パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

嫌な感じ

2012-06-23 13:48:30 | Weblog
 朝日新聞の6月26日朝刊の「税と社会保障のいったい改革,問題点は?」という連載コラムで、竹中ナミという福祉法人の理事長さんが、「社会保障というと,強者が弱者を救うことと思われがちだが,弱者が弱者でなくなるようにしていくことが本来の姿だと思う。与えるだけの福祉は、人の誇りを傷つけると思う。認知症の85歳の母と,重度障害を抱える39歳の娘を抱える身で,費用の9割は社会保障に助けてもらっているけれど,助けてもらうのは当たり前という発想はありません」と言っていた。

 これは、いかにも一般世論の支持を受けるような言い分というか、反対しようにも反対できない言い分のように思える。

 でも,これこそ戦後日本の官僚がつくった「救貧ではなく、防貧」というスローガンなんだと、私はずっと言い続けて来たのだ。

 「弱者が弱者でなくなるように」と言うけれど、そうなるように皆が一生懸命努力して、それでも「弱者」になってしまう人は必ず出る。

 でもその数は大したものではないので、生活保護で対応できる、というのが日本政府,官僚の言い分だった。

 しかし、その「数」は、当初の見込みを大きく上回ってしまった。

 どうするか?

 日本政府、官僚の答えは、想像であるが、「弱者を減らす」だ。

 現実には「弱者」の数は増え続けているが、時間をかけて、経済情勢を好転させれば、生活保護受給者は対応可能の数に押さえることができると。

 この理屈は、先日テレビで見た、高速増殖炉の研究を続けるべきという学者の「百年単位で見てくれ」の言い分と同じだ。

 あるいは、現実にデフレなのに、将来インフレになるとまずいから、という理由でデフレ政策を続ける日銀の言い分とも、多分,同じだ。

 しかし,もし仮に、いつか経済情勢が好転して生活保護受給者の数を「対応可能」な数に減らすことができたとしても、その受給者は、「弱者」という「人の誇りを傷つける」レッテルを一身に背負って強者から助けてもらうことになってしまう。

 竹中ナミ氏は「助けてもらうのが当たり前とは思わない」と言うけれど、こういう心理構造が、現実に「助けてもらって生活している人」を「当たり前でない人」、つまり被差別民にしてしまうのだ。

 数が少ないからいいという問題ではない。

 ではどうしたらよいのか。

 これに、キリストは「貧しいものは幸いである」と言ったのだった。

 金持ちは金を持ったままでは天国に行けないから、死ぬ前には全部金を寄付して、スッカラカンにならないと天国に行けないが、いつもスッカラカンでその日暮らしの「貧乏人」は、それだけで天国に行けるので、だから「幸い」であり、「正しい」と。

 これは,宗教というより、横社会としての「階級社会」の論理であって、だから私は「階級社会」をつくれ、と言っているのだ。

 しかし、こんな理屈をこねる奴はいないだろうなあと思っていたのだが、昨日の「朝生」を見て、そうでもないようだと感じた。

 というのは、社会保障というか福祉概念として「自助公助」という言葉が出て、これを、50以上の,特に男性は、当たり前の倫理的な言葉として受け取っていたようだが、若い評論家は、これに「嫌な感じ」を持っているようだった。

 ただ、「嫌な感じ」は、まだ理論化はされていないようだったが、

 
 

本音と建前の他に、本心がある

2012-06-17 23:57:25 | Weblog
 今日,Eテレで,戦後日本の原子力戦略の総括特集の再放送をやっていた。

 Eテレは再放送が多いのだが、先週見た番組が次の週に再放送とは。

 しかし、おかげで、前回、よくわからなかったところが、ある程度わかった。

 前回、日本の増殖炉計画にカーター大統領が「核不拡散」の立場から猛反対し、日本の科学技術庁の役人を中心に「内政干渉」だという不満の声が上がり、アメリカで開催された多国間の国際会議でも対立が続いたが、突如、アメリカが反対姿勢を引っ込めたので、その後の日本の原子力政策は「増殖炉」の運営を前提にしたものになったわけだが、何故、アメリカが反対姿勢を引っ込めたのか、「わからない」と書いた。

 しかし、番組では、アメリカ以外のイギリス,フランス、ドイツなどが増殖炉計画を本格化させたので、アメリカとしても押さえることができなくなった、みたいな解説だった。(イギリスもフランスもドイツも、結局高速増殖炉の開発は中止したのだけれど。)

 しかし、これは「状況証拠」みたいな感じで、本当の理由がやはり他にあったのではないか、という印象が残った。

 それはともかく、再放送で印象的だったのは、日本の担当者と交渉に当たったというアメリカの専門家が、「日本政府は我々の意見を全く受け入れなかった。彼らは自分のプロパガンダを自分で信じてしまっている」と言っていたことだ。

 日本政府の原子力政策は「原子力の平和利用」で、「原爆を持とうなんて毛頭思っていない」ということだ。

 アメリカの専門家が、日本製との交渉で実際にこの通りのことを言ったのかどうかはわからないが、そんな風なレトリックを交渉のテーブルで言ったような感じでもあった。

 これを自分たちの本心だと信じている日本政府は、それをプロパガンダだなんて、と反発するだろう。

 しかし、ここはアメリカ人の専門家の見立ての方が正しいと思う。

 話が飛ぶが、加藤智大という人を覚えているだろうか?

 秋葉原の歩行者天国で7人殺した犯人だ。

 その加藤が、法廷でケータイサイトについて聞かれ、ケータイサイトでは「本音と建前」を使い分けているが、それとは別に「本心がある」と言ったらしい。

 これはある本で読んだのだけれど、著者の精神分析医は、加藤の頭脳の明晰さに感心していたが、私も大いに感心する。

 加藤の発言は裁判官にも検事にも全く理解されなかったが、それも道理で、普通の日本人は「本音と建前」を使い分けて暮らしていて、それだけで足りてしまうので、それとは別の「本心」があるなんて思わないのだ。

 では「本音と建前」とは何かというと、それはコインの裏表のようなもので、本音と建前は実際には同じ心の裏表なのだ。

 ケータイサイトで言えば、建前でおちゃらけて、それでトラブると、本音で対応する。

 サラリーマンで言えば、職場では「建前」で対応し、飲み屋では「本音」で肝胆照らし合ったり、ケンカしたりする。

 しかし,そんなことの繰り返しは、コインの裏を表に,表を裏にひっくり返しているだけだと加藤は言っているのだ。

 話を戻すと、日本政府の原子力政策を「プロパガンダだ」というのは、「本音と建前」の間を行ったり来たりしているだけで、本心が見えない、と言っているのだと思う。

 外交交渉で「本心」なんか言えない、と、外務官僚あたりは言うのだろうが、それはちがう。

 最後は「本心」で交渉すべきだし、「本心」でこそ信頼感が得られる。

 実際のところを言うと「本心」なんかない、というのが本当で、それが一番の問題なのだろうけど。

 番組の最後の方で、福島原発事故を経た後の日本の原子力政策についても少し触れられていたけれど、資源のない日本に原発は必要不可欠であるという政府、あるいは官僚の意志は固いみたいだった。

 そういう判断だってあり得るかもしれないが、原発が必要と考える理由が、「日本は資源がないから」というのは、よくないと思う。

 何故なら,もしそうだと、日本はどんなに原発立地に不適格な地域でも(実際,どう考えても「不適」な地域なんだけど)、原発をつくらざるを得なくなるから。

 そういう「余裕」のない状況での判断は必ずまずい結果を生む。

 福島原発事故がそうだったように。

 加藤智大は、ケータイサイトに「俳句もどき」を投稿していたらしいが,中にいいのがある。

 《お弁当に しいたけが二つ 入っていた》

 というもの。

 多分、確執のあった母親がつくったお弁当にしいたけが二つ添えられていて、その「二つ」に反応したのだと思う。

 泣かせる俳句ではありませんか。

総選挙なのか?

2012-06-14 23:18:11 | Weblog
 古館が、原子力基本法に、「安全保障条項」が加えられて可決されたことに、驚いていたけれど,私もまあ、驚いたと言えば,驚いた。

 戦後、自民党政府が作り上げた体制(もちろん実際は官僚がやっているのだけれど)は絶対に壊させない、という、体制の意志を、野田民主党が、核戦略も含めて、全面的に受け入れたことに。

 これを、朝日,読売、NHKを筆頭とするマスコミが、「是」と判断すること自体は、別にかまわない。

 それくらいの自由はあるし、日本が「核戦略」をもつことも、それ自体は当然の話だ。

 しかし、朝日、読売、NHKが「是」とする理由が「決められない政治からの脱却」とは、なんたる欺瞞か!

 しかし私が思うに、この「戦後体制の維持」のうち、もっとも是正すべきなのは、貧困対策だと思う。

 これは、4,5年前からずっと言っているのだけれど、日本政府は昭和30年代の後半あたりから、自民党の「持ち家政策」で明白になったのだが、日本の対貧困政策は、「貧乏人を救う」のではなく、「貧乏人を出さない」政策に転じたのだ。

 これは、官僚の間では「救貧ではなく、防貧を」というスローガンで知られている。

 いや、そういうスローガンがあるかどうか知らないが、厚労省のノンキャリアのトップとして年金行政を具体的に仕切り、現在,早稲田で教授をしている人物の著書にそう書いてあったのだ。

 「日本は戦後ずっと救貧ではなく、防貧政策でやってきました」と。

 もちろん、いかに防貧政策を整えようと、そこからの落伍者は出る。

 落伍者でなくても、病気とか、母子家庭とか、いろいろな理由で困窮する人が出るが,そういう人には生活保護で対処する。

 もちろん、こんなのは原発の高速増殖炉計画と同じ「虫のいい話」でしかないのだが、それだけではない。

 「防貧政策」で最も問題なのは、貧乏人=失敗者ということになってしまうことだ。

 札幌で、障害者の妹の面倒を見ていた姉が困窮していたにも関わらず、生活保護を受けようとせず、餓死し、妹も餓死してしまったが、これも、生活保護受給者という屈辱的レッテルを拒否した結果だった。

 チャップリンも、イギリス、ロンドンの「救貧院」という,貧困者向けの集合住宅で少年時代を送り、そこからの脱出を夢見て喜劇王になったのだが、「貧困者向け住宅」がホームスイートホームにはなかなかなり難いのは事実だと思うが、日本の「生活保護制度」は、それでもない、「本来存在していないはず」という、さっきは「虫のいい話」と書いたけれど、ある種「建前」の上に成り立っている制度なので、それが人に及ぼす精神的影響も、ちょっと「嫌な感じ」になる。

 中根千枝がインドのカースト制度について、もちろん、いろいろ問題のある制度ではあるけれど、横の連帯が保障されているので、たとえば、召使いのカーストがあるとすると、召使いは主人に対して劣等感を持たずに接することができるという、「いい面」があるという。

 日本の場合、横の連帯がないから、どうしても縦関係に自己の主体性を見いださなくてはならず、屈託してしまう。

 そのために、貧乏人同士が連帯してことにあたる、なんて考えられない。

 「失敗者」同士がどう連帯するのか。

 連帯するには,自分たちが「正しい」という意識がどうしても必要だが、「階級意識」があれば、その階級に属しているということが,即「正しい」という意識になる。

 「階級」というとそれだけで屈託した意識を誘発してしまうが、英語で言えば「クラス」、すなわち「集合」であり、同じ集合に属していれば、それはそれだけで、「正しい」ことなのだ。

 話がそれてしまったが、書きたかったのは、小沢の離党問題で、ニュースは完全に「政局」=「数」の問題にしてしまっているが、ここは「生活第一」という民主党の本来のマニフェストの政策を主張することが、今、世論の支持を得ることができるか否かという問題なのだ。

 いずれにせよ、総選挙は必至の情勢のようだが、その場合は、マスコミだって、「政策」をとりあげることになるし、そうなると、争点は消費税増税の問題ではなく,その使い道ということになるだろう。

 だとすると、そこで小沢が「生活第一」を、再度掲げるとすると、前回のマニフェスト選挙が再度行われることになる。

 だとすると、自民党は、マニフェストを「詐欺」とまで言ったのだが、消費税増税法案が成立したらマニフェストを詐欺と罵倒する理由がなくなるわけだ。

 今気がついたが、けっこう「皮肉」である。
 
 

デフレの輸出

2012-06-12 02:10:24 | Weblog
 ギリシャの総選挙で、緊縮派が辛うじて勝利したことを、「最悪の事態は避けられた」とか言っているけど、実際は緊縮政策こそ、「先送り政策」だから、さてどうなるか。

 ノーベル経済学賞のクルーグマン教授も「このままではギリシャは破綻か」と聞かれて、「このまま破綻しないのが一番問題だ」みたいなことを言っているとか。

 破綻すれば、答えが出るが、破綻しないと答えが出ないままの状態がずっと続くことになる。

 日本のように、デフレがずっと続く。

 ところで、昨日、日曜の深夜、Eテレで日本の戦後の核政策について、ドキュメント番組を放送していたが、驚いた。

 日本は、中国に次いでインドも核保有を宣言して以後、1980年代の初め頃のようだが、「潜在的」という但し書きはつくものの、核戦力の保持をかなり真剣に考えていたらしい。

 その具体策が、高速増殖炉の「もんじゅ」で、核の平和利用という看板のもと、大量のプルトニウムを保有することでインドはともかく,中国に対峙することができる、という政策だ。

 私の知っている名前では、国際政治学者の永井陽之助なんかもメンバーだったらしい。

 永井の本はもっているので,今度,ちゃんと読んでみよう。

 この動きをもっとも警戒したのがアメリカで、カーター大統領が「もんじゅ」計画に反対し、それに官僚が猛反発し「アメリカは勝手だ。」「アメリカの属国じゃない」とか気炎を上げているテープの音声を流していた。

 それが最高潮に達したのが、なんとかという国際会議だったが、何故かアメリカはその会議の途中で態度を変更し、「もんじゅ」計画を容認した。

 理由は,番組でも「何故か」と言っていたが、「わからない」らしいが、当時アメリカは高速増殖炉の研究から撤退していた。

 フランスも同じく撤退していたから、高速増殖炉の開発は日本だけとなった。

 それで日本の官僚どもはすっかり舞い上がってしまい、六ヶ所村の再処理工場を含め、2兆円近い巨額のお金を注ぎ込んだが、結果は周知の通り。

 でも「反感」だけは残った。

 福島原発で、アメリカ軍がつくった詳細な汚染地図を文科省と通産省管轄の原子力保安院は政府官邸に知らせなかったのも、アメリカに対する反感故だったにちがいない。

 ここまでアメリカは我が国を調べているのかという警戒心もあったのだろう。

 中国に対しては、どうしても対立関係に立たざるを得ないのだから、だとしたら、アメリカの属国にでもなんでもなればいいのだと、私は前から思っていた。

 例の尖閣諸島沖の領海侵犯事件でも、アメリカと日本の連携は実に水際立っていたと高く評価した。

 実際,あの事件で中国は相当、自国の利益を損なっている。

 と思っているのだけれど、あれから反中感情ばかりか、反米感情も募るばかり。

 もちろん、「アメリカの属国でいいい」というのは逆説的表現で、本当はしっかりアメリカの真意を見極めた上での「属国」だ。

 でも日本のマスコミにはそんな視点は皆無だから、アルカーイダとかイランなどの強烈な反米イスラム勢力に対し、アメリカ軍の幹部が、派遣兵士を集め「場合によっては、彼らに原爆を落とすこともあり得るのだと、今から覚悟しておくように。ひるんではならない、我々は、かつてヒロシマ、ナガサキに原爆を落としたことがあるのだ!」と演説をした、というニュースを能天気に見逃すのだ。

 アメリカ人に限らず、欧米人は基本的に、不気味な日本人より、陽気な中国人が好きなのだということを肝に銘じておくべきだ。

 例えば、中国の盲目の人権活動家がアメリカに亡命したけれど、アメリカ人は「中国はなんでひどい国なのだろう」と思うよりも、その「酷い中国政府」に抵抗している中国人に注目し、それを一般化して「中国人は民主的だ」と考える。

 それでも、アメリカが中国と組むことはなく、日本と組むのがベストだと知っているのだ。

 話がそれてしまったが,何を言いたかったかというと、日本政府・日銀は、全力を挙げて、ギリシャをはじめとするEUの「緊縮政策=資本主義の危機の先送り策」に拠出し、デフレの輸出にいそしむのだろうということを言いたかった。

 安住と白川の顔を見ると「やる気満々」だものな。

 やれやれだ。

自公民の大談合で「決められる政治」を実現せよとNHK大越アナが

2012-06-08 22:17:51 | Weblog
 藤村官房長官が、自民との修正協議で、民主党のマニフェストを「棚上げ」の方向で調整していることに反発する議員に、「まだ法案を提出していないので、“棚上げ”という表現はあたらない」と言ったとか。

 これは福島原発の検証会議に呼ばれた前東電社長が「一部の社員は現場に残す“つもり”だったので、全面撤退すると決めたと言われて非難されるのは心外」と答えたのと、まったく同じレトリックだ。

 ふつふつと怒りが込み上げてくる。

 私は民主党のマニフェスト全部を支持しているわけではないけれど、マニフェストは全部口からでまかせの嘘でしたから白紙撤回しますなんて言われたら、賛成して投票したものの立つ瀬がないというか、そもそも、マニフェストが実現不可能なんて、誰が決めたのだ。

 一切,何の検証もなく、なんとなくマスコミが、財務省の言い分を真に受け、「ムリ」と言い続けているだけではないか。

 本当のことを言うと、マニフェストを掲げたときに、マニフェスト実現のために消費税を上げますと明言しておけばよかったのだ。

 ここは小沢の責任なのだが、選挙目当てに、政権を取ったら4年間は消費税を上げませんと言ったのが失敗だったのだ。

 最初から、まずいな、と思っていたのだ。

 社会保障をきちんとすれば、15パーセントくらいまでは可だろうと思っていた。

 しかし,今回の騒動で、NHK、朝日新聞をはじめとする大マスコミが、消費税増税先行を支持する理由が,なんと「決められない政治からの脱却」であるとわかって仰天した。

 しかも、「決められない政治が続くと、ヒトラーが現れるような危険もある」と言っていた。

 これほど無責任な発言はない。

 まさに今,貴様らが「決められる政治」として推薦する自公民の大談合政治がヒトラー政治の再来でなくてなんだというのだ!

 それはさて、今、消費税を上げたら,デフレがいっそう深刻になる。

 デフレは物価が下がるから貧乏人は助かるなんていう奴がいるが、デフレとは貨幣価値が上がることだから、金持ちに有利で、貧乏人に不利な事態となる。

 今、消費税増税にもっとも熱心なのは「財界」だが、財界の主要メンバーである大企業は、その結果、デフレが続いたとしても、デフレそのものが金を持っている自分たちに有利だし、「緊縮」を人々に要求することも、いかにも倫理的に正しい主張のように装うことができるから、それで財界は消費税増税を要求するのだろう。

 そんな風に考えると,今の「EU危機」の本質も見えてくる。

 緊縮政策を求めているのは富裕層、財閥で、それを政治家が支持しているのは、富裕層の富が,実質的に「国の富」だからだ。

 しかしギリシャ国民が緊縮策を受け入れそうにないので、ギリシャの富豪たちは銀行預金を国外に持ち出している。

 これは、緊縮政策が、富裕層の利益のための政策であることの傍証となるだろう。

 一方、現金をもたない貧困層は、「地域通貨」で対抗する動きが出始めているらしい。

 要するに、勝手に商品交換券をつくって、生活必需品を交換し合っているというか、流通させているわけだ。

 日本国内で使われている現金通貨は4兆円と言われている。

 ということは、4兆円分の地域通貨で日本国民の生活は動くことができる、ということではないのか。

 通貨のことはよくわからないのだけれど、原発の再稼動について言えば、再稼動しないと日本の電力需要がまかなえないから再稼動が必要という問題ではないことは、野田や枝野や藤村らの言動を分析すれば、確かだ。

 だとしたら,何故、再稼動が必要なのか?

 これは、原発企業の自己都合なのだ。

 それを、まるで一般大衆の生活を盾に取ったかのごとき言い草で再開を迫る。

 一般大衆に緊縮政策の受け入れを迫るのも,同じ手口にちがいない。

 このことは、結構難しい問題なので、よく考えた上でまた触れたいと思うのだが、「決められない政治」が続くとどうなるかというと、NHKの見立てでは、「諸外国の信用を失い、日本国債の暴落を招くかもしれない」だそうである。

 一方,日銀は,今、ニュースで報じていたが、ギリシャ危機に備えて、資金供給を実施する準備があると、白川総裁が明言したそうである。

 これは、日本の円の価値が上がって嬉しくて、それで、その強い円で,国際社会の安定に寄与したいと思っているのだろうが、実際には、ギリシャの富裕層を助けることでしかない。

 その結果、貧困層も助けることになる、というのは、ちょっと前までの理屈だったが、今後はそれはできない話になる可能性が強いということを日銀総裁には言いたいね、西川口の片隅から。

そんなの関係ない

2012-06-01 23:50:32 | Weblog
 Eテレで小三治の落語、「千早ぶる」を見る。

 知ったかぶりをする大家さんをからかう話だが、まくらで(途中から見たので,「まくら」の最後しかわからないのだが)、「何がたちが悪いって、知らないのに知らないふりをするやつがいる」とやって、大爆笑だった。

 でもよく考えるとあり得る。

 本当は知らないのだけれど、「知っているふり」では、それがばれそうな場合、「知らないふり」で知らないことを隠すことはあり得る。

 というか、やったことがあるような気がする。

 ちょうど「裏」でニュースをやっていて、野田が大飯原発再稼動発表の記者会見をしていたのだが、とにかく、何を言っているのか全然わからない。

 同じニュースで、国会で開かれている福島原発の実態調査で、東電の清水前社長が、菅前首相が東電の全面撤退を拒んだと言っていることに「退避したいと首相には申し上げたが、全員ではなく、一部の職員を残すつもりだった」と証言、調査員に「要するに、全面撤退は考えていなかったので、全面撤退を非難されても非難されていることがわからない、とおっしゃりたいのか」と聞かれ「その通りです」と答えていた。

 小三治、「千早ぶる」のまくらに使え!と言いたくなった。

 意外なことに、古館の言っていた「野田さんが心配しているのは、国民の安全ではなく、東電の安全のようです」が、正解にもっとも近い、というか、正解だろう。

 詳しくは企業会計の専門家に聞かないとわからないが、原発を動かさないと、膨大な原発資産があっという間に「負の資産」になってしまうらしい。

 繰り返すが,企業会計のことはわからない。

 しかし、野田や細野や枝野の言動を見る限り、電力会社がつぶれては困る、ということしか伝わってこない。

 全国民が節電を受け入れ、値上げを受け入れたとしても「そんなの関係ない」なのだ。

 それにしても自民の鴨下とやらはひどい。

 民主党は、マニフェストを「まちがっていました」と認めて、「ごめんなさい」と言ってあやまるのが先決だと。

 もし,仮に,本当にまちがったマニフェストだったとしても、こういう言い草は、それを信じて、投票した人の気持ちをないがしろにする。

 まして「まちがっている」なんて毛頭思っていない人においておやだ。

 今回の「増税問題」では、自民だってまったく一枚岩でないし「修正協議で結論が出ても、その結論は民主党内で賛成を得る必要がある」と輿石にのらりくらり戦術で、むしろ、自民の方がヤバいのではないか。

 実は,政治家の中で一番いいと思っているが,最近影を潜めていたネットでは中川(女)と言われている中川(下の名前を忘れてしまった)が、谷垣の財務省路線に明確に反対を示しているようで、もし復権しているのなら、もともと実力者なのだし、頑張って政界をかき混ぜてほしい。

 何はともあれ、小三治は一時期、体調がかなり悪そうで心配していたが、元気なようでなによりだ。