超級龍熱

香港功夫映画と共に

THIS IS 甄子丹(100) 飯星景子、ドニー・イェンを語る!① “ボストンの虎”編

2017-03-04 08:34:43 | THIS IS 甄子丹
ーさあ、今回は「超級龍熱」のドニー・イェン専門セクション「THIS IS 甄子丹」第100回記念として素晴らしい特別ゲストをお招きしました。作家にしてテレビでも活躍されていらっしゃり、また最近はドニー・イェン研究家としても活躍なさっている飯星景子さんです!

飯星 頼みますから、研究家なんて・・・やめてくださいよ(笑)。

ーいえいえ、まずは飯星さんの香港映画との出会いからお聞きしたいんですが。

飯星 はい、多分ジャッキー・チェンの「スネーキーモンキー蛇拳」(77)だと思います。モンキーパンチさんがイラストのポスターを描いてらっしゃったでしょう?確か同時上映が「トラック野郎」だったかな。その「蛇拳」のポスターを新聞で見たのが香港映画とのファーストコンタクトだと思います。
パンチさんが「マンガアクション」で「ルパン三世」を連載してて、父親の仕事がら家に大人向けの雑誌が沢山あって、私も読んでたんですね。

ーでは始まりはジャッキー・チェンで、たぶん1978年頃でしょうか。

飯星 なので「蛇拳」は劇場で観ています。でもその前にブルース・りーも勿論知っていました。さすがに「燃えよドラゴン」(73)は劇場では観ていませんが、その後にテレビでよくやっていたので。

ーブルース・リーに関しては如何ですか?

飯星 ブルース・リーの映画だと私は「ドラゴンへの道」(72)が好きなんです。

ーおお、「ドラゴンへの道」ですか!

飯星 はい!苗可秀が出てるローマロケの映画ですよね。とにかく「ドラゴンへの道」のブルース・リーって可愛くないですか?

ーリーさんの女性ファンの間でも「ドラ道」は人気が高いです(笑)。

飯星 ねえ、そうでしょう(笑)。その女性ファンの方の気持ちよく判ります。あとヌンチャクもカッコイイし、レストランの裏でリーさんが初めてクンフーの腕前を披露すると、ノラさんが「ハッ」となったりして。
あそこは舞台だったら「待ってました!」って掛け声かかっちゃうシーンですよ!

ー仰る通りです(笑)。ではジャッキー映画で好きな作品もお聞きしましょう。

飯星 最初に観た「蛇拳」や「ドランクモンキー酔拳」(78)も好きですけど、やっぱり衝撃を受けたのは「プロジェクトA」(83)でした。
あの時計台落下のスタントアクションには衝撃を受けましたね!人間がこんなこと本当にやれるの!?って感じで。

ーなるほどぉ。ここでちょっと話題を変えまして、飯星さんがナビゲーターをやってらしたテレビ朝日の映画番組「ウイークエンドシアター」についてお聞きしたいんです。

飯星 やってました。よくご存知ですねー!

ーこの80年代中頃の映画番組は男性の司会者が多かったんですが、女性の司会者は画期的だったと思います。私も当時よくビデオ録画していました。

飯星 あのお仕事はオーディションを受けて頂いたんです。で、「ウイーク~」のご縁で実は私、映画の日本語吹き替えもやらせて頂いたことがあるんです。確か「タイタンの闘い」(81)って映画でした。

ーええっ!それは初めてお聞きますねえ。

飯星 確かお姫様の役でした(笑)。当時の吹き替えの収録現場って、声優が全員揃ったなかで、スタジオに何本かマイクが立ってて、声優さんは自分の出番が来ると台本を持って音を立てないようにマイクの前に来て台詞を喋るんですよ。

ーああ、なるほど。でもこの「ウイークエンド・シアター」で150本以上の映画をご紹介された事が現在の飯星さんの映画に対する知識や目を養った事は確かですね。

飯星 うう~ん、どうでしょうね。ただ映画を観る際にその映画の「良い部分」を探そうとする姿勢は養ってもらったかも知れませんね。
あと番組で紹介する映画もスタッフと一緒にテレビ朝日の別館みたいな試写室で観るんですけど、ちゃんとフィルム上映でしたから。

ーではまた本題に戻りますが、ブルース・リー、ジャッキー・チェンと来るとジェット・リーですが。

飯星 はい、ジェット・リーも大好き!ジェットはテレビとかレンタルビデオ屋さんで観たものが多いんですけど、初期は「少林寺」(82)、「少林寺2」(83)、あと「阿羅漢」(86)が印象に残ってます。ただジェットはその後暫く映画を撮っていない時期がありましたよね?

ーはい、80年代中盤からジェットは低迷期がありました。その後に・・・

飯星 「ワンチャイ」ですよ!多分パート1の「天地黎明」(91)よりもパート2の「天地大乱」(92)が先に日本公開されてたと思うんですが。

ーその「ワンチャイ天地大乱」でジェットと死闘を展開する武打星が今日のメインテーマとなるドニー・イェンこと甄子丹、その人です!

飯星 アハハハ!嬉しい!ドニーさんを思い切り喋れるなんて!(喜)。

ー思い切りどうぞ(笑)。まずドニー・イェンという名前を最初に聞いたのは何時ですか。

飯星 えっと確か最初に観たドニーさんの映画が「ワンチャイ天地大乱」で、レンタルビデオ屋さんで借りて観たんです。何故ってジェット・リーの映画だったから。
私は昔からミュージカル映画が大好きで、子供の頃はレンタルビデオもまだない時代で、フレッド・アステアとかジーン・ケリーの40年か50年代のミュージカル映画ってテレビでも中々観れる機会がなかったんです。
でもそれが年末年始になると夜中にそういう映画を沢山放送したんですね。私はそれが年に1度の楽しみで、特によく放送されたのがジーン・ケリーで、彼の映画「雨に唄えば」(52)が大好きでした。
だから歌って踊ってのミュージカル映画が好きだった事がまず原点にあって、そこからジャッキー・チェンやジェット・リーに繋がるんだと思うんですね。

ーああ、ジェット・リーの表演は確かに舞い踊るような動きですからね。

飯星 私はジーン・ケリーとジェット・リーやジャッキーに同じシンパシーを感じるというか、自分の中では同じ線上にあるんですね。
こう言うと武術家の方は違うと仰るかも知れないんですけど、私はそれもエンターテイメントの要素の一つじゃないかなと思うんですよ。

ーなるほどぉ!で、「天地大乱」でドニー兄貴と初対面となったわけですが・・・

飯星 はい、確かにラン提督のドニーさんは最高にカッコ良かったんですけど、その当時って日本だと他のドニーさんの映画のビデオって探してもなかったんですよ。だからその時の私はドニーさんもそれっきりになっちゃったんです。ジェットのビデオは一杯出てたんでかなり観ましたが。

ー恐らく当時のドニー兄貴作品でビデオ化してたのは「ドラゴン酔太極拳」(84)か「タイガーコネクション」(90)ぐらいですからね。

飯星 でもその2本って、個人オーナーさんがやってるビデオがお店の天井まで積まれているようなマニアックなレンタル屋さんじゃないと置いてなかったでしょ(笑)。

ーその通りです(笑)。お店によってビデオの品揃えが違いましたよね。ではその一時ストップしたドニー兄貴熱が復活したのは?

飯星 実はその間にもドニーさんの出演作は観ていたんですが、恥ずかしながら同一人物という認識がなくて・・・。ちゃんと意識出来たのがドニーさん主演のTVドラマ「精武門」です!

ーおおぉ!あの伝説のTVドラマ「精武門」(95)でしたか!

飯星 レンタルショップで見つけた「精武門」。全10巻30話。最初は私ドニーさん主演のドラマって知らないで観始めたんです。
で、第1話からもう私ハマっちゃって、続きが観たくて観たくて連日夜なべして数日で一気に最後の30話まで観ちゃったんです(笑)。
もうジェットコースターみたいにドラマの展開が早くて、登場人物がバンバン、ちょっと目を離してると2人ぐらいすぐ死んじゃうの、しかも大事な人なのに!
寝不足で死にそうになりながら、止められない。次の展開が知りたくて知りたくて。「ドラゴン怒りの鉄拳」のドラマ化だから物語の最後はどうなるか判ってて観てるわけですよ。でもそれでも泣きながら観るのが止められないの!
 
ー私も同じでした!あと第15話辺りでドニー陳眞がムエタイボクサー(歐錦棠)との連戦で怪鳥音やステップワークなどを使ったドラゴン殺法に開眼しますね。

飯星 私が今まで観て来たドニー・イェンで、一番ヤラれてるのがこのムエタイボクサーとの闘いですね。観ていて「うわぁぁ・・・陳眞!」ってショックでした。あそこで陳眞が武術家として闘えなくなって何処に篭っちゃうわけだし。
あとこの「精武門」で陳眞の師匠の霍元甲をやった高雄が本当に素敵でしたよね。ちょっと小ネタなんですけど、高雄ってマット・デイモン主演「オデッセイ」(15)で中国の宇宙開発局が出てくるんですけど、あの局長みたいなのが高雄なの。
私「オデッセイ」は劇場で観たんですけど、劇場で高雄を見つけてガッツポーズしてたのは多分私だけかも(笑)。

ー「オデッセイ」の霍師父チェックします(笑)。でもドラマ「精武門」でドニー兄貴にハマった飯星さんは、ある意味とても正統的な流れでドニー兄貴にハマったんですね。

飯星 この「精武門」で私は「この人がドニー・イェン!」ってやっと覚えました。でもまだ映画雑誌とかにドニーさんあまり載らなかったし、「ドラゴン危機一発97」(97)や「ドニー・イェンCOOL」(98)を上映したとか、「香港電影通信」で龍熱さんがドニーさんに初めてインタビューしたことは、私は全然知らなくて。
やっぱり「インターネット前のドニー・イェン」と「インターネット後のドニー・イェン」は全然違うって事なんでしょうね。

ーその後のインターネットが普及する辺りから飯星さんがドニー兄貴に対するキリのない世界に入っていくわけですね。ではここからいよいよ今回のインタビューの目玉と言いますか、飯星さんにドニー兄貴のデビュー作から最新作まで全作品を一気に語って頂く、名付けて「甄子丹ムービー~ワンデーマラソン」に入りたいと思います!

飯星 はい、私一応ドニーさんの映画もドラマも、コンプリートしてますから、頑張ります(笑顔)。

ーまずデビュー作品「ドラゴン酔太極拳」(84)から。

飯星 この映画のドニーさんはもうピチピチしてて可愛いですね。
まだ線が細い感じですけど、脱ぐとムキムキじゃないですか。
私って本当はムキムキなのって得意じゃないんですよ(苦笑)。
あとドニーさんが今のようにファンに認知して貰うまで、結構時間がかかってて、そういう意味で言うとこのデビュー作の頃のドニーさんは運がなかったかなぁって。この頃ってちょうど香港でもクンフー映画が飽きられていた時で、ジャッキー・チェンやゴールデン・ハーベストが「プロジェクトA」とかクンフー映画じゃない現代アクション映画にシフトチェンジする時期ですよね。
作品自体はとても面白いのに、時期が悪かったと言うか。「プロジェクトA」の後に公開されたものになると、ちょっと古臭い出来に当時は思われたでしょうね。
そういう意味で、この84年という時期にデビューしたドニーさんは運がなかったと思うんですね。で、その運のなさがその後もちょっと続いちゃった感じですね。

ー確かにそうですね。では第2作「情逢敵手」(85)。未だに国内未ソフト化作品です。

飯星 私は香港盤を所有しています。この作品のドニーさんもすっごくキュート。監督の袁和平にとっては新しいスタイルを模索していた頃だと思うんですよ。その袁和平が模索していたものがこの映画ではドニーさんのブレイクダンスを取り入れたり良い方向に出た作品ではあると思いますね。 

ーこの後、ドニー兄貴は色々あったようで1度ボストンに帰ってるんですが、またもう1度香港に戻って来て撮った「タイガー刑事」(88)は如何ですか。

飯星 私は中盤のドニーさんとマイケル・ウッズやステファン・バーウィックの浜辺の決闘シーンをYouTubeで先に観ていて、あそこは本当に凄いアクションですよね!

ー素晴らしいファイトシーンですね!ただあの後ドニー兄貴が撃たれちゃうと、殆どのドニーファンがリモコンの停止ボタンを押すという(苦笑)。

飯星 それって判ります(笑)。ドニーさんも本に書いてましたけど、かなりリアルな殺陣になってるし、多分ドニーさんが自分でアクション付けてると思うんですよ。
それとこの頃の袁和平も現代アクションを撮るのに余り慣れてなくて、ドニーさんが香港に戻ってきた時、監督とは色々ディスカッションしたらしいんです。
デビューからの2本では昔からの香港映画界のシステムで、俳優は監督やアクション監督に質問も口答えもしちゃ駄目!みたいな感じだったらしいんですけど、香港にまた戻って来てからのドニーさんは自分の意見を監督にもズバズバ!言うようなスタイルにしたみたいです。だからあのドニーさん対マイケルみたいなリアルで素晴らしいアクションが生まれたんでしょうね。

ーうう~ん、なるほど。では初期のドニー兄貴の傑作「クライムキーパー香港捜査官」(89)。

飯星 この映画はね、楊麗青がいい!(笑)。もう最高!彼女大好き。ドニーさんは何時も同じような刑事役なんですけど(苦笑)、アクションは本当に良かったですね。

ードニー兄貴vsジョン・サルヴィティの夜の決闘シーンで、ドニー兄貴がジャンプしながら着地する際に逆の足で蹴るアクションって、今のドニー兄貴に果たして出来るかどうか(苦笑)。

飯星 そうそう!ジョンがカッコイイですよね。ちょっとテンション怖いけど(笑)。あとドニーさんのフェイント入れたステップがブルース・リーみたいで新鮮ですね。
こういう変則ステップやグルグルパンチみたいなアクションの合間の繋ぎの動きって、1本前の「タイガー刑事」から出ているドニーさんの個性だと思うんですよ。

ーラストのビルの屋上のドニー兄貴vsマイケル・ウッズの対決も迫力満点ですね。

飯星 でもドニーは「このシーンのスタントダブルは俺に全然似てないし髪型も違うだろう!」って怒ってたみたいです(笑)。ドニーさんってスタントダブルに厳しいから(笑)。

ーそうでしたか(笑)。ではこれまた評価の高い「タイガーコネクション」(90)。

飯星 はい、この映画も大好き!良いアクションが一杯あるし。でもこの頃のドニーさんってアクションが最高に良いのに役柄が可哀想なのが多いですよね(苦笑)。

ー確かに(笑)。映画のラストのドニーvsジョン・サルヴィティ、ドニーvsマイケル・ウッズ、そしてドニーvs威龍(現:仇雲波)の3連戦は如何ですか?

飯星 特にマイケル・ウッズが良いですよね。また袁和平の挟むウッズのカットがね、劇団四季のキャッツみたいに「ガオー」ってカメラに飛んできたりして可愛くて死にそうになります。

ーそういう女性ならではの視点があるんですね(笑)。では「ドラゴン・バーニング」(91)。

飯星 これって宝探しの話ですよね。確か「邪神拳」(91)と一緒に竹書房から出たんですよ。「ドラゴン・バーニング」はね、ドニーさんが変な縞々のズボン履いてるんですが、観た人の8割はくいだおれ人形を思い出す(笑)。

ー最後はドニー兄貴がブチ切れてサルヴィティを棍棒で殴って倒すという(苦笑)。

飯星 そうそう!(笑)。あと日本人の高城富士美さんも出てましたよね。彼女動きのキレがとてもいいし、慮恵光が一番男前だった頃。
どうもこの映画でのある女優さんのドニーさんの印象は「功夫はうまいかもしれないけど、スカしてて嫌な人!」だったそうですよ(笑)。

ーああ~この頃から“俺様モード”入ってたんですねえ(苦笑)。

飯星 いやもう「タイガー刑事」の頃からじゃないですか?相当色々な人にブイブイ言わしてたみたいですよ(笑)。

ーそ、そうでしたか(苦笑)。ではドニー兄貴が悪の最強宦官で出演の「ドラゴン・イン」(92)。

飯星 好き、好き、大好き。ドニーさん出番は少ないけど超印象に残る最強の宦官役で。もうヴィジュアル系でカッコイイ。
アクションも程小東と元彬だったかな、ワイヤーワーク全開で「クルクルクル!」って回る回る。ただ他の主役の梁家輝、林青霞、張曼玉が武打星じゃないので、ラストの砂漠の決闘シーンのドニーさんは殆どスタントダブルと闘ったみたいですよ。
そのクライマックスでドニーさんも眼の側を大きく切る怪我をしたそうです。ドニーさんが目の側を縫うほどの怪我をしたのは、今までで5回。「ワンチャイ天地大乱」とこの「ドラゴン・イン」、「英雄/HERO」、「イップマン葉問」と「イップマン継承」。
いずれも大ヒット作だから、最新の「~継承」では怪我したときに「やった、これはヒットするぞ!」と思ったって無邪気に笑ってました。
武打星の宿命として怪我はつきものなんですねぇ。映画界に入って最初の一番大きな怪我は「情逢敵手」。この映画で狄威とリングで闘うシーンあるでしょう。
あの対決シーンで壁にガーン!とぶつかるシーンでドニーさん右肩を怪我してアメリカで手術をしてるんですよ。
だから1度アメリカに帰ったのは肩の怪我もあったんじゃないでしょうか。ベイ・ローガンが作った功夫ドキュメンタリーでドニーさんが話しているのを見ました。

ーおおっとベイ・ローガンですね。ベイ・ローガンと言えばドラマ「精武門」の最終話でロシア人格闘家の役で出てましたね。

飯星 あの時は私もベイ・ローガンって判らなかったから、香港映画ってちょっと怪しい外人さんってよく出て来るでしょう?だから「精武門」のベイ・ローガンも監督の飲み友達の外人さんか、スタッフの連れて来た友達なのかな、くらいに思ってました(爆笑)。

ーそれ何か納得です!(爆笑)。ではこれまた日本未ソフト化の「猟豹行動」(92)は如何ですか。この映画、後でお訊きする「SPL」のようにドニー兄貴がラストで壮絶に死ぬという・・・

飯星 ああ、そうでしたねえ。どこを切っても低予算であることが透けて見える作品(笑)。
正直ドニーさんより、彼と戦う劉家輝があんまりな役なのがショックでショックで。「三徳和尚、何やってんだぁ!」とモニターに向かって言いました。
ドニーさんのアクションも特出するようなものでもなく、当時よく見られた銃撃戦が多かったような印象です。

ーでは「新流星蝴蝶劍」(93)。ドニー葉翔が楊紫瓊にメロメロになる役でした。

飯星 90年代武侠片、という見本みたいな作品ですよね、好き。
ドニーさんって楊紫瓊と共演するととたんにヘタレキャラになるんですよね(笑)。
これと「レディファイター詠春拳伝説」もそうだった。この頃いくらドニーさんが「俺の方がアクション巧いぜ!」と思ってたとしても、当時の楊紫瓊って大スターで格が違ってたと思うし。
なのに21年ぶりの「ソード・オブ・デスティニー」になってもそんなキャラだったのには心底感心しましたよ。
だからドニーさんが楊紫瓊と共演する時は彼女に頭が上がらないキャラになるのは、もう一生逃れられない宿命みたいなものです(笑)。

ーこの映画、ラストの編集が違うバージョンがあって、ドニー兄貴が楊紫瓊と一緒に身を投げて「やっと一緒になれるんだ!」となるロマンティックなエンディングがありますが。

飯星 それ観たことがあります。人格が破綻したような役が続いたところに、この作品の葉翔は真面目で人間味があってカワイイ役でした。とはいえ楊紫瓊お姉さまの肖像画にチューしたりお風呂を覗くとこがまた。純情なんだけどどっかヘン(笑)。

ーあと映画の中盤で胡金銓の代表作「侠女」(71)の有名な竹林の闘いをパワーアップさせたようなド迫力の“人間海苔巻き”ような剣劇アクションが印象的です。

飯星 正直、あのシーンって観ていて何やってるのかよく分らないんですよ(笑)。カット割り細かすぎて大胆すぎませんか?
いまだに、どうなってるのかよく判らない。けどすごいと圧倒される。それこそ程小東らしさがあって監督のいい面がでてますよね。

ー程小東は武術指導では良い仕事するんですが、監督やらせると物語が破綻しちゃう人です。

飯星 あ、そうなんですか。では、私は幸いまともな作品を観ていたほうなんですね(笑)。

ーそれでは大傑作「ワインチャイ外伝/アイアンモンキー」(93)。

飯星 名作です!この頃の90年代のベスト映画ですね。たぶん袁和平の最高傑作でしょう。ラストの炎の海の中で闘うシーンって昔に倉田保昭さんも方世玉の映画でやってた梅鉢杭の闘いをパワーアップさせた感じで大好きです。
音楽も良かったし、ドニーさんの辮髪や長袍姿も素敵でした。
ドニーさんって頭の形が凄く綺麗なんですよ。ドニーさんがこの後もっと有名になってからの2000年以降の作品の辮髪は全部特殊メイクですから、ドニーさんの頭の形が素敵!と思ってる女性ファンはこの「アイアンモンキー」や「ワンチャイ天地大乱」を是非ご覧いただきたいです。

ーでは同じく「ワンチャイ天地雷鳴」(93)は如何ですか。ドニー兄貴と熊欣欣が対決します。

飯星 ドニーさんの蘇乞児が酔拳使う映画ですね。この邦題は当時香港映画の宣伝のお手伝いなどしていらした映画監督の中田圭さんが付けたそうですよ。ドニーさんの酔拳が観られるのは、かなりレア。ちょっとアクションで早送りが過ぎてワケ分んないところも、いかにもこの年代の作品ですね。

ーそれでは「レディファイター詠春拳伝説」(93)は如何ですか。

飯星 これも大好きですねえ!でもこの映画はドニーさんの「イップマン」シリーズと比べると、詠春拳自体はそんなにフィーチャーされてなくて、詠春拳をオーソドックスなクンフー映画としてアレンジした映画って感じなのかな。
あとドニーさんも武術指導として参加してて、楊紫瓊が馬に乗って山賊を追い詰めるシーンはドニーさんのアクション指導だと「アクションブック」にありました。ドニーさんが「馬をワイヤーで吊るしたんだ」って威張ってました(笑)。

ーそうでしたか(笑)。「幻影拳/ザ・マジック・カンフー」(94)は如何ですか。

飯星 この映画あまり印象残ってなくて。通しで観たのは1回きりです。すみません。ドニーさんの制服姿がカッコ良かった事ぐらいしか覚えてないです。あとベイ・ローガン!(笑)。

ーまた出てましたか、ベイ・ローガン(爆笑)。

飯星 ベイ・ローガンがまた出てて(爆笑)。この映画を観た時は私もベイ・ローガンが誰だか判ってたので「あ、ベイ・ローガン!」って(笑)。谷垣健治さんに言わせるとベイさんってドニーさんに蹴られて喜ぶタイプらしいですよ。気持ちはよく分るし、うらやましいけど(笑)。

ードニー兄貴に蹴られて幸せ!って感じですね(笑)。では「ドラゴン電光石火98」(95)。

飯星 うう~ん!この映画を観た最初の感想は・・・予算がない!(笑)。だってディスコのシーンなんてちゃんと照明焚いてるのかなって。このシーンってドニーさんも良い動きしてるんだろうけど、照明が暗くて全然見えない。つまり予算がない!

ー判りました(笑)。では「賭聖2:街頭賭聖」(95)。

飯星 この映画でドニーさんとコンビで闘う子役の子が「イップマン/葉問」で葉問の弟子の1人で出てる釋小龍くんですよ。立派な青年になっててね。この「賭聖2~」はドニーさんとその釋小龍くんが闘うシーンのためにあります!このシーンは大好きです。

ーいやその通りです(笑)。では「ワンチャイ/アイアンモンキーグレート」(96)。

飯星 うう~ん!この映画も困っちゃいますよね(苦笑)。でもアクションシーンはそんなに悪くないですよ。ドニーさんと周比利が闘っていますし。見どころは、若いドニーさんの可憐なグレイの長袍スタイル。

ーでは犯罪ホラー映画「666魔鬼復活」(96)。

飯星 あ、王晶制作の映画ですよね。アクション映画と言うよりもホラー・サスペンス映画で、ドニーさんは眼鏡かけてる刑事の役なんだけど、アクションは肉弾戦より銃撃戦の方が多かったような。あと邱淑貞が可愛かった。

ーではこれはドニー兄貴がジムのオーナー役でカメオ出演の「黑玫瑰義結金蘭」(97)。

飯星 ドニーさん、自分のジムで主人公を「バンバーン!」ってやっちゃう1シーンだけの出演でしたね。

ーこの映画を香港で上映した時、画面にドニー兄貴が登場した瞬間、香港の観客が「おお~!イエン・チータ~ン!」と歓声をあげたそうです。

飯星 へぇ、そうなんですか!この頃からアクション映画が好きな人はドニーさんのこと知ってたんでしょうね。嬉しいエピソードを教えてくれてありがとうございます。

ーそれではドニー兄貴の初監督作品「ドラゴン危機一発97」(97)です。

飯星 これはもう最高です。あの熱量と勢い。もう気合いが入りまくった自主映画みたいな趣きがもうしびれます!

ー気合いの入った自主映画(苦笑)。あと終盤で恋人を奪った山賊をドニー兄貴が密林の中追走するシーンは「ラスト・オブ・モヒカン」(92)をイメージして撮ったそうです。

飯星 私、人が走っているだけであんなに凄くて思わず笑っちゃう映画ってそんなにないと思うんですよ。馬鹿にして笑ってるんじゃなくて、あまりに凄くてリアクション的に笑うしかないって言う。
あのスピード感といい、ドニーさんの走り方って美しいでしょう?この映画はドニーさんの20世紀の集大成でしょうね。

ー終盤のドニー兄貴vs麥偉章の一騎打ちもド迫力でした。

飯星 あの決闘シーンは初めて観た時は本当にたまげましたもん、たまげた!ってこういうことを言うのかってくらいビックリしました。1度見ただけでは頭で到底処理しきれないアクション。

ー私もこの映画が大好きで、前にドニー兄貴に「あの「新唐山大兄」は最高ですね!」って言ったら、ドニー兄貴に「うう~ん、でも結構昔の映画だよな?」って言われちゃって(苦笑)。

飯星 アハハハ!でもこのドニーさんと闘う麥偉章は元々は劉家良の劉家班にいた人なんですよ。で、またベイ・ローガンなんですけど(苦笑)、ベイ・ローガンがこの作品について麥偉章にインタビューしたのを見たことがあるんですが、そこで麥さんは「~97」の思い出は殆ど語らずに劉家良師傅の話をズ~ッとしてました。
彼がそのインタビューで唯一「~97」について話したのが「この映画ではワイヤーは一切使ってない」ということ。
ドニーさんとの対決の決着でドニーさんに蹴られた彼がクルクルクル!って凄い勢いで回って飛んでいくんですけど、あれをワイヤーなしだったと言ってるんです。私はご本人がインタビューでそう言ってるんだから、と自分のブログにもそう書いたんですね。
でも後になって「ドラゴン危機一発97」ブルーレイのオーディオ・コメンタリーで谷垣さんが「麥偉章がワイヤー使ってないって言ってるみたいだけど、ワイヤー使っとったやんか!」って仰ってた(笑)。

ーああー!なるほど。麥偉章本人の中ではワイヤーは使っていない事になってると(笑)。

飯星 そうそう(笑)。とにかくそれぐらいドニーさんvs麥偉章の対決が一番素晴らしくて、ドニーさんが連続で中段蹴りやるとこなんか李三脚じゃなくて李四脚になってたでしょう?本当にこの「ドラゴン危機一発97」はスペシャルですよ。
この時代のドニー・イェンの狂気じみた熱とアクション監督としての才能がほとばしる傑作だと断言します。

ー「ドラ危機97」でこれだけ盛り上がって、次の「新ドラゴン危機一発」(98)は・・・

飯星 まあ・・・何か事情があって撮った映画なんじゃないでしょうか(苦笑)。あとソフトフォーカスかかり過ぎ(笑)。それも主演女優じゃなくてドニーさんにフォーカスいっぱいかかり過ぎ(笑)。
最近ドニーさんは「まあ俺も沢山映画を撮ってて中にはゴミみたいなのもあるけどね」って自分で言うことがあって、たぶんこの映画もその1本なのかもしれませんね。 

ーなるほどぉ(笑)。では監督第2作「ドニー・イェンCOOL」(98)ですが、公開当時のキャッチが「最も、死亡遊戯・・・。」でした。

飯星 この映画はプリズムのような映画で、この映画をどの角度から観るかで全然感想が変わってきます。例えばドニー・イェンという存在を知らない人が観たら本当に困る映画。で、ドニーさんを知ってて観ても結構ハードルが高いと思います。
うう~ん、何だろう・・・涅槃の心境までいくと、この映画も全然違う映画に見えてくるというか。その境地に至ったらこの映画も全然問題ないし、西村由紀江さんの音楽は素晴らしいし言う事ない映画ですよ。

ー当時のドニー兄貴にとって色々と映画的に挑戦していた作品だと思うんですが。

飯星 当時のドニーさんが憧れてたものだったり、好きだったものが詰まってる映画だと思うんですよ。いわゆるクンフーアクションじゃなくて銃撃戦みたいなものだとか。
私がドニーさんの可愛らしいなって思うのが「人の影響を受けやすい」ところで、それが周りから見てとっても判りやすいのが私がドニーさんを気に入ってるところの一つなんです(笑)。
例えば呉宇森の映画を観て、ドニーさんが単純に「これカッコイイな。俺もこういうの撮ろうっと!」って感じが「COOL」から伝わって来るんですよ。

ーあと「COOL」のドニー兄貴の役名がキャット・リーですから(笑)。

飯星 そうそう!(笑)。でもドニーさんはそれがやりたかったんですよ!でね、またベイ・ローガンなんですけど(笑)、この作品にも彼がガッツリ関わってる。もうこれはしょうがない(笑)。

ーもうベイ・ローガンはしょうがないと(笑)。では「ヒート/HEAT」(98)。

飯星 あくまでも想像でしかないですが、これも時期的にCOOLの借金のために出演した映画じゃないかなぁって勝手に思っています。
この頃ドニーさんは「COOL」を自ら制作して、かなりな負債を抱えてしまったし、よい作品や役にも恵まれずかなり苦しかったのでは。
どんどん人がいなくなるなかで、最後までドニーさんをサポートし続けたのが谷垣健治さんなわけです。そりゃ「兄弟」と信頼されるようになりますよね。

以下「飯星景子、ドニー・イェンを語る!」第2回“最後の本格派”編に続く!!
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