真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「恋するオヤジ ビンビンなお留守番」(2015/製作:セメントマッチ/提供:オーピー映画/監督:池島ゆたか/脚本:五代暁子/撮影監督:清水正二/撮影:海津真也/録音:小林徹哉/編集:山内大輔/音楽:大場一魅/助監督:菊島稔章/撮影助手:矢澤直子/照明助手:広瀬寛巳/監督助手:小関裕次郎・藤井理代/スチール:津田一郎・だいさく/協力:若林美保・秋山豊/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:由愛可奈・松井理子・山口真里・那波隆史・竹本泰志・松本渉・野村貴浩・佐々木麻由子・佐倉萌・和田光沙・東二・沢村麻耶《写真出演》・マリオ)。出演者中、写真出演の沢村麻耶と御犬様のマリオは本篇クレジットのみ。
 初見のセメントロゴ開巻、ODZの時にも見たかな?七十五を目前に、転倒して腰を痛めた菊地泰三(老けメイクの那波隆史)が、二十年前に死別した妻・サチコ(沢村麻耶/泰三に応答する声は佐々木麻由子のアテレコ)の遺影に語りかける。父危機の報にも何のレスもない長女と次女に対し、父親の介護に一時的に実家に戻つて来た末女・マリ(松井)が用意した、泰三好みの和食が並ぶ食卓。改まつてマリは、南酒々井の実家を処分、東京でマンションを購入しての同居を申し出る。と、そこに何を届けに来たのか宅配便。マリは玄関に席を外し、泰三が一人ニンマリと料理を口に運んで、ベタな公開題もシュッとして見させる、今時雑貨屋感覚のオサレなフォントのタイトル・イン。まあそれにしても、那波隆史の弛緩しきつたクソ笑顔は何時観ても逆鱗を甘噛みする。
 タイトル明けは“1年後”、甲斐甲斐しい孝行娘と満ち足りた二世帯生活かと思ひきや、税金対策と称してマンションの名義もマリの夫・吉川崇(野村)に、泰三は居候扱ひを強ひられ冷や飯を喰らふ日々。ありがちなこんな筈ぢやなかつた感を爆裂させる泰三はある日、マリオ(犬セルフ)を散歩させる峯岸ゆうな(由愛)と出会ふ。キラキラと瞳を輝かせる魅力が変らない由愛可奈は、その後沙汰を聞かない中川大資の単独デビュー作「女子トイレ エッチな密室」(2014/脚本:小松公典)以来。少々佇まひには地に足の着かない印象も否めない反面、後述する御伽噺のヒロインとしては、逆に適役ともいへようか。
 配役残り泰三が通院する、「笑顔のいけじま病院」のぞんざいな医師・高村裕次郎は小関裕次郎。正体不明の東二はいけじま病院を後にした泰三に声をかける、老人仲間の橋本。橋本が泰三に娘婿との風俗通ひを自慢しつつ勧める、ステージ・ドアー前。照明を満足に当てないものだから、演者の表情が影に沈んでしまつてゐる。泰三が通ふステージ・ドアー店内、深く悩ましい胸の谷間に、“悩殺”といふ言葉はこの人のためにあるのではなからうかとこの期に改めて感嘆した山口真里がママの芳恵で、竹本泰志と和田光沙は常連客の高梨直人とミホ、ほかに鎌田一利と周磨要もボックス席に座つてた?ピンク映画初陣の松本渉は結婚後のために分不相応にダダッ広いマンションまでゆうなに借りさせておいて、なほ好条件の逆玉を見つけるやコロッと乗り換へるダニ男・椎名和彦。ただ一言脚本のリアリティに茶々を入れておくと、世間一般的に、資産家の親は歯科開業医の娘と一介のリーマンを、おいそれと結婚させはせんぢやろ。盤石の貫禄とコンビネーションを炸裂させる―ともに広島出身の―佐々木麻由子と佐倉萌は、直に底の割れる姦計で要は泰三の資産を独り占めしたマリを、とつちめに来た長女・愛子と次女・沙織。ところでこのお二人、実年齢もその順番でええんかいな。それと、折角ゆうなから預かつたのにロストした合鍵を泰三が必死こいて探す件、何気にひろぽんも見切れてる。
 ODZで全国を席巻してゐた池島ゆたか2015年唯一作、一般自主第二弾の企画とかどうなつてゐるのか、坂ノ上朝美の天よりも高い高下駄はもう履けないけど。居場所のない老人が、ハキハキ可愛い若い娘とミーツ、ザクザク距離を縮める。主要客層の琴線にノー・モーションでラリアットを叩き込むいはば体のいいファンタジーが、やがてゆうなが裏の顔を見せるのかと勘繰つたのは正しく下衆の所業。山口真里の濡れ場のど初つ端で投げたのが大胆に機能した後に、ゆうなが蒔いた第二の伏線が鮮やかなクロスファイアを叩き込む、力技の一件落着にはさう来たかと普通に感心した。最終的にケロッとゆうなが絆されるラストは些かならず弱いともいへ、山口真里のオッパイと負けず劣らずムッチムチの由愛可奈のお尻で女の裸欲求も大満足に、手堅く纏まつた一作ではある。


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