真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「制服絶叫 いんらんパニック」(1989/製作・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:平柳益実/製作:伊能竜/企画:大橋達男/撮影:稲吉雅志/照明:田端一/編集:酒井正次/助監督:笠井雅裕/監督助手:小原忠美/計測:佐藤和人/撮影助手:西庄久雄/照明助手:金子高士/スチール:津田一郎/美粧:鷹嶋青子/美術協力:佐藤敏宏/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/音楽:西田一隆 主題歌:“ピンク・ポリス・タイフーン”作詞:川上謙一郎・作曲:西田一隆・唄:荻野目翔子・山口麻美・秋本ちえみ/出演:荻野目翔子・山口麻美・秋本ちえみ・北村舞子・外波山文明・ジミー土田・沢田幻士・中谷慎一・間信博・山本竜二・池島ゆたか・橋本杏子)。
 秘密結社のアジト感覚で、地図の掲げられた暗い一室。ボルサリーノな扮装のハシキョンが、煙草を燻らせ部下の報告を受ける。手下AとBとC(特定不能な沢田幻士・中谷慎一・間信博/声は順に軽く声色を変へた外波文・山竜・池島ゆたか)が城南・城東・城北各地区の地上げの完了を報告、但し残る城西地区は、移転構想が中途で頓挫した月見署が邪魔で手をこまねいてゐた。菊の御紋を懼れもしない、女ヤクザの有田かのこ(橋本)が地図上の月見警察署にキスマークをつけると、トーストを咥へた荻野目翔子が婦警の制服を着ながら走る、いはゆる「遅れちやふーッ><」なロングにビデオ題「ピンク・ポリス・タイフーン」でタイトル・イン。クリシェもダサさにも一瞥だに呉れるでなく、ポップなイメージを一直線に叩き込んで来るナベの、多分当人は意識してゐまいダイナミズム。異動初日に遅刻した桜田未来(荻野目)が、建物は案外ちやんとしてゐる月見警察署に到着するや、男の悲鳴と銃声が。作業着のジミ土が逃げて来て、追ふ掃除婦ルックの秋本ちえみはリボルバーを振り回す。未来に署長室を尋ねられた秋本ちえみは、鋭い視線で振り向きざま署長室の札を撃ち抜き、なほ一層未来の度肝を抜く。この秋本ちえみの振り向きざまのズドンが、量産型娯楽映画のそれこそ果てしない試行の果てに紛れ当たつたか弾き出された、嘘みたいにカッコいい奇跡の名カット。署長室に入れば入つてみたで、咥へ煙草の見るからラーメン屋の出前持ちが署長の鬼俵熊八(池島)。そこにかのこが堂々と乗り込んで来た旨を伝へに飛び込んで来た婦警の倉沢ひとみ(山口)も、ウェイトレスの制服。一同安月給だけでは食へずにバイトしてゐる―熊八のバイト先は満珍軒―とかいふ寸法で、秋本ちえみはオールドミスでトリガーハッピーなこれでこの人も婦警の黒鉄操、ジミー土田は月見署のメカニック・佐々木九だつた。
 配役残り外波山文明は、実は賃貸物件である月見署の地権者・大仁好夫。作中一番いいオッパイの北村舞子は、かのこの懐刀で黒マントで平然と外を出歩く小山久美子。腕は確かな殺し屋らしいが、後に逃走する未来・ひとみ・大仁を追跡襲撃する件では、戯画的なトマホーク、トマホーク・オブ・トマホークともいふべき大斧を振り回す、だから黒マントで。御馴染の退行芝居と、恐らく誰か当代のツッパリ系アイドルの口跡を真似たと思しき山本竜二は、熊八からも平さんと一目置かれる月見署刑事・平塚松太郎。
 店子を射んと欲すればまづ大家を射よとばかりに、大仁を狙ふかのこ一派と月見署が激突する形で物語が進行する渡辺元嗣―勿論現:渡邊元嗣―1989年第二作。昨今ではすつかり常態化してゐるともいへ、AV畑のアイドルを主演に擁し、初めからビデオと連動した企画所以の―幾分―潤沢なプロダクションであつたのか、全員―橋本杏子は一人遊びに戯れるのみで絡みはしないにせよ―濡れ場のある女優部が豪華五人態勢。尤も上へ下へと終始ガチャガチャ大騒ぎしてゐる内に、それぞれジミー土田と池島ゆたかとしつかり絡む秋本ちえみと北村舞子以外の三人は、何れもノルマごなしに終つてしまつた感は否めない。とりわけ、何時まで経つても脱ぐ素振りを窺はせなかつた主演女優の温存ぶり、より直截にいへばさんざ出し惜しんだ末の、持ち腐らせぶりは結構考へもの。一見なかなかこれといつた相手役の気配すら見当たらなかつたのが、よくよく考へてみるまでもなく、初期ナベシネマにあつて、未来が結ばれるのは―周囲にさういふ名前の男がゐれば―松太郎と相場は決まつてゐる。さうはいへ、その導入はあまりにも唐突も通り過ぎて粗雑で、そもそも、拉致された大仁とひとみの捜索に未来と松太郎が向かふ。事そこに至る過程も踏まへると、いはゆるバディものの当事者二人が結ばれる展開を目したものなのかも知れないが、それにしては山竜を何時も通りのメソッドで好きに暴れさせ倒した結果、それらしき雰囲気の欠片さへ醸成されない始末。全体的な基調としては如何にもナベ的なチープで雑多な賑々しさでもありつつ、裸映画的にはビリング頭に開いた大穴に、如何せん首を縦には振り難い釈然としない一作ではある。

 最後によく判らないのが、尺がjmdbのデータでは58分とあるのに対し、今回DMMで見たオーラス主題歌が流れるバージョン―別ver.があるのかどうかも知らないが―だと十分弱長い、即ち一時間も優々跨ぐ。節穴の素人目には、58分で収めるには相当ズッタズタに切る羽目になるやうに映る。果たして、平成元年の小屋では“ピンク・ポリス・タイフーン”が聴けたのであらうかなからうか。未来が学生時代は女の子だけでロックバンドを組んでゐた、とひとみに過去を語る件は、PPTへの伏線と思へなくもないものの。


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