しんくうかん

この地とともに。

第152話 「ハッカの力」

2017-06-14 17:06:57 | 日記


出発時も入れると都合9時間、目に付いた野の花や山菜を撮 (採)りながらお気に入りの森を気の向くままに歩いた。すっかり疲れきってしまったが、久しぶりにたっぷりと充実感を味わった。

「夕食後、緑滴る森を思い浮かべゆっくり湯船につかり、早めに休もう」と、摘んできたミツバのお浸しと卵とじ、極太ウドのキンピラをおかずに夕飯だ。「野生のものはヤッパ美味い」。ナンて、感慨に浸りテレビを眺めていた。
テーブルについた、片肘の服の袖を何かが這っている。もしや!腕を上げてグッと眼に近づけるとそれは紛れもなくダニ、児ダニで大人の半分の大きさもない。「潰してやろう!」と、摘もうとした途端、ぴょんとはねた。あわてて探したが、ゴマの半分ほどの大きさのものが、すべてが老いたわたしにおいそれと見つけられるわけはない。それからというもの体のあちこちがもぞもぞとする。
「すぐに風呂に入った方が良い」と女房。で、夕飯を途中でやめて風呂に入る。体の隅々まで石鹸で洗い、薄くなったとはいえ髪のなかは隠れやすいので、“抜け毛の追打ち”と、気にはなったがシャンプーで二度洗いする。
ダニにはこれまで、数えきれないほど食いつかれている。しかし最近、マダニによるウイルスかなんかの感染で死者も出ていて、ついに北海道でも―。
ということでちょっと心配したのだがこれで安心と、残りの飯を済ませて寝床に入る。
夜半に目が覚め寝返りを打つと、足の節々が少し痛む。と、こんどは下になった脇腹が痛い。あれぇー転んだか!?そんな覚えはない。倒木をくぐったりしたとき枝で打ったか?
トイレに立ち、また布団にもぐるとき痛いところを指で探ると、ぽろぽろと揖保のようなものが。摘んで引っ張ると、肌も引っ張られて簡単には取れそうもない。腕を上げて見るとやはりダニだった。しかもこんどは大人ダニ。
無理に引っ張ると、食い込んだ皮膚の中にかぎ状の頭が残る。むかしは、むしり取ってそこに塩をすりこんでほったらかしていたのに、少しビビッている今はまずい。山行きのベストのポケットからハッカを取り出し、食い込んでいる部分に1,2滴垂らす、と、ダニは体をよじってもがく、少しかわいそうになるがわが身の方が大事。ペッタラコイ身体は、まだ血を吸っていない証拠。
翌朝女房に見てもらうと、わたしよりはるかにひどい老眼の彼女は「よく見えない―、食い込んだまま動いてはいないナ」と、よく見もしないでいう。
そしてその夜、トイレに立った時指先で食いついているところに触れると、ぽろっと取れて、置いてあった紙袋にあたったのかパチと音を立てた。
這いつくばって音のしたあたりの床を見ると、硬質な黒光する粒がふたつあった。

朝、刺されたところは少し赤くなっていただけで食い込んでいた頭もない。恐るべし「ハッカ力」。でもこのわたしが、たかだかダニにビビるとは…。情けないがこれも時代なのだナ。

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