ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』

2006-08-12 01:16:19 | 新作映画
※ネタバレにつながる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも



----ここ数年、画家を描いた作品って多いよね。
でもこのニキフォルって人、知らなかったニャあ。
「ぼくも同じ。
でも、73年間の生涯(1985-1968)に
彼が残した絵画は約4万点もあるんだって。
ポーランド南部の町クリニツァで、
教会や宗教的イコンなどを数多く描いたことから
“アール・ブリュットの聖人”とも称されているらしい」

----ニャによ、そのアール・ブリュットというのは?
「はい。調べてみました。
提唱者はJ・デュビュッフェ
美術の学校などで専門教育を受けていない人々の作品を、
『もっとも純粋で、もっとも無垢な芸術であり、
作り手の発想の力のみが生み出すもの』であると評価。
精神病患者など、
社会的に隔離された人が多いらしい」

----と言うことは、このニキフォルも……?
「うん。彼は言語障害を抱え、文字の読み書きができない。
ただひたすら絵を描き続け、
それを路上で観光客にわずかな金で売って生活していたらしい。
映画は、そんなニキフォルと
役所の管理部の美術担当で画家でもあるマリアン・ヴォシンスキの関係を描く。
事務所の建物の一角に小さなアトリエに勝手に入り込んできて
好きに絵を描き始めるニキフォル。
しかも彼はマリアンの絵を『駄作だ』と批判し、
『お前は絵を描くな』とまで言う。
でもマリアンはニキフォルの言葉が真実と分かっているばかりか、
彼の絵にホンモノの芸術性を見出す。
このふたりの関係は、あるアカデミー作品と同じ。
さあ、なにか分かるかな」

----簡単だね。『アマデウス』でしょ。
「おっ、やるね。
ただ、この作品があの映画と違うところは
モーツァルトに対するサリエリにあたるマリアンが
最後までニキフォルの理解者であり、
彼の面倒のすべてを見ようとするところ。
ニキフォルが有名になると、自分の態度をころっと変えるマリアンの上司、
肺結核だと判明し、彼を追い出そうとするマリアンの妻。
でもマリアンは我が道を行くニキフォルに手を焼きながらも
創作の便宜を図り、サナトリウム入院の手続きを取ったりするんだ」

----なかなか感動的な実話だね。
「そのニキフォルがマリアンに伝授した絵の極意というのが
『色を決めるときは、まず色によく聞け』。
そして今際のときに、ある感動的な交流が起こるんだけど、
さすがにこれは観る人の楽しみを奪うから言えないな……。
それが事実だとしたら最高に泣けるエピソードなんだけどね」

----ふうん。でも映画としてのオモシロさが伝わらないニャ。
「まるで童話の中の町のような
赤と城の屋根の家が点在するクリニツァ。
その絵画的風景もさることながら、
最大の見どころはニキフォルを演じている女優、
86歳になるクリスティーナ・フェルドマンだろうね」

---えっ?ニキフォルって女性ニャの?
「(笑)いや、もちろん男性。
これは観終わるまで気づかなかった。
でも知らないで観た方がいいのかも……。
と言うことで今回は、ちょっと“ネタバレ注”を入れてみたわけさ」



          (byえいwithフォーン)


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