真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女囚701号 さそり外伝 第41雑居房」(2012/製作:株式会社竹書房・新東宝映画株式会社/配給:新東宝映画株式会社/監督・脚本:藤原健一/原作:篠原とおる『さそり』《小池書院》/企画:加藤威史・衣川仲人/プロデューサー:福原彰・一力健鬼/撮影・照明:田宮健彦/録音:高島良太/音楽:與語一平/衣裳協力:野村明子/ヘアメイク:ユーケファ/特殊メイク:征矢杏子/ガンエフェクト:近藤佳徳/スチール:中居挙子/編集:石井塁/CG:A&N T2 愛宕敏行・新里猛作/助監督:冨田大策・内田直之・山田勝彦/撮影助手:河戸浩一郎/メイク助手:渡辺涼心/制作:田中尚仁・伊藤雅仁/演出応援:加藤学/制作応援:松林淳・浅木大/ロケ協力:小山町フィルムコミッション支援室/制作協力:ANGLE/出演:葵つかさ・川淵かおり・篠原杏・倖田李梨・青山葵・晃田佳子・若林立夫・佐藤良洋・佐藤日出夫・塚越甲斐・波田野実・伊藤雅仁・大江直美・玉野悦子・久田真美子・渡辺利江・田中尚仁・松林慎司・清水大敬・川瀬陽太)。出演者中、塚越甲斐から渡辺利江までは本篇クレジットのみ。
 新宿の裏通り、ヤクをスカジャンの巨漢(不明)と売買する川瀬陽太と、脱走した女囚701号、通称“さそり”こと松島ナミ(葵)。ナミを追ふ刑務所所長・神崎(清水)―各種資料には神田とあるが、前外伝の正統な続篇である以上、神崎ではないのか―に刑務官の沖崎(若林)、更にはやんごとなき筋から遣はされた女ハンター(笑)の鬼頭京子(川淵)が交錯する。出刃を抱へ潜むナミを川瀬陽太は一旦見逃しつつ、ナミと神埼・沖崎が開戦。甚だトッ散らかつたカット割りで、ナミは神崎の左目を潰しなほ逃亡。今度は銃を持つた鬼頭に追ひ詰められるも、川瀬陽太が投げた空缶のアシストを受け、手錠で繋がれた鬼頭の左手を前腕部中程で切り落としその場を離脱する。正確には離脱する前に、川瀬陽太と目が合つたナミのストップ・モーションにタイトル・イン。墓地にて、手錠の鎖を石打ち破壊しようと悪戦苦闘するナミに、借金持ちの運び屋・村尾大輔(川瀬)が改めて接触、手慣れたピッキングで鍵を外してあげる。村尾のスナック「ダリア」に転がり込んだナミは、虐げられし者への優しさを滲ませる村尾と忽ち男女の中に。一方、御馴染み非人道的な女囚刑務所。何故か左袖を丸々ブラブラさせる鬼頭に頭ごなしに押さへつけられた神埼と沖崎は苦汁を舐め、第41雑居房では、どうも造形的に美雪とは別人ぽい瀬戸(倖田)、友咲ナミと同じお歯黒ポジションの尾根(晃田)、メガネと関西弁がセクシーな大塚(青山)。そしてナミに同性愛的な思慕を募らせると思しき―百合描写はなし―木田由紀(篠原)が、さそりの強制帰還を待ち構へてゐた。村尾を動かすヤクザ・佐川(江藤保徳を太らせたやうな佐藤日出夫)の顔見せ挿んで、距離を深めたナミに村尾は、南の海での全てをリセットした生活に誘ふ。村尾が再び新宿まで銃を運びに足を伸ばす中、ナミがカウンターに入るダリアに来店した佐川は素直に下心を起動し、何時の間にかさそりの潜伏先を掴んだ鬼頭も、ダリアを目指す。
 抜群の発声を披露した上でのイイ死に様を披露する佐藤良洋は、常識的な刑務官・山森。残りの配役はダリアで燻るアンチャン客とダリアを目指す鬼頭の連れに、女囚・看守要員。松林慎司と田中尚仁は、前作のバンクかも。
 さそりの、将来の首相候補のドラ息子を殺害した咎が挿入込みで語られることから、色々暗黒な第一作「女囚701号 さそり外伝」(2011/主演:明日花キララ)とダイレクトに連続した外伝第二弾。新東宝のお盆映画が、年を跨いだ黄金週間にやつて来たものである。何故か、従来新東宝新作が県内最速の地元駅前ロマンは、依然沈黙を続けてゐる。それはさて措き、ナミが大幅に幼くなつた点に関しては、葵つかさの“シリーズ最年少ヒロイン”はポスターにも謳はれる売りであるゆゑ、等閑視するべきだ。前作は商業映画がこんなにも見えないものかと、驚かされるほどの漆黒に塗り潰された画面に頭を抱へたが、今作、もとい今回の衝撃は、画期的なまでに派手にワープするプリント。具体的にいふと、ダリアを目指す鬼頭に続いて、いよいよナミに手を出さうとする佐川、の次のカットがいきなり神崎で、鬼頭は上級刑務官(?)として女囚刑務所に凱旋、ナミも既にトッ捕まつてゐる。終盤回想されなくもないとはいへ、鬼頭が村尾を虐殺し、その罪をナミに着せる件が丸々飛んでゐる。殺害前の村尾の足下に転がるシート包みの中身と思しき、佐川を始末したのが誰なのかも最早前田有楽で観た我々には判らない。現に、七十分ある筈の元尺に対し、上映時間も五分前後短い。小屋で戦ふ以上、時にはどうしやうもない厄災につき話を先に進めると、スタイリッシュに都会の闇に沈んだ川瀬陽太がカッコいゝ前半と、義手の仕込みブレードなどといふ頓珍漢なギミックまで繰り出し、ダイアン・ソーンの御存知イルザばりの底抜け衣装を着せられた川淵かおりが腰の据わらないアクション演出で大暴れする、死屍累々闇雲スラッシュな後半。二本の全く別の映画を無理矢理直結したかの如きへべれけな構成が、確かにといふか別の意味でといふか、兎も角兎に角“外伝”感は漂はせる。そもそもが、素材的には元気系の本来快活な美少女なのではないかと思はせる、葵つかさが清々しくさそりらしからぬ直截にいふならばミス・キャストも、否応なく外伝臭を加速。再見して辿り着いた最大の難点は、瀬戸に磔にされ嬲られるナミが見せる、完全に受けの表情。如何なる状況にあつても不屈のプロテスト・ヒロイン、それがさそりなのではなかつたか、これは藤原健一の明確な演出上のミスであるやうに思へる。逆に、ビリング順に篠原杏・倖田李梨・青山葵らは尺的にすら主演女優を喰はんばかりの活躍を見せるのもあり、結局誰が主役なのだか実質的にはよく判らない仕上がりであるものの、無印外伝よりはまだマシといふ以上には何となく纏まつてゐなくもない辺りがある意味藤原健一らしいのか、何とも掴み処のない一作ではある。

 付記< 今日から二週間、漸く駅前ロマンに着弾する(2013/7/19)
 再付記< CG部セカンドに、新里猛作の名前があつた


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