真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「昼下りの女 挑発!!」(昭和54/製作:日活株式会社/監督:斉藤信幸/脚本:桂千穂/プロデューサー:村井良雄/撮影:安藤庄平/照明:直井勝正/録音:福島信雅/美術:林隆/編集:井上治/音楽:高田信/助監督:池田敏春/色彩計測:米田実/現像:東洋現像所/製作担当者:沖野晴久/出演:八城夏子・深沢ゆみ《新人》・飛鳥裕子・関川慎二・日向明子《新人》・高橋明・堀礼文・鶴岡修・石山雄大・石太郎・草薙良一・佐藤昇・内藤均・小見山玉樹・影山英俊・梨沙ゆり・笹木ルミ・フォーキッカーズスタントチーム 山本祐三子)。出演者中、佐藤昇・小見山玉樹・影山英俊と、笹木ルミと山本祐三子は本篇クレジットのみ。各種資料にある企画の進藤貴美男が、本篇クレジットには見当たらない。
 口腔内視点の、治療中の歯科医開巻。当人いはく真夜中になると歯が痛みだすとの勝子(飛鳥)は、キュインキュインやられてゐるのに何故か恍惚の表情。勝子がチンコに手を伸ばすのにも構はず、大平(内藤)が治療を続けてゐると、停電といふ形で説明される一度目の暗転。計三度の暗転を経て、挑発される夫に助け舟を出したつもりの由希(八城)が、フーセンガムをクッチャクッチャ噛みながら登場。結婚五年、体の線が崩れるだ緩くなるだと妊娠を拒む由希に、大平が強行する形での夫婦生活。事後、何をしてゐるのか正確にはよく判らない、キレた由希がガムをチンコ辺りに捻じ込んでタイトル・イン。大雑把極まりなく譬へると曽根中生の「わたしのSEX白書 絶頂度」(昭和51/脚本:白鳥あかね/主演:三井マリア)に似た、作為は感じられるけれども作意はサッパリ判らないアバンが、好き嫌ひだけで片付けると得意ではない。
 翌朝、由希は赤のセダンで衝動的に家出。踏切にてカーセクロス中のカップル(影山英俊と梨沙ゆり)の車にオカマを掘られ、危ふく死にかけた由希は住宅街で結構なカーチェイス。梨沙ゆりがバラ撒く何やかやの食材で綺麗にフロントガラスを汚された由希は、剛次(関川)を撥ねてしまふ。柔道経験があり受け身の手を使つたといふ剛次の目的地は、遠く静岡の先。由希は若く逞しい剛次を喰ふ気マンマンで、助手席に乗せ送つて行くことに。
 配役残り小見山玉樹は、車を修理中のスタンドか何かの手洗ひで、由希を襲ふセールスマン。鶴岡修と相当な絶対美人ぶりに目を見張つた日向明子は、剛次が訪ねた相手、大学の柔道部の先輩・健と、その婚約者・早苗。前日モーテルで由希がさんざ据ゑた膳を剛次が―裸映画であるにも関らず―頑なに食はなかつたオチが、剛次と健が薔薇の花香る間柄であつたといふのも兎も角、健は車椅子生活からのリハビリ中で、試合で頭を打ち柔道を断念した剛次も、散発的に悪魔の笛を吹かれたジローの如く激しい頭痛に苦悶する。大学柔道ブルータル過ぎるだろ。当然臍を曲げた由希は、一旦剛次を捨てて行く。ところが清々しいほどに繋がつてゐない繋ぎで、再び剛次を拾つた由希はお別れの御馳走にとドライブイン「深海魚」に入る。草薙良一が、薄気味悪い深海魚店主・啓一。高橋明・堀礼文と、レッドバロンからブルドーザーに乗り換へたex.岡田洋介の石太郎は、深海魚にたむろするチンピラだの愚連隊だのといつたそれはそれとして日常性の枠内からは根本的に逸脱した、三人の気違ひ順に竜造・明夫・京介。深沢ゆみと佐藤昇は、深海魚を離脱した由希の車をヒッチハイク風味でジャックするカップル・ヨーコと宏。石山雄大は―凶悪犯罪の巣窟である―深海魚に出入りする、村の駐在・島田正吉。そして何処に出て来たのか素面でロストしかけた、隠れキャラ感を爆裂させる笹木ルミは、島田が虚ろな目で見やるブルーフィルム。チンピラに誑かされ島田と家を捨てたまではまだしもいいものの、その後男に捨てられ転落した島田の女房・カヨ。
 会場の確保が困難とやらで十年の節目で幕を閉ぢた、カナザワ映画祭で改めて滅法評判だつた、前年、「高校エマニエル 濡れた土曜日」(脚本:那須真知子・佐治乾/主演:水島美奈子)でデビューした斉藤信幸第二作。“改めて”と紋切型的に筆を滑らせてみたが、リアルタイムでは不入りであつたらしい。ある意味、それもその筈。
 異常者ばかりが住む辺鄙な土地に迷ひ込んだ余所者が、大概酷い目に遭ふ。それまでもそれなりなスメルを漂はせつつ、中盤深海魚に辿り着いて以降は、たとへばスラッシャー映画によくある地獄絵図へと急転直下、あるいは垂直落下。奪ふか殴るか犯すか殺す。鬼畜全開の三キチがトゥー・マッチに非人道的で、否、動物世界には斯程の残虐非道な出鱈目が―多分―見当たらない以上、寧ろグルッと一周した明後日だか一昨日で極めて人間的とさへいへるのか、兎に角ムチャクチャ。石太郎が駆るブルの左右に扇を開く形で高橋明と堀礼文がヒャッハーする画は、対ジョージ・ミラーの日本代表クラスの箆棒な迫力。尤も、女の乳尻を観に来たところが、繰り広げられるのは不条理な暴力の超大型台風。羊頭を懸けて狗肉を売るのは、数撃つドサクサに紛れる量産型娯楽映画の豊潤な沃土か、あるいは不毛な荒野でこそ許される芸当ともいへるのかも知れないが、それでは首を縦に振れるのかと問はれるならば。少なくとも、俺は勃たない。

 尤も尤も、真に最も恐ろしいのは箍が外れきつた深海魚パートよりも、“直ぐ帰るは”が本当に直ぐ帰つて来るラストの、何気なキナ臭さ乃至は悪意であつたりもする。


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