帰り道、窓を開けると風が吹き抜ける。
もともとの体温が比較的高いこともあるのか、
半袖から出た腕を撫でる風は、ひんやりとして気持ちがいい。
今日はこんなにも心地良いから
少し遠回りをして帰ろうと、
気の向くままに車を走せる。
カーステレオに入れたCDは、
European Jazz Trio “Best of Classics”
European Jazz Trioの代表作といってもいいこのCDは、
誰でも一度はどこかで聴いたことのあるクラシックの
名曲がjazzyにアレンジされている。
香り高いeuropianな雰囲気の曲の数々は、この季節、
深く染み込んでくる感じで、聴くたびに新鮮な感動を呼び覚ます。
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信号を待っていると、
このCDの中の「ハバネラ」が始まった。
「ハバネラ」はビゼーの歌劇『カルメン』の、
あの「ハバネラ」だ。
原曲はカルメンの燃え上がるような
激しい恋心を歌いあげるアリアだが
(ぼくはジェシー・ノーマンのアリアが好きだ。)
jazzyにアレンジされると、一転、心地良く
ノリのよい曲に変わってしまう。
軽やかに響くピアノの音が、誰も走っていない
真っ暗な夜の道路にとけてゆく。
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そんなノリの良さとひんやりとした風に
身を任せて車を走らせているといると、
いつしか海辺に出た。
かすかに聞こえてくるさざ波の音。
潮の香りが鼻をくすぐっている。
深夜の海辺に下りる。
真っ暗な浜辺には誰もいない。
暫く海と対話したあと、
また軽やかなピアノとともに
誰も走っていない深夜の道の、
風をきった。
帰りのお供は
“アダージョ・カンタービレ
(ピアノ・ソナタ第8番 “悲愴" より第2楽章)”など。
ちなみに、
European Jazz Trio “Best of Classics”は、2も出ていて、
こちらもおすすめだ。
(こちらの写真のほうが大きくてまことにバランスが悪いがご容赦。
そのうち写真差替えるかも。)