どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

「兵士に聞け」読了

2008年05月28日 20時49分56秒 | 
タイトルの通りまさに「兵士に聞け」を貫き通している本でした。今まであまりこの手の本は読まなかったのですが、福井晴敏著「亡国のイージス」を読んだ折、巻末の参考資料に同著を見て気になってしまったのがキッカケです。感想を一言で言えば、とても読み応えがあり、面白かったです。私も含めて、自衛隊って政治的には国会などで、時に云々議論の的となりますが、その実態、そして現場で働く人たちは日々どんな思いで仕事をしているのかイマイチ判らない。判らないなら少しでも近い距離から見て回り、色々話しも聞いてみようというスタンスです。

内容を大雑把に言うと、防大の取材を起点に、自衛隊の陸海空を一章ごとに周り、最後に1992年のカンボジアのPKO派遣の模様で締めくくったルポルタージュです。現場で活動する様々な立場の将兵にじっくりと丹念に時間をかけて取材してあり、それぞれの喜怒哀楽が生々しく感じられました。

それにしても幹部クラスと兵クラスにこれほどまでにクッキリとした深い溝があるとは知りませんでしたねぇ。特に海自の場合は「旧海軍の末裔」を矜持とし、異様なまでに形式格式を重んじる様子は滑稽に感じるほどに描写しています。現場で指示されている側の兵クラスの人たちは半ば呆れながら付き合っているといった雰囲気です(^_^; 今年2月にイージス艦と漁船の衝突事故がありましたが、この章を読むだけでも、さもありなんと思いましたね。この中でも護衛艦が訓練中に一般人のレジャーボートを救出する様子も書かれているんですが、予想外のアクシデントに柔軟に対処できないドタバタ振りがナントモ…。幹部たちは形式に囚われてばかりで非常にお役所的。兵は指示命令がなければ何も動けない。これでは目の前に漁船が現れても…、あの事故が起きてしまうのは簡単に想像できてしまいます。

もう一つ面白かったのは、海自と陸自に組織的な意識に大きな差があるということです。陸自は旧陸軍に対してかなりのアレルギーとコンプレックスを持っていて、旧軍とは距離を置いて別のモノだと一生懸命になっているんですね。確かに第二次大戦に至るまでのアジア周辺各国に対して行った様々な出来事からくる負のイメージは大きく、海自のように末裔だの後継者だのと考えたくもないんでしょうし。

陸海空をそれぞれ一言ずつで表すと、陸自は「用意周到、一歩後退」、空自は「勇猛果敢 支離滅裂」、海自は「伝統墨守、唯我独尊」なんだそうです。本書を一通り読めば、なるほどなぁ…と感じさせられます(^_^;

因みに福井晴敏氏、ずいぶんとこの本からネタをいただいていたんですねぇ(^_^; 前述の「亡国のイージス」、そして「終戦のローレライ」も、知っているとニヤリとさせられる内容が所々に出てきます。

内容もページ的なボリュームもズッシリでしたが(^_^;、非常に読みやすい文調で飽きることなく読みこなせたので、杉山隆男氏の他の兵士シリーズも引き続き読んでみようと思っています。

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