前回から、遺産分割協議の効力についてのご説明をしています。
条文は、民法909条です。
「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」
この条文は、2つの事を言っています。
一つは、遺産分割協議の遡及効ですね。
そして、このことに関し、疑問点が1つありましたね。
それは、相続の開始から遺産分割協議の成立までの間、遺産は誰が所有しているのか?
そして、この事は、909条の「ただし~」の部分と関係していましたね。
それが、この条文が言っている二つ目の事です。
という訳で。
②「遡及効との関係で、第三者の権利は害せないということ」とは?
平成22年1月1日にAが死亡しました。
Aには、相続人として、子のBとCがいました。
BとCは、平成22年5月5日に、Aが遺した土地について遺産分割協議をしました。
その土地を、Bが単独で相続するということで、合意しました。
さて。
1月1日から5月5日までの間、土地の所有者は、誰なんでしょうか?
答えは、相続人であるB・Cが、その法定相続分に応じて、共同して所有している、です。今回は、各1/2ずつです(第一順位相続のみ)。
で。
遺産分割協議をすると、平成22年1月1日にさかのぼって、土地の共同所有状態が解消され、Bが単独で所有していたとされるのです。
では、平成22年1月1日以降、Cが、土地に対する自分の持ち分をXに売ってしまった場合、どうなるでしょうか?
時系列で考えれば…
Ⅰ.A死亡
Ⅱ.Cが土地持ち分をXに売却
Ⅲ.BとCが遺産分割協議(土地をBの単独所有とする合意)
で、遺産分割の遡及効により、Ⅰの時点で土地はBの単独所有になります。
すると、Ⅱの時点でCは土地に対して何の権利も有していない状態だったとされますので、Xへの売却はできなかったことになります。
Xへの売却ができなかったのですから、CとX間の売買契約が無効と言う事です。
しかし、これでいいのか?
つまり、Ⅱの売却の時点で、Cが土地に対して1/2の持ち分を有していたことを、完全に無視できるのか?
という訳で、「第三者(X)の権利を害することはできない。」としたのです。
これにより、遺産分割の遡及効を理由に、第三者Xの権利を害することは禁じされるため、CX間の売買契約は、有効とされます。
繰り返しになりますが、「第三者の権利を害することはできない」とは、土地に対するC持ち分のXへの売買契約を、遺産分割協議の遡及効を理由として無効にすることはできない、という意味です。
そして、次の段階として、遺産分割協議により土地全部を取得したBとの関係を考えます。
結局、BとXが、Cの持ち分を巡って「俺が持ち分を取得したんだっ」と争っていると考えられますね。
で。
不動産に関して、権利移転の原因が二重に有効に成立した場合、その権利を取得するのは、先に登記を備えた方ですよ、という決まりがあります。
不動産登記制度です。
司法書士の十八番です。
今回、遺産分割協議と売買契約という2つの権利移転の原因が衝突しています。
どちらも有効に成立しています。
なので、Cの持ち分に関しては、BとXとで、先に登記をした方が勝ち、となります。
Xが先に登記を備えたら、土地はBとXが1/2ずつを共同で所有する事になります。
仲良く共同で所有することはできないですよねぇ。
なので、遺産に不動産があり、相続人間に不穏な空気が流れているのならば、難しいかも知れませんが遺産分割協議をササッとやって、次のステップである不動産登記手続に、なるべく早く移りましょう。
…「相続人も大変です⑤‐1(遺産から出た賃料って?)」につづく。
条文は、民法909条です。
「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」
この条文は、2つの事を言っています。
一つは、遺産分割協議の遡及効ですね。
そして、このことに関し、疑問点が1つありましたね。
それは、相続の開始から遺産分割協議の成立までの間、遺産は誰が所有しているのか?
そして、この事は、909条の「ただし~」の部分と関係していましたね。
それが、この条文が言っている二つ目の事です。
という訳で。
②「遡及効との関係で、第三者の権利は害せないということ」とは?
平成22年1月1日にAが死亡しました。
Aには、相続人として、子のBとCがいました。
BとCは、平成22年5月5日に、Aが遺した土地について遺産分割協議をしました。
その土地を、Bが単独で相続するということで、合意しました。
さて。
1月1日から5月5日までの間、土地の所有者は、誰なんでしょうか?
答えは、相続人であるB・Cが、その法定相続分に応じて、共同して所有している、です。今回は、各1/2ずつです(第一順位相続のみ)。
で。
遺産分割協議をすると、平成22年1月1日にさかのぼって、土地の共同所有状態が解消され、Bが単独で所有していたとされるのです。
では、平成22年1月1日以降、Cが、土地に対する自分の持ち分をXに売ってしまった場合、どうなるでしょうか?
時系列で考えれば…
Ⅰ.A死亡
Ⅱ.Cが土地持ち分をXに売却
Ⅲ.BとCが遺産分割協議(土地をBの単独所有とする合意)
で、遺産分割の遡及効により、Ⅰの時点で土地はBの単独所有になります。
すると、Ⅱの時点でCは土地に対して何の権利も有していない状態だったとされますので、Xへの売却はできなかったことになります。
Xへの売却ができなかったのですから、CとX間の売買契約が無効と言う事です。
しかし、これでいいのか?
つまり、Ⅱの売却の時点で、Cが土地に対して1/2の持ち分を有していたことを、完全に無視できるのか?
という訳で、「第三者(X)の権利を害することはできない。」としたのです。
これにより、遺産分割の遡及効を理由に、第三者Xの権利を害することは禁じされるため、CX間の売買契約は、有効とされます。
繰り返しになりますが、「第三者の権利を害することはできない」とは、土地に対するC持ち分のXへの売買契約を、遺産分割協議の遡及効を理由として無効にすることはできない、という意味です。
そして、次の段階として、遺産分割協議により土地全部を取得したBとの関係を考えます。
結局、BとXが、Cの持ち分を巡って「俺が持ち分を取得したんだっ」と争っていると考えられますね。
で。
不動産に関して、権利移転の原因が二重に有効に成立した場合、その権利を取得するのは、先に登記を備えた方ですよ、という決まりがあります。
不動産登記制度です。
司法書士の十八番です。
今回、遺産分割協議と売買契約という2つの権利移転の原因が衝突しています。
どちらも有効に成立しています。
なので、Cの持ち分に関しては、BとXとで、先に登記をした方が勝ち、となります。
Xが先に登記を備えたら、土地はBとXが1/2ずつを共同で所有する事になります。
仲良く共同で所有することはできないですよねぇ。
なので、遺産に不動産があり、相続人間に不穏な空気が流れているのならば、難しいかも知れませんが遺産分割協議をササッとやって、次のステップである不動産登記手続に、なるべく早く移りましょう。
…「相続人も大変です⑤‐1(遺産から出た賃料って?)」につづく。