真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「菊池エリ 美乳の喘ぎ」(昭和61/製作・配給:新東宝映画/監督:細山智明/脚本:鴎街人/撮影:志賀葉一/照明:守田芳彦/音楽:浦島計画/主題歌:秋山未来『かき消せないBROKEN HERAT』/出演:菊池エリ・橋本杏子・藤村真実・秋山未来・中村京子・松田知美・田代葉子・池島ゆたか・杉本健一・森田豊・平地宏士・松本裕治・中野D児・ドクター南雲・江崎哲朗・おじじ・津田まさごろ)。脚本の鴎街人は、細山智明自身のペンネーム。
 友人・百合子(多分橋本杏子)の紹介で、エリ(菊池)は個人マネージャーの影田(池島ゆたか>当たり前だが恐ろしく若い!)を紹介され、ヌードモデルの道に入る。抜群のプロポーションと素直な性格とで、AVにも出たエリが忽ち人気者になるのと同時に、情の多い影田は、次第に何時しかエリに想ひを寄せるやうになる。ところがそんなある日、影田は宅急便配達を装つたポリス(ドクター南雲)のお世話に。容疑は児童福祉法違反、影田が抱へてゐたモデルの一人が、年齢を偽つてゐたのだ。挙句にその娘はおクスリにも手を出してゐたため、影田は一時拘留される羽目に。その間に影田が抱へてゐたモデルは全て、フリーになるか余所の事務所に移つて行く。エリも、かつてフリーになる前に影田が身を置いてゐたプロダクションの所属になる。その後、影田が娑婆に戻つて来たことを耳にしたエリは、不義理を果たした形になつたことを気に病む。ガード下の人生相談屋(津田)の勧めに従ひ、エリは影田の家に詫びに行く。そんなエリを、影田は許す。
 ええと、仕方がないので―何が仕方がないのだ?―最後まで来てしまつたが、この映画、要はそれだけの物語である。これは決して、腐してゐる訳ではない。観終つてから気がついたのだが、写真を撮影する件での裸や、同じくAVの撮影現場での絡みはあるものの、エリがプライベートでセックスをするシークエンスといふのがない。ラスト・シーン、影田がエリを許した後に、二人が結ばれるクライマックスといふのが設けられてあつて然るべきかとも思はれつつ、単に尺の都合であるだけやも知れぬが、それもない。ただそれも、映画にいい余裕、あるいは余韻を残す効果になつてゐると思はれる。といふか、幾ら何でも、尺に負けて主演女優の締めの濡れ場を端折るなどといふことがあるものか。ここは矢張り、細山智明は意図的にエリのリアル情交は描かない選択を下したに違ひあるまい。
 細山智明といふ人はjmdbによるとここ十年は、少なくとも同じ名義では仕事をしてゐないやうなので、どういふ監督なのかサッパリ判らないが、あちらこちらでロケを張り、同じ部屋も調度品を全く変へ巧みに別の部屋に見せかけてみたりと―バレてゐるぢやないか、といふツッコミは禁止だ―どうといふこともないストーリーを丁寧に撮り上げてゐる。時に妙に弾ける演出にも、真心が込められる。黙つて観てゐる分には紡がれる映画に酔はされて、お話自体は実は何といふこともないことを、コロッと忘れさせられてしまふくらゐである。それは、観客が映画にいい意味で騙されるといふことであらう。言葉は悪いのかも知れないが、細山智明の勝ちである。今はどうしてをられるのやら全く判らないが、復活して貰へないものか。

 意図的に話を前後させたのだが、「菊池エリ 美乳の喘ぎ」といふのは、実は昨年(2004年)の八月に改題されたものである。旧題は、

 「菊池エリ 巨乳」。

 わはははは!な、何とストレートで最短距離なタイトルなのだ。「ゴジラ 怪獣」や、「ジェット・リー 少林寺拳法」、といつてゐるのと全く同じレベルである。レス・ザン・ゼロな作為が、グルッと回つて天才の領域にまで達した例といへよう。


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