真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「熟女藤本聖名子 悶絶色狂ひ」(1992『女医聖名子 私をベッドに連れてつて』の2000年旧作改題版/製作:CARNIVAL カーニバル/提供:Xces Film/監督:林功/脚本:林功/プロデューサー:熊谷博史/キャスティング・プロデューサー:鳥海雅明/撮影:伊東英男/照明:柴崎江樹/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/美術:今井英明/編集:金子尚樹/メイク:酒井智恵子/音楽:姫田伸也/スチール:池之平昌信/助監督:高田宝重/制作進行:沖本健一/主演:藤本聖名子/出演:水野ありさ・中西弓子・牧村耕治・木下雅之・野沢明弘・玉井謙介)。出演者中牧村耕治と野沢明弘が、ポスターには牧村耕次と野沢明宏。
 室内を軽く舐めて、ベッドの上では藤本聖名子が木下雅之に抱かれてゐる。これで伝はり易いのかにくいのか我ながらよく判らない物言ひで恐縮ではあるが、男女の結合部とカメラの間に花瓶等を置くのにちやうどいい中間距離を定位置に、適宜寄るのが―主演女優の―絡みに際して全篇を貫く顕著なカメラワーク。良質の撮影と端正な演出とに支へられた、ねつとりと綺麗な絡みは女の喘ぎ声と男の呻き声のほか一言の台詞もなく五分突破、ところがいざ挿入してからは案外早く、女医の聖子(藤本)は同業者の交際相手・沢村(木下)に不平を垂れる。聖子の勤務先は、大先輩の戸田(牧村)が開業する歯科医。大学で教鞭も執る戸田は週三日医院を空けざるを得ず、その間は聖子が診察してゐた。その間はといふか、半分以上ぢやないか。ある日忘れ物を取りに戻つた聖子は、閉院後の院内にて受付兼歯科助手(ビリング推定で水野ありさ)と出入りの製薬会社セールスマン・湯浅(野沢)が致す現場を目撃。未だ絶頂を知らない聖子は、ノジーに抱かれ達する受付嬢の姿に、元々募らせる不満を一層拗らせる。
 配役残りjmdbにも記載がない―最後に記載されてゐるのは昭和60年の加藤文彦ロマポ―ゆゑ、もしかすると今作がラスト・アクトとなるのかも知れない玉井謙介は、大して悪くもないのに病院に入り浸る入れ歯爺。もう三名見切れる患者要員には手も足も出ないが、その中に一瞥といふか一撃でその人と知れる高田宝重はゐない。不完全消去法で中西弓子が、膳を据ゑる気満々で聖子が戸田に連れられた、クラブ「アデン」のママ。結構な美人であるのに脱ぐ気配がなかなかどころかまるで窺へず、時機を失した投入が展開を散らかす危惧を徐々に膨らませてゐたところ、結局三番手を温存もしくは封印したまゝ済ますそれはそれとしての賢慮には、グルッと一周して感服した。出すと決まつてゐる、あるいは普通出るものを、あへて出さない勇気。
 ロマポ終焉後は二作早志宏二の変名も使用してゐた、林功の名義を戻した1992年第一作にして、純正ピンク第三作。恋人の拙いセックスに飽き足らない女が、年長者の熟達した性戯にうつゝを抜かす。話としては如何にも量産型裸映画らしいお話とはいへ、丁寧な画作りだけで一時間をそれなりにサクサク見させるのが逆に凄いともいへるのか、“うつゝを抜かす”と掻い摘んだそこから微動だにしないスッカスカの物語には寧ろかある意味、裸映画に裸以外のものを求める色気を許さない強い意志が感じられなくもない。沢村の下手は下手なりの努力ないしは、聖子が妻子ある戸田と関係を持つことに対してのアデンのママの忠言。展開の舵を切る契機なりタイミングが必ずしもない訳ではなかつたにも関らず、聖子はといふと戸田との情交に喜悦するに一貫して終始。締めの濡れ場で振り逃げるまで、一直線に駆け抜けるラストは清々しいといへば清々しいものの、となると根本的な問題を残すのが、聖子の対沢村と戸田とで、濡れ場のトーンが特にどころか全然変らない点。戸田と沢村の上手下手が観客にも判る形で描かれてゐないではそもそも聖子が来す中毒症状が成立しないのだが、ホケーッと藤本聖名子の痴態を眺めてゐる分には、別に困りはしない些細な難癖であつたりもする。それと間違ひなくいへるのは、玉井謙介を起点に投げる、高齢化社会もしくは老人医療に関して口先で転がす程度の時事意識は、枝葉が繁る幹が存在しもしないのに確実に要らん。

 咥へて、もとい加へて。エクセスの―特に―新題にツッコミを入れるのも大概大人げないのは重々承知の上で、それにしても劇中二十五歳のヒロイン―因みに藤本聖名子は公称昭和45生―を捕まへて、“熟女”と称する熟女の低年齢化。あるいは、筋金入りの幼児性愛視点からだと、二十五歳なんてとうに熟女の領域に突入してゐるとかいふのか。尤も、その昔のAV畑では逆に、十分に成熟してゐる女でも、“美少女”一点張りの風潮があつたやうな気もする。


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 「巨乳水着未亡人 悩殺熟女の秘密の痴態」(2016/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/監督:清水大敬/脚本・音楽:清水大敬/脚本協力:中村勝則/撮影:井上明夫/照明:ジョニー行方/録音:小林研也/助監督:御殿場太郎/アクションコーディネーター:永井裕久/ポスター写真・現場スチール:宮田将/編集:高円寺スタジオ/仕上げ:東映ラボ・テック/撮影助手:宮原かおり/照明助手:J・下石原/監督助手:ジョナサン萩山・松木祐輔サンタマリア・安藤健太郎/車輌:花椿桜子/出演:一条綺美香・京野美麗・あやなれい・円城ひとみ《特別出演》・倖田李梨・青山真希・なかみつせいじ・森羅万象・山科薫・野村貴浩・清水大敬・田山みきお・中野剣友会・生方哲・鎌田金太郎・東京JOE・土門丈・星野周平)。ビリング頭二人に、ポスターでは新人特記。出演者中、中野剣友会以降は本篇クレジットのみ。中野剣友会成員計六名の固有名詞と、クレジット後半に完敗する。
 プールサイドに水着の一条綺美香・京野美麗・あやなれい・倖田李梨・青山真希が大集結、てれんこてれんこ軽く体を動かしてみせて、揺れる水面にタイトル・イン。一仕事終へた未亡人家政婦の三田キミカ(一条)が給料を貰ひに市原家政婦紹介所―但し画面に映る表札は家政婦協会新宿支部―を訪ねると、所長の市原ひとみ(円城)は何故か水着で盛り上がつてゐた。目を白黒させるキミカに、ひとみは水着着用で給料は通常の五倍とかいふ、聞くから怪しげな現場を紹介する。大丈夫なのか、この業者。キミカが新しい仕事を亡夫・武男(清水)の遺影に報告してゐると、恐らく武男が遺した借金の集金に、鮫島金融の若旦那・鮫島京介(野村)が現れる。キミカの新しい仕事先の主が大阪から来たと聞くや、京介は静かに顔色を変へる。
 配役残り山科薫と京野美麗が、キミカが入る屋内プールつきの豪邸のホスト・中村誠と、内縁の妻・亜衣。デフォルトの持ちキャラ通りほぼゼムセルフの倖田李梨と青山真希は、先輩水着嬢・リリーとマキ。要は中村邸(仮)はプールのある売春宿といふ寸法なのだが、この二人は絡みレス。といふか、実は三本柱も客とは絡まない。そしてなかみつせいじが、豪邸の真の所有者・大田原衛、きれいな悪党。元々中村ら四人は大田原邸の清掃員で、中村が大田原を刃傷沙汰から救つたのを契機に、一年間借り受けたものだつた。あやなれいは京介が打つたネット広告を頼りに、間借人風に三田家の敷居を跨ぐ、成田で身包み剥がれたとのルイ、当然キミカに連れられ中村邸(仮)に加はる。これで本職俳優部の田山みきおは、出勤途中のルイとぶつかり、シメられる歩きスマホ男。如何様な役柄でも固定してのける重量感が圧巻な森羅万象は、京介父兼、在阪の鮫島金融首領・権三。中野剣友会が、鮫島金融戦闘員の皆さん。V.S.ルイ・リリーでちよつとしたか藪蛇な見せ場の大乱闘を繰り広げ、手を大きく振る程度の相手のアクションに合はせ、前転して投げられる等々の大立回りを披露する。生方哲以降はプール売春顧客要員にしては、実際劇中に見切れるのはの三人まで、イコール鎌田一利の鎌田金太郎しか確認出来なんだ。
 ピンク映画史上初めていはゆる“例のプール”で撮影した、ど頭にクレジット大書される清水大敬監督20周年記念作品。因みにチラシでは監督20周年と並行してOP映画20本記念作品も謳はれ、それでは清水大敬の外征はといふと、昔日のカオスな破壊力を一時的に取り戻したデジエク第一弾「人妻禁猟区 屈辱的な月曜日」(2013/主演:北条麻妃)と、第二弾「女教師と教へ子 ‐罪名、婦女暴行なり‐」(同/主演:香西咲)の二本。いくらAVとの連動も視野に入れてゐたとはいへ、新時代に突入するデジタル戦の大事な先発に、デストロイ・モードの清水大敬を連れて来たエクセスつたら、改めて何てお茶目さん。
 閑話休題、2012年第一作の通算第十五作「巨乳理髪店 乱れ揉みくちや」(主演:中居ちはる)で遂に開眼した王道娯楽映画路線の中、近作が案外ドラマの進行に重きを置く傾向が見られなくもなかつた反面、今作の特徴はある意味裸映画の原点に立ち返つたともいへるのか、小屋でマスをかけといはんばかりの即物的な実用性に徹し抜いた、濡れ場濡れ場また濡れ場の圧倒的な質量。映画的な色気には一瞥だに呉れず、ひたすらに女の裸を、エロスではなくしてあくまでエロを凝縮して観客の金玉に叩き込まうとする真漢の姿勢ないしは至誠は、真綿色したシクラメンよりも清しい。となると当然のことながら、棚牡丹展開もものともしない物語は最小限にも満たないのではあるまいかと思はれる残り尺をタイム・アタック感覚で駆け抜け、力技で捻じ込む大団円は、スクリーンの中の清水大敬その人を思はせる豪快さ。円城ひとみを除いて、女優部がズラッと水着で勢揃ひするポスター背景に堂々と採用してゐるにも関らず、使用料の問題かそもそも水に入りもしない、折角のピンク初“例のプール”のまるで活用しなさぶり。大阪から来たといふ一点から、京介が中村の尻尾を掴む大概な超飛躍。一条綺美香に「オシッコ」といはせたいだけの、オーラスまで連打する割に全く意味もなければ、ピクリとも機能しやしない木に竹すら接ぎ損なふ無駄な小ネタ。減点法的なツッコミ処には事欠かないものの、然様は些末とこの際さて措いてしまへ。一体何十年失へば気が済むのか万事がフン詰まつたクソ極まりない昨今だからこそ、一欠片の曇りなく何処までもポジティブな思想に裏打ちされた、一見アナクロの極致に見えかねない清水大敬の人生応援歌映画が、グルッと一周したアクチュアリティを持つに至るのではなからうか。清水大敬にはたとへばジョン・レノンにも似た、馬鹿は馬鹿でも百パー本気の、馬鹿にならない馬鹿さ加減を感じるものである。そんな清水大敬は、今回俳優部としても大活躍。仏前にてキミカが京介と事に及びさうになるや、愕然とする表情に遺影が変るのは、殆ど唯一クリーンヒットするギャグかつ、画期的に愉快な濡れ場の導入。三角頭巾に白装束の伝統的なジャパニーズ幽霊かと思へば無闇に大きな十字架もぶら提げ、最終的には天使の羽根を生やし―だから三角頭巾の―頭上には輪つかまで戴く武男の造形は、無邪気に盛り過ぎたポップ・センスの過積載とチャームポイントのひとつに数へ得よう。武男が中村の肉体を借り夫婦生活を再開する件に際しては、デジタルの果実をケロッと享受してのけてゐるのも麗しい。


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 「痴漢電車 濡れるまで待てない」(1998/製作・配給:大蔵映画/監督:渡邊元嗣/脚本:波路遥/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:高田宝重/監督助手:片山圭太/撮影助手:小山田勝治/照明助手:小田求/スチール:佐藤初太郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:しのざきさとみ・西藤尚・熊谷孝文・久須美欽一・小西綾花)。
 特に意欲も感じさせない住宅街遠景を噛ませた上で、塚原雅哉・千晶の表札。千晶(西藤)がシャワーを浴び、リストラされた雅哉(熊谷)は求人誌とにらめつこ。風呂上がりの嫁に欲情し、飛びつくも出勤する千晶にケロッとかはされた雅哉が、クローゼットに激突してタイトル・イン。額に間抜けに絆創膏を貼つた雅哉は、まんまと面接に撃沈。雅哉が求人誌を放つた川に、花飾りの添へられた灯籠が流れて来る。流れて来るや辺りは日が暮れたが如く俄かに暗くなり、雅哉が灯籠を川の流れに戻すと、日もまた元に戻つた。そして漸く電車、かと思つたら。家計をイメクラ「ドリーム☆ルームス」で働き支へる千晶と、風俗遊びを経費で落とす常連客・藤崎宏(久須美)の電車痴漢プレイ。一方、雅哉が揺られる本物の電車。雅哉は当時と変らないセーラー服姿の、“故郷の初恋の人”落合真樹(小西)と再会、吸ひ寄せられるやうに軽く絡む。
 配役残りしのざきさとみは、転居の理由が別段見当たらないが何と塚原家の隣に越して来た、藤崎が夜な夜なの直線的な夫婦生活の求めに往生する妻・香織。乗客要員の中に、高田宝重は確認出来ず。
 DMMの新機能に薦められるまゝに、洒落てるのかぞんざいなのかよく判らないタイトルに惹かれて見てみた渡邊元嗣1998年第三作。前年に初上陸を果たしての、大蔵三戦目に当たる。ついでに西藤尚のみに注目すると1998年といふのはルーキーイヤーながら、実はその以前に田中真琴としての活動時期があつたりもする。
 話を戻して、勧められては、みたものの。デビュー当初の第一次と、2006年に火蓋を切つて以来、今なほワン・アンド・オンリーに快走する第二次黄金期。要はその間の大体二十年を、渡邊元嗣が長く概ねマッタリしてゐたイメージの枠内から時には出て呉れて全然構はないのに、出かけて出損なふ漫然とした仕上がり。最初のアップでは左半分をフレーム外に隠した―直前のロングでは、ギッリギリ見切れなくもない―姉妹のスナップを改めて抜き、完全に油断してゐただけなのかも知れないが、全く予想外の世間の狭さが明らかとなつた瞬間。ナベが猛然とアクセルを踏み込んで来る気配は、確かになくはなかつた。とはいへ、あるいはそもそも。吉村すももに劣るとも勝らず、口元から下がぎこちない主演―の筈の―女優のエクセスライクに関しては、いふてもせんないことと一旦さて措くにせよ。土台が想ひ人に姉を抱かせて成仏する妹の気持ちが、光の速さでも何年かゝるか見当もつかないほど理解に遠い。未練を残して死んだ女が兄貴に抱かれてゐたとなると、多分俺なら猛烈に地団駄を踏む。といふか、姉とか兄といふ問題ですらないな。雅哉にとつて千晶の風俗勤めはよもやか何時の間にか既知の事柄で、挙句に成仏したんぢやなかつたのかよ!なキュートでポップな狙ひが、グダッた右往左往にしか帰結しないラスト。そこかしこがボロッボロで、凡そ物語の体を成してゐない。結局最も心が動いたのは、西藤尚でさへなく、まさかのしのざきさとみがど頭に飛び込んで来るビリング。クレジットが最大のチャームポイントといへば、なかなか珍しくはある一作といふのが、当サイトに吹かせられる限りの与太、もとい南風。


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 「愛欲の罠」(昭和48/製作:天象儀館/監督:大和屋竺/脚本:田中陽造/企画・製作:荒戸源次郎/撮影:朝倉俊博/照明:鈴木道夫/編集:中原淳己/音楽:杉田一夫/音響:河内紀/効果:福島効果グループ/演奏:八百谷啓人クインテット/助監督:白川健/制作主任:櫻木徹郎/人形美粧:かとうよしえ/記録:入山幸子/録音:杉崎喬/監督助手:藤中秀紀/撮影助手:小水一男・遠藤正史/照明助手:牛場賢二・中奥隆司/結髪:エンゼルビューティーサロン/車輌協力:国立土建 K・K/銃器提供:シブヤ・YMC/録音現像:東京録音現像所/主題歌 ・朝日のやうにさはやかに・ 作詞:上杉清文 作曲:杉田一夫 唄:宗像笙/挿入歌 ・センチメンタルヴギウギ・ 作詞:熊倉正雄 作曲:杉田一夫 唄:ビビクチンスカヤ&ダイナミックエンゼルス/出演:荒戸源次郎、絵沢萠子、安田のぞみ、中川梨絵、山谷初男、大和屋竺、アンドレ・モアジー、港雄一、山本昌平、櫻木徹郎、神宮ガィラ、山本英明、岩淵進、天野照子、マビー・D・ナダ、アベ聖、桃谷操、ビビクチンスカヤ&ダイナミックエンゼルス、道岡光昭、吉川信吾、長倉健次、太田篤哉、鈴木竜一郎、伊藤和齢、川村正広、松浦鉄平、小松原茂、小野寺照夫、牛場賢二、竹田賢一、山本久行、川本武、大村光広、川口和子、金井勝、夢村四郎、大久保小次郎、伊藤元気、杉田一夫、秋山ミチヲ)。
 天象儀館1973年度第一回製作作品クレジット、タイトル開巻、劇伴は有り物。クレジット背後にうつすら映るのが、最初はフィルムの傷か何かかと思つてゐたら街景、カツンカツンと鉄梯子を上るシルエットに監督クレジット。建設中のビルから殺し屋の星(荒戸)が標的(山本英明?)をスナイプ、一発で仕留める。銃声も、拳銃だらうとライフル銃だらうと変らないバキューン。電話越しのクライアントとの短い遣り取り挿んで、星は車で女房の眉子(絵沢)を拾ひ帰宅、とりあへずな絡み初戦。サウナに星を呼び出したクライアントの高川(大和屋)は、来日する“組織”の大物殺しを依頼。星はアメリカから来た副社長(アンドレ・モアジー)の狙撃にも成功するが、狙撃に使つたトラックに眉子を乗せ現場付近のインターチェンジを通過した軽弾みから足がつき、高川は逃亡を指示、眉子は姿を消す。今度は銭湯に呼び出した星に、高川は眉子を殺れと命ずる。星は高川の言葉に従ひ、小粒の弾丸で眉子のハートを撃ち抜く。報酬とともに与へられた三人の女(アベ聖と桃谷操にもう一人?正直手も足も出ない)と乱痴気騒ぎに明け暮れる星が、戯れに自宅窓からスコープで覗くのが日課のゴルフ練習場を覗いてみると、何とそこに眉子が。生きてゐた眉子を、星は追ふ。
 辿り着ける範囲の配役残り、特に何するでもない中川梨絵は、副社長に宛がはれる女・真美。イコール小水一男の神宮ガィラと秋山ミチヲ(a.k.a.秋山道男)は、“組織”の金に手をつけた高川を狙ひ隠れ家に現れる、“組織”の殺し屋・西郷とマリオ。因みに星は高川がゼロから育て上げた秘密兵器で、必ずしも“組織”の人間ではないとかいふ寸法。港雄一と山本昌平は、星のヤサに貼り込む“組織”の殺し屋・呉と林。星がこの二人を片付けるシークエンスは、三人の位置関係とか動きが全然要領を得ない。行き場をなくした星は、売春宿に転がり込む。天野照子がいい感じの遣手婆で、安田のぞみはそこで星が出会ふパン女・夢子。櫻木徹郎は、星に空気銃を使つての対決を仕掛ける、描写上は刺客中最強の凄腕・木谷。西郷とマリオは異者風味を拗らせるばかりで、実際強いのか見かけ倒しなのかよく判らん。ビビクチンスカヤ&ダイナミックエンゼルスは、木谷に左目を潰された星が逃げ込んだ小屋にて、一曲披露するゼムセルフ。度肝を抜かれたのがヌードも披露するビビクチンスカヤが、ルックスもプロポーションもモデルばりの箆棒な上玉。そして山谷初男が、ラストにチョロッとだけ出て来る“組織”のボス。その他大量の頭数の多くは、羽田に集結する“組織”の黒服要員か。話を戻して、シネフィルは兎も角ピンクスにとつて通り過ぎ難いのが出番は短いけれど港雄一。我々が知る90年代から今世紀初頭の港雄一と、この時点で見た目も口跡も吃驚するくらゐに変らない。
 脚本と助演男優賞級の活躍が光る「発禁 肉蒲団」(昭和50/監督:白井伸明/主演:谷本一・益富信孝)が滅法面白くて、DMMピンク映画chに新着したのを喜び勇んで見てみた大和屋竺最終第五作。いはゆる買取系ロマポなのだが、この時荒戸源次郎らが起ち上げた劇団である天象儀館は日活と如何に話をつけたのか、それとも出来上がりに愕然とさせたのか、結構好き勝手してゐる。女の裸もそれなりになくはないものの、絵沢萠子の濡れ場は意図的にブッツブツ切りおとなしい眼福を妨げ、対夢子戦では星が勃たず、劣情を刺激されるといふよりは、居た堪れない気持ちばかりが先に立つ。眉子にせよ夢子にせよ後味の頗る悪い死に方で、萎えさせられることこの上ない。尤も、絵沢萠子や安田のぞみはそれでもまだマシ。副社長の傍ら狂騒的に空騒ぐ程度で、アンドレ・モアジー共々アッといふ間に、しかもかそもそも脱ぎもせず退場する。折角回した―当時専属の―中川梨絵の持ち腐れぶりは、大概日活を怒らせたのではなからうか。裸映画としては本当に方便程度で、今作の主眼は殺し屋映画。殺し屋映画としては副社長狙撃の凝つたポイント取りや木谷との死闘、そして斬新極まりない画期的なラスト・カットと、ワーキャー騒ぐほどでもない程度には楽しめる。結局成人映画館では封切り当時上映されたきりと、一旦蔵入り後、今になつて津々浦々を巡る「白昼の女狩り」(昭和59/監督:曽根中生/脚本:森下馨/主演:加来見由佳)とある意味対を成すやうな一作である。


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 「挑発美容室 人妻の匂ひ」(1994『人妻変態美容師』の1999年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:佐藤寿保/脚本:五代響子/撮影:稲吉雅志/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:片山浩/照明助手:堀直之/スチール:西本敦男/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:鈴川玲理・石原ゆり・しのざきさとみ・池島ゆたか・小林一三・広瀬寛巳・今泉浩一・征木愛造・中島裸茂・柳蜂逸男・紀野真人)。出演者中、広瀬寛巳がポスターには広瀬寛己で、今泉浩一から柳蜂逸男までは本篇クレジットのみ。
 深夜の美容室、百合の花が咲き乱れる。話を聞くに真性ビアンの石原ゆりがタチで、バイと思しき鈴川玲理がネコ。カメラがパンした先の鏡の中、鈴川玲理が果ててタイトル・イン。クレジット中は美容室「POWDER」に、今と比べると流石に全然髪があるひろぽん来店。下着ではないにせよ水着みたいな服の上に、霞並みにスッケスケのシースルーを羽織つた―だけの―扮装で客を出迎へた「POWDER」オーナーの吉永真理江(鈴川)は、カットしながら谷間も露な胸を押しつけるどころか、最終的にはガンッガン跨る。そんな店内の痴態を窺ふ紀野真人の視線に、アシスタントの麗子(石原)が気づく。主に嫉妬心から、破廉恥接客に関して麗子が呈する苦言をまるで意に介さない真理江に、元夫の葉山俊次(池島)から下心込みの事務的な電話が入る。「POWDER」は真理江の度外れた性欲に白旗を揚げた葉山が、慰謝料代りに持たせた店だつた。
 配役残り樹カズの本名である小林一三は、街に出た真理江に声をかける男前ナンパ師。街頭ロングで真理江は一旦拒絶してゐるにも関らず、カット跨ぐとラブホにて濡れ場に大絶賛突入してゐたりするザクザクした繋ぎが麗しい。紀野真人は評判を聞きつけ真理江に接近する漁色家・シノミヤで、しのざきさとみはシノミヤ馴染の人妻ホテトル嬢・ユカリ。シノミヤに呼び出された真理江がホテルに向かふと、既にユカリが裸で寝てゐたりする三番手の投入は地味に輝かしくスマート。今泉浩一・征木愛造(a.k.a.梶野考)・中島裸茂・柳蜂逸男は、オーラス「POWDER」に行列を成すひろぽん以下の助平客要員。中島裸茂と柳蜂逸男が誰々の変名なのかまでは辿り着けないが、どちらか片方は今岡信治、の筈。
 次作の非本流「痴漢と覗き」・「痴漢と覗き 婦人科病練」(脚本:五代響子/主演:石原ゆり)が画期的に見たい、佐藤寿保1994年第一作。軽く鼻も胡坐をかきつつルックスは垢抜けないものの、ボガンボガンしたオッパイの破壊力は抜群の主演女優と五代響子の脚本を擁した上で、佐藤寿保の名前から自動的に予想されるマッドネスなり残虐描写は、今回一切鳴りを潜める。真理江がユカリを交へた巴戦を嫌つた所以といふのが、ただ単に棹を独り占め出来ないからとのショート・レンジな即物性も鮮やかに、真理江を巡る麗子とシノミヤの鞘当ても所詮は小賢しくすらない些末とばかりに、ヒロインの底なしの貪欲が劇中世界を人類補完計画ばりに埋め尽くして行くグルーブ感は圧巻。男根を原初的に誇示するシノミヤと、撃てばお終ひの男を押し退け、颯爽とペニパンを装着する麗子。三番手が慎ましくヒット・アンド・アウェイに徹する一幕が対照として活きて来る構成が改めて秀逸な、シノミヤ×真理江×麗子の、今度は真理江が望んだ第二次巴戦。結局ともに精魂尽き果てたシノミヤと麗子を余所に、なほも真理江が自慰に狂ふウィナー・テイク・オールは天晴の一言。要求される商品性に、佐藤寿保が脇目もふらず突つ込んだ結果が見事に実を結んだ、極めてシャープでストレートな高水準裸映画である。

 オーラスは完全に振り切れた「POWDER」乱交、首から上を麗子、左乳ひろぽんに右乳征木愛造(a.k.a.梶野考)、観音様シノミヤ、左足今岡真治に右足今泉浩一。六人で一人の女を凌辱するといふよりも、寧ろ皆で真理江に奉仕してゐる画は、当然の話に過ぎないといへばそれまでなのだが、面子の組み合はせが現在では考へられない凄いショット。
 ところでたつた今気づいたのが、旧題も新題も、だから真理江は人妻ではない件。


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 「色慾怪談 ヌルッと入ります」(2016/制作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本・出演:荒木太郎/原作:瞿宗吉『牡丹燈記』・三遊亭円朝『怪談 牡丹燈籠』/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/撮影助手:宮原かおり・志田茂人/照明応援:広瀬寛巳/演出助手:三上紗恵子/音楽:安達ひでや・首里音楽研究会/メイク:ビューティ☆佐口・イム/ポスター:本田あきら/応援:榎本敏郎/進行:佐藤選人・小林徹哉/協力:花道プロ/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック《株》/出演:南真菜果・水野朝陽・神納花・那波隆史・野村貴浩・河内哲二郎・春風亭伝枝・天才ナカムラスペシャル・淡島小鞠・牧村耕次《特別出演》・稲葉良子)。
 制作に変更された二代目多呂プロ立体ロゴから、タイトル開巻。特製チラシに謳はれる、“多呂プロ20周年記念作品”の文言が本篇中には見当たらない。
 夏祭りの風情も賑やかなお盆前、私財でこども食堂を開く有徳の教師・萩原喬生(那波)の下を、元教へ子の人妻・飯島美麗(南)が女中の夜音(稲葉)を伴ひ訪れる。一切登場しない夫の暴力と継母の苛めに苦しむ美麗は、かねてから想ひを寄せてゐたらしい萩原に、盆期間限定で夫婦の契りを求める。初めは固辞してゐた萩原も、何だかんだで据膳を喰ふ。美麗と逢瀬を重ね、何故か徐々どころでなくみるみる消耗する萩原の話を、萩原の叔父にして、穀潰しゆゑ甥の下男的に生計を立てる伴潤一郎(河内)から聞いた占ひ師の白翁堂幽斎(春風亭)は、二丁拳銃を振り回す美麗の義父に踏み込まれる悪夢から跳ね起きた萩原に、衝撃的な事実を伝へる。飯島家の環境に耐へかねた美麗は既に自死、夜音も後を追つてゐるといふのだ。
 配役残りex.菅野しずかの神納花が件の凶悪な継母・くに子で、野村貴浩はくに子に仕向けられ美麗を手篭めにする間男・源次、二人して飯島家の財産を狙つてゐるとかいふ安い寸法。牧村耕次が美麗義父の喜一、何でくに子のやうな悪女と再婚したのか不思議な人徳者。何時まで経つても出て来ないやきもきを、まんまと的中させる水野朝陽は伴の女房・峰子。天才ナカムラスペシャルとwith二人目?の淡島小鞠は、幽斎指揮下萩原の無事を祈願し祈祷する引きこもり要員。皆さん籠もつてた期間は紹介順に三ヶ月の佐藤選人と六ヶ月の榎本敏郎でもない誰か判らん人に、一年の淡島小鞠が前列左から。後列は右から五年の小林徹哉、十年の荒木太郎と、三十八年の天ナス。大トリの破壊力は、作中僅かに命中する。新顔の女優部に話を戻すと、オッパイの破壊力は申し分ないもののお芝居の方は御愛嬌に心許ない南真菜果が誰かに似てゐるやうな気がしたのは、軽く千葉尚之。一方負けず劣らずのオッパイを誇る水野朝陽は、前回の塚田詩織同様肩の力を抜いた演出が功を奏したのか、軽快な突破力を発揮する。
 大概な土壇場に至つて二番手が飛び込んで来たり、旧態依然とした荒木調ならぬ荒木臭がガッチャガチャ空騒ぐ中を、深町章の「熟母・娘 乱交」(2006/脚本:河西晃/主演:藍山みなみ)以来の牡丹燈籠が辛うじて通り一遍進行する。国沢実は高橋祐太とのコンビでこの期に及んでの好調を死守する反面、荒木太郎2016年第三作は2012年に復活した大蔵時代の恒例夏の怪談映画枠を頂戴しておきながら、黒澤明の「生きる」を翻案した割にはちつとも生きてやしない謎が暗黒よりも深い前作に引き続き、逆の意味で見事に失速し力なく二連敗。水野朝陽投入が遅きに失した、即ち劇映画としての全体的な構成の崩壊は、神納花V.S.野村貴浩が妙に費やす尺とも加へて、裸映画としては全般的な濡れ場の総量確保と引き換へといつていへなくもなく、さういふ肉を斬らせて骨を断つ戦略を採用したと最大限好意的に曲解するならば、漸く発見しかけたせめてもの立つ瀬を。泰然と水泡に帰してのけるのが、今も昔と変らなかつた荒木太郎といふ御仁。スッカスカの始終を仕方なく通過したのちの、二組に別れた俳優部が例によつて無駄にてれんこてれんこ呑気に踊り呆けてみせるオーラスが、力尽きて寝た子も起こして癪に障る。果たして周年記念に本気で挑む気概が本当にあつたのか出任せた方便か、斯様なザマでは三十周年なんぞ来はせんのではなからうか。

 ところでといふか、ところがといふか。改めて復活後の大蔵恒例夏の怪談映画を振り返つてみると、「おねだり狂艶 色情いうれい」(2012/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/主演:大槻ひびき)は、今も深く心に染み入る。因みに最後の水上荘映画でもある「愛欲霊女 潮吹き淫魔」(2013/監督・脚本:後藤大輔/主演:北谷静香)、手応へさへ感じられない「怪談 女霊とろけ腰」(2014/監督:加藤義一/脚本:鎌田一利/主演:水樹りさ)と来て、レス・ザン・イントロダクションで飛び込んで来る倖田李梨が大草原の「色欲絵巻 千年の狂恋」(2015/竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/主演:伊東紅)。折角ナベが、最高のスタートを切つた、のに。真に恐ろしいのは、怪談映画の中身ではなく、映画そのものが実は何気に現在四連敗中といふ死屍累々。呪はれたシリーズの連鎖を断ち切るには、今年は必殺を期して城定秀夫でも連れて来るしかあるまいぞ。


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 「痴漢電車 後ろから揉ませて」(1992/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:青柳一夫/スチール:大崎正浩/監督助手:杜松蓉子/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/フィルム:AGFA/出演:高橋めぐみ・冴木直・美里リナ・山本竜二・板垣有美・白都翔一・芳田正浩・港雄一)。
 板垣有美が高橋めぐみと冴木直に、電車で痴漢して来た男のポケットにチラシを撒くやう促す。結果論的な視点からボッロボロに情報量の不足する唐突なシークエンスを補完すると、出張性感マッサージ「宅配便」の社長・唐沢(板垣)が、昼間はOLの嬢・霧子(高橋)と真弓(冴木)にその旨指示、鉄橋を通過する電車にタイトル・イン。アバンの電光石火を誇る新田栄とはまた違つた意味で、小林悟が開巻から早速飛ばす。飛ばすといふか、スッ飛んでゐるといふか。
 兎にも角にも、あるいはとか何とかで二人の通勤電車、霧子は山本竜二と開戦。硬いといへばいいのか乏しいのか、何れにせよ表情に難がある高橋めぐみと並べてみるとなほさら一層、トゥー・マッチに豊かな山竜の顔芸が際立つ。感じてミッションをすつかり忘れてしまつた霧子に対し、真弓はカガミ(白都)のポケットに首尾よくチラシを潜り込ませる。その夜、電車セットと一スタジオで二度美味しい御馴染摩天楼。左から先輩の山竜・芳田正浩・カガミの順でカウンターに陣取り、山竜が対霧子電車痴漢の武勇伝。後ろからソッと揉み、頭の中で女が悶えるのを想像する。想像によるセックスの至高を説く山竜パイセンに理解の難いカガミと芳正は、“後ろから揉ませて”を俺達も試してみるかと盛り上がる、それキーワードだつたんだ。
 配役残り石川恵美アテレコの美里リナは、この人はOLを既に退職した「宅配便」嬢・ミミ。となると高橋めぐみの声も軽く声色を変へた吉行由美に聞こえなくもないが、この時未だデビュー前。港雄一は、この御仁も三馬鹿と同じ会社の遠山部長。痴漢された女優部の傍らでこれ見よがしに顔を隠した新聞紙の陰から、チョイチョイ降臨する小林悟は今回不発、新聞氏は何時も通り見切れる。
 大御大・小林悟、1992年薔薇族五本込みで全十八作中第六作。因みに、あるいは改めて。頑なに当サイトが小林悟に大御大の尊称を冠する所以は、小川欽也が御大と称される昨今。そのこと自体に異を唱へるつもりは特段ないものの、小林悟が小川欽也と同格ではマズいだらうといふ配慮である。
 山竜が木に竹を接ぐ痴漢の精神性を軸に、一風毛色の変つたアプローチを試みる、ものかと思ひきや。結局三馬鹿+遠山部長は撒かれたチラシにまんまと釣られ、宅配風俗に垂涎狂喜するに終始。抜けた底が時空を超えてドリフ桶よろしく頭上から降つて来さうな展開は、紛ふことなき大御大仕事。いや別に、時には見紛はせて呉れて全然構はないんだけど。霧子V.S.山竜電車痴漢戦中地味に画期的に飛び込んで来た、意図的に通り過ぎた注目点が、アップの山竜の眉間で、高橋めぐみが小さく悶える謎合成。一旦見通したのち初めて気づいたが、これこそ山竜パイセン曰くの「後ろからソッと揉む、そして頭の中で女が悶えるのを想像するんだ」との、“後ろから揉ませて”を視覚化したショットであつたのだ。にも、関らず。そこまで滅多に踏まない一手間踏んでおいて、それなのに、嗚呼それなのに。正体不明の三番手ながら、首から上も下もとびきりの美里リナ。「宅配便」の嬢は、出撃もとい出張する際グラサン白衣に杖をつき按摩偽装。三馬鹿に取り囲まれた霧子が、座頭市ばりにまさかの仕込杖を抜いてみせる藪蛇な大立ち回りだとか、ちらほら見所もなくはない、にせよ。消費され後には記録はおろか記憶も残らない、ポップ・カルチャーの極北としての量産型娯楽映画の宿命を甘んじて引き受けたとでも受け取るべきなのか、一旦掲げたテーマをも何処吹く風に流して平然と済ます、常人には与り知り得まい―俺も知らん―小林悟の乾いたダンディズムに、この期に及んで感服した次第である。


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 「悶える義妹 遺影の前で抱いて」(2016/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:有馬潜/音楽:與語一平/整音:高島良太/助監督:小関裕次郎/監督助手:林有一郎/撮影助手:酒村多緒・柳田純一/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/制作進行:植田浩行/協力:嬬恋村フィルムコミッション/出演:朝倉ことみ・星野あかり・倖田李梨・世志男・ダーリン石川・イワヤケンジ)。
 タイトル開巻、開口一番はイワヤケンジのモノローグで、「私は、突然死にました」。適宜ツッコんだりボケてもみたり、そのまゝイワヤケンジの軽妙な喋りで話を進める、竹洞組でよくある手法。家族で居酒屋「美蔵」を営む箕島家、長女・延子(星野)の入婿・ミツル(イワヤ)が自宅の階段から落ちて突然死、しての四十九日。身内だけの法要に参列したのは、両親はすでに死去してゐるのか延子のほか、家を出た役立たずの長男・長男(世志男)とその嫁で意地汚い実和子(倖田)に、何故かミツルにしか心を開かなかつた次女の和歌子(朝倉)。和歌子の好意を意識し、延子とは五年レスの状態にあつたミツルもよからぬ劣情を拗らせないでもなかつたが、あくまで一線は越えずにゐた。配役残りダーリン石川は、五十日と一日勘違ひして洋菓子持参でのこのこ箕島家にやつて来る、延子の浮気相手・真倉義経。オーラス間際に二人見切れる、飲食客要員には手も足も出ない。
 ピンク四戦目にして朝倉ことみが初めて山内組から外征した、竹洞哲也2016年第三作。一方通算第六戦の星野あかりは、国沢実2016年第一作「陶酔妻 白濁に濡れる柔肌」(脚本:高橋祐太/主演:美泉咲)に続く五年ぶり復帰第二戦。尤も残念ながら星野あかりは六月で無期限活動休止してしまつてゐるゆゑ、七月終盤公開の今作が打ち止めとなる模様。
 恐らく意図的にミスリーディングを狙つたと思しき、朝倉ことみが美しく亡き義兄への思慕を募らせるリリカルな予告には全く反し、本篇が現代的にコッテコテしたコメディである奇襲には、ひとまづ完全に意表を突かれた。ひとつひとつのギャグの精度、イワヤケンジの話術ともに申し分なく、序盤は箕島家の面々だけで通過、中盤に至つて真倉を投入し加速を図る展開も手堅い。そして、卓袱台が派手に引つ繰り返る終盤。とこ、ろが。二転のどんでん返しが綺麗に決まるとはいへ、如何せん二転目のレス・ザン・目新しさは否めず、最後まで見通してしまふと却つて七十分も費やすほどのネタかといふ疑念を正直拭ひきれない、粒の小さな物語といふ印象が強い。裸映画的にも締め以外濡れ場は何れも散発的なものに止(とど)まり、倖田李梨に至つては乳すら見せない不義理。折角五年の間に色香を爆増させた星野あかりを擁しておいて、どうしてもつとゴリゴリ観客の金玉、もとい琴線を激弾かうとしない、とかいふ明後日だか一昨日な不満も残る。完成度が低くはない割にインパクトは弱い一作の中、地味に特筆すべきはクレジットを見るに嬬恋まで出張つてゐる筈―現に舞台は美蔵だ―なのに、俳優部どころか表からの忌中ショットを除けば撮影部も建物の中から一歩たりとて外に出ない、師匠の伊豆映画と真逆のアプローチには軽く驚いた。ここから先は純然たる素人の浅墓な邪推に過ぎないが、2016年も竹洞哲也はただ一人今時驚異の全五作を量産する大車輪状態で、今回は前作から二ヶ月強、次作までは二ヶ月弱といふハイペース。もしも仮に万が一、モノローグ主導の構成も現場の負担を軽減するための戦略的選択であつたとするならば、よもや三日さへかけてゐなかつたりする省力撮影なのかしらん。その場合、城定秀夫みたいに名義でカミングアウトして貰へると判り易いのに、紳士服のザザホラヤよろしく竹洞也とか   >福岡にしかねえよ

 最後に、イワヤケンジが“どういつた類”といふ箇所を、普通“たぐひ”とならうところを、“るい”で読んでゐたのが耳についた。“るい”でも間違ひとは必ずしもいへない上に、そもそも後付けのモノローグにつき、わざッと“るい”で読ませたのかも知れないけれど。
 どんでん二転の備忘録< 寿司を食ひ大笑する四人を昏倒・拘束、更に灯油を撒いた和歌子が「今、逢ひにいきます」とライターで点火する修羅場は、実際にはまるでダメ子な和歌子の小説中の出来事


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 「愛獣 熱く凌す」(昭和59/企画・制作:AMI企画/配給:株式会社にっかつ/監督:和泉聖治/脚本・プロデューサー:木俣堯喬/撮影:伊東英男/照明:金沢正夫/編集:菊池純一/助監督:西沢弘己/音楽:新映像音楽/ヘアーメイク:中村出雲/スチール:津田一郎/効果:小針誠一/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/出演:沢田和美、中川みず穂、峰沢千明、泉ゆり、山田桂司、牧村耕次、北村大造、ビル・ドロシィー、坂本昭、左陣太、池島ゆたか、岡竜太郎)。出演者中、牧村耕次とビル・ドロシィーがポスターには牧村耕二とビル・ドロフィーで、池島ゆたかと岡竜太郎は本篇クレジットのみ。企画・制作のAMI企画と、御馴染プロ鷹は同一組織。
 幼い姉妹のスナップ写真に、妹の父親を邪推する下衆い噂話。適当な湖と山々の画に過疎の集落が夏だけ民宿で賑はふ西湖村のイントロダクションを、プロ鷹他作でも聞き覚えある声ゆゑ、もしかすると木俣堯喬によるものなのかも知れないナレーションで投げた上で、枯れ木を集める北村大造にタイトル・イン。オープニング・クレジットは、AMI企画と木俣堯喬に、和泉聖治のみ。
 宿を求め声をかけて来た単車三尻の若者を、桑山藤二郎(北村)は邪険に追ひ返す。すつかり日も暮れたのち、長女の奈津子(沢田)が役場の寄合より帰宅。近隣に宿泊客を奪はれぬやう、村ぐるみで再三勧められる民宿の開業を、藤二郎は頑なに拒否する。藤二郎の妻・妙子(泉)は村にやつて来た余所者に輪姦され、奈津子の妹・可奈子を生む。その後藤二郎の冷酷な仕打ちに耐へかね、妙子はスーサイド。下衆い噂話に曝され育ち、順調にグレた可奈子(中川)も、十八の時家を捨てる。双方の親も公認する恋人・村野保(牧村)に、可奈子がグラビアを飾るエロ本を見せられた奈津子は、藤二郎には詳細を黙したまゝ可奈子に会つて来るとだけ言ひ残し上京する。
 配役残り左陣太は、奈津子が最初に頼る編集者、山田桂司はその場に顔を出すフリーライターの香取正之。坂本昭は香取経由で奈津子が続けて会ふ、グラビア撮影時に可奈子が在籍してゐた脱ぎ専プロダクションの社長・間辺。峰沢千明は間辺から紹介された、可奈子ことジェシーと仲のよかつた怜で、池島ゆたかが怜が出演する裏ビデオの監督。先に現場に来てゐた香取と再会した奈津子は、以来香取の下心主導で行動を共にする。ビル・ドロシィーは、横田で可奈子が同棲する米軍整備員のヒムセルフ。岡竜太郎が正直よく判らん、岡竜太郎が単独の個人なのか、あるいはa.k.a.岡柳太郎の二人存在するのか。一旦ケリをつけたつもりが、再燃したオカリュー問題に改めて頭を抱へる。
 今をときめく和泉聖治昭和59年、間に一般一本挿んで裸映画第二作は実父の脚本を得た買取系ロマポにして、山内大輔が「欲望に狂つた愛獣たち」(2014/主演:みづなれい)でリブートするまで、ロマンポルノで計六作ランダムに製作された愛獣シリーズの一旦最終作。といつて、早々に上京して以降はオーソドックスな人捜しに暫し終始。奈津子役の沢田和美もワイルドにもソリッドにも欠き、“愛獣”だの“熱く”だの“凌す”と煽つてみせるほどの、猛々しさには終に遠い。とりあへず、和泉聖治の少なくとも裸映画を見るのは初めてなのだが、フェードアウトになる毎に妙にドキドキしてしまふのは我ながら如何なものか。義母である以上、血は繋がつてゐないのだから余計な心配するな。実は母娘二代揃つてレイプ体験のある奈津子が、しかもその際感じてゐたことを想起し―父親が忌避した余所者の―淫らな血は―可奈子ではなく―寧ろ自身に流れてゐると思ひ至るラストは、前述した主演女優の突破力不足―と男主役たる山田桂司の不甲斐なさ―に遮られ、ひとまづ出来上がつたお話といふ程度の印象に止(とど)まる。諸刃の剣的に手堅く纏まり派手にブッ壊れもしない反面、平板な始終で一際目を引くのは、奈津子が自らのレイプ体験―劇中何時時点の事件なのか、同じ日焼け跡―を想起する件から、エンド・クレジット時のストップモーションまで都合四度、いはずと知れた「地獄の黙示録」(日本公開は昭和55)に於けるウィラード大尉が沼からヌマーッと顔を出すアレを、堂々と丸パクr・・・もとい触発された心象ショットを撃ち抜いてみせるチャーミング。全体奈津子の如何なる心境を表現しようとしたものか、明示的な意味はまるで伝はらないながら、それは迫力勝負のオリジナルからさうなのだから気にするな。「うは、ウィラードだ!」、その底の抜けた衝撃こそが全てでいいではないか。

 最後に、奈津子を犯す二人組の片方が、公開当時二十七歳の山科薫、となると今年還暦か。クレジットがあらうとなからうと、一発で山科薫と知れる今と本当に全く一欠片たりとて変らなさが明後日だか一昨日に感動的、この人幾つの時点で完成してたんだ。


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 「性獣のいけにへ」(昭和59/製作:オフィスツー/配給:新東宝映画/監督:麿赤児/脚本:丸山良尚/製作:大阿久和夫《オフィスツー》/撮影:長田勇市/照明:長田達也/助監督:東山通・岩永敏明・高橋博/撮影助手:小川真司/照明助手:上田成幸/音楽:太田洋一/編集:鈴木歓/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/スチール:岡本昌己/衣裳協力:自前多数・感謝/製作補:大塚聖一/タイトル:日映美術/製作協力:大駱駝艦、大鯨艦、シアター・パラダイス、保苅藤原設計事務所/出演:花真衣・紫衣名・伊藤清美・沙覇羅ナナ・古川あんず・三宅優司・行田藤兵衛・束間燃・田村哲郎・大杉漣・松田政男《友情出演》)。衣裳協力クレジットのオネストに草。
 深い森の中、旧日本軍の軍服を着た大杉漣が女をうねうね拉致。家財道具一式抱へ、男と女が線路の上を逃避行。木々の間から、男が女を負ぶつて出て来る。西部劇のロケーションのやうな土手、何某か弦楽器を抱へた男を乗せた乳母車を、女が押す。一般映画はだしの四ショットを叩き込んだ上で、改めて深い森の中に競り上がつて来るタイトル・イン。過半数手も足も出ない俳優部に先に白旗を揚げておくと、一組目と二組目の女が、紫衣名と沙覇羅ナナなのだけれど何れが何れなのか特定出来ないのが最大のアポリア、ビリング推定だと紫衣名が一組目。アバンでは遠過ぎてまるで見えないが、花真衣と伊藤清美が四組目と三組目の女。行田藤兵衛・束間燃・田村哲郎の三人が、多分二組目から四組目の男、正直もうどうしやうもない。
 Y字の三叉路の集合部で、学生服のミハシ(ビリング推定で三宅優司?)がトランクに腰を下ろしてゐる。そこに通りがかつた二組目の伊達男と女に、ミハシは下宿屋・カワモトの道を尋ねる。辿り着いたミハシを、軽く白塗りのカワモト由紀子(紫衣名?)が出迎へる。カワモト邸は隙間だらけで、漏れ聞こえる物音に誘はれミハシが二組目の伊達男が女を手篭めにする現場を覗いてゐると、部屋に入り込んで来た由紀子の兄と称するタカシ(大杉)は、女・タマエ(沙覇羅ナナ?)と伊達男は夫婦で、手篭めにするのも何時もの夫婦生活であると伝へる。ミハシの階下に住む花真衣の連れの男は両足を失つた傷痍軍人で、フクザワの連れの女・シズエ(伊藤)の、心臓には穴が開いてゐた。そしてただの仮住まひを求めた学生などではなく、何事か任務なり大義を帯びたらしきミハシも、一丁のオートマチックを所持してゐた。
 出演者残り松田政男は、カワモト邸の庭にてミハシとミーツする刑事。プロテクター舞踏を披露する古川あんずは、本物のカワモト由紀子。プロテクター舞踏に至る顛末が、一ヶ月に亘る監禁凌辱の末にさうなつたとかいふ方便が、白々しい実も蓋もなさが笑かせる。因みに古川あんずと田村哲郎は、この時遠く既にex.大駱駝艦。
 如何なるものの弾みか話の転がりやうか、昨今は大森立嗣・南朋兄弟の父親としても知られる麿赤児唯一の映画監督作が、しかもピンク。一癖二癖どころでは済まなさうな男女が集ふ浮世離れた館に現れた、拳銃持ちのセイガク。やがて官憲も介入し、謎が謎を呼ぶ、といつて、通常のミステリーが繰り広げられる訳では、別にない。片仮名にせよ平仮名にせよ、“アングラ”の四文字で括られる領域の空気に支配された始終は、通常か明確な起承転結の構築は、恐らく最初から志向してゐまい。二三四組目が愛欲に溺れる形で、花真衣と伊藤清美をも擁し濡れ場も回数だけならば設けられるものの、これ本当に三百万で撮つてゐるのか甚だ疑問に映る、下手に重厚な撮影と、男優部中唯一覚えのある大杉漣が本格的な絡みに参加しない逆説的な配役も勿論響き、直線的な煽情性には甚だ遠い。ミハシがカワモト邸にやつて来た目的が終ぞ明らかとならないのはまだしも、また選りにも選つてこの野郎の口跡が如何せん不安定で、要の台詞が所々聞き取れずただでさへ劇中世界に重く立ち篭めた霧を、なほ一層深くする始末。当時的にはこれで最先端であつたのやも知れないが、この頃のシンセによるペラッペラの劇伴も、今となつてはキツい。完全に諸手を挙げたのは、その時点では全く意味不明―また偽由紀子も軽く白塗るものだから識別に難い―であつた、タカシが体の表に鉄板を装着した完白塗りの女を責める一幕。ぱぱぱぱで「星条旗よ永遠なれ」をがなる大杉漣に後ろから突かれる古川あんずが、朗々とドイツ語で「歓喜の歌」を熱唱し始めるに至つて、潔くか力尽きて完敗を認めた。兎にも角にもつもりが判らぬゆゑ、新東宝が頭を抱へたかどうかは兎も角、小屋は匙を投げたにさうゐない頓珍漢作。量産型娯楽映画の荒野に毒々しく咲いた、一輪の徒花である。


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 「異常暴行 美肉ぐるひ」(1992『女子大生監禁 バイブ地獄』の1998年旧作改題版/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:河中金美・田中譲二・植田中/照明:秋山和夫・宮内倫史/音楽:藪中博章/編集:《有》フィルム・クラフト/助監督:杉山正弘/制作:鈴木静夫/ヘアメイク:小川純子/スチール:岡崎一隆/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:露木陽子・深乃麻衣・五月純・栗原良・芳田正浩)。
 大写しの女の舌舐めずりにクレジット起動、片や、街行く女々に声をかける芳田正浩。女が男の乳首にキスマークを残し、芳田正浩は“君の人生が変る話”とあんまり殺せさうにはない殺し文句で、モデルのスカウト然と女々に声をかけて回る。女は男の首筋も舐め、舌と舌を絡める。ロケーション的には新宿か渋谷か何処ぞの映画館街、一人も捕まらない芳田正浩が苛立たしげに上着のポケットから取り出した二つの銀色のローターを、掌の中でチャカチャカ回してタイトル・イン。ここまで開巻実は、その人と知れる形では芳田正浩しかフィーチャーしてゐない。
 女子大生の美咲(露木)が、パパさんの本郷(栗原)に旦々舎名物ブリ尺ことブリーフの上から口唇性行、見てゐるリアルタイムで思ひついた。栗原良が露木陽子の顔の上に体を移すのは、下から大股開きでグイングイン腰を振るグラインド込みで、豪快に煽情性が爆裂する斬新な体位あるいは画かも。一方、芳田正浩(以後芳正)は三番手を何となく捕まへることに成功。その際資料と称して女に見せる、コンパニオンの3万円~8万円からアダルトビデオの100万円~200万円まで諸々記載されたモデル別ギャラ一覧表中、ウェデイン―グ―ドレスなるポップな脱字が微笑ましい。フィニッシュまで力強く走りきる美咲と本郷の一戦に並走して、芳正はまんまと車に乗つた三番手をハンカチに染ませた何某かの薬物で水のないプール。檻の中に監禁された三番手は命惜しさに体を開き、どうやら、幼少期に目撃した張形で自慰に耽る母親(露木陽子の二役)の痴態にトラウマを派手に拗らせると思しき芳正は、こんなもんで感じるんぢやねえよと腹の中で慟哭しながらバイブで責める、やゝこしい男だ。
 愛人の性欲の強さに白旗寸前の本郷と、そんな情けないパパさんに臍を曲げる美咲の姿を噛ませた上で、配役残り右の胸元に薔薇の刺青のある深乃麻衣は、兎に角有名になりたくてアダルトビデオであらうと何だらうとザクザク芳正のキャッチに乗る二番手。勿論、三番手同様檻の中に直行する。
 薔薇族込みで浜野佐知1992年全十二作中第十一作のDMM戦、残弾数は僅か一。未だ地元駅前ロマンに着弾してゐないデジエク復活作含め今後の新作と、エクセスがDMMでも見られないド旧作を小屋に放り込んで来る気配もあるにせよ、なかなか以上に厳しいところではある。昭和・平成と、再来年からのその次。浜野佐知にはシレッと元号を三つ跨いで、ピンクを撮り続けてゐて欲しい。目下その可能性を保持するのは浜野佐知のほか今上御大に、渡邊元嗣と関根和美。全員普通に達成してる気も、しなくはない。
 二三番手の最終的な去就は綺麗に等閑視したまゝに、芳正は母親と瓜二つの美咲と出会ひ、当然捕獲する。手も足も出しやうがない本郷は蚊帳の外に、性豪ぶりを誇る美咲と舌を巻く本郷の相対なんぞ完全に何処吹く風、映画は監禁ものに完全に軸足を移す。となると適当な文言を並べただけで意味は殆どない新題よりも、映画の中身に全く即した旧題の方が断然判り易い。
 監禁ものに移行したら移行したで、特段新味にも踏み込みにも一見欠いた展開は、終盤二度弾ける。芳正のローター責めに、美咲が失神。すると芳正は生きてはゐるけれども意識的に反応しはしない肉体に、“眠れる美女”だ“生きてるマネキン”だ、“血の通つたダッチワイフ”だと垂涎狂喜。今なほ山﨑邦紀の中で脈々と息づくピグマリオン・コンプレックスの、プリミティブな萌芽が興味深い、更に先立つものもあるのかも知れないけれど。山﨑邦紀に続いて、今度は浜野佐知が面目躍如。一旦覚醒後、再度水のないプールに沈められさうになつた美咲は、「何度も同じ手を喰ふと思ふの?」と華麗に大逆襲。「貴方生身の女が怖いんでせう」、「私みたいなスケベな女」と剛球をドッカンドッカン放り込みつつ美咲が騎乗位でガンガン気をやり芳正を制圧するのは、浜野佐知かく戦へりを叩き込む文字通り女性上位の十八番。平板な監禁ものがラスト十分で大化けしたと、その時点にあつては括目した。括目してみた、ものの。絡み要員どころか、どうやら壊れて母親になつたらしき芳正の去就も矢張り殆ど等閑視した上で、残り尺を自力で帰還した美咲と―ただ仕方なく待つてゐた―本郷の締めの濡れ場で堂々と駆け抜け、後には何にも残さない映画的に無体な結末は、ある意味量産型娯楽映画らしい無頓着なドライさが清々しい。


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 「制服挑発 下着の奥」(1992『制服ギャル 下着大図鑑』の1999年旧作改題版/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:笠井雅裕/脚本:瀬々敬久/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:今岡信治/監督助手:原田兼一郎/撮影助手:小山田勝治/照明助手:広瀬寛己/スチール:佐藤初太郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:佐倉ちひろ・浅野桃里・桜井あつみ・久須美欽一・杉本まこと・池島ゆたか・佐野和宏・広瀬寛己・飛田翔・佐藤宏・小獅子)。出演者中、広瀬寛己以降は本篇クレジットのみ。寛巳でなく寛己なのは、クレジット通り。
 タイトル開巻、窓の中から抜いた街景に、嬌声が被さる。カメラがパンすると、吃驚するくらゐに綺麗なTバックの尻。主不在の零細芸能プロダクション「浅見企画」、何故かナース服を着たアイドルくずれの演歌歌手・羽生沙耶(浅野)と、歌手くずれのマネージャー・稲田ケンジ(佐野)の開巻を飾る一戦。ダボッとしたジージャンが80年代の残滓を引き摺る佐野和宏のファッションには目を覆ひつつ、どうやら本当に演歌系の芸能プロらしき、ロケーションは全体何処なのか。何時の間にか日も暮れて、繁華街に大きなキャリーバッグを引き如何にも上京して来ました風情の佐倉ちひろ。社長の浅見(池島)が帰還するも、大絶賛事後にも関らず沙耶と稲田は衣装探しを方便に悪びれるでもない浅見企画に、九州旅行中に浅見が歌声に惚れ込み口説き落としたバスガイド・鷹栖幸子(佐倉)が現れる。見るから垢抜けない幸子を沙耶は小馬鹿にする一方、浅見は幸子と沙耶を組ませての、演歌界初の制服デュオを目論む。幸子のバスガイド姿は兎も角、ところで沙耶はどうして看護婦なのかといふ何気に根本的な疑問に対しては、最後まで一欠片の解答も提示されない。
 出演者残り杉本まことは、幸子が東京での宿を頼る今井タクロー。関係性を一切語らず―後述するリカに、今井が幼馴染と釈明―その夜に突入する濡れ場には、ルーズな作劇に匙を投げるばかり。桜井あつみは、一悶着経てションボリ帰つて来た幸子を更なる絶望の底に叩き落す、実は今井の婚約者・大森リカ。この人の制服は、制服のまゝ男の家まで来た客室乗務員といふ豪快な寸法。三番手にヒロインの傷口に塩を塗らせる用兵はそれなりに秀逸にせよ、要はコスプレといふエクセスからの御題に対し、造形に上手く組み込まうとする工夫を覗かせたのは幸子のみで、二三番手に関しては力技でしか対応してゐない。広瀬寛己は、今井宅から飛び出した幸子の、歌を褒めて呉れるルンペン。この件のガード下のロングや、終盤、稲田の置手紙を読んだ幸子の目が据わつたショット。画的な文字通りの見所は、ちらほらなくもない。久須美欽一はオリオンレコードからデビューの決まつた幸子を、浅見が売つた作曲家の先生かプロデューサーとかその辺り。その他多分佐藤宏がアダルトビデオ監督で、絡み推定で飛田翔が男優。恐らく獅子プロ内トラの小獅子―それ以上は特定不能―は、稲田のギターで流しのプロモーションに出撃した幸子に、ピンサロ感覚で手を出す性質の悪い酔客か。
 滝田痴漢電車を観に行くと大体な確率で名前を見かける笠井雅裕は、獅子プロで約十年の助監督修行を経て、何のものの弾みかロマポばりに尺の長い「いんらん姉妹」(昭和63/新東宝)でデビュー。以来新東宝とエクセスでピンク十四本と、ENKで薔薇族を二本監督。今作は1992年第二作にして、ピンク映画最終作。因みに橋本杏子―この人と杉原みさおの、齢の取り方には少なからぬ衝撃を受けた―の元夫としても知られる笠井雅裕がハシキョンと結婚したのはピンクから足を洗ふ前年のことで、自身の会社を興した笠井雅裕は、AV戦線で今なほ現役である。
 脚本が瀬々敬久だからといつて、しかもエクセスで徒にポリティカルな方向に振れてみせるでもなく、歌を全然聴いて貰へない幸子が煽情的な赤の下着で流してみたところ一時的に好評を博したり、アイドルに返り咲くと息巻き浅見企画を飛び出した沙耶が、選んだ道はAVアイドルであつたりだとか、浪花節か雑草系の奮戦記的には全く順当な、順当過ぎて殆ど平板な展開に終始。沙耶に連れられる形で浅見企画と袂を分つた稲田が、社長とのキャンペーンの最中、ラジカセが故障してオケが止まつた幸子の窮地に、様子を窺つてゐた物陰からギターを抱へて飛び込むベタなシークエンスは、何で稲田が一々ギターを持参してゐたのかさへさて措けば佐野和宏の突破力に支へられ軽くグッと来る。となると、といふか兎にも角にも苦しいも通り越し十二分に致命傷たり得るのが、滑舌に影響を及ぼすほど顔の曲がつた主演女優のエクセスライク。録音スタジオにて幸子が久須りんに手篭めにされる一幕、あまりにも発声が不安定で、バルタン星人ばりにビブラートする悲鳴には腹を抱へた。当然、全篇を貫く歌唱の方もお察し。桜井あつみも桜井あつみで所詮はオッパイ頼りの御愛嬌ぶりで、まともな女優が浅野桃里一人きりの脆弱な三本柱は、オーソドックスな娯楽映画のセンで攻めるには如何せん厳しい。ある意味、プロフェッショナルの矜持を持つ沙耶が何処の馬の骨とも知れない幸子を軽視する構図と、実際の浅野桃里と佐倉ちひろの立ち位置が綺麗に相当してゐるともいへ、斯様に屈折してゐるのかゐないのかよく判らない配役が、下手にハマッてみたところで始まらない。幸子と稲田が付くのか離れるのか、グダグダ右往左往するキレの悪いラストまで登場以降始終佐倉ちひろに支配され、この時既に、笠井雅裕はピンクに留まる情熱を失つてゐたのかしらんとすら邪推しかける、挽回の気配なり気骨を感じさせない負け戦である。


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 「女囚101 性感地獄」(昭和51/製作:日活株式会社/監督:林功/脚本:久保田圭司・大原豊/プロデューサー:海野義幸/撮影:山崎敏郎/照明:新川真/録音:秋野能伸/美術:柳生一夫/編集:井上親弥/音楽:多摩零/助監督:高橋芳郎/色彩計測:田村輝行/現像:東洋現像所/製作担当者:服部紹男/出演:珠瑠美・山科ゆり・丘奈保美・牧れいか・木島一郎・織田俊彦・浜口竜哉・森みどり・梨沙ゆり・嬢沙菜恵・飯田紅子・野村真樹・雪丘恵介・玉井謙介・谷口えり子・伊豆見英輔・小泉郁之助・橘田良江・北上忠行・小見山玉樹・影山英俊・水木京一・近江大介)。出演者中、雪丘恵介から伊豆見英輔と、北上忠行以降は本篇クレジットのみ。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 三年の実刑判決を喰らひ、愕然とする珠瑠美の馬面を左に置き、右半分を大書で埋め尽くすタイトル・イン、完璧な強度の画面設計には惚れ惚れさせられる。
 珠ならぬ多摩女子刑務所、妙に場慣れしたズベ公達からは一応浮いた萩村佐夜子(珠)は―何故か100は欠番の―101号の番号を頂戴し、99号パン女の志村紀代美(牧)らとともに、内藤珠江(丘)が房長の24房に入る。一同をドン引きさせる佐夜子の罪状は、ズバリ殺人。夫の勇治(織田)を送り出した直後に押し入つた暴漢(小見山)を、小夜子はネクタイで絞殺。激しく抵抗するどころか、まさかの返り討ち。但しそもそも小見玉は、小夜子の浮気をでつちあげて離婚に持ち込まうとした、勇治の姦計の弾だつた。
 別に大した物語もないゆゑ大体登場順にサクサク配役残り、橘田良江・木島一郎・浜口竜哉は女看守の牧村和美と看守主任の鮫島に、多摩女子に常駐するハンサム医師・肥沼、ハンサムにはハンサムぽい名前つけたれよ。山科ゆりは24房で珠江中心の輪からは外れ、馴染めぬ同士で佐夜子と仲良くなる小林ユキ。森みどりは24房最年長、既にアガッた佐川スギ、梨沙ゆり・嬢沙菜恵・飯田紅子・谷口えり子はその他女囚要員。女優部ならぬ女囚部は、風呂だ何だで全員脱ぐ。北上忠行は懲罰房で佐夜子を犯す看守の田中、玉井謙介と近江大介はその他看守。野村真樹が、勇治の浮気相手・川島マキ。社長の娘をオトして、高級クラブの店長の座につかうとかいふセコい寸法。とこ、ろが。人を呪はば穴二つ、影山英俊は、佐夜子を捨てた勇治も捨てる、マキが乗り換へるプレイボーイ。ムービーウォーカーにも記載のない水木京一は、生後二ヶ月のサキコを死なせたクズ亭主、恐らくユキに殺される、小泉郁之助は多摩女子所長。雪丘恵介は、これで絡みで締めてるラスト・カットを介錯する年配、多分お金持ち。最後に刑事役とされる伊豆見英輔が、刑事が何処に出て来たのかからよく判らない。
 翌年もう一本の女囚101「女囚101 しやぶる」(昭和52/監督:小原宏裕/脚本:松岡清治/主演:谷ナオミ)とは、森みどりが丸つきり同じやうな役で出て来る以外には、一欠片たりとて掠らない林功昭和51年第四作。もう一点、“性感地獄”だ“しやぶる”だと、辞書を開いて目に入つた単語をつけてみたが如く、適当極まりないタイトルも共通してゐる。
 女子刑務所と来れば百合の花咲き、淫湿もとい陰湿な苛めが横行する。遠く過ぎ去つた時代の色合ひ以外には、これといつた見所を探すのも難い一作ながら、仮に量産型娯楽映画の神髄を類型性に求めるならば、今作のやうな純然たるフォーマット映画こそがその鑑であるとする強弁も、やらうと思へば出来なくもないやうな気の迷ひも、しないではない、せんでええけど。徐々に株を上げる佐夜子と、派手に撃墜された珠江が、前段珠江のハチャメチャな大暴走込みで対峙するのが、残り尺考へると些か早過ぎやしないか?と訝しんでゐると、ラストといへば誰か殺さないと気が済まない乾燥したセンスと、無様に破滅に至る男の一方、女は逞しく生きる的な、まるで脊髄反射か自動出力で脚本を書いたかのやうな清々しいほどに心のこもらないオーラスが、グルッと一周して琴線に触れる。何となくか、やんはりと。


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 「めぐる快感 あの日の私とエッチして」(2016/制作:ナベシネマ/提供:オーピー映画/監督:渡邊元嗣/脚本:山崎浩治/撮影・照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/助監督:永井卓爾/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:猪本太久磨・岡村浩代・磯崎秀介/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/効果:梅沢身知子/仕上げ:東映ラボ・テック/協賛:GARAKU/出演:星美りか・里美まゆ・横山みれい・橘秀樹・小滝正大・ケイチャン)。
 モノクロ無声映画風味の開巻、上野の王比伊神社。何時の時代か、浴衣姿で縁結びのお百度参りに励む彩香(星美)に、願ひが叶つて和服の修平(橘)が指輪を贈る。装ひと求婚の風俗との齟齬如きさて措き、威圧的なまでに胸元をいはゆるロケット型に盛り上げる、星美りかのオッパイが凄え。そして現代、UFOは未来人の乗つたタイムマシンだ何だと他愛ないムー話に盛り上がる、彩香と凜香(里美)の片桐姉妹に加へ、大森修平と川島司(小滝)の大蔵大学都市伝説研究部の面々。今はその手のネタも、ミミズバーガーやラジオ体操第4と十把一絡げに都市伝説に括られるのか。因みに小滝正大(ex.小滝正太)は、「熟妻と愛人 絶妙すけべ舌」(2012/監督・脚本:後藤大輔/主演:春日野結衣)から四年ぶりのピンク復帰。彩香の、過去にメールを送るといふ思ひつきにヒントを得た修平は、司が学ランの下に着る白Tにやをら数式を書き殴り始める。アルプス一万尺の二番を手遊び込みでフルコーラス噛ませた上で、夢を追ふ将来を熱く語る修平に彩香がウットリしてタイトル・イン。往々にして渡邊元嗣が仕出かす、下手にデジタルな安つぽいタイトル・インはどうにかならないものか。フィルム時代から、元々頓着ないのか酷い時はスッカスカな手の抜きつぷりに逆の意味で驚かされることもあつたが。
 三年後、普通に就職した彩香に対し、修平は発明と起業の準備期間と称して、姉妹が同居するマンションの一室にどう見ても自堕落に寄生。片や凜香が挙式間近の司は一流企業で順調にコースに乗り、ヒモを抱へ煮詰まる姉とは対照的に妹は玉の輿をゲットしつつあつた。こんな筈ぢやなかつた感を拗らせる彩香のスマホに、“過去の自分にメールを送れるサービス”との「過去ポスト」なる正体不明のアプリが着弾する。戯れに彩香が過去の自分に修平とは付き合はぬやうメールを送つてゐると、世界的なIT起業「リンゴ社」代表取締役のスティーブ・成仏(名刺オチで一切登場せず)に、SNSを介して認められた朗報を持つて修平が現れる。双方感激した流れで突入する絡み初戦、ミッチリ完遂したのち満ち足りた彩香がフと傍らを見やると、隣にゐるのは修平の筈が何と司。事後の軽い後悔がまんまと当たり、彩香が過去ポストで昔のメルアドに送信した忠告メールによつて、現在の歴史が変つてしまつてゐたのだ。
 配役残り、二作続けてトメを譲つた横山みれいは、多分寿退社済みの彩香が愛妻(予)弁当を届けに向かつた司と、見るから怪しげに逢瀬するバツイチ子持ちの先輩・重森紀子。「本気の恋でも潔く身を引くのが年上女の心意気」が、男をオトす必殺の殺し文句。クローゼットの中からラストに文字通り飛び込んで来るケイチャン(ex.けーすけ)は、ドッペルならぬドッピュルゲンガー。斯様な駄中の駄洒落をどさくさ紛れでも何でも形にし得るといふのも、確かにさうさう得難いタレントではある。
 改めて近年ナベシネマを振り返つてみたところ、降順に此岸と彼岸を跨いで全身整形生前の記憶を移植した瓜二つロボット時空を超える女忍者と来て、日本消滅回避を賭けての神と悪魔に板挟み。フィルム最終作にナベシネマズ・エンジェルも大量動員しての処女の難病ものは比較的おとなしいにせよ、相変らず易々と時空を超えてみたり衝撃のディストピア結末を叩き込んだ上に、人類の存亡を巡り天女とセックスどストレートなインセプション既視感もなくはない人造人間悲譚、涙腺を決壊させるみるくの恩返しと、見事に連なる種々雑多に飛び道具を満載したファンタなフィルモグラフィーにはクラクラ来る。完全に日常の地べたに止(とど)まる物語となると、オッパイ姉妹の恋愛ドタバタを描いた2013年第一作「姉妹相姦 いたづらな魔乳」(2013/主演:ティア・眞木あずさ)まで、何と十二作遡らなければならない徹底した軌跡には圧巻の言葉しかなく、更にその前作では相変らず地球壊滅の危機を迎へてゐたりする。ここいらで2009年第一作「しのび指は夢気分」(主演:夏井亜美)以来、エース格といふポジションも踏まへるならばなほさら大概御無沙汰の、ナベ痴漢電車を出発進行してみせるのは如何か、痴漢電車の基礎理論「ベッドの上で起こることは、全て電車の中でも起こる!」を定立したのは渡邊元嗣と山崎浩治のコンビなんだぜ。
 そんなこんなで渡邊元嗣2016年第二作は、送信速度が正しく光速を超えるメールが巻き起こす、四角だか五画だか六角関係。うん、何時も通りのナベだ。要はヒロインの打算が誤算を生む利己的極まりない展開ながら、司と凜香も同じ穴の狢に据ゑ彩香の現金さを薄める方便も有効に、“いまを選ぶのは、未来のわたしぢやない”と彩香に臆面もなく撃ち抜かせるエモーションを、しみじみと爽やかなオーラスで補強し堂々と成立してのけるのが、一途な真心に熟練した技術の伴つたナベシネマの強さ。瑣細はかなぐり捨て、一撃に全てを賭ける凄味には、渡邊元嗣の娯楽映画に対する鉄の信念が透けて見える。時の流れまで含め縦横無尽に入り組むお話を入念に進行する代償に、主演女優でさへ二回、二番手三番手はともに一戦きりと回数こそ確実に少ないものの、その分結構エグく攻める濡れ場は何れも腰から下への訴求力が高く、裸映画的にも遜色なく安定する。一見さうは見えない里美まゆもいはゆる脱いだら凄い系で、巨乳部を三枚揃へた三本柱は眼福眼福。実は修平にも過去ポストが着弾してゐた、馬鹿丁寧なパラドックスよりも、絵馬を通して過去の自分からのメッセージが届く方が寧ろ豪快な力技ともいへ、さういふ些末な野暮はいひない。身勝手な右往左往を無理から美しい帰結に引つこ抜くパワー系の一作を、ドッピュルゲンガーが一旦ガッチャガチャに散らかす如何にもナベシネマらしいラストを、胸に染み入るオーラスで再度締め括る構成は矢張り心憎い。

 唯一の心残りは、脊髄反射で内トラが予想された、凜香に言ひ寄る童貞デブ上司役の永井卓爾の不発。いや、蛇足・オブ・蛇足に過ぎないのは判つてゐる。


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 「聖なるボイン もみもみ懺悔室」(2016/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/助監督:小関裕次郎/音楽:OK企画・友愛学園音楽部/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/監督助手:植田浩行/撮影助手:佐藤雅人/スチール:本田あきら/出演:折原ゆかり・伊織涼子・加山なつこ・深澤幸太・柳東史・世志男・津田篤・広瀬寛巳・なかみつせいじ)。
 何故かプロレスラーの宣材ばりに大きく胸を張つた、竹中神父(なかみつ)のポスターみたいな遺影から、カメラが下がつて引くとシスター服の三本柱が手を合はせてタイトル・イン。三人前の修道女服をレンタルするのが関の山だつたのか、安普請も通り越しスカスカな美術に開き直るが如く、手前に添へられた線香の無造作な折衷感は微かにクスリと来る。それと、結局回想カットのひとつ設けられるでなく、写真一枚限りの登場に止(とど)まるなかみつせいじが、ゼロ特記でトメに座るのには軽く驚いた。
 出所したヤクザの立花柳二(深澤)が、拾つて呉れた酒屋の大将・島本(世志男)のライトバンでヤサを目指す。ヴィジュアルは百歩譲るとして、スーパーライトどころでは済まず江端英久1ミリ的に軽い深澤幸太の発声に、幾らやさぐれた2.5枚目を気取つてみせたところで、苦笑すら漏れぬ居た堪れなさを禁じ得ない。閑話、あるいは憎まれ口休題、ベランダに干された真黄色のパンツに、ミズエ(名前しか登場しない)が待つてゐて呉れたものかと感激した立花が、玄関が開くなり抱きついた女は、レッドな他人のシスター絵美(折原)。当然双方ワーキャーする騒ぎとなり、続けてシスター怜子と香織(伊織涼子と加山なつこ)も顔を出す。かつての住居が今は三人が暮らす「のらKYOUKAI」に変つてゐるのを確認した立花が、諦めて立ち去らうとすると照明が赤く一転するとともに、ホンワカホンワカOK劇伴起動。修道女が三人がかりで立花に迫る、のは、「のらKYOUKAI」の隣に住む官能小説家・小林トオル(柳)の『破廉恥シスターシリーズ』作中の出来事。怜子と香織の二人で営業する「修道女BAR マリア」で痛飲したものの、飲代を払へなかつたシケた立花は、小林が破廉恥シスターシリーズにマリアを実名登場させたばかりに、ストーカー的な痴漢の出没に悩む店の用心棒の座に納まることに。
 配役残り広瀬寛巳は、相対論かも知れないが意外な巨体で妙な戦闘力を発揮する大立ち回りを披露する、プリミティブにワイルドな痴漢氏。津田篤は小林先生担当編集のヒムセルフ、怜子に筆卸して貰つた小林が書き上げた、シリーズ最新作「破廉恥シスター 童貞おどり喰ひ」に感激のあまり、勢ひ余つて薔薇を咲かせかける。
 最早暗雲も立ち籠めない、加藤義一2016年第三作。座付脚本家の深澤浩子への変更に、一旦胸を撫で下ろした向きも見受けられるやうだが、加藤義一、依然全然ヤバいのではなからうか。娑婆に戻つて来たヤクザ者に、訳の判らん聖なるボイン三連星と、隣人のポルノ作家、ひとまづ如何にもピンク映画的な面子は揃つたかに見える。否、少なくとも形式的には揃つてゐた。そこから香織×島本、怜子×小林、そして絵美×立花。三者三様の色恋沙汰が並走するのも十全な展開とはいへ、満足に交錯するでも深く踏み込まれるでもなく、要は何れも精々三番手程度の濡れ場ばかりを連ねた始終は、エモーションの結実には終に遠い。ただでさへ脆弱か非力な人情ドラマを、挙句に浩子について来る幸太が軽く薄く逆噴射する始末とあつては、加藤義一の発掘脚本家との心中路線は相変らず。ついでに、機能のキの字にも至らない些末な小ネタが火に油を注いで癪に障る。今時、ダンプ松本の「マジだぜ」を覚えてゐる観客が、小屋に全部で百人ゐたとして全体何人ゐるといふのか。殆ど唯一の見所といへば、初めて加藤義一が深澤浩子と組んだ前々作にして、熟女・爆乳AV女優ユニット「3boins」初戦の「ボインのお宿 熟女大宴会!」では撃ち損ねた、六峰の巨山を連ねるジェット・ストリーム・アタックを放つたくらゐ。繰り返すが、加藤義一は依然全然ヤバいのではなからうか。破綻してゐないだけで、何もないところで安定してる。ツッコミの愉楽にも欠く寒々しい白夜の荒野にも似た一作に、弥増す徒労が骨身に染みる。

 ペテン師な竹中神父の造形は前作「巨乳OLと美乳人妻 ~北へ向かふ女たち~」(主演:福咲れん)と合致するものながら、最終的な同期は図られず。


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