真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「W不倫 寝取られ妻と小悪魔娘」(2017/制作:関根プロダクション/提供:オーピー映画/脚本・監督:関根和美/撮影:下元哲/照明:代田橋男/助監督:加藤義一/編集:有馬潜/監督助手:小関裕次郎/撮影助手:榎本靖/録音:シネキャビン/スチール:本田あきら/仕上げ:東映ラボテック/効果:東京スクリーンサービス/出演:江波りゅう・きみと歩実・あやね遥菜・竹本泰志・津田篤・なかみつせいじ)。
 サド全集とか適当に並ぶ書架を舐めた先の、PC画面にタイトル・イン。何処そこ大学心理学教授の吉永修一(なかみつ)が、当時の学部長を媒酌人に見合結婚して十年の妻・笑子(江波)を、戯れにでもなく鞭打ち責めてみる。いやしくも心理学徒が、所詮文学者のサドを出汁にいはゆるマゾ気質を女にア・プリオリなものと看做す態度には猛烈に疑問も覚えつつ、どエロい江波りゅうの乳出し下着に免じ、然様な些末はこの際さて措く。最初はノリが悪かつたものが、攻守交替するや笑子が俄然ノリッノリになり、最終的には何時もと変らぬ早打ちの吉永が妻を待たず果てた事後。先にシャワーを浴びようとベッドから離れ際笑子が残した溜息に、吉永は地味に衝撃を受ける。その話を聞いた準教授の村木健吾(竹本)が、出し抜けな突破力で尽力を申し出た翌日か後日、吉永が大学の自室に入らうとすると、見知らぬ女が。部屋を間違へたかと踵を返しかけた吉永を、村木が手配した専任秘書・夏目ひとみ(あやね)が引き止める。一方その頃吉永家には、如何にも関根和美らしいアバウトさで面識の有無は語られないまゝに、最初から妙に距離の近い村木が笑子を訪ねる。
 配役残り津田篤は、後述する祥子の同棲相手で、研究員の高嶋信人。それ以外には内トラ一人見切れない純然たるデフォルト、あるいはミニマム布陣。吉永の教授室は兎も角、キャンパス内に模した―つもりの―ベンチが、どう見てもそこら辺の公園にしか見えない画は如何なものか。せめて、すぐ背中が往来でないロケーションを摸索すればいいのに、オープンキャンパスにもほどがある。
 豪快な荒業を繰り出す前作を剛とすると、今回は柔の関根和美ともいふべきNSP“ニュー・関根和美's・ピンク”2017年第二作。剛といふか柔といふか、二作一緒くたに業とでもいふか。映画前半は、吉永のスキャンダル失墜を目論む、村木の夫婦個別撃破。後半も成立する“W不倫”(吉永夫婦)は兎も角、“寝取られ妻”(笑子)も“小悪魔娘”(ひとみ)も全て額面通り揃つてゐる。ところが村木と、実は元カノであつたひとみの本濡れ場を務め上げたところで、三番手はザクッと退場。色恋に関する経験値不足を自認する小心さに基づき、ひとみの解雇を吉永が台詞一言で告げるや、村木に提出するレポートの期限を諸々に忙殺されスッ飛ばし、吉永に泣きつくハーバード大への留学も決まつた才媛・君田祥子役のきみと歩実大登場。足元を見る形で吉永が祥子に疑似恋愛を持ちかける後半は、主演―の筈の―女優も殆ど何処吹く風、完ッ全にきみと歩実が支配する。気がつくと高嶋が準教授に昇格してゐたりする割に、触れられさへしない村木の去就。木に竹を接ぐか手の平を返したハッピーエンドも、藪蛇に濁して絶妙に後味を悪くする。三本柱に恵まれ裸映画的には全く以て安定するにせよ、ブレるどころかある意味綺麗にスライドする軸転移なり、不用意な枝葉は典型的なNSPならぬUSP“ユージュアル・関根和美's・ピンク”。そんな中でも突発的な見所は、ひとみが一度は確かに吉永を籠絡する件。手渡された書類の何処に判を捺したらいいのか吉永が見つけられないでゐると、ひとみが横から体を密着させオッパイをグーイグイ押しつける、のは全然試運転。自らタイトスカートをたくし上げた上で、背面座位の格好で吉永に跨つたひとみが臆面もなくグリングリンしながらええとええとしてのける、今上御大・小川欽也も流石に呆れるかシャッポを脱ぐにさうゐない超弩級の駄メソッドには腹を抱へた。あと、クレジット画面は普通ゆゑ、仕上げではなく恐らく元々の撮影素材の問題か。全般的にといふか正しく全篇、フィルム時代のキネコを彷彿とさせる画質の粗さが目についた、別に懐かしくはない。


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 「日本夜伽話 パコつてめでたし」(2017/制作:多呂プロ/提供:オーピー映画/監督・脚本:荒木太郎/撮影照明:飯岡聖英/編集:酒井正次/現場演出:若月美廣/撮影助手:宮原かおり・岡村浩代/照明助手:広瀬寛巳/ポスター:本田あきら/制作:佐藤選人・小林徹哉/応援:中西さん/亀補助:三上紗恵子/音楽:龍宮首里音楽研究会/協力:福島清和・首里劇場/録音:シネキャビン/仕上げ:東映ラボテック《株》/カラリスト:石井良太/出演:麻里梨夏・塚田詩織・愛野ももな・西藤尚・本木幸世・淡島小鞠・平川直大・夕須虎馬・冨田訓広・小篠一成・稲葉良子/特別出演:牧村耕次)。出演者中、西藤尚・本木幸世と冨田訓広は本篇クレジットのみ。牧村耕次の正確なビリングは冨田訓広と小篠一成の間で、荒木太郎の俳優部に関してはオミットされる。とか何とか、あと少しの絶妙な情報量に屈する。
 可動ギミックを仕込む形で進化を遂げた多呂プロ立体ロゴと、亀の甲羅にタイトル開巻。国民年金を受け取りさゝやかにホクホク帰宅する浦島才蔵(小條)は、あちきなヒャッハー造形の不良少女三人組(西藤尚×本木幸世×淡島小鞠)が、亀を苛めてゐる現場に遭遇する。ここで、ともに銀幕初陣の小篠一成と本木幸世は黒テント一派。といふか、遅れ馳せながら今回初めて辿り着いたのだが、多呂プロでのキャリアをぼちぼち積み上げる冨田訓広がそもそも黒テント。この御三方、小篠一成は創立メンバーで、本木幸世と冨田訓広はそれぞれ2000年と2010年の入団。そして改めて声を大にして訴へたいのは、何がそんなにいいのか個人的にはてんでピンと来なかつた、アイドル扱ひで持て囃された現役時代よりも、西藤尚は顔の線がリファインされた現在の方が絶対に美人である、である(ドン!   >と机を叩いてみる
 収拾のつかなくなつた感情の発露は兎も角、亀を助ける引き換へになけなしの泪金を巻き上げられた才蔵は、亀を川に逃がした後(のち)とぼとぼとまさかのシネキャビンに帰宅。浦島家のロケーションは、荒木家を巧みに兼用してるのかも。軽く呆けた妻のさなえ(稲葉)は困窮した事態を理解しない中、長い付き合ひの大家の、ドライな息子(平川)が滞らせた家賃の催促に現れる。突きつけられた猶予は、非情か非常識にも二日、といふか少なくとも不法だ。何も出来ない一昼夜を通過した、シネキャ最後の夜。若き日のさなえ(塚田)の幻影に誘き寄せられ、自身も若返つた才蔵(夕)が騎乗位を完遂した淫夢明け、娘が満額家賃を払つて行つたと、ナオヒーローが領収書を手に現れる。謎の恩人を捜しに家を飛び出した才蔵は、川のほとりにてこの人?が金を出して呉れてゐた、助けた亀の化身・アンモナイト麻美(愛野)と出会ふか再会する。むかしでないけど浦島は、助けた亀につれられて。豪快にハンドメイドな紙細工と、要は夕須虎馬が愛野ももなを後背位で突くイメージを通して、亀の背中に乗つた才蔵は、琉球建築を王宮に模した竜宮エレン国に到着する。
 配役残り満を持して登場する麻里梨夏が、暗殺された国王に代る事実上の女王として、竜宮エレン国を統べる王女・エレン。散発的に名曲「恋情乙女」(2010)が劇伴にも使用される牧村耕次と、冨田訓広にコバテツがエレンの従者。華麗に二役を務める淡島小鞠は、竜宮エレン国に侵攻する隣国のAve Maria少年総統、荒木太郎が配下。その他景色的に、首里劇場館長が見切れる。
 関東近郊だけでなく、沖縄・大阪ロケをも謳つた荒木太郎2017年第二作。尤も、沖縄に渡つたのは恐らくカメラを持つた荒木太郎と亀を持つた三上紗恵子(=淡島小鞠)のみで、多分大阪も、出張つたのは塚田詩織と夕須虎馬の二人きりか。そして、あるいはそんな。正直何気に意義が微妙な大阪パートを、生存が確認されるレベルで久ッし振りに名前を見た若月美廣が仕切つた格好なのか?
 映画の中身に話を戻すと、性愛によつて発生するエネルギーで文明を回す―図らずも、山﨑邦紀と荒木太郎が近いタイミングで同じやうな話を書いてゐるのが興味深い―竜宮エレン国では、正装がいはゆるバカには見えない服。日常の各挨拶も愛撫諸々とかいふ、如何にもピンク映画的なユートピア設定。兎にも角にも特筆すべきは、さういふ方便で荒野に於けるAve Maria少年総統との対峙時以外には正真正銘の全篇をトップレスか全裸で通す麻里梨夏が、荒木太郎前作に続くピンク第二戦で代表作の貫禄を以て撃ち抜く、たをやかにして弩級のエモーション。飯岡聖英デジタル時代も必殺のカメラの力も借り、時に美しく時に気高く、濡れ場に入るや問答無用にどエロい麻里梨夏が叩き込み続けるショットの数々は、要は浦島太郎に二三本毛を生やした程度に過ぎぬ他愛ない物語をも、主演女優の一点突破で堂々と支へきる。エレンの背景で、如何にも竜宮城的な舞を舞ふ役を担ふには、表情に限らず体も硬い三番手に、荒木太郎が我慢しきれない、表層的なアクチュアリティ。こちらもピンク第二戦で、闇よりも暗い第一戦では唯一人気を吐く輝きを誇つた塚田詩織の、実質締めの濡れ場でここぞと再び「イン・ザ・ムード」を鳴らさない超絶のロスト画竜点睛。猥雑な昭和を懐かしんでばかりの荒木太郎には、これから自分が描く世界にも目を向けなよと声をかけたくもならうところではあれ、万事些末とさて措いてしまへ。麻里梨夏だけ見てればいい、それだけで戦へる。いや、それだけでもないもう一点。一人づつだと映画的にはクドさも否めない小篠一成と稲葉良子が、二人見事に噛み合ふとシークエンスが芳醇な香りを放ち始める、滋養深いケミストリーは裸を離れた見所。もしかすると、演劇畑でもこの二人の共演は何気にエポックたり得るのか。


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 「出張ソープ 和風不倫妻」(1994/製作:プロダクション鷹/提供:Xces Film/脚本・監督:珠瑠美/撮影:伊東英男/照明:石部肇/美術:衣恭介/音楽:鷹選曲/効果:協立音響/編集:井上編集室/現像:東映化学/録音:ニューメグロスタジオ/出演:神代弓子《イヴ》・本城未織・麻生雪・杉本まこと・樹かず・神戸顕一)。美術の衣恭介は、木俣堯喬の変名。
 素頓狂に京劇風の劇伴が鳴る中タイトル開巻、春画からイヴちやんにパンしてクレジット起動。早くも何もかもが、紛ふことなき珠瑠美映画、この際完璧とでもいふほかない。クレジットがてらイヴちやんの自慰を二分見せて、とりあへずそこそこ豪邸の堀江邸。jmdbには堀井とあるが、都合二回着弾する郵便物の宛名は何れも堀江。堀江勇作(杉本)は妻の美佐子(神代)と他愛ない会話を交しつつ、美佐子が堀江家に代々伝はる枕絵を覗き見た節を確信する。背中を流せと風呂場に呼んだ美佐子を、勇作が軽くシャワー責めする流れで、カット跨ぐとサクサク突入する夫婦生活。勇作は祖母や母と同様、美佐子に枕絵から学んで名器の持ち主になるやう厳命する。九十年代中盤の現代劇で、時代錯誤といふか倒錯甚だしいといふか、兎も角一言で片付けるとかういふ狂つた家族観をケロッと描いてのけるのが逆に凄い。絡みから十秒!費やす長尺フェード明け、美佐子が庭でポケーッとしてゐる―実際ポケーッとしてゐるやうにしか見えない―と、電話が鳴る。美佐子が出たところ、支局長の村井が急死したとやらで、勇作に急遽バンコク転勤が決まつたとかいふ仰天人事。フリーダムな会社だな、電話一本で、しかも相手が配偶者とはいへ本人すらスッ飛ばすんだぜ。兎も角、専業主婦である美佐子がついて行かない不自然な事情に関しては一欠片たりとて触れないまゝに、勇作は単身での赴任間際、ちよつとしたパーティーで会つた美佐子の旧友・時田恵子の名刺を残して行く。
 配役残り、整理すると林田ちなみa.k.a.本城未織がex.新島えりかとなる本城未織が、表向きは美容サロンを経営する時田恵子。またこの恵子の会社の屋号が不安定、勇作が美佐子に渡した名刺には「CREATE・ジュリー」。美佐子が名刺の番号にかけてみた電話口では「タイエット・ジュリー」で、マンション一室に構へた自宅兼オフィスの表札は「CREATE・ケイコ」。かうなるとスクリプターだ何だといつた次元ではない、大体何なんだジュリー。唐突に飛び込んで来る麻生雪と、ランデブーする神戸顕一は、出張風俗嬢の浅井弓子とその客・良行圭介。この二人の対戦に際してはユミコが外したサングラスに映した騎乗位から、次の画は九十度俯瞰と撮影部が発作的なヤル気を見せる。樹かずは恵子のパパさんポジの、若くして化粧品会社専務。
 実は、と改まつていふのも何だが、もうDMMの中にも、未見のタマキューが今作入れて二本しかない、別に寂しくはないけれど。ともいへ買取系ロマポでも今後新着した暁には、バラ売りであれ臆することなく出撃する。監督デビュー初期のミリオン作は固より、新東宝の望みも最早あるまい。旦那の「中川みず穂 ブルーコアin香港」(昭和61/脚本・監督:木俣堯喬/主演:中川みず穂)と二本撮りしたものと踏んでまづさうゐない、「香港絶倫夫人」(同/脚本:木俣堯喬/主演:川上雅代)ならば何気にでなく普通に観るなり見たい。
 話の中身は自身も一肌脱いで会員制のマントルならぬマンションソープ―劇中用語ママ―を営む恵子が、樹専務を籠絡する切札にハメ撮り写真を撮影した美佐子を脅迫する。何の捻りも新味もないといふ意味で、商業ポルノグラフィー的には当り障りないもの。ところが「CREATE・ジュリー」だか「タイエット・ジュリー」だか「CREATE・ケイコ」が裏の素顔はマンションソープである旨を、終盤恵子が自ら美佐子に宣言するまで、何故か珠瑠美は断固として痒いところに手を届かせぬ強い意志を感じさせかねないほどに、頑なに明示を拒む。酔ひ潰された美佐子を犯す役に呼ばれた良行が、辛うじて一番外側の外堀を埋める程度。本城未織と樹かずの逢瀬は、単なる愛人とパパさんの情事で普通に成立する。挙句勇作が美佐子を強制一皮剥けさせるために恵子との再会を仕組んだ、といつたありがちな姦計が明らかとなる、でさへなく。恵子は―恵子推定で―美佐子の樹専務の会社への密告で失墜、一方美佐子は勝手に帰国した勇作と、締めの濡れ場をキメて駆け抜けるといふか、要はヤリ逃げるラストは、一言で片付けると面白くも何ともない。本当に女の裸しか見所のない、純粋裸映画。そのほかに印象に残るのは、全篇を通してシークエンスに合はせる気も展開の推移に沿はせる気もさらッさら窺へない、闇雲な選曲くらゐしか捉へ処も見当たらない。量産型裸映画で面白い映画なんぞ寧ろ撮る必要がない、珠瑠美―かプロ鷹―鉄の信念にでも我々は感服するべきなのであらうか。


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 「過激!本番ショー 異常者たちの夜」(1990/提供:アウトキャストプロデュース/配給:新東宝映画/カントク:サトウトシキ/キャクホン:小林宏一/キカク:田中岩夫/プロデューサー:岩田治樹/サツエイ:西川卓/ショウメイ:高田賢/オンガク:ISAO YAMADA/ヘンシュウ:金子尚樹/ジョカントク:上野俊哉/エンシュツジョシュ:中野貴雄/サツエイジョシュ:福島佳紀/ショウメイジョシュ:島田良一/トクシュコウカ:城沢源太郎/スチール:福島写真館/オンキョウコウカ:高野藤次/ロクオンスタジオ:ニューメグロスタジオ/ゲンゾウ:東映化学工業/キョウリョク:城沢靖・西山秀明・勝山茂雄・大倉琢夫・及川清夫・チキンシャック《福生》・《株》サンアイ・スノビッシュプロダクツ・エグザエル/シツエン:吉田春兎・芹沢里緒・神山洋子・清水大敬・梅垣義明・中根徹・中野貴雄・石井基正・世良福助・加納妖子)。キャクホンの小林宏一は、小林政広の前名義。クレジット含め印象的な筆致の割に、タイトル担当はクレジットされない。
 喪はれ行く風景を切り取る方便か、にしても執拗も通り越して些かくどく全篇を通して繰り返し繰り返し繰り返し挿入され続ける、今は亡きコマ劇場を皮切りに新宿の映画街と歓楽街の画を連ね、幕の内弁当をビニール袋に提げたワタナベ(吉田)が、風俗情報誌を発行する「歌舞伎町タイムス」に帰社する。ここで吉田春兎といふのが、案外色んな名義を多用してゐる現在の本多菊次朗。凡そ三十年前ともなると当たり前でしかなからうが若く細く、軽い。入れ違ひに社を出た編集長の宇野(清水)が都庁新築に伴ふいはゆる浄化による、界隈の斜陽も予想される世相に触れた上で、建設中の新都庁舎の画も連ねてタイトル・イン。神山洋子と中根徹の絡みが家中を移動する傍ら、駅から歩いて三十分かゝる―チャリンコ乗れよ(´・ω・`)―自宅にワタナベがてくてく帰宅すると、妻の恐らくユミコ(神山)は、実はワタナベとも面識がある旨後々語られる、間男の古賀か古河か古閑辺り(中根)を連れ込んでの情事の真最中であつた。ユミコの父親名義の家を出たワタナベが、暫く寝泊りすることにした歌舞伎町タイムスに、電話番を募集する求人広告を見た梓ユウコ(芹沢)が現れる。
 配役残り、薔薇族映画畑では翌年の「奴隷調教 ドラゴンファクトリーの男たち」(ENK/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀)がデビュー作と謳はれてゐるものの、当然こちらの方が早い石井基正と、世良福助は宇野が取材する本番ショーの男達。あのワハハの梅垣義明の梅垣義明は、石井基正と世良福助のショーで女性客の動員を目論む、売りのショーの中身をコロコロ変へるショーパブ、十足した「第十七天国」店主、多分この人も今回が銀幕初陣。加納妖子は、宇野に記事を書かせておいて薔薇族本番ショーには早々と見切りをつけた第十七天国の、SMショーの女王様、責められる奴隷は世良福助の二役か。中野貴雄はラストの第十七天国にてステージ上尺八を吹いて貰ふギャラリー、もう二人、後頭部くらゐしか見切れない客要員は流石に判らん。ところで第十七天国が、物件的には現存する老舗ライブハウスの「チキンシャック」。老舗も老舗、何と創業昭和49年!
 全体リリース当時如何様にセレクトしてゐたのか、何が飛び出すか予測不能な雑多ぶりが堪らない「Viva Pinks!」殲滅戦。第七戦は福岡芳穂単独第一作に続いて、とかいふザックリした括りでいいのか、生かキナ臭い火種を抱へなくもないノンフィクション『名前のない女たち』の映画化第二作―第一作は佐藤寿保―「名前のない女たち うそつき女」(脚本:加瀬仁美/原作:中村淳彦/主演:吹越満)が、六年ぶりの新作として公開間近のサトウトシキ1990年最終第三作。
 今作の公開は十二月、即ち厳密な前後は不明ながら、最早“新”ともとうにいはない現都庁舎の竣工に、フルコンタクトで当てに行つた格好となる。といふか、封切りをぶつけるどころかなラストを見るか観るに、サトウトシキは明らかに都庁を撃ちに行つてゐる、現に撃つた。尤も、あの頃サトウトシキなり小林宏一らが感じてゐたにさうゐない、やがて明けるやうに暮れる白々しき夜に対する悪寒にも似た予感は、時間と距離の隔絶か単なる知性ないし想像力の欠如か、個人的に共有可能な類のものではなく、あるいはさういふ者にも体感させるだけの、時代を易々と飛び越える跳躍力をこの映画が有してゐる訳では必ずしもない。吉田春兎のみならず、あの狂騒的なエキセントリックの大家・清水大敬にまで強ひる、含みを持たせたばかりで大して中身もない台詞を、坦々と妙な間で発せさせる演出は古臭さとまどろこしさとにモジモジ身悶えしてしまふのを禁じ得ず、遂に鳴るアタック音には頭を抱へる。確かに過激な本番ショーとはいへ、“異常者たちの夜”の多様性を第十七天国店主の移り気に頼りきりな展開は面白味に乏しく、寧ろ古賀に飯の最中肛門性行を求める、ユミコの方が余程箍が外れてゐる。二番手たる神山洋子が快調にカッ飛ばす反面、主演の筈の芹沢里緒の濡れ場の比重は清々しく小さい。ところが漫然と終始するかに思へた始終が、文字通りの飛び道具で以てとんでもない急加速で弾ける。表面的には「タクシードライバー」との類似も窺はせつつ、アイリスをも殺める点を決定的な差異に一線跨いだその先で更にもう一線跨いでみせるワタナベの凶行は、ピンク離れした本格的な特効と超絶の繋ぎとで一息に引き込ませて見させる、梅垣義明の後頭部が吹き飛ぶショットには吃驚した。人より生命力の強いと思しき清水大敬には二発を費やす心配りも心憎く、ただそれだけに、ワタナベがリボルバーの撃鉄も起こさず続け様に撃つ、今となつては考へられない初歩的なボーンヘッドは地味にでなく目立ち、見事な弾着と比すればなほ一層、ラストの銃創のショボさが際立つのはグルッグルッと二周した致命傷。突発的に煌めき、損なふ一作に止めを刺すのは、“オワリ 1990アクトキャストプロデュース作品”なる間抜けなエンド・クレジット。“アクトキャスト”て何だ、“アクト”て。何か明後日だか一昨日な、変な方向に完成してゐる。


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 「ほくろの女は夜濡れる」(2017/制作:ファミリーツリー/提供:オーピー映画/監督:榊英雄/脚本・助監督:三輪江一/音楽:雷鳥/撮影:早坂伸《JSC》/照明:大場郭基/録音・効果・仕上げ:丹雄二/編集:清野英樹/ヘアメイク:堀川貴世/スチール:富山龍太郎/特別協力:小沼秀剛・氏家英樹/監督助手:光平哲也・市川浩気/撮影助手:岡崎孝行・永仮彩香/照明助手:永川千歳/撮影協力:キアロスクーロ撮影事務所/仕上げ:東映ラボ・テック/特別協力:FAITH entertainment/出演:戸田真琴・可児正光・とみやまあゆみ・高橋美津子・山本宗介・木村保・羽柴裕吾・三輪江一・藤倉さな子・藤原絵里・松本高行・榊英雄・和田光沙・森本のぶ・川瀬陽太)。出演者中三輪江一と、藤原絵里から榊英雄までは本篇クレジットのみ。
 指で紅を刷き、右目下の泣きぼくろに触れた戸田真琴が、髪を解きエレベーターに乗る。外回りと称して出撃した、多分求人誌か情報誌制作会社「ワーキングコーポレーション」営業の工藤朋美(戸田)を、気合の入つた遠い俯瞰で追ふ。比較的猥雑な一角にて、朋美は大学時代の一年先輩・成田潤(可児)とバッタリ再会。成田が満更でもない以上の風情を窺はせる一方、そゝくさかはした朋美がランデブーしたのは、フリーで営む売春の常連客・市川。体躯はダブつくものの、量産型裸映画的にも見劣りしない絡みを羽柴裕吾が務める一幕明け、朋美は市川に、サインペンで自身の体の好きなところに黒子を描くやう求める。不思議がる市川をポイントカードと誤魔化した朋美が、何が貰へるのといふ問ひに対し投げた答へは“新しい私”。市川が捌けた後(のち)、朋美は市川が描いた左腕の黒子に血が流れるまでボールペンを押し当て、実際の黒子に固定する。兎も角朋美帰社、市川に釦を引き千切られ実は前の肌蹴たブラウスに、社内でも社長を“パパ”と呼ぶクソ倅の平林正彦(山本)が目を留めるや、派遣社員の手塚結衣(とみやま)が朋美を別室に救出。仔細はマルッと割愛すれど、結衣は朋美の裏稼業を把握してゐた。
 配役残り藤倉さな子と藤原絵里は、ワーキングコーポレーション女子社員AとB、ビリング下位の藤原絵里の方が映える。榊英雄は、成田が朋美とのデートに使ふバー「WOKINI」のマスター。森本のぶは朋美に―仕事で―付き纏ふ、金融会社「Mキャッシュローン」の取立・白井で、三輪江一は朋美を買ふ男・二ノ宮。そして高橋美津子が、リアル泣きぼくろを娘に羨ましがられる、朋美の源氏名と同じ名の母・沙耶佳、川瀬陽太は朋美の継父・幸雄。夫婦生活の最中に朋美が帰宅する件と正真正銘即座の二連戦で、幸雄が朋美の破瓜を無理矢理散らせた事後、カメラがパンした先が沙耶佳の遺影とかいふザクついた展開には軽く度肝を抜かれ、白井への完済時、朋美が体を売つて返した借金が、実は幸雄のものであつた旨が暗示される。木村保は、成田とは同級の大学時代からの―更に以前からかも知れんけど―友人・原島亮太。高橋美津子が本格的な対面座位を披露しながらも、乳尻は頑として死守する穴埋めか、刹那的に飛び込んで来る和田光沙は、朋美を失つた成田が呼ぶデリ嬢・アヤカ。最後に松本高行が特定不能、同名の編集マンだとすると、年齢的に正彦親爺のワーキングコーポレーション社長。でなければ、カンニング竹山似の売春客要員か。
 今年どうするのかは当然知らないけれど、個人的かつ勝手な印象では案外継戦してゐる榊英雄ピンク映画第四作、OPP+題が「コクウ」。誰一人幸せになどするものかといはんばかりに、一欠片の救ひもなく振り抜かれるドス黒いドラマは、煙草でいふガツンと来る重さを以て見応へがある。尤も、ピンクに於ける榊英雄の初日を認めると同時に、時代認識と称した単なる嗜好としては、決してその貫徹された暗さに、必ずしも首を縦には振り難い。もう北風には、吹かれ厭いた。冴えないオッサン主人公に、何故かカワイコちやんが次々と膳を据ゑて呉れる。よしんば最も通俗的で低劣なファンタジーの類であつたとて、せめて小屋の暗がりに身を潜める時くらゐは、憂世のどうしやうもない酷さ醜さ、冷たさを忘れさせて欲しい。さういふ心的態度を惰弱なり逃避と断ずる潤ひや器量を欠いた人間観なり映画観に、当サイトは断じて与するものではない。清水大敬近年のそれはそれでそれなりに王道娯楽路線を、頑なに支持するのもその所以である。裸映画的には平林が立場の弱い結衣の足元を見る形での、二年間でグッと色気を増したとみやまあゆみの濡れ場をもつと観たかつた心は大きく残す反面、肌から綺麗な戸田真琴の裸は、思ふ存分目一杯堪能させて呉れる。山宗と川瀬陽太が要所を頑丈に締める以上、場数の足らない男優部の逆マグロぶりに興を殺がれる、昨今まゝ散見される悪弊に匙を投げさせられることもない。ところが、それもそれで朋美―の裸―に費やした尺が、諸刃の剣的に徒をなしたのか。成田と幸せを掴み、損ねるにせよ、要はヒロインが一目散に奈落の底に落ちる一直線の物語にしては、既に随所で触れた、殆ど完全に放置される結衣周りの外堀にとりわけ顕著な清々しくスッ飛ばされる諸々に加へ、後述するラスト間際の性急といふか何といふか、ザックザクも通り越したズッタズタの繋ぎには、七十分でもまだ足らぬのかとの呆れに似た疑問も禁じ得ない。仮に幾分更に長いOPP+版ではその辺りの不足も解消されるにせよ、山﨑邦紀が好き勝手し倒した結果の一般映画版を、アタシの映画ではないとまで言ひ放つた浜野佐知の逆説的なジャスティスを持ち出すまでもなく、ピンクと一般映画を秤にかけて、一般を取るのだとしたらそれこそ正しく本末転倒の極み。言語道断と難じるほかなく、OPP+なんぞやめてしまふに如くはない。文字通り何時も何時も繰り返す繰言もさて措き、てつきり“コクウ”が“虚空”かと思ひきや、アクセントが後ろにずれる“黒雨”であつた旨が判明するど鮮烈なラスト―この点に関しては、タイトル・インがオーラスにつき、一般映画題の方がなほ一層衝撃的にさうゐない―は激しく胸を撃ちかけつつ、ただその戦法で攻めるには、如何せん主演女優の発声が心許ないのは返す返すも残念無念。

 もう一点疑念が過つたのが、債務を清算した返す刀で全身の黒子除去手術を受けた朋美が、成田に初めて肌を晒、さうとした直後に、カメラが可児正光と正対する位置に回り込む無駄なカット割り、あれは一般映画の文法ではあるまいか。既に戸田真琴の裸身を出し惜しむ段にはとうにない以上、一息のエモーションに突撃すべきではなかつたかに映る。


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 「ビニール本の女 密写全裸」(昭和56/企画・製作:若松プロダクション/配給:新東宝映画/監督:福岡芳穂/脚本:西岡琢也/撮影:長田勇市/照明:磯貝一/音楽:坂口博樹/編集:中島照雄/助監督:米田彰・周防正行・高木淳彦/撮影助手:斉藤幸一・滝影志/照明助手:大宮浩一/製作主任:磯村一路/効果:ムービーエイジ/録音:ニューメグロスタジオ/タイトル:ハセガワタイトル/現像:東映化学《株》/出演:香川留美・豪田路世留・杉佳代子・沢田多絵・下元史郎・三津久・上野淳・三上克也・西城省二・丸米正念・ちぶあきら・田宮友子/友情出演:宮田諭)。出演者中下元史郎が、ポスターには下元史朗、三上克也から田宮友子までは本篇クレジットのみ。宮田諭の正確なビリングは、上野淳の次に入る。それとスタッフにあと水谷俊之が入れば、ユニット・ファイブが揃ふのに。
 女二人の合唱で歌ふ「ティンクル・ティンクル・リトル・スター」にフェード・インした結構齢の離れた姉妹のスナップが、画面右に少し譲つてタイトル・イン。左太股に大きく醜い傷痕のあるタエコ(香川)と、翌年ホテルニュージャパンで死亡する沢田多絵が絡むビニ本撮影風景。便意を訴へ音を上げたタエコを、カメラマン(下元)とビニ本編集者かダクションのマネージャー(宮田)は、「あの足で」、「あの齢で」とテンポよく揶揄する。上野淳がカメアシ兼、タエコの情夫・タキモト。タエコが退避した手洗ひでティンクルティンクル歌ふ一方、もう一人のティンクル、タエコの妹・ヒトミ(豪田)が、ガソリンスタンド店員の三津久(後述する杉佳代子から“リョウちやん”と呼ばれるゆゑ、以下仮名でリョウ)を遠目に眺める。眺めながらヒトミは、ドライブに誘はれたリョウの車で、三人組(三上克也と西城省二と丸米正念かなあ)に輪姦“マワ”された過去を想起する。帰宅したヒトミを、二人暮らしのタエコが連れ込んだタキモトが出迎へる。タエコの傷は、経緯は語られないがヒトミがつけたものだつた。
 配役残り不完全消去法でちぶあきらは、ヒトミがスナックにて事実上ハントするナンパ氏。杉佳代子は、継続的にリョウを買ふ推定有閑マダム。田宮友子は宮田諭に接触したヒトミが目撃する、リョウに声をかけられる女。
 「Viva Pinks!」殲滅戦第六戦にして初めて深町章(a.k.a.稲尾実)とも弟子のナベからも離れた、かと思へば、グッと急旋回して福岡芳穂単独デビュー作。最初に水谷俊之も加はつてゐたならユニット・ファイブが揃ふのに、と戯れに筆を滑らせてはみたけれど、ユニット・ファイブが正式に結成されるのは昭和57年。当然、面識なり親交はとうにあらうが。福岡芳穂の軌跡を超絶大雑把に掻い摘むと、矢張り若松プロ作の「レープゾーン 犯しの履歴書」(昭和54)で磯村一路・鈴木敬晴と三人共同デビュー後、今作でズームアップ映画祭新人監督賞を受賞。裸映画の通算戦績は新東宝―か国映―五本と買取系ロマポ一本に、エクセスで朝倉大介が絡む謎の一本の計七作。以降はVシネを概ね主戦場にしつつ、2010年京都造形芸術大学映画学科教授に上手いこと就任する。となると、今や完全に消息不明の鈴木敬晴が、明暗を分かつた趣も一見なくはない。
 足の傷の恨みを根に持つ姉と、輪姦された心の傷の癒えぬやさぐれた生活を送る少女が、輪姦の手引きをした男と偶さか心を通はせる。ある意味ありがちな真相が明かされ、輪をかけて無体なラストは綺麗に纏まつてはあれ然程の決定力を、この期に漲らせるものでは別にない。所詮粒の小さな物語はいつそさて措き、出番は少ないが下元史郎は飄々としたビートで軽やかに疾走し、上野淳がやゝもすると日本一なのかも知れない呆気ない死に様を披露する。それなり以上に今でも見応へのある男優部と比して、時代を超え損ねた薹のたちぶりが否めない女優部の中でも、寧ろ最も特筆すべきは、本クレが何故二番手に置いてゐるのか輝かしく解せない豪田路世留。パッと見は華を欠いた仏頂面の下膨れに過ぎず、少女の名残を残すどころか、未だ成熟の過程に入つてゐまいとさへ映る肢体は個人的な琴線に触れるものでは全くないものの、散発的に如何とも形容し難い、且つ弩級のサムシングを轟然と撃ち込んで来る。「悪かつた」と侘びるリョウに対し、脊髄で折り返す速度で「何もしなかつた」と放つ鮮烈なクロスカウンターに最初に度肝を抜かれ、タエコから一旦放逐される件に於いては妹にはファッション誌のモデルと偽つてゐた姉の、ビニ本の残骸を完ッ璧なタイミングで投下。何もかんも失つた絶対的な喪失感が、グルッと一周した清々しさに震へる。リョウに投げた別れの台詞には一線跨いだ凄味を滲ませ、タエコに捨てた独白に際しては、何某かの境地にをも達した風情を漂はせる。役の大小を問はず、豪田路世留の映画を見るのは初めてにつき、今回受けた強い印象が演出部の勝利なのか、当人の手柄なのかはよく判らないが。今となつてはヌルくしかない電子音づいた劇伴は流石に厳しい反面、シネスコの画面は真正面からの単純なロングであつても威力を激増する。液晶モニターでちまちま視聴するのも見られるだけマシとはいへ、素敵に小屋映えしさうな一作である。


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 「白く濡れた夏」(昭和54/製作:日活株式会社/監督:加藤彰/脚本:金子成人/プロデューサー:海野義幸/撮影:安藤庄平/照明:直井勝正/録音:橋本文雄/美術:渡辺平八郎/編集:山田真司/助監督:川崎善広/色彩計測:青柳勝義/現像:東洋現像所/製作担当者:田中雅夫/音楽:乾裕樹/挿入曲:『熱風』唄:扇久美子《キティ・レコード》・『砂丘』演奏:乾裕樹《ワーナー・パイオニア・レコード》・『サンライズ・スマイリン』演奏:カリオカ《キティ・レコード》/出演:池波志乃・長谷川明男・小川亜佐美・石井雪江《新人》・南条弘二・高橋明・大木富夫・五條博・坂本長利・鶴岡修・桑崎てるお・佐藤昇・鶴田忍・五十嵐知子《新人》・高杉玄・影山英俊・野沢晶則・田中修・椿ユキ/技斗:大平忠行)。出演者中、高杉玄以降は本篇クレジットのみ。各種資料にある企画の進藤貴美男が、本篇クレジットには見当たらない。クレジットはスッ飛ばす配給に関しては、事実上“提供:Xces Film”。
 波音開巻、海岸からパンした先は別荘、池波志乃がオルゴールで目覚める。木口冴子(池上)は8トラの集音マイクを窓際に据ゑ、砂浜のカット挿んで日の出を浴びる。やがて聞こえて来る単車音を、冴子は録音。ガソリンスタンド店員・山下伸次(南条)が駆るバイクが砂浜でエンコした様子に、冴子は微笑んで8トラを止める、魚眼の砂浜ロングにタイトル・イン。冴子はレコード屋に寄つて、伸次の仲間の吉田リエ(五十嵐)と堀源一(桑崎)が店番を務める「手造りパイの店 首領 DON」に。冴子が買つたLP盤は、南佳孝の3rd「SOUTH OF THE BORDER」。六さんが手作りヨットで沖縄に行く噂を聞きつけた川井桃子(石井)が飛び込んで来た「首領」に、当の六さんこと東六郎(田中)が、修理した伸次の単車を持つて来る。冴子がスタンドに伸次を訪ねる一方、別荘にお抱へ弁護士の石川(五條)を伴つた、冴子の父親・昇(高杉)が訪ねて来る。冴子は嵐の夜、高速道路に迷ひ込んだ酔つ払ひを車で撥ねて死なせる厄介な事件を起こし、遺族との示談交渉は拗れてゐた。
 桃子が店員で、皆の溜り場のスナック「シードラゴン」。配役残りビリング順に今回は黒くない役の高橋明は、若い連中に交じるシードラ常連客・小沢。愛称の“オジン”が、時代を感じさせる。二代目バルイーグルの大木富夫は伸次らの仲間の谷山広介で、鶴田忍がシードラのマスター。シードラに現れ伸次を呼び出す鶴岡修は、伸次と六郎がかつて所属してゐた暴走族のリーダー・岩井。濡れ場の短さがビリングの高さに後ろ足で砂をかける小川亜佐美は、冴子と後述する久野の周囲に出没するスタイリスト・仁科京子、冴子との正確な間柄は最後まで語られない。嵐の夜、冴子の車に実は同乗者が。長谷川明男が、その時助手席に座つてゐた冴子四年来の不倫相手にして、カメラマンの久野修、影山英俊と野沢晶則は久野のカメアシ。坂本長利は別荘にまで押しかける、冴子が轢いた男(不明)の父親・木村祥造。絡み推定で椿ユキは、岩井のカーセックス相手?佐藤昇が、何処に登場するのかロストする。
 池波志乃なる大物の招聘に際して、尺から通常の四割増しの加藤彰昭和54年第二作。過失相殺が成立する状況とはいへ、富裕層の令嬢がそもそも自らが手を汚した死亡事故に伴ひ既婚者の男との関係に隙間を生じさせつつ、地場の若者とも絶妙に高い目線で触れ合ひながら、やがて人手に渡るお気に入りの別荘にて一夏を遊んで暮らす。土台が如何なものかと思はれなくもない癪に触る物語は、潤沢な持ち時間を終始マッタリのんびり回し、過剰だか冗長に堕す。如何にも暑さうな昭和の夏の熱気に触れられる以外には、若者描写も全く以て類型性の範疇から半歩たりとて出で得るものではなく、男をショッキングに殺しておけば形になるだらう的なラストも、鮮烈さよりも端的なやつゝけ感の方が色濃い。撮り様によつてはもつと幾らでも有効に戦へたにさうゐない、確かに決戦兵器たる威力を有してゐる筈の見事な池波志乃のオッパイに関しても、観客の精嚢を空ッポにしてみせる覚悟のないところでは、単なる宝の持ち腐れ、あるいはエモーションの生殺し。挙句の果てに、ロマポの座敷童的なポジションを担ふマスト脇役部、みんなのコミタマこと小見山玉樹なり庄司三郎も不在とあつては、いよいよ万事休す、影英は何時も通り中途半端にハンサムだけど。一言で片付けると、睡魔に抗ふのに相当な努力を要した一作である。


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 「田口ゆかりの裏本番恥戯」(1989/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小畑新生/編集:金子編集室/助監督:青柳一夫・松瀬直仁/音楽:東京BGM/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:田口ゆかり《ロック座》・工藤正人・いか八朗・神田勢山・武藤樹一郎・板垣有美・港雄一・関たかし/特別出演:高崎慶子・風見怜香)。正確なビリングは、特出の女優部がクドマサといか八朗の間に入る。
 山中の舗装道路を、喪服の女が歩いて来るロング。崖つ縁に佇んだ田山ゆかり(大体ハーセルフ)は入水するのかしないのか、揃へて脱いだ草履にタイトル・イン。因みに今作、タイトルがjmdbには「田口ゆかりの裏本番 恥戯」でDMMには「田口ゆかり 裏本番恥戯」とあるが、本篇準拠ではどちらも不正解。母の葬儀から姿を消したゆかりを、妹の千鳥(高崎)と―ゆかりの―恋人の苗字不詳ケンイチ(武藤)が捜しに来る。揃へた草履までは見つけたものの、ゆかり当人は見つからず。ゆかりが飛び出したのは、ケンイチから“強引に誘惑”―ケンイチの弁明ママ。誘惑といふか、普通に迫つてゐるやうにしか見えない―する形で千鳥とケンイチが関係を持つたゆゑ。直後の事後をゆかりに見咎められた千鳥が堂々と逆ギレしてのける、ゆかりもゆかりで後ろ暗いポイントが、ゆかりの運転ミスによる母の事故死。それでゆかりが娑婆にゐるのは執行猶予がついたからなのか、兎も角、爆裂するそれとこれとは感が如何とも抑へ難い。ともいへ、「判つたはよ私が死ねばいいんでせう?死ぬはよ」と逆ギレのクロスカウンターを華麗か苛烈に放つ、ゆかりも矢張りゆかりではある。死に損なひ打ち上げられたゆかりを、山釣りに来てゐた近所の民宿経営・アイダ幸夫(工藤)が救助。山小屋に運び介抱がてら、催した幸夫はゆかりをサクサク犯す。ヤることは全て済ませた上で、謝罪とか告白とか責任とか口にする幸夫はゆかりを自身の民宿に招く。動くなといふのに、幸夫が車を取りに行くや移動を始めたゆかりは、千鳥・ケンイチと遭遇。逃げた山の中で小用を足すゆかりを、山釣りがボウズのアイダ泰三(港)とその甥(関)が発見。山の中に喪服の女、大概突飛なシチュエーションであるにも関らず、ミッチと関たかは至極当然といはんばかりの勢ひでザクザクゆかりを輪姦する。
 とか何とか辿り着いた幸夫の民宿にて、ゆかりが幸夫の父親であつた泰三と双方驚きの再会を果たしたりしながらも配役残り、風見怜香は幸夫との結婚を約され、てゐた親戚の悦子。突如現れたゆかりに、脊髄で折り返した敵対心を燃やす。ところで高崎慶子にせよ風見怜香にせよ、特別扱ひする理由が解せぬ、全く普通の三本柱である。そして問題なのがいか八朗と小林組の裏看板女優・板垣有美に、当時既に芸能生活三十五周年前後を誇る講談師の神田勢山。何だかんだで半ば呆れてプイッと民宿を後にしたゆかりが、“上着”と“浮気”を絡めた他愛ない夫婦(いか八朗と板垣有美)喧嘩に巻き込まれかけつつ、構はず立ち去る、神田勢山は多分いか八の弟役。この三人の出番はフレームにつむじ風のやうに紛れ込むこの場限り、全体何しに出て来たのだか一ッ欠片たりとて判らない。こんなにある意味見事に木に接いだ竹見たことない、結構な山の中まで出張つて撮影してゐる点をも踏まへるならばなほさら、神田勢山を何処から連れて来たんだ。内トラに二三本毛を生やした程度の感覚で気軽に出し易いといふのも含めてか、量産型娯楽映画作家が、時に謎の人脈を発揮する。
 幻の昭和64年にギリッギリ滑り込んだのか、平成の火蓋を切つたのか今となつては定かではない、大御大・小林悟1989年ピンク映画第一作。この年ピンク全十一作と、薔薇族三作。いか八×板垣有美×神田勢山が飛び込んで来る―だけの―件も酷いが、劣るとも勝らないのがその少し前のゆかりの歓迎会と称した宴席。事実上許嫁のエツコがゐるといふのに、幸夫は開口一番「今度僕とゆかりさんが結婚することになりました」。流石小林悟だ、最早とでもいふほかない。藪から棒の素頓狂ぶりがエクストリーム過ぎて、劇中一同と同時に観客ないしは視聴者の度肝も抜いてみせる。挙句前が酷ければ後ろも更に劣るとも勝らず、風見怜香の濡れ場はゆかりに関する押問答を通して―何故か―泰三がエツコも犯す形で処理し、通算三度目に山に入つたゆかりは、エツコの手引きによる関たかともう二名(演出部か)に再々度凌辱される、要は入山する度に犯されてゐる。山に入る女はレイプされる、どんな世界観だ。そして挙句の正しく果てのラストはといふと、何でか知らんけど幸夫とエツコがよもやまさかのV字復縁する傍ら、ゆかりは一応撮影部がそれなりの気概を見せなくもない、砂浜で豪快に自慰に狂つて“完”。要するに、母親を死なせるは妹には男を寝取られるはで満身創痍状態のヒロインが、出し抜けに犯され倒した末終に気が触れる。幾ら量産型娯楽映画、あるいは商業ポルノグラフィーとはいへ、斯くも無体な物語見たことない。流石大御大、とでも深く感銘を受ける以外に、如何なる態度が残されてゐようか。自棄なのか?さうでもない。


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 「ハミ尻ダンプ姐さん キンタマ汁、積荷違反」(2017/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/脚本・監督:清水大敬/撮影:中尾正人/照明:大久保礼司・清水領/録音:小林研也/編集:高円寺スタジオ/助監督:阿蘭純司/スチール:田中幹雄/殺陣:永井裕久/撮影助手:坂元啓二/照明助手:葉山昌堤/演出助手:御殿場太郎/着付け:板橋よね/メイク:笹本義雄/装飾:青野装飾/衣装:Mikiレンタル衣装/制作進行:狛江義雄/小道具:劇団カジノ・フォーリー、劇団スラップスティック/脚本協力:中村勝則/仕上げ:東映ラボ・テック/撮影協力:藤ヶ谷建設/トラック協力:阿修羅グループ/出演:円城ひとみ・藍沢ましろ・しじみ・あやなれい・なかみつせいじ・森羅万象・GAICHI・田山みきお・橘秀樹・太三・生方哲、もう二名・中江大珍・中野剣友会/友情出演:池島ゆたか・国沢実/特別出演:篠原ゆきの・里見瑤子・松井理子)。出演者中、生方哲以下四名は本篇クレジットのみ。特別出演組の正確なビリングは、あやなれいとなかみつせいじの間に入る。クレジットに関しては情報量に比して、無慈悲に流れる速度に屈する。
 自ら駆るダンプで山口建設(株)に帰還した社長夫人の裕子(円城)が、ホットパンツからプリップリ弾けるハミ尻で三羽烏的従業員の田原(田山)×佐々木(橘)×森山(太三)を悩殺した返す刀で、再び出撃してタイトル・イン。何しに帰つて来たのかとツッコむのは禁止だ、ハミ尻―とダンプ―を見せに帰つて来たに決まつてるぢやないか!
 タイトル明けてラブホテル、といふ麗しき場面転換はいいにせよ、問題が裕子の女と博打にうつゝを抜かすダメ亭主にして、山口建設社長・山口米造(清水)の、援交相手・美由紀役の藍沢ましろ。平成も強制終了間近の昨今に、全体こんな女何処から連れて来たんだな昭和スメルを爆裂させる、不完全無欠なデ〇スぶりに直截に目を覆ふ、直截にもほどがある。兎も角、凹凸のない肉塊との事後米造はある意味鮮やかに文字通りの腹上死、戦死の悲壮感さへ漂ふ。葬儀を済ませた山建一同が盛大に飲み食ひしたのち爆睡するところに、兄貴とは対照的に実直な弟の武造(なかみつ)が駆けつける。実は米造よりも武造が好きであつた裕子は、武造との情事を遺影に見せつける。
 配役残りあやなれいは、ホステス時代金蔓とロック・オンした米造を、当時同僚の裕子に奪はれた過去を未だ根に持つ現職泡姫・明美。そしてGAICHIこと、森山茂雄ピンク第十一作かつ、2010年代依然最強傑作「あぶない美乳 悩殺ヒッチハイク」(2011/脚本:佐野和宏/主演:みづなれい)以来の電撃超復帰を遂げた幸野賀一が、ソープの社長・鮫島。六年周期の幸野賀一大復活の興奮はさて措き、歌舞伎町一番街のアーケード挿んで、まづあやなれいの爆乳が画面一杯に飛び込んで来る繋ぎはジャスティス。森羅万象はスピリチュアル詐欺師・ヤマタイのツクネで、しじみがツクネに心酔するメンヘラヤンキー・博子。明美とは煌びやかにダサい上に一欠片の意味もない名乗りで、「まむしの兄弟」を組む兄弟分。国沢実は、太鼓担当のツクネ一番弟子・前田。随時着弾する特別出演部隊、一の矢・篠原ゆきのは、米造が遺した借金を返済させるべく、山建にマンション建設を斡旋する街金・瞳麗子。脱ぎはしないが、これ見よがしに繰り返し組み換へる美脚を、頑ななローアングルで追ふ。生方哲は、ツクネが博子を二穴責めする際前門を担当する二番弟子の宮口。利子だけは月中に払はねばならぬ要に迫られ、裕子が博子がママを務めるクラブの面接を受け、結果何だかんだ博子も撃破した流れで、明美と博子が対裕子の連合軍を組む格好に。特出隊二の矢の松井理子は鮫島が招聘した、山建への殴り込み要員に自身の店の従業員(中野剣友会)を提供する、軍隊クラブ「満州國」ママ・大和撫子。いはゆる「愛の嵐」的な露出過多の衣装を、帝国陸軍風味で披露する。特出隊トリの里見瑤子は棚から牡丹餅を降り頻らせる、米造がかけてゐた死亡保険金の件で裕子を訪ねる保険外交員・鵬亜里沙、里見瑤子に特段のサービスはなし。池島ゆたかはヤマタイのツクネ改め本名:猪鍋吉を検挙する池山刑事、地味な謎が、あと三つ残る名前。明美を呼びに来る鮫島の店のボーイに池山の連れと、頭数は二人くらゐしか見当たらないのだが。
 近年の―それはそれでそれなりに―王道娯楽映画路線が大蔵に評価されてか、2017年は三作を発表した清水大敬の第二作。羽勝が主演女優を、「ジョン・カサベテスを一本も観てねえやうな女はクソだ」と滅茶苦茶な因縁をつけ強姦してゐた頃のカオスが、今となつては懐かしい。懐かしいだけで、観るなり見たいとか再評価されるべきとは、別にでなく断じていつてはゐない。一見どうでもいいか超絶後付け臭しかしないが、監督20周年記念作品「巨乳水着未亡人 悩殺熟女の秘密の痴態」(2016/脚本協力:中村勝則/主演:一条綺美香)と前作「未亡人下宿? 谷間も貸します」(企画・原案:中村勝則/主演:円城ひとみ)に今作の三本で、未亡人トリロジーを成すらしい。ここは木に竹を接ぐ云々とはいはず、量産型娯楽映画に於ける量産性をこの期に及んで健気に希求する、決して純然たる無為に過ぎるものではない酔狂な方便と、案外好意的に生温かく評価するところである。それと、事前には「痴漢トラック 淫女乗りつぱなし」(2000/二作とも小松公典と共同脚本/主演:池谷早苗・町田政則)と、「馬を愛した牧場娘」(2003/主演:秋津薫・町田政則)。関根和美全二作の「デコトラ漫遊記」以来―その前に何かあるのか何になるのかは知らん―のピンク版「トラック野郎」かともときめきかけたものの、よくよく考へてみるまでもなく、公開題に謳ふ通りデコトラではなくダンプである上に、正味な話精々山建に出入りする程度で、ダンプが爆走するシークエンスは設けられない。
 物語的には深遠な含意あるいは殊更な面白さは欠片もないながらに、如何様な白痴でも一回観れば全てのカットを300%理解可能にさうゐない強靭な判り易さは、敷居の低さがプログラム・ピクチャーとして矢張り清々しい。天候にも恵まれた、藤ヶ谷建設敷地内に敷物一枚敷いた長テーブルを置き、豪快なロングで狙ふ意欲も見せる青姦に、ハネムーンにダンプで出発した助手席にて、裕子が武造相手に一節吹く尺八戦。突飛なシチュエーションも適宜盛り込みつつ全篇を通して釣瓶撃たれ続ける濡れ場の数々が、実はことごとくフィニッシュまで完遂に至つてゐる執拗な至誠は、何気に天晴。

 ついでといつては何だが、あるいは久し振りに。2010年代が「あぶ悩」で、それならゼロ年代はといふと。私選ピンク映画最高傑作、そんな―どんなだ―関根和美が叩き出した渾身超絶永遠不滅のマスターピース、「淫行タクシー ひわいな女たち」(2000/脚本:金泥駒=小松公典/主演:佐々木基子・町田政則)である。


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 「痴漢各駅停車」(昭和53『痴漢各駅停車 おつさん何するんや』のVHS題?/製作・配給:新東宝興業/監督:稲尾実/脚本:福永二郎/企画・製作:伊能竜/撮影:志村敏/照明:斉藤正明/音楽:芥川たかし/編集:酒井正次/記録:豊島睦子/助監督:西田洋介/監督助手:佐々木正人/撮影助手:志賀葉一/照明助手:岡本健次/効果:サウンドプロ/録音:東音スタジオ/現像:ハイラボセンター/音楽提供:ビクターレコード/大阪ロケ協力:大阪十三サンボード・ラブラブ/唄:ヨーコブルースばんど/出演:久保新二・野上正義・川口朱里・北乃魔子・中野リエ・北沢万里子・沢木みみ・長友達也・桂サンQ・桜マミ)。出演者中、沢木みみがポスターでは沢木ミミで、北乃魔子に至つてはポスターに記載がなく、代りにといふか何といふか、岡田綾子とかいふ全く別かつ謎の名前が。企画・製作の伊能竜は、向井寛の変名。監督の稲尾実が、VHSジャケには深町章。ピンクでスクリプターのクレジットを目にすると、軽くビビる。
 久保チンが待つホームに電車が到着するのを、妙に視点の高い謎アングルで捉へる、カット跨いで電車のロングにタイトル・イン。即ヨーコブルースばんどの「おつさん何するんや」起動、クレジットが俳優部に突入して、改めて車中の久保チンに寄る。四菱産業社員の早井のりお(久保)が、ビリング推定で中野リエに痴漢。騒がれるも、どさくさ逃げる。判子を一捺し貰ひに部長室に顔を出した早井を、四菱のかう見えて営業部長・助川太郎(野上)が捕まへる。朝同じ電車に乗つてゐた助川は、早井の拙い痴漢に物申す。てな次第で、一緒に乗つてみた通勤電車。助川は巧みな指戯で、騒がれることもなく不完全消去法で北沢万里子を絶頂に導く。ズリ落ちた女のニット帽を、優しく被せてあげるガミさん超ジェントル。ところが傍らの早井が手を伸ばすと、途端に多分北沢万里子?は騒ぎだす。大体感服した早井が助川に弟子入りする格好で、久保チン×ガミさんによるチン道中が出発進行する。
 配役残り沢木みみと長友達也は、早井宅に到着した助川が、何故か持参するドリルでゴリゴリ押入れ越しに壁に穴を開け出歯亀に垂涎する、絶え間ない夫婦生活を営む隣の新婚夫婦。桜マミは、そんな助川をも苦しめる、性欲の旺盛すぎる妻。助川が呼ぶ名が、その都度シズコにもヒロコにもツルコにも聞こえる。現在2代目快楽亭ブラックの、通算四番目の名前となる桂サンQは、サンフランシスコのマッカーサー社から四菱との商談で大阪に来日する、社長の倅の取締役部長・ジョージ。ジョージの接待で、まづは十三のステージ・パブ「ラブラブ」に。川口朱里はそこでジョージが喰ひつくクラブ歌手、いはずと知れた林家木久蔵(現:林家木久扇)の「いやんばか~ん」を披露する。四菱コンビはジョージに川口朱里を宛がふが、野球のバット並の巨根に失神。北乃魔子は代りに招聘する、一晩での外人十人斬りの伝説を持つパン女。そして、看過能はざる大きな小ネタ。助川がチョンガーの早井を細君に揶揄していはく、「相手がゐないから変な歌歌ひながらカイてる」。ここでいふ“変な歌”とは、同年発表された久保チン永遠の名曲「マスマスのつてます」を指す。
 DMMで見られる、ビデオ安売王で販売―あるいは日本ビデオ販売より発売―されてゐた「Viva Pinks!」レーベル作を、配信開始日順に虱潰して行く殲滅戦。第五戦はぐつとクラシカルに、稲尾実(のちの深町章)昭和53年、怒涛の全十八作中第七作。同年スマッシュヒットを飛ばしたヨーコブルースばんど(野毛洋子)デビュー曲のタイトルを公開題に冠し、主題歌に使用してゐる。この時期の新東宝にしては珍しく、レコード会社とも正式に話を通して。
 新版込みで後年の深町章といへば、濡れ場に喰はれるデフォルトの制約以上に尺を比較的ゆつくり乃至はモッサリ回し、最後の最後で狙ひ澄ました一ネタをピシャッと通す、や否や丸め込むかのやうに映画を畳む。幕引き際の鮮やかな手管の印象が―開巻の神速を誇る新田栄とは対照的に―個人的には強いものであるが、土台がプロダクションから違ふといつてしまへばそれまでともいへ、早井と助川の―何処から先がアドリブなのか判らない―丁々発止を推進剤に、矢継ぎ早に次の局面、そのまた次の局面へと目まぐるしく移行する展開の、ザックリいへば深町章と同じ人が撮つてゐるとは思へないスピード感に目を見張る。少なくともある時点で既に合つてゐた息が、量産型娯楽映画の途方もない反復なり修練の末にひとつふたつ次元を超えた、話を逸らすと今作の二十一年後にはピンク映画版「真夜中のカーボーイ」に行き着く、久保チンとガミさんの百戦錬磨、縦横無尽のコンビネーションが兎にも角にも素晴らしい。
 物語的には膠着した事態を、毒を以て毒を制す奇策で打開する。より正確にいふと映画の前半苦しめられた毒を以て、後半新たに飛来した毒を制す、見事に練られた構成が出色。一難去つて元難に戻るラストもユーモラスに、よく出来た量産型娯楽映画を堪能した堪能した、と、行きたいところではあつたのだけれど。申し訳程度にオーラスに捻じ込んでもみせるものの、本筋と電車痴漢が実は全く関係ない。電車痴漢に対するプロテスト・ソングをわざわざ公開題と主題歌に引つ張り出しておいて、序盤助川には“痴漢道”まで説きかけさせておきながら、痴漢が要は有体なタグづけに過ぎず、あくまで痴漢電車としては明らかに失敗作であると難じざるを得ない。

 最後に、もうひとつクレジット周りの小ネタ。大阪ロケ協力で大阪十三サンボードとあるが、劇中抜かれる看板実物を見るに、正確には半濁音のサンポードである。


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 「愛憎の嵐 引き裂かれた白下着」(2017/制作:加藤映像工房/提供:オーピー映画/監督:加藤義一/しなりお:筆鬼一/撮影監督:創優和/録音:小林徹哉/編集:有馬潜/音楽:友愛学園音楽部/助監督:小関裕次郎/監督助手:菊嶌稔章/撮影助手:佐藤雅人・三輪亮達/スチール:本田あきら/画面制作:植田浩行/録音所:シネキャビン/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:佐倉絆・和田光沙・早川瀬里奈・山本宗介・小滝正大・森羅万象・橘秀樹・バルカン・神崎由紀夫・柳之内たくま/ナレーター:工藤翔子)。実際のビリングは、神崎由紀夫の次に工藤翔子が来て柳之内たくまが大トメ。
 背景に夜の東京タワーと、「愛とは甘美なものばかりではない」云々と工藤翔子の―中身が―適当なナレーションを背負つて、可憐に涙を零す佐倉絆と、立ち去る男の背中を抜いてチャッチャとタイトル・イン。数年後、イベント企画会社「オリオン企画」に勤務する小川晴美(佐倉)が、同僚の永田英二(山本)と、波は打たないが海らしい水際を歩く。藪から棒に水の中に入つた永田は、巻舌でがなるプロポーズ、春美も呆れるなり引くでなく快諾する。山宗にダサい真似させんなやと軽く頭も抱へかけたのは、後述するがそれどころではなかつた。ピンク映画的に極めて順当にして十全な春美と永田の婚前交渉と、肘上まで覆ふ腕カバーをパージした、和田光沙左腕の大きな傷痕を慈しむ柳之内たくまのカット挿んで、結婚を報告された二人の直属の上司である陣内部長(小滝)は、春美に他社とのコンペを競ふ、大手スーパー「生越」の複合施設開館記念イベントを任せる。生越の担当者・八尋(森羅)に挨拶を済ませた春美と永田は、生越の社屋を辞したアメイジングなタイミングで、コンペを争ふライバル会社「パルイベント」の四谷蒼汰(橘)と、永田も顔を見知つてゐるほどの、パルイベントが対生越に関西支社から呼び寄せた凄腕プランナー・日夏優(柳之内)と鉢合はせる。誰あらう優こそが、アバンで突然春美の前から姿を消した元カレであつた。
 配役残り和田光沙は左腕が不自由な以前だか以上だか以下に、エキセントリックな優の妻・郁子。神崎由紀夫は、その他もう一名見切れるオリオン要員。早川瀬里奈は春美の幸せを妬んで永田に食指を伸ばす、フォクシーなオリオン社員・如月沙也。数年前、既に春美と交際してゐた優に岡惚れした郁子は、強引に一度限りのデートに漕ぎつける。問題なのが菊嶌稔章の変名のバルカンが、交錯した優にいきなり斬りつける圧倒的に御都合な飛び道具。その際郁子が優を庇つて左腕の機能を失する大怪我を負ひ、責任を感じた優は郁子と結婚した。とかいふのが、因縁のための因縁といふほかない、究極のお為ごかし感を爆裂させる春美と優の別れの真相。ところで森羅万象が、春美・永田との顔合はせだけに顔を見せる贅沢起用。
 デビュー以来のオカテルとのコンビを解消以降、諸々の脚本家の間を漂泊する加藤義一が、2015年第二作「巨乳狩人 幻妖の微笑」(主演:めぐり)から七作ぶりに筆鬼一=鎌田一利と組んだ2017年第二作。釣られた方が負けといふのは判つてゐるが、“しなりお”だなどと穿つた表記が洒落臭い。話を戻して今のところ2017年残り二本は、筆鬼一で固定してゐる。
 何はともあれ最大のトピックは、セットの案件なのかひとつひとつの既に結構な偶然が、更なる超偶然で衝突したものかは当然与り知らぬが早川瀬里奈と柳之内たくまの、それぞれともにナベシネマ2010年第二作「牝猫フェロモン 淫猥な唇」(脚本:山崎浩治)、2009年第四作「異常交尾 よろめく色情臭」(脚本:山崎浩治/主演:鮎川なお)以来の電撃復帰。当時から二の線なのか別にさうでもないのか微妙であつた柳之内たくまが、その間の加齢も伴ひ微妙ぶりを加速させる一方、なほ攻撃的に進化した風にすら映る早川瀬里奈は、胸の谷間から剥き身のチュッパチャップスを抜くアクションも披露しての大活躍。直球勝負の色仕掛けで男を支配することに全てを賭ける、煽情的にして苛烈な女性像を鮮やかに撃ち抜く。寧ろポジション的には三番手ゆゑの濡れ場が一度きりなのが惜しいくらゐで、アクシデンタルな最初で最後のピンク帰還といはず、旦々舎に参戦しての更なる華麗な女性上位の咆哮を見てみたいとさへ思へる。重ねて裸映画の裸に焦点を絞ると、佐倉絆に関してはビリングに違はず質量とも申し分なく、出演本数の割には案外久方振りな、和田光沙の本格的な絡みも見所。
 お話的には大仰さと陳腐さとを器用に正比例させた台詞が飛び交ふ合間に、無造作なシークエンスが積もつて山となる。この期な2017年にこれを撮る意義が個人的な素人考へでは甚だ不可解なコッテコテの昼メロは、俳優部に箍をトッ外させる捨て身の演出もある意味功を奏し、グルッと一周した一種の清々しさに突入してゐなくもない。下手な含みの持たせやうがキレの喪失に直結する、山内大輔風味のラストは考へものだが。とはいへどれだけ好意的な大甘の評価を試みるにせよ、一点だけどうしても筆を荒げざるを得ない。郁子が陣内宛の宅配便の形でオリオンに送りつけた、撮影時は夜の筈なのに何故か昼間の春美と優のキス写真を見て逆上した永田は、無断欠勤する春美の自宅に押しかけ犯す。その件、「俺の肉棒でアヌスもメロメロだぜ」、現代ピンク男優部希望の星たる山宗に、ゴミみたいな台詞吐かせてんぢやねえ!


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 「実写快感ONANIE 未亡人編」(1993『実写本番ONANIE 未亡人篇』のVHS題/製作・配給:新東宝映画/監督:渡辺元嗣/脚本:双美零/企画・製作:田中岩夫/撮影:稲吉雅志/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:国分章弘/監督助手:本多英生/撮影助手:村川聡/照明助手:広瀬寛己/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:伊藤清美・冴木直・杉原みさお・荒木太郎・川崎浩幸・山本竜二)。出演者中川崎浩幸が、VHSジャケには川崎浩之。照明助手の寛巳でなく広瀬寛己は、クレジットまゝ。監督の渡辺元嗣は、勿論現在渡邊元嗣。
 身悶える伊藤清美の爪先、早速自慰に狂つてゐるものかと思ひきや、ベッドの中には川崎浩幸も。間男の銀二(川崎)を自宅の津田スタに連れ込んだ磯野慶子(伊藤)が、旦那の帰宅を理由に追ひ返す一方、慶子の義理の娘であるフグ田洋子(冴木)も洋子で、矢張り間男・敬一(荒木)の車の中にて別れは惜しむが周囲は憚らないベロチュー。この二人、洋子の父親が十年前に再婚した後妻が慶子といふ関係で、同居してゐる。銀二と時間差で入れ違ふ格好で帰宅した洋子と、慶子が互ひの浮気をダシに啀み合つてゐると、ポリスからの電話が。二人で海釣りに車で出かけた慶子の夫にして洋子の父・波夫(遺影はナベ)と洋子の夫・マス平(遺影は中田新太郎)が、車が海に転落し二人とも死亡したといふのだ。祭壇の前でも相変らず啀み合ふ慶子と洋子が、一周忌までの男断ち、その間はオナニーで我慢する旨を誓つたところでタイトル・イン。
 配役残り、さうはいへ耐へ難き肉の飢ゑに屈し、双方銀二と敬一の誘ひに応じた慶子と洋子が外出しかけた絶妙なタイミングで、「ハロー☆」×「ナイス・トゥ・ミーチュー☆」と飛び込んで来る山竜と杉原みさおは、当人曰く“ミーのママのカズンがマリッジした家のパパが波夫さんのアンクル”とやらの、波夫の訃報を聞きつけ駆けつけた松夫と、法律婚してゐるのか否かは不明ゆゑ、松夫のワイフでなければ少なくともハニー・千鶴子。
 「Viva Pinks!」殲滅戦第四戦にして初めて深町章から離れ、弟子の渡辺元嗣1993年第一作。何某かトラブルでも抱へてゐたのか、驚く勿れこの年全二作、現在よりも少ない。“未亡人篇”といつて、今回は珍しく無印第一作が存在する、鈴木敬晴1991年第三作「実写本番ONANIE」(主演:五島めぐ)。何れにせよ実写で本番のONANIEとなると、ちぐはぐがジェット・ストリーム・アタックで突つ込んで来るが如く公開題ではある。
 アバンでとりあへずの夫婦生活、したかと思へば筆の根ならぬカット尻も乾かぬ内に、タイトル明けるや事故死した夫の遺影の前で喪装のヒロインが悲嘆に暮れてゐたりなんかする。未亡人ピンクが往々にして採用するある意味鮮やかさに比べ、配偶者二人をまとめて鬼籍に放り込む今作の大技には、驚くと同時に感心した。そこから看板を偽らないONANIE映画が暫し続き、はてさてそれはそれとして、三番手と山竜の処遇に危惧も覚えかけた尺の折返し間際、<故人の遠い親戚を装ひ忌中の家に潜り込むコソ泥>だなどと、旦那二人同時死亡を超える松夫の荒業造形には、重ねて驚かされた。驚かされたが、ここは掛け値なしの松夫と千鶴子の蜜月ぶりと、松夫の口車に乗せられた慶子と洋子が、死んだ人間に操を立てる禁欲よりも、今も生きる自分達の幸福―より直截には快楽―を選ぶに至る即物的な大団円は、無茶を無茶で裏返して上手いこと風呂敷を畳み込む、グルッと一周して何気に魔術のやうな作劇が素晴らしい。いはずもがなを改めて整理すると、荒業で戦線に投入した三番手―と山竜―が、展開の動因を担ふ構成はピンク映画固有の論理上地味にでなく秀逸。冴木直の、肢体は超絶美麗かつ肉感的に捉へる割に、首から上を異様に不細工に撮るカメラには疑問を大きく残しつつ、全般的にフラットすぎる演出が案外よく出来た脚本をさうとは勿体ぶらせない、燻し銀の一作である。

 要は開巻を引つ繰り返したラストの“そして一年後”、それぞれの新規間男は演出部かとも思はれるが、特定不能。“人生はワンツーファック”、“汗かき腰振り励まうよ”と、臆面もなければ清々しいまでに下らない「三百六十五歩のマーチ」の替歌を、伊藤清美と冴木直が歌つて踊つてひとまづ賑々しく締め括る。今となつては、そんな力の脱ける真似が許された時代の麗しさが、寧ろかけがへのないものとさへ時に思へなくもない。


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 「おばちやんの秘事 巨乳妻と変態妻なら」(2017/製作:松岡プロダクション/提供:Xces Film/監督:松岡邦彦/脚本:金田敬/企画:亀井戸粋人/撮影:村石直人/照明:多摩三郎/録音:山口勉/編集:小泉剛/助監督:江尻大/監督助手:村田剛志/撮影助手:八木健太/録音助手:廣木邦人/演出部応援:岡元太/スチール:本田あきら/整音:シンクワイア/仕上げ:東映ラボ・テック/協力:秋山兼定・榎本敏郎・吉行由実/出演:桐島美奈子・初芽里奈・酒井あずさ・野尻建・小林節彦・柳東史)。如何にも変名臭いゆゑ、使ひ回しされてゐる場合必ずしも同一人物とは限らない可能性すらあるものの、照明の多摩三郎が、松岡邦彦2005年第二作「刺青淫婦 つるむ」(黒川幸則と共同脚本/主演:小川はるみ)以来の地味な大復帰。
 あへて意図的に選曲したとしか思へない、どう形容したものか、昔のAVみたいな気の抜けた劇伴で開巻。昼下がりのラブホテル、パート従業員の斉藤真由美(桐島)と吉岡美寿々(酒井)が、客が―僅かなサービスタイムの内に三発―残した使用済みコンドームにワーキャー大騒ぎする。一人で部屋の清掃に入つた真由美の秘かな愉しみは、客の情事の痕跡に妄想を膨らませての自慰。ボガンとこれぞ正しくスイカップな爆乳を放り出しての、オノマトペを多用する淫語も駆使してのオナニーを真由美が大披露した上でタイトル・イン。実も蓋もない結論を先走ると、今作、ここまでアバンを観ればそれで別に事足りる。馬鹿いふな、初芽里奈にコバセツにヤナーギー。どうしても残りの俳優部も観ておかないと気が済まんといふのでなけば、野尻建はどうした。
 バツイチの美寿々と、支配人の木島慎之介(小林)が控室にてほぼほぼ憚りもなく繰り広げる情事には大いにアテられつつ、淡泊な夫・吾郎(柳)は日々盛んな妻の求めをまるで取り合はず、真由美はポップに欲求不満を拗らせる。そんなある日、真由美が清掃に入つた702号室は既に自分達で綺麗に片付けられてあり、真由美を落胆させる。とはいへシーツに残る若い体臭に貪欲な日課をオッ始めた真由美がフと気づくと、枕元には自撮り用にセットしたのを、忘れて行つたスマホが。フィーチャーフォンしか持たない真由美が悪戦苦闘しながらも触つてみると、スマホには愛称・キミタクことイケメン俳優の君塚拓也(野尻)と、アイドル・飯田遥(初芽)の逢瀬が撮影されてあつた。
 第五弾「女と女のラブゲーム 男達を犯せ!」(2014/脚本:今西守=黒川幸則/主演:水希杏)から三年ぶり二本目の、松岡邦彦によるデジエク第九弾。かつて“エクセスの黒い彗星”と、当サイトが熱狂的に追ひ駆けてゐた松岡邦彦は今何処。主人公の職業が同じと来れば当然想起しない訳がない、止め処ない挿しつ挿されつを通して堂々としたグランドホテルを構築する大傑作ピンク「ド・有頂天ラブホテル 今夜も、満員御礼」(2006/脚本:今西守)と同じ人間が撮つたとは凡そ思へない、漫然としたのも通り越して閑散とした出来。内トラの余地さへ残らない、ミニマムな頭数ではグランドホテルなんぞ土台端から通らぬ相談である点に関しては、百兆歩譲つてこの際さて措く、にせよ。一篇通して新たに発生したイベントが、三面を賑す熱愛の成就にヒロインが文字通り一肌脱ぐのみとなると、三番手濡れ場要員絡みの精々二十分もあれば釣りが来さうな顛末に、五分延ばした尺を丸々費やすとは何を考へてをるのかと傾げた首が肩につく。厳密な意味での締めではないが事実上のクライマックスは、真由美がその時間帯―ラブホは―何処も満員だとかいふ正体不明の方便で、都合二度待ち合はせに使ふ喫茶店「マリエール」から、キミタクと飯田遥を直接自宅に招いての巴戦。予め設定した吾郎の予想帰宅時間といふタイム・リミットを、事に熱中するあまり忘れてしまふカットをわざわざ一手間設けておきながら、柳東史らしいメソッドで目を白黒させる吾郎の目撃がその先に一欠片も膨らまない、膨らませない意味が判らない。斉藤家の夫婦生活がその場の勢ひで華麗かつ豪快に再興するとでもいふのが、せめてもの最低限の大団円といつたところなのではなからうか。キミタクと仲良くなつたほかは、結局真由美の立ち位置は一ミリたりとて変化せず、そもそも、劇中ただ一人絶頂に達しさせて貰へない吾郎の冷遇に直面するに涙もちよちよぎれる以前に、吾郎を頑なに蚊帳の外に据ゑ置く要が何処にあるのか改めて理解に苦しむ。ビリング頭二人を向かうに回し長丁場を戦はせるには、単調な駄ビートを刻むばかりの野尻建の大根ならぬ逆マグロぶりは何気にでなく厳しく、食傷スレスレに桐島美奈子のオッパイを堪能させて呉れる以外には、コバセツも齢をとつたなあとかいふ至極当たり前な感慨くらゐしか取りつく島も見当たらない、レジェンドばりに薄味な屁のやうな一作である。松岡邦彦相手に、斯様に雑な悪口を叩きたくはなかつた。


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 「痴漢電車 スリと女と痴漢」(1991/製作・配給:大蔵映画/監督・脚本:小林悟/撮影:柳田友貴/照明:小野寺透/編集:フィルム・クラフト/助監督:青柳一夫・植田中/スチール:大崎正浩/録音:銀座サウンド/現像:東映化工/出演:高橋めぐみ・長崎ゆき・坂入正三・朝田淳史・石神一・板垣有美・冴木直)。
 出発する駅のホームを電車の中から抜いた画と、カーブを曲がる電車の画を適当に繋いでタイトル・イン。劇中団体名ママで大日本弁護士協力会に勤務する瑩子(高橋)が、AV畑で老人部男優として今なほ現役らしい―詳細求む―サカショーの電車痴漢を被弾する。ここで、一応でなく確かに美形ではあるものの、壊滅的に表情、もしくは生気さへ乏しい高橋めぐみに拭ひ難い違和感に関して、個人的に整理がついた。この人よくいへばマネキン、直截にはダッチワイフ顔なんだ。造作に引き摺られてか、あるいは化粧の塗り具合の問題なのか、質感から生身に見えない。駅を出たところで財布と、母親の形見のイヤリングを掏られてゐるのに気づいた瑩子は、その場で「ようし!」とポップに奮起。友人の多恵子に援軍を仰いでの、犯人捜しに着手する。とここまでは、驚く勿れ序盤にして最低限物語が出来上がつてゐる、かに思へたのに。
 配役残り長崎ゆきが、瑩子に呼びつけられたスナック「美風」―カウンター席に座つて摩天楼が背中に来るのが識別法―で待ち惚けを喰らはされる多恵子。小林悟映画でしか見なければ、未だ脱いでゐるところを見たことがない―別に見たいといつてゐる訳ではない―板垣有美は、実戦的な切札にと瑩子が連れて来た大弁協調査部のアツミタマコ女史。サカショーが痴漢かスリかで、下心をくすぐられなくもない多恵子と、杓子定規に喧々するタマコが対立するのは、後々ひとつの軸として機能するのかと思ひかけつつ、勿論そんな筈もなく。この件で一番面白いのは、痴漢の特徴を多恵子に問はれた瑩子の回答が、「ギョロ目で冴えない奴」。無造作に放られたど真ん中のストレートに、呆気に取られ喫した見逃し三振の如き清々しさである。とりあへず、瑩子と多恵子の二人で電車に乗つてみる。痴漢後、駅を出てから多恵子にトッ捕まつた石神一は、スリではないと頑なに否定した上で、劇中自己紹介ママで“自分は憲法第四十九条改定に基き編成された海外特別派遣協力隊員であります”。“改正”、ではなく憲法を“改定”するとは普通いはないが、そもそも日本国憲法第四十九条は議員の歳費に関する規定につき、また随分と瓢箪から駒な改憲をやらかしたものである。石神一が闇雲に“御国のために”を連呼するのも、実はこれで反戦平和主義者らしい小林悟が徒にポリティカルな方角にスッ転んでみせるのかと思ひきや、最早煌びやかなまでのその場限りでさうもならず。それはさて措き、電車痴漢再戦を経て尾行した瑩子が突き止めたサカショーの勤務先が、三流不動産と書いて読みはミツル。とかく枝葉ばかりが咲き誇る一作である、チャチい造花なんだけど。タマコが調べあげたサカショーの役名は佐々木、朝淳と冴木直については後述する。実車輌ショットを散発的に挿み込みながらも、絡み―あるいは俳優部が登場するカット―は全てセット撮影。中盤瑩子の傍らにボサーッと無防備に見切れるメガネは、青柳一夫なのか植田中なのか。
 改めて、「痴漢電車 スリと女と痴漢」。全く中身はないやうな気もするが気が利いて聞こえなくもない公開題に、その内バラ買ひするつもりでゐたら月額動画に流れて来た小林悟1991年第十三作、ピンク限定だと第十一作。薔薇族五本を含めての、全十七作といふのは何はともあれ凄まじい。今やローテーションを堅持してゐたとて、十七本撮らうと思へば五六年はかゝる。今作の十年後に壮絶な戦死を遂げる大御大の、逝去後ぼちぼち二十年。この期にピンク映画が命脈を保つてゐる僥倖を、寧ろ言祝ぐべきなのかも知れないが。
 閑話休題、珍しく早々にそれらしき道筋が出来上がつたにも関らず、木に竹ばかり接いでゐる内に、畢竟展開は順調に迷走する。最後のトライにタマコと電車に乗つた瑩子は、タマコの背後を取つた朝淳と冴木直の、冴木直の耳に母親のイヤリングを発見する。降車したのち冴木直を捕まへた瑩子は、拾つたと称する冴木直に招かれるまゝ家について行く。そこに遅れて朝淳が帰宅したところで、瑩子は想起する。本篇開巻画面左から佐々木に痴漢される瑩子の、更に右―無論実際にはカメラがそこまで行かない―には矢張りコンビで揃つた朝淳と冴木直が。大雑把なフラッシュバックで瑩子が辿り着く、朝淳が掏る男で冴木直がブツを運ぶ女だとかいふ出し抜けな核心に、呆れるのも通り越し畏れ入るのはそれでもまだ早い。二人して瑩子を嬲る最中、燃え上がつた冴木直と朝淳が完遂するのを待つて、何をどう突き止めたのか救出に飛び込んで来た佐々木と、瑩子が結ばれる最早感動的に底の抜けたラストはこれぞ正しくな大御大仕事。全体、斯様にちぐはぐな始終で大団円ぶるつもりかといつた以前に、土台が財布は兎も角、お母さんのイヤリングは依然冴木直の耳元にあるまんまでもある。最大限に好意的な評価を試みるならば、親の形見よりも、男の方が大事といふ瑩子の姿勢に、遠く遥か彼方の最終的には堕落論にも通ずる、即物性への肯定的な眼差しでも看て取ればよいのであらうか。安吾が落とした雷にでも打たれてしまへ、俺が。

 そんな中でのハイライトは、ダッチワイフ顔のビリング頭でなければ、これといつた代表作の見当たらなさが、消費財に徹した量産型娯楽映画に於ける女優部として、ある意味鑑ともいふべきトメに座る冴木直でもなく、長崎ゆきの濡れ場が一番の見所。着衣の状態だと単なる垢抜けない骨太程度に一旦見せかけて、一服剥ぐやなかなか以上に大きさも形も申し分ないオッパイに、意外とくびれた腰から充実した尻にかけてのラインが超絶、意表を突いた眼福を撃ち込んで来る。


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 「熟女ヴァージン 揉まれて港町」(2017/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:深澤浩子/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:目見田健/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:市原博文/照明助手:小松麻美/美術協力:富田悠/スチール:阿部真也/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:白木優子・月本愛・通野未帆・和田光沙・櫻井拓也・津田篤・橘秀樹・山本宗介)。
 「明日香でえす☆」と軽やかに火蓋を切る、何の変哲もないそこら辺の公園にて、十八歳になつた記念にと女子高生が縄跳びの二重飛び百回に挑戦する投稿動画。ところで、二重飛びに見えないのは気の所為か。一方アラフォー女の、見るから引きこもつた薄暗い部屋。女が鉛筆を走らせる、動画の女子高生の背景に見切れるベンチで菓子パンを頬張る津田篤の、何故か逆アングルのイラストにタイトル・イン。美術協力の富田悠が、鉛筆画の主なのか?
 優等生であつたものの、高三の時から凡そ二十年引きこもる藤森和子(白木)の部屋に、妹の美沙(通野)がノックもせずに入つて来る。遺影もスルーする両親は二年前に事故で死去、和子の面倒を託された格好の美沙が、家事に関する文句を一頻り吐く。翌日、美沙が婚約者の岡本雅也(櫻井)を家に連れて来る。家賃は妹夫婦が出しての別居を提案された―見るから部屋着なスウェットの―和子は、無言で居間の席を立つ。一応和子を慮る岡本に対し、美沙が有無をいはさぬ速攻を仕掛ける婚前交渉の最中、和子は荷物をまとめ出奔。目指した先は、名称をロストした女子高生縄跳び動画の公園、の津田篤がジャムパン―如何に特定したのか最後まで語られはしないが、和子によるとジャムパンらしい―を食べてゐたベンチ。ホケーッと和子が座つてゐると、そこに縄跳び動画の女子高生・木崎明日香(月本)が私服で現れ、再びてれんてれん縄跳びを始める。最初は自身をガン見する正体不明の中年女を警戒した明日香も、和子が動画を見たと知るや胸襟を開き、津田篤と動画撮影当日軽く話をしてみたところ、実家の民宿を継ぐため静岡に帰るといつてゐた旨を伝へる。すると脊髄で折り返して静岡にレッツらゴーな和子に、その場の勢ひに呑まれた明日香も同行。如何にも日本的な、海の間近まで山が迫つたロケーション。山裾を曲りくねつた海沿ひの線路を電車に揺られ、二人は静岡に入る。
 配役残り橘秀樹は、ひとまづ波止場にやつて来た和子と明日香に、「そんなところで何してるの?」と声をかける大体ナンパ師・白井。車に乗せて呉れたお礼にと、明日香が白井に膳を据ゑる件。明日香が当初提示した手コキを固辞する白井に、明日香は返す刀で「オッパイ見る?」。棚から転がり落ちた牡丹餅が、葱を背負つた鴨に空中でトランスフォームするが如きドリーミングなシークエンスに加へ、明日香が勿体ぶりもせずたくし上げたセーターから、ボロンと零れる爆乳が素晴らしい。明日香と白井がそのまゝザクザク突入した青姦に於ける正常位こと立位後背位を、目撃した和子が衝撃を受ける事後、二人は明日香が肌身離さず持ち歩く、何某か因縁もあるらしき写真の撮られた砂浜に。幼少期一度だけ連れて来て貰つた海に触れなかつた和子が、明日香に促され恐る恐る波打ち際に近づくと、入水でもするのかと早とちりした地元の猟師・中尾智晴(山本)が「早まるな!」とドラゴンロケット。逆に中尾に冬の海に突き飛ばされた和子は、中尾懇意の民宿「もちづき」に。和田光沙が、料理人の夫とは五年前に死別、「もちづき」を一人で切り盛りする望月めぐみ。和子と明日香は「もちづき」に逗留、中尾の力も借りての和子曰くジャムパンマン捜しに本格的に着手する。
 2012年第五作「三十路義母 背徳のしたたり」(脚本:エバラマチコ/主演:結城みさ)、2016年第二作「大人志願 恥ぢらひの発情」(脚本:小山侑子/主演:若月まりあ)に続いての五作ぶり三度目で、竹洞哲也が小松公典以外の脚本家を迎へた2017年第二作、OPP+題が「出会つてないけど、さやうなら」。ついでといつては何だが白木優子は竹洞哲也2015年第二作「四十路熟女 性処理はヒミツ」(脚本:小松公典)、月本愛はいまおかしんじ大蔵第二作「感じるつちんこ ヤリ放題!」(2017/脚本:守屋文雄/主演:涼川絢音)三番手、通野未帆は竹洞哲也2016年第一作「純情濡らし、愛情暮らし」(脚本:当方ボーカル)以来と、三本柱が揃つてピンク第二戦。
 部屋から出ない内に大人を通り越してオバサンになつた女と、“JK”と称するのがより相応しい今時な女子高生の二人旅は、ビリング後ろ二人の矢継ぎ早な投入もテンポよく、順調に軌道に乗る。月本愛を介錯すると、潔くスッパリ退場する橘秀樹の大絶賛濡れ場要員ぶりはピンク映画的に実に清々しく、現代ピンク最強の男前たる山宗はこの上なく見事な壁ドンを、しかも足で決める。屋外では気合を入れたロングを多用する、画の力も強い。とはいへ肝心要のジャムパンマン捜しが釣りでいふところのボウズ続きで、流石に間がもたなくもなりかけた終盤、何気に丹念に積み重ねられた、静岡の嘘が明かされる。それまではそれなりに苦しんで来なくもなかつた和子の傍ら、飄々と刹那的に生きて来たかに見せた明日香も、矢張り心に何の隙間も抱へてゐない筈がなかつた。寧ろ和子の物語にケリがつくよりも先に、明日香に血肉が通ふ瞬間が最初のハイライト。地力のなせる業なのかツキなのか、下手な物言ひを滑らせるやうだが、月本愛はいい映画に出たと思ふ。むくれた表情が、明日香の心のさゝくれにフィットする。そして静岡行でイニシエーションを経た和子が、君“きみ”に感謝の気持ちを込めて告げる出会つてもゐないのにな別れが、ふたつめのハイライトにして真のクライマックス。流石に幾ら何でもハイキーの度が越した画面は、余程上等なプロジェク太でなければ厳しからうが。実はピンク映画としては女の裸比率は案外でもなく結構低く、オーラスの大出世した自立ぶりは些か荒唐無稽の領域にさへ突入してゐながらも、行程の前と後ろとで決して全てが変りはしないにせよ、確実に開けた扉もなくはない綺麗な綺麗なロードムービー。何はともあれ、家を出た和子がとりあへず辿り着いた、津田篤が菓子パンに舌鼓を打つてゐたベンチ。ここでの、メガネにボサッとニット帽を合はせ、呆然と佇む白木優子の破壊力が比類ない。何故だか判らないけれど兎に角無性にエモーショナルなそのショット一撃で、今作はエターナル。削る削るといふほどの絡みの分量がそもそも存在せず、二十分長いOPP+に際して何処をどう水増ししたものやら知らないが、これ、既にR18版で意は尽くされてあるのではなからうか、下手に尺を持て余すでなく十二分に完成してゐる。蔑ろといふと言葉が過ぎるのかも知れないが、少なくともピンクが疎かになる形でOPP+路線を明確に苦戦してゐたやうに映る竹洞哲也が、うつかり高を括つてゐると放つて来たクリーン・ヒット。深澤浩子的にもピンクに於ける初日である点に、改めて論は俟つまい。
 明日香の嘘の備忘録<静岡の民宿で働いてゐたのはミッちやん―明日香母―と別れた明日香実父


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