真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「悶絶 ほとばしる愛欲」(2006/製作・配給:国映・新東宝映画/製作協力:Vパラダイス/監督:榎本敏郎/脚本:佐藤稔/企画:朝倉大介/プロデューサー:衣川仲人・森田一人・臼井一郎/撮影:前井一作/編集:酒井正次/音楽:鈴木治行/助監督:永井卓爾/出演:麻田真夕・水原香菜恵・華沢レモン・青山えりな・しのざきさとみ・佐々木麻由子・伊藤清美・吉岡睦雄・下元史朗・中村方隆・伊藤猛・金田敬・川瀬陽太・佐野和宏、他)。
 第3回ピンク映画シナリオ募集準入選作品の映画化、とのこと。因みに第2回入選作は、「SEXマシン 卑猥な季節」(2005/監督:田尻裕司)。矢張り箸にも棒にもかからないことに関しては、ここでいつてしまつては実も蓋もない。
 芸がないにもほどがありもするが、今回は、今作の逐一を概ね一通りざつとなぞつてみることとする。さうすることが伝へんとする意を尽くすに最も適当と考へるものであるからである、といふか寒くてあれこれ工夫を凝らすのが億劫だから、といふのは触れてはならない内緒である。まづそのことを、最初に一言お断り申し上げる。
 夏の東京、会社員の千代原六(吉岡)がくたびれた顔で安アパートに帰宅する。ポストの自分の名前の下には、消された三七子といふ名前が(こんな感じ<三七子)、クーラーで一息つく。佐々木麻由子と金田敬が女将と大将の馴染みの居酒屋「富久」で、六はシュクさん(下元)、遅れて現れたシュクさんの年の離れた彼女・中村博美(華沢)と酒を呑む。会話の中で、六を捨て穴田(佐野)の下へと走つた堂前三七子(麻田)は、結局穴田が女房とヨリを戻してしまつた為、穴田とも別れたのだといふ。その後の、三七子の消息は知れなかつた。ここで早速明らかになる今作の特徴は、登場人物の誰と誰が付き合ふだの、別れただの、どうしたかうしたといつた人物設定が、七、八分目くらゐでも十分に伝へられさうなものを、十にも十一にも懇切丁寧に台詞と尺とを費やして一々語られる点。佐藤稔といふ人は、ピンクの観客は余程の馬鹿だと思つてゐるらしい。その癖、後に所々で出て来る何かを極めたいらしい思はせ振りな決め台詞は、説明が足りないのか根本的に仕方を間違へたのか、何がいひたいのだかサッパリ判らない。
 三七子が馬自体から好きで、強くもないのに何時も馬券を買つてゐたニコミホッピーといふ競走馬が、二月のレース以来久し振りに勝つてゐた。六は、ホテトル嬢(青山)を買ふ。初め美奈子と名乗つてゐた女は、本名は幸子であつた。ここでの青山えりなは、もうとんでもなく可愛らしくて素晴らしい。濡れ場要員の至高として、2006年度の助演女優賞―何の?―の最強候補である。
 六は道端の弾き語り(川瀬)の歌に耳を傾ける。男の意地による別れ、を歌つた曲に触発され、たのか?六は三七子の郷里を訪れてみることにする。ここの前後がどうしても繋がらない、やうな気がするのは気の所為か。男の意地による別れを歌つた歌と、姿を消した昔の女を田舎にまで訪ねて行く男、どう受け取つてもシーンの前と後ろとがちぐはぐではなからうか。
 六は田舎駅に降り立つ。駅員・小林(伊藤)に尋ねてみたところ、かつて乗つたこともあるバスは廃止されてゐた、ことは後に例によつて会話の中で語られることで、このカット自体は甚だ説明不足。どうにも榎本敏郎の映画には、少し気を許すと直ぐに脇の甘い部分が散見される。
 どうにか三七子の自宅に辿り着くが、誰も居ないやうだ。そこに車で現れた三七子の友人・山本恵美(水原)から、六は三七子が四日前に事故で死んだことを聞かされる。恵美の車で、二人は三七子の両親を探す、事故現場には居なかつた。六も一度皆でバーベキューをしたこともある、三七子の父・善太郎(中村)が開いたキャンプ場へと向かつてみると、善太郎は妻、即ち三七子の母・町子(しのざき)とダンスを踊つてゐた。又素人脚本家、といふか国映が仕出かしたのかと思つた。社交ダンスが趣味の善太郎と町子は、三七子がニコミホッピーで当てた金で買つて呉れた衣装を着て、踊つてゐたのだ。ギリギリセーフといふところか、セーフなのか?その木に接いだ竹は。
 一同は堂前家に戻り、線香をあげる。恵美がいい写真、と褒める三七子の遺影は、光が当てられキチンとは映されない。寿司でも取らうかといふ両親の誘ひを断り、六と恵美は善太郎から土産の西瓜を受け取りつつ堂前家を早々に立ち去る。取り残された形の善太郎がフと気付くと、六は三七子の遺影にニコミホッピーの馬券を捧げてゐた。
 恵美のスナックで、沢庵をつまみに六と恵美はビールを飲む。とそこに、店は休みなのに小林が訪れる。小林は、恵美の別れた夫であつた。恵美は、三七子の両親を探す途中で家には立ち寄るものの渡しそびれた、別れた旦那の両親に世話して貰つてゐる息子の為に買つて来た花火を、小林に託す。六と恵美はセックスする、どうでもよかないが、途中シュクさんと博美の濡れ場を申し訳程度に挿みつつも、六が電車に乗つてからここまでの、色気もなければ特段面白くもない件が延々長い長い。個人的には感想を書くつもりで決死の覚悟で観てゐたものであるから、不思議なことに寝落ちることもなく辿り着けたものではあるが、普通にピンクを観てゐるやうな、あるいはより直截には特段観てなどゐないやうな観客は、とつくの昔に撃沈してしまつてゐようと思ふ。
 次の朝、六が恵美のスナックを後にすると、そこには仁王立ちの小林が立つてゐた、六は逃げるやうに立ち去る。ここでの伊藤猛は凄まじく怖く、どうなることやらと嫌な期待をしてゐると、恵美が元夫の尺八を吹きながら―過去に恵美が作つた―浴衣が体に入らなくなつた息子の為に、新しい浴衣を作つて呉れないかといふ小林に、「浴衣なんて、何時でも作れるんだけどね・・・」と、何を比喩してゐるつもりなのだかまるで伝はらない決め台詞を極める、決まつてはゐないのだが。ここでの恵美と小林との絡みは、唐突といへば唐突。
 六は東京に戻り、今度は伊藤清美が女将の銀河系ではなく居酒屋で、ニコミホッパーのレースをTV中継で見る。店には、穴田も居た。二枠のニコミホッパーは、いいところまで行くものの騎手が落馬して負ける。ニコミホッパーを買つてゐた穴田は、普段は何時でもどんなレースでも買つてゐる三七枠を、この時は買つてゐなかつた。六は西瓜も捨て去るやうに残し、店を走り後にする。六の残した西瓜が、浅草の街に転がる。六は、仙台に転勤することになる。三七子が買つたものであるエアコンを、六はシュクさんに譲り渡す。シュクさんが博美と外したエアコンを、悪戦苦闘しながら運んで行く姿がラスト・シーンである。

 何が解せないといつて今作に於いて最も激しく疑問なのは。かういふことをいふと元も子もない難癖を映画につけてもゐるやうではあるが、そもそも、三七子が死んでゐなければならない、少なくとも作劇上の必然性が必ずしもあるのか、といふ点である。六が姿を消した三七子を郷里へと訪ねてみたところ、あへてかういふいひ方をすると偶々三七子は死んでゐた。ただそのことは、六が黙して語りもしないゆゑ、東京の人間は穴田も、シュクさんも、誰も知らない。シュクさんは、東京を離れる六に、三七子を見かけたら伝へておくからと、六の仙台の住所を尋ねる。別にそれで、何ら問題もないのではないか。三七子は誰にも行く先も告げずに、何処かに姿を消した。又何時か戻つて来るかも知れないし、もう戻つては来ないかも知れない、それで何故構はぬのかといふ気が強くする。三七子の郷里での、殆ど面白くもない割には意味もさして感じられぬ、その癖に延々とした一連の為だけに、単にさういふ筋書きなので、三七子には死んで貰ひました、さういふ方便しか感じられないのである。それは、怪獣映画に怪獣が出て来るのとは訳が違ふ。
 そこで更に何が最も問題なのかといふと、その為、一応濡れ場もあることはあるのだが、三七子が、即ち麻田真夕が何度かある細切れの回想シーンにしか銀幕上に登場しないのだ。三七子の名前だけならば、劇中の会話の中に頻繁に現れるものの。総尺としては、五分にも満たないであらう。尺の長さだけの単純評価ならば水原香菜恵が、ピンクとしての濡れ場のヒット・ポイントも考慮すれば、華沢レモンが主役のやうなものである。暴論覚悟で敢ていひ切つてしまふと、榎本敏郎の映画なんて、傑作「痴漢電車 さはつてビックリ!」(2001)、良作「人妻出会ひ系サイト 夫の知らない妻の性癖」(2002/脚本は共に河本晃)を除いては、要は出来不出来は最早さて措き、とりあへず麻田真夕が普通に撮られてあればそれでひとまづはオッケー♪な部分も多分にあるといふのに。といつたところで、麻田真夕との出会ひ以降、榎本敏郎の前二作以外の映画といへば一本きりしかないのだが。ともあれ、最強の飛び道具を失つてしまつては、殆どそこで万事は休する。それでゐて、東京に戻つて来てからの六の描写で、六が再び川瀬陽太の弾き語りを聴きに行くやうな無駄な一幕を欠かさない辺りが、榎本敏郎ならではといへば榎本敏郎ならではでもある。
 キチンとは映されない三七子の遺影も、初めからいい写真なんぞ撮れてはゐなかつたのだ、としか、この際には思へない。


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>硬漢 (ドロップアウト@管理人)
2017-07-21 21:47:15
 おお、久し振りのスパムだ!   >消せよ
 
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