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真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ももいろ絵本 イッてみよう、ヤッてみよう!」(2017/制作:VOID FILMS/提供:オーピー映画/脚本・監督:山内大輔/撮影監督:田宮健彦/録音:大塚学/特殊メイク・造形:土肥良成/特殊メイク・造形助手:新井衣莉果・鈴木雪香/編集:山内大輔/音楽・効果:Project T&K・AKASAKA音効/助監督:江尻大/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:秋山太郎・鎌田輝恵/スチール:本田あきら/協力:北町アーケード商店街/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:涼川絢音・川瀬陽太・加山なつこ・ほたる・森羅万象・津田篤・和田光沙・浅場万矢・太三・鎌田一利/エキストラ協力:他一名、川崎紀里恵・中野未穂・しじみ軍団、もう一名)。出演者中、浅場万矢と鎌田一利は本篇クレジットのみ、オープニングで飛び込んで来るクレジットに不意を突かれる。
 開巻はクレヨンで描かれた、泣いてゐるお姫様。以降全篇を貫く童話が起動、お城に帰る途中怪物に攫はれたお姫様は、以来怪物の館で暮らしてゐた。ペットショップの店先、兎の入れられた籠をガスマスクにロリータ・ファッションの、然れども少女ではなく成人の女が覗き込む。北町アーケードの表を横断したガスマスク・ロリータことミカヨ(涼川)は、一軒家に帰宅。玄関上つて左手の和室の障子には、“ユリ子が寝てゐます”の不穏な筆致の注意書きが。そこはミカヨにとつて、“入つちやダメな部屋”だつた。赤いランドセルも転がる、家畜のの如き見るからキナ臭い一室挿んで、一軒家の主・シズエ(ほたる)が、電話で伊藤和子の殺害を―和子の―姑から請け負ふ。買つて来た安コーラとスナック菓子を手に、ミカヨはシズエの息子・タカシ(津田)が引きこもる部屋に。異形の蛙を飼ふタカシはミカヨを犯し、その間もミカヨは、怪物に苛められるお姫様が助けに現れる王子様を待ち侘びる、クレヨンを走らせ続けた。和子(浅場)を三沢(森羅)とのコンビで無造作に殺した吉井知治(川瀬)は、血塗られた下着のまゝシズエの店・パブスナック「キャッスル」に。三沢相手には死ぬ死ぬとよがり狂つたシズエが、吉井に対してはさして燃えず。キャッスルのホステス・セツコ(加山)にも、ハゲでデブの三沢の方がモテるのに劣等感を拗らせた吉井は、カウンター席で三沢をメッタ刺す。
 配役残り和田光沙は、十八年前に起こつた当時小学一年生の佐藤ミカヨちやん行方不明事件を伝へるTVレポーター。とかく物騒なネタばかり担当した挙句、恐らく殉職する、一旦。鎌田一利は、太三ファースト・カットの露払ひを務める白杖の男で、太三が、三沢の代りにシズエが連れて来た、吉井の新しい相方・小金井太郎。五歳の子供も含めての、一家殺しで十五年服役しての社会復帰、裏だけど。流石に子供は殺せないとする吉井に対し、小金井曰く“命は皆平等だ”。高橋がクライアントの白プッシャー始末に、二人で高架下に向かふ。その他エキストラ部隊はほかにそれらしき人影も見当たらないゆゑ、概ねキャッスル店内要員か。吉井が三沢を完全にコロさうとする惨状を、悲し気に見やる姿がピンで抜かれるホステスは川崎紀里恵。暗い画に弱い前田有楽の映写では、しじみを確認出来ず。それとこれキャッスルは、物件的にはステドだよね?エキストラ隊女優部は誰か一人、後ろに回つたタイトル・イン直後のオーラス、バラシ部屋の片隅にてライズする怪人物、のライズ前を兼務してゐるやも、涼川絢音でなければ。またこの多義的に色恋沙汰貞子も彷彿とさせるオーラス・ライズ(大絶賛仮名)がよく判らん、ユリ子は部屋の外に出られる状態にはないのでは、シズエが和子をバラす際には既にそこにゐるし。改めて後述するが山内大輔はどうして斯くも、狐につまゝれるやうな映画の撮り方しか出来ないのか。
 前作「ぐしよ濡れ女神は今日もイク!」(朝倉ことみ引退記念作品)でひとつのピリオドを打つた、山内大輔2017年第二作。吉行由実が周年記念作「恋するプリンセス ぷりんぷりんなお尻」(2016/北京八と共同脚本/主演:羽月希)を漫然と持て余すのを尻目に、囚はれの姫君を、白馬に跨りこそしないものの王子様が救ひだす物語をまんまと編んでのけた。といふのは、為に吹く与太として。
 外出時にはガスマスクを装着する、心が少女どころか幼女のヒロイン。尋常でないおどろおどろしいスメルを爆裂させ続ける、開かずの間のマクガフィン。ピンク離れした死体処理描写も撃ち抜いての、人の命を喰ひものにする者共。女の裸に鼻の下を伸ばして垂涎しようだなどと、邪気のない下心は陰惨な世界観の前に、無惨に粉と砕かれる。ピンク映画的にはある意味ストイックなのも通り越した一種のダンディズム、あるいはより直截には不誠実に関しては、この期に難じるだけ野暮といふもの、初めからその手の映画ではない。その上で、プリミティブな生命力と殆ど同義の、吉井の粗野な戦闘力は案外痛快で、シズエと三沢が偶さか心を通はせる一幕は、高い空に抜ける効果的なロケーションの力も借り、クレヨン臭さと血の匂ひの濃厚な地獄絵図に一筋の風を通す。既にそこそこ以上の、映画的興奮も兎も角。無体な非業の死を遂げたミカヨの怨念が、宇宙光線となつて降り注ぐ。レス・ザン・ミニマムなバジェットを技術と気概とで華麗に覆す、ピンク史上最大級の超風呂敷をカッ広げた世界破滅エンドには、途轍もない映画を観たと小屋の椅子の上で引つ繰り返るほどの衝撃を受けた。かと、思つたのに。前作で引退記念作といふジャンルを感動的に完成させたのも束の間、折角仕損じた大蔵上陸作「欲望に狂つた愛獣たち」(2014/主演:みづなれい)を挽回する絶好の好機であつたにも関らず、どうしても山内大輔は、真直ぐな作劇が嫌で嫌で仕方がないらしい。些末な作家性とやらに拘泥するあまり、エモーションの大魚をみすみす釣り逃がしてゐるやうにしか映らないのだが。あるいは寧ろ、前作に関しては朝倉ことみの花道を飾る前提が、一種の効果的な制約として機能したとでもいふ寸法なのであらうか。前作でひとつのピリオドを打つたと口火を切つておいて、我ながら筆の根も乾かぬ内にこの御仁全然変つてない、ビリングの頭が別の名前になつただけだ。
 備忘録< 三沢は実はシズエ元夫。宇宙光線で死者がゾンビ化する世界破滅エンドを引つ繰り返して、ミカヨと吉井でキャッスル営業中。オーラス・ライズは(確か)左目に眼帯を当てた涼川絢音


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