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邵氏兄弟電影黄金時代⑤ “亜洲影帝”姜大衛を生んだ壮絶なる復讐劇「報仇」!

2017-02-19 10:32:27 | 邵氏兄弟電影黄金時代
「邵氏兄弟電影黄金時代」第5回は、いよいよ皆さんにお馴染みの武打星と言いますか、日本でも人気の高い武打星や作品が登場となります。
鄒文懐の邵氏公司離脱騒動で“稀代の反逆児”王羽を失った張徹ですが、自分が率いる張家班の“第二世代”となる新鋭武打星を既に「続・片腕必殺剣」(68)で発掘していました。
それが姜大衛と狄龍の2人でした。張徹は著名な俳優を両親に持つ芸能一家に生まれた姜大衛と、本格派の詠春拳高手(同じく武打星の李海生は同門)で「南国実験劇団」出身の狄龍に現代青春動作片「死角」(69)と七重塔決戦「保鏢」(69)でコンビを組ませ肩慣らしをさせると、満を持して自身渾身の力作「報仇」(70)に主演させます。
張徹監督の許で“浪漫英雄”として邵氏公司に君臨した王羽に無くて、姜大衛と狄龍にある物。それが2人の爽やかな笑顔と弾けるような若々しさでした。
そして姜大衛と狄龍競演によるこの「報仇」こそ、長きにわたる香港アクション映画の歴史上において、王羽主演「吼えろ、ドラゴン!起て、ジャガー!」(70)、張曾澤が監督した國泰公司作品「路客與刀客」(70)、そして李小龍主演「ドラゴン危機一発」(71)と共に近代動作片の夜明けを告げる革新的作品となったのです。
京劇の花形關玉樓(狄龍)は、自分の愛妻に執拗に迫る悪漢封開山(谷峯)の恨みを買い、茶楼で封開山一派の襲撃を受け、腹を裂かれ、さらには両目を潰された果てに血の海で惨殺されます。
この關玉樓の目を覆うような謀殺シーンは、張徹が以前から傾倒していた京劇の題目「界牌關」をモチーフとした「盤腸大戦」の代表的なシーンで、主人公が腹部を裂かれ血を巻き散らしながら壮絶に闘い、最後は闘死するという展開は以後の張徹作品における定番となっていきます。
この關玉樓謀殺後の街に1人の美青年が姿を見せます。そう、この美青年こそ關玉樓の実弟にして短刀高手の關小樓(姜大衛)で、關小樓は兄を殺した封開山とその背後にいる黒幕一味を一歩、また一歩と追い詰めていきます。
この「報仇」の姜大衛は当時の女性ファンを熱狂させた爽やかな笑顔を劇中で全く見せる事なく、ただひたすら兄の復讐に向かって暗く、それでいて燃えるような情念と共に突き進む關小樓を鬼気迫る佇まいで演じています。まさに姜大衛、一世一代の快演です。
映画のクライマックスで、純白の胴着に身を包んだ關小樓が真の黒幕金之泉(楊志卿)の待つ屋敷に乗り込み、群がる悪漢たちを手にした短刀で片っ端から打ち倒し、最後の最後に怨敵金之泉の喉を切り裂くまで延々15分間に渡って繰り広げられる文字通りの“一大報仇”決行シーンは、それこそ香港クンフー映画に無数に存在する復讐劇の中でも特出した完成度に仕上がっています。
そう、ここに張徹が「陽剛」と共に新たに確立した「浪漫暴力悲劇」系列が誕生したのです。
この「報仇」は李小龍の代表作「ドラゴン怒りの鉄拳」(72)の原型となった作品と言われていますが、私は原型と言うよりも、むしろ「~怒りの鉄拳」の監督である羅維が「報仇」における關小樓の復讐に燃える鬼気迫る佇まいや、報仇決行時に着用する純白の胴着“白衣大侠”などの要素に強い影響を受け、それらを「~怒りの鉄拳」で李小龍演じる陳眞に重ね合わせた、が正しいと言いたいのです。
この「報仇」で張徹は1970年の「亞洲影展」最佳導演獎を、そして姜大衛は最佳男演員獎を受賞します。ここに“亜洲影帝”姜大衛が誕生し、姜大衛はその後も狄龍との最強コンビで邵氏公司と張徹に再び“武打片黄金時代”を齎す事となるのでした。
そう、香港映画の原点にして“最強無敵影城”は嘉禾影業にあらず、邵氏兄弟公司にあり!!
「邵氏兄弟電影黄金時代」、次回もどうぞお楽しみに!!
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