離婚やギャンブルなどでひとつもいいことがない伏線を持った上でのアーサーの事件に巻き込まれる展開でのマイケル・クレイトンという人物像を描いているわけで、
フィクサーと言う職業をテーマにした内容ではないので、やはり邦題はフィクサーじゃないほうが良いような気がしますよね。
「王国と征服」の本がアーサーにとってどういう意味をなしたのかもう少しふくらませてくれたらもっと面白かったかもしれませんね~
返信する
こんばんは (ノラネコ)
2008-04-04 23:44:23
そういえばフランケンハイマーの映画にありましたね。
あれはトランボ脚本でしたか・・・
こっちの「フィクサー」はやっぱり「ノーカントリー」と比較してしまいました。
正統派のハリウッド映画だし、出来もとても良いと思うのですが、やはり時代の空気はこれじゃなかったという事でしょうか。
ティルダ・スウィントンは出番が少なかったですが、登場シーンの演技の密度は濃かったと思います。
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■rikocchinさん (えい)
2008-04-05 13:47:25
こんにちは。
鋭い!

そうそう、この映画は「職業」ではなく
「個人」を描いた映画ですよね。
タイトルの付け方はやはり違う。
そのまま人名でいった方がよかったと、
ぼくもそう思います。

「王国と征服」の本にしろ、
「三頭の馬」の件にしろ、
なんか歯がゆいって感じでした。
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■ノラネコさん (えい)
2008-04-05 13:53:40
こんにちは。
フランケンハイマーの映画は反骨新溢れた作品でした。
クライマックスでボロ泣きした最初の映画じゃないかなあ。

今年のオスカー・レースは
ダークな作品ばかり揃いましたね。
個人的には『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』が
見応え十分でした。
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