大陸浪人のススメ 〜迷宮旅社別館〜

中国語の大規模掲示板の書き込みを2ch風に翻訳。。元ネタは百度が多し。 (將華語有人氣的BBS留言用2ch的風格來翻譯)

河南省農民「オラの畑が完全に毟り取られてしまっただ……」

2011-12-28 03:45:36 | 中国ネタいろいろ
元の事件はほぼ一か月前の話で悪いのだけれど、
あまりにも物凄い話なのでぜひ紹介しておきたい。

本件の舞台は、かつて夏や殷(商)の都が一時置かれたこともあったとされ、
たぶん往年には太公望が打神鞭を振り回したり
妲己が誘惑したり胡喜媚がロリロリしていたかもしれない、
中国有数の古都・河南省鄭州市郊外の農村である。

この「おまえら、紀元前から同じ場所で農業やってなくね?」的な村において、
ネットの情報が原因で多数の市民が一挙集結した大事件が起きたのだ。


……さて。
以下にじっくりご覧いただこうじゃないか。







――――――――――――――――――――――――
【農民がダイコン畑をタダで開放したところ……】支付宝論壇「愛心捐助」板
http://club.alipay.com/read-htm-tid-10386415.html

1:名無し人民@オラこんな村いやだ 2011/11/29

  ※ちょっと意訳&省略しています。

河南省鄭州市で農業を営む韓紅剛さんは
畑でダイコンを栽培したところ大豊作に。
しかし豊作貧乏となり、業者からは二束三文でしか買ってもらえず、
そんな安いものを収穫するのに人を雇うにもコストがかかる。
そこで家族との相談のうえ、市民の皆さんにタダであげようと考えた。
韓さんは語る。
「福祉団体なんかでうちのダイコンが必要なら、優先的にあげようと思ってただ」

  


こう考えた韓さんが11月25日にネット上に情報を流したところ、
26日の早朝から、ダイコン掘りにやってきた大群衆が韓さんの畑を埋め尽くすこととなる。
群衆は包丁を持ってダイコンを切り取り、
ダメなものはその場に放り出して、良いものだけ袋に詰めて持って帰った。

  


しかも韓さん一家が予想だにしなかったことに、
(今回の件とはまったく無関係な)韓さんの畑のサツマイモまで
掘り出して持って行く者も出たのである。
制止しようもないまま、韓さんのサツマイモは袋に詰めて持って行かれてしまった。

  


どうしようもない状況のなか、
韓さんは群衆に対してなんとか手加減してくれるよう頼み倒すしかなかった。
「おめえら、うちの息子を学校にやらなきゃいかんのだべ!
 ちょっとは残しておいてほしいべよ!」と。

  


11月26日。韓さんの畑の前には、
ダイコン掘りに来た人の自動車や三輪自転車が数キロにわたり長蛇の列をなした。

  

(以下略)

  ※中国広播の記者による韓さんへの取材によれば、述べ5000人以上の群衆が野菜を奪いにきて、
   ダイコン(総額5万元=約62万円相当)とサツマイモのほか、ホウレンソウも大部分盗まれたとのこと)






3:名無し人民@オラこんな村いやだ
さすがにこれはないだろ



4:名無し人民@オラこんな村いやだ
ため息しか出ない……。



5:名無し人民@オラこんな村いやだ
ニュースでもやってた。
絶句。



6:名無し人民@オラこんな村いやだ(四川省♂)
なんで傷付くのはいつも俺たち農民なんだ。



7:名無し人民@オラこんな村いやだ
農民かわいそうすぎる。



8:名無し人民@オラこんな村いやだ
事前にちゃんと人を集めて準備して、
ダイコン掘りに来た人たちにちゃんと注意事項を徹底すればよかったのに。



10:名無し人民@オラこんな村いやだ
なぜ農民だけが傷付かなくてはならないのか。



13:名無し人民@オラこんな村いやだ
どうしてこうなった。





<↓以下、さらに新浪微博の反応も紹介>


――――――――――――――――――――――――
【農民がダイコンをタダであげると発表したところ群衆が殺到】11月29日 19:41
「中山網」公式アカウントのツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1767954360/xzJdLDJ45

@棺材上的星空:(11月29日 19:43)
善良なお百姓さんなのに、うちの国の人間の民度って……。
ああ、かわいそうすぎる。




@楚楚子:(11月29日 19:45)
ああ……。
いまの世の中、こんなに良い人って少ないのになあ……。



@hiLuobo: (11月29日 20:02)
ちょ、ドン引きしたんだけど……。



@個体戸CEO: (11月29日 20:08)
中国人にはこういうひどい人たちも多い。
わけがわからん。



@Dadda6: (11月29日 20:16)
善良な人間として善良な行いをすることは難しい。
だって、ここ(=中国)において「良き人」でいることは代償が大きすぎるんだ!




@華-風影:人啊!怎?能??的?巴不得菜有??,拉死他?。 (11月29日 23:09)
なんてこったい!
どうしてこうなるんだよ!?

野菜の残留農薬で、
ダイコン掘りに来た連中はみんなくたばっちまえ!





――――――――――――――――――――――――




どうしてこうなった。

ものすごくいい人なのに、善意が裏目に出てしまった河南省ダイコン農家の韓さん。
これが藤崎竜のマンガなら望ちゃんが何とかしてくれそうなのだが、
現実はなかなかそうもいかない。

来年こそ、豊作貧乏にならない程度に豊年万作となれと祈るしかない。
韓さんの畑に必要なのは、たぶん太公望や妲己じゃなくて神農である。

負けるな韓さん。


  
             ↑韓さんの息子。


  ※重要な追記とおわび
   ……本件、12月の初めごろにロケットニュースで流れていたらしいorz
      しかもその後、現地メディアや市民のボランティアが残ったイモの販売を手伝ってくれたりして、
      話を聞きつけた取引先から大口契約も取れるという、
      「人間万事塞翁が馬」を地で行くような後日談もあったそうだ。
      世の中、なかなか捨てたもんでもなかったのである(コメ欄で指摘してくれた人、ありがとう)。
       
【中国】「大根無料であげます」1万人以上に畑を荒された農家に市民が同情、サツマイモがバカ売れ

      ちなみに俺はとてもいさぎよくないので、こうなった理由をぐじぐじ釈明しておくと、
      この話が出た時に自分は中国にいて、電車で新聞読んでたらこの件が出てきて爆笑したのだ。
      まさか日本でニュースになっていたとはつゆしらず……。 →記事にする前に日本語ソースの下調べをサボらないようにしようw






―――――――――――――――――――――――――――――


……ところで、以下思い切り蛇足。

今回、上のニュース部分でさらっと出てきた
「11月25日にネット上に情報を流したところ、26日の早朝から大群衆が」
という記述である。
これを見てどう思われるだろうか。


敢えてすごく意地悪な言い方をすると、
たしか今年の2月に「中国の民主化と一党独裁廃止のために立ちあがれ!」と
こんな呼びかけがネットで全国に流された時(=中国ジャスミン革命)には、
上海で4人南京で50人しか人間が集まらなかった。

いっぽう、「オラの畑のダイコン(1本数十円)をタダであげる」と
河南省鄭州市のダイコン農家がちょこっとネットに流した時には、
たったひとつの都市の市民たちが5000人前後も現場に殺到した。



中国において、「ネットには情報拡散能力と動員力がある」ことはまぎれもなく事実だ。
でも、しかしだな……、ということなんである。

自由な民主主義国・ニッポンに住むわれわれの感覚では、
「タダで民主主義と言論の自由が欲しい」「タダでダイコンが欲しい」の両者では、
当然ながら前者の方が圧倒的に心に響くし、非常に大事なものだよなあと思える。

そのため、われわれは中国を眺める際にも、
自分たちにとって「心に響く」要素を持つ人たち
(=例えば劉暁波とかジャスミン革命のシンパとか、「親日」の日本アニメヲタとか)について、
やはりその存在感を非常に大きなものとして捉えがちだったりする。

「中国においてネットが大衆行動に与える影響云々」という話になっても
われわれはやっぱり、自分たちの「心に響く」側面ばっかりを見てしまいがちだ。
(要するに「ネットや微博がにっくき中国共産党打倒の武器になるぜ!」という側面のこと)


だがしかし、現実の中国人民のより多くを占めているのは、
もしかしたら劉暁波とかジャスミン革命のシンパとか日本贔屓のアニメヲタみたいな人たちではなく
タダでダイコンを欲しがる側の人たちかもしれない。

……というか、もしかしたらじゃなくて、どう考えてもそうなんである。
しかも、対象母数を「ネットを使う人々」に限定してすら多分そうだ。

これは、ぶっちゃけ日本人の心にはまったく「響かない」論理を持つ人たちだとも言えるわけだが、
中国には人間が大勢いて、
現実としてそういう人たちも佃煮にするほどいっぱいいるんだから仕方ない。



で、ここらへんの事情を見て見ぬふりして自分の見たい中国だけを見て喜んでると
後でけっこう痛い目に遭ったりするからまったく困ったもんだ……。

などと、元ネタがあほニュースだったのに難しげなことを思ったりもする。




コメント (103) | 

【北の国情勢】ヤンキー母国に帰る。金正男帰国(?)と中国ミニブログの反応

2011-12-22 13:44:36 | 韓国・北朝鮮
いくらなんでも今回の件はブログでも取り上げなくてはなるまい。
とはいえ、金正日が死んだ話は真面目すぎてなんなので、
ここはやはり、俺たちのまさおに登場いただこう。


  


金正男がマカオの自宅から消え平壌へ向かった模様 自宅の外壁には指導者を意味する「太陽」のマーク (痛いニュース)

【香港時事】20日付の中国系日刊紙・香港商報は、17日に死去した北朝鮮の金正日労働党総書記の長男、
金正男氏が最近マカオを離れたとの情報があると伝えた。 金総書記の葬儀に出席するため平壌に戻った可能性がある。
同紙によると、マカオのコロアン地区にある正男氏の一戸建て住宅は19日、誰もいないようだった。
住宅の外壁には指導者を意味するとみられる太陽のマークが張られていたという。
正男氏はマカオや北京を拠点に、事実上の亡命生活を送っている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2011122000539




いきなり新浪微博の反応から紹介してみる。




――――――――――――――――――――――
【金正日の長子、既にマカオを離れて北朝鮮へ】12月19日 12:21
「南方日報」公式アカウントのツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1682207150/xCIT7kESP

@南方日報
環球網(『環球日報ウェブページ』)の報道に寄れば、
メディアの大部分は(今回の件について)金正恩が後継者となると予測している。
ただ、韓国の某主流メディアの記者の証言によれば、
金正日の長子である金正男は既にマカオの自宅を離れたという。
当該記者は、彼がおそらく既にピョンヤンに戻ったと推測している。




@一天一盒飯:(12月19日 12:22)
金正日の息子って、なんでこう外見がキモいんだろう。



@喜羊羊強占灰太狼: (12月19日 12:23)
やーい、キモい子やー。



@M小貝兒: (12月19日 12:24)
北朝鮮ってのは、金一族だけが自由に出国できる国なのか?

  ※ただし、自由に帰国できません。



@LightingBowen: (12月19日 12:27)
玄武門の変フラグきたな

  ※玄武門の変…626年、唐王朝の高祖李淵の息子である李世民が、
         後継者に決まっていた長子の李建成、弟の李元吉を暗殺し、権力を奪取したクーデター。
         李世民はその後、唐の太宗として中国史上最大の名君として讃えられた……というが、
         ぶっちゃけた話、歴史の勝者は兄貴を殺していても名君設定を自分で作れてしまうのだともいえる。
         ヴィジュアル的に理解したい人は『西遊妖猿伝』を読もう。
          参考:Wikipedia 玄武門の変




@周建?Bax: (12月19日 12:44)
死者は安らかに眠るべきである。功罪は後世の評による。
生者は自ら強くあらねばならぬ。極権の苦しみを忍ぶこともなかろう。



@源源綿長: (12月19日 12:44)
太ってるなあ……。
朝鮮人民のメシはこの一家に全部食べつくされているのか。



@Fairy_1229:(12月19日 12:44)
彼の体型や服装と、貧乏で苦しんでいる朝鮮人民との対比が鮮やかだな。



@顧小邪1982: (12月19日 12:45)
ピョンヤンに行ったのはいいけど、帰って来られるの?



@?-高: (12月19日 12:46)
北朝鮮では毎年1万数千人が餓死しているのに、
金一家の王子様は毎日マカオで100万元も使っている……。
これが生活というものであり、これが世界というものなのだろうなあ……。

  ※数字のソース不明



@神奇的Lucy: (12月19日 12:51)
まさおかっけえ!
毛新宇閣下と同じくらいかっけえ!!

  ※参考:毛沢東主席ご嫡孫、毛新宇閣下↓

   


@?吧?啊: (12月19日 12:51)
帰国しても殺されるぞ。
先帝の崩御の後、新帝が葬送の名目で競争者を暗殺するのは
古来よくあった話じゃないか。



@litgeo:(12月19日 12:56)
29歳の金正恩が、彼をどうやってあしらうんだ?
かつて後継者の地位にあった兄にどうやって顔向けするんだ?
……何か起こりそうな気がしてならない。

  ※正恩は満28歳。ただし、中華圏では数えで年齢を数えることも多いため「29」としていると思われる。



@炸花: (12月19日 12:57)
歴史は俺たちに伝えている。
長子を廃して弟を後継者に立てるのは亡国の挙であると……。



@鬼手foreverlove: (12月19日 13:03)
操欲立後嗣,躊躇不定,乃問賈詡曰:“孤欲立後嗣,當立誰?”
賈詡不答,操問其故,詡曰:“正有所思,故不能即答耳。”
操曰:“何思”詡對曰:“思袁本初.劉景升父子也。”
操大笑,遂立長子曹丕為王世子。


  ※↑元ネタは『三国志演義』第六十八回。以下に翻訳↓。

曹操は後継者を定めたいと思ったが、迷ってなかなか決められなかった。
そこで賈クに「余の後継者は誰を立てるのがよいかのう?」と聞いたが、賈クは答えない。
曹操がその理由を尋ねると、賈クは「思うところありまして、即答致しかねまする」という。
曹操が「何を思うところがあるのかな」と尋ねると、
賈クは「(長子を立てなかった)袁紹や劉表と、その息子たちのことを思っていたのです」と答えた。
曹操は大笑いして、結局は長子の曹丕を後継者とした。


  
  


@笑對歴史的傷: (12月19日 13:12)
で、そもそもなんで「世襲」が前提なんだよ?






――――――――――――――――――――――






というわけで、本件については、中国の微博においても、
情報量の面では基本的には日本とあまり変わらないようだ。

もっとも、あえて日本側の反応との違いがあるとすれば、
「玄武門の変」とか「袁紹と劉表の例からすれば……」とか、
あちらのネット民たちが過去の王朝になぞらえてあれこれジョークを飛ばしていることだろう。

そもそも北朝鮮という国自体、
朝鮮半島の儒教の伝統がアレな感じに奇形化した「王朝国家」なのであり、
そこから連想されるのはやはり過去の王朝の事例しかありえない。ということか。




ツイッターにも冗談で書いてしまったが、金正日の後継者争い。

高句麗国内で権力闘争に敗れて流浪している才気煥発な嫡男が、
唐王朝の援軍を借りて豆満江を渡って王都・平壌に進撃。皇太子を撃破!

という、どこぞの韓流ドラマみたいな、熱くて素敵な貴種流離譚が
もしかしたらこの21世紀の東アジアでも見られるかもしれない。
歴史好きとしてはどうしても、少しワクワクしてしまうのだけれど……。


問題は、この壮大にして華麗な貴種流離譚の主人公が、
いい年齢してピョンヤン生まれのヒップホップ育ちなヤンキー親父であることだ。



  




……まさお、とりあえず死ぬんじゃないぞ。






      



コメント (47) | 

宣伝と告知(業務連絡) 12月23日はお暇ですか?

2011-12-18 13:20:30 | 著書と寄稿連絡
今回は広告と告知。(翻訳の新記事が読みたい人は、当記事ではなくこちらを読んで)。
まず、10月の『独裁者の教養』に続いて、去る12月15日付けで次の本が出ました。

     
中国・電脳大国の嘘 「ネット世論」に騙されてはいけない(文藝春秋) 安田峰俊


担当編集者は、以前に『諸君!』の編集長を務めておられたベテランのS氏。
実は本の企画が2010年6月ごろから通っていたにも関わらず、
そうだ、アヘン軍閥行こう。とかバカなことばっかりやっていて延び延びになっていたのだ。

で、「フッ。私をここまで待たせてもいい書き手の方は桜●よ●こさんと安田君くらいだねえ。
世の中には偉い作家さんがいっぱいいるねえ……」
と赤ワインを片手に言われて怖かったので、7月から10月前半にかけて2カ月半で一気に書いた。
だけれど、執筆期間の短さに比して、正直言って結構満足できる内容でもあるのだ。

今回のベースになっているのは、
1.「最近、中国のネット事情とかアニメで日中交流とか、メディアで持て囃されすぎじゃね?」
2.「『中国人の本音』を、現在の自分の見解に沿って結論まで書き直したらどうなるか」

このふたつになっている。



まず「1.」について。各位いかが思われるだろうか。

自分自身が長年そういうブログを運営していてアレなんだが、
最近、本屋やらネット記事やら、新聞やらテレビやらにおける
「中国ネット世論」と「アニメ文化交流」って
ちょっとばかり持て囃されすぎじゃね? (本来、そこまで信頼できなくね?)と思うのだ。

特に中国ネット世論への注目については、今年夏の高速鉄道衝突事故からが顕著だ。
最近の中国ニュースで、むちゃくちゃしょうもない事件(例.CCTVでやらせ発覚とかw)に対してすら
「中国ネット世論の反応が……」「ネット上では政府批判が沸騰」みたいな言葉が記事の末尾を飾るのは、
もはや毎度おなじみのことになりつつある。

過去、2008〜2009年ごろ、うちとか『ansan'sの楽しい中国新聞』あたりが
向こうの掲示板をチミチミ訳して紹介していた頃に、コメント欄に
「日本の国内メディアが注目しようとしない中国の事情がわかって助かります」的な意見が
けっこう見られたのを思い出すと、なんだか隔世の感がある。


……だが、どうも違和感を覚えるのも事実じゃないだろうか。

「中国ネット世論」や「日本アニメで日中相互理解」を重視していく、という昨今の現象。
従来からネットなりアニメなりを高く評価してきた人たちが、
その文脈の上で論じているならまだしもわからんでもないけれど、
実態がむしろそうではないのはご存知の通りだろう。

だって、現在、こうした主張をけっこう無批判に流している大手メディア様たちって、
ちょっと前までは「ネットの闇」とか「フィギュア萌え族」とか
ネットやアニメに対して偏見バリバリで犯罪の温床みたいに取り扱ってきた張本人そのものではなかったか。

「ネットの情報は信頼できない。新聞を読もう」という社説とか、
「犯人の部屋から美少女ゲームが見つかり……」と因果関係不明の説明をするTVのレポーターの姿とか、
彼ら自身は忘れていても、それを言われた俺らは忘れちゃいないッスよ、ねえ? 
と、そのくらいの文句は言いたくもなる。

    


にもかかわらず、ネットの書き込みやアニメが、
中国報道やら、個々の「中国通」の記者や識者の主張の補強に役立つらしいとわかるや、
彼らは「ネットの闇」を「中国人の本音が垣間見える貴重な窓(笑)」だと説明するし、
「フィギュア萌え族」や「大人になりきれないネクラなオタク君(by 80年代価値観)」が
見るものだったはずのアニメは「日中の若者による相互理解と交流の舞台(笑)」になってしまう。
はなはだしくは、アダルトビデオまで「日中相互理解のかけはし(笑)」になってしまう。
で、「知ってたわー。俺ら前から、ネットとアニメ大事だと思ってたわー」という、
地獄のミサワみたいなドヤ顔で、それらが紹介されてしまうのである。

おいおい。どんだけ皮相上滑りなんだという話であり、
こりゃーなんぼなんでも変な事態だと言うしかないだろう。


……特にだな。「AVで日中友好」とかだな、
それをまともなメディアの人が取り上げるとか冗談キツイっしょオイ。

ぶっちゃけAVとは何かというと、
20歳そこらの女の子がカメラの前でアナルまで大公開して男優のものをバコバコはめる猥褻映像
頭にヤがつく系のアンダーグランドな人たちが売りさばいて、
それを生活に疲れたカネの無いリーマンがビデオBOXで2時間6本1000円で見てスッキリするとか
ニートが父親のクレカでD●Mの動画をDLして「ゴミ箱を妊娠させる気?」状態で視聴するとか、
中学生が国道沿いのAV自販機に突撃したら免許証での成人チェック必須で玉砕して帰宅するとか、
要するにそういう構図がデフォの、限りなくどうしようもない残念系のダメ文化じゃねーかと。
(注、上記の描写が妙にリアルなのは気にしてはいけない)

もちろん、職業や業界に貴賎は無いし、
俺自身もむかし、ある事情で女優の晶エリーさんに会ったことがあるのだけれど、
プロの矜持を強く感じさせるキレイでかっこいい女性だった。
AVそのものにしても、カメラアングルその他でマジなエロさを表現し切っている作品については、
「この監督すげえ」とリモコン片手に惜しみない称賛を送りたくもなる(どの業界にも真のプロはいる)。
でも一方、AVがあまり表社会には出せない「残念系文化」であることも、やはり確かなことではないか。


こういう残念系文化が生み出す影響というのは、
うちみたいなB級ブログとか2chまとめブログとか、せいぜいSPA!とか週刊プレイボーイとかが
面白半分で「AVで日中友好かよwワロスww」と取り上げるくらいが本来しかるべきところだろう。

少なくとも、権威ある大メディアのエリート社員が上等なスーツ着ながらAV女優にインタビューして、
「彼女は意外と聡明であり」「その飾らない姿勢が両国の心の交流を生んだ(感動)」みたいなことを、
権威ある媒体で大真面目に書いておられるのは明らかに大迷走でしょと。
というか、誰かちゃんと突っ込んであげてよ! それはナンセンスすぎると!! 

      
  ※「日中友好の新たな旗手」の出演作は『バコバコ乱交』とか『Sola様のM調教』とか『逆ソープ天国』なんだからな? 
   リベラル系の文脈から彼女を持ち上げている真面目な人たちは、その事実に対して誠実にちゃんと向き合っているのかい?



……とまあ、要するにそういうことである。

ただし、今回の本では「だから“マスゴミ”たちは偉そうな振りしてるだけで実はアホなんだ」みたいな
そういう酸っぱいブドウみたいな話をするつもりはない。
話題として不景気だし、それを主張しても生産的じゃないと思うからだ。

今回の本の内容というのは、
なぜそんな立派な大メディアや、俺らなんぞより余程勉強ができて賢いはずの人たちが、
こと中国の問題になるとアホな薄っぺらい話題に対してネタにマジレスしてしまうのか

大メディアをはじめ真面目な人たちはどうして、
従来の「ネット&アニメ=悪」という姿勢からあっさり掌を返してまで
「中国民主化のめざめ」や「日中相互理解」という理想論を追いかける習性を持つのか―――?
という問題について、日中関係史の背景含めて解明していくという内容になっている。

もちろん、その過程においては、
「ネットは中国を変える」、「微博は中国を変える」、「アニメで日中相互理解」といった、
昨今の皮相上滑り系キーワードの内実の空虚さをキチキチ検証していくという作業もおこなっている。

  ※上記の話をフォローしておくと、実のところ大手メディアの中の人には、しっかりしている人も頭のいい人も非常にたくさんいる。
   また、大手メディアが「権威」であることそれ自体も、あながち悪いことでは決してないと思う。
   例えば、メディアが全部、東スポとかゲンダイになっちゃったり、
   朝日新聞やNHKがハロワを通じてニートばっかりを記者職に採用したりする方がよっぽどヤバいはずである。

  ※そして、ここはブログだから挑発的に書いているが、実際の書籍の内容は落ち着いた文体でけっこう大人しい。
    AVの話とかはそんなに多くは出てこないw




次に「2.」について。
この前、『KINBRICKS NOW』の管理人との対談で、こんな話が出た。

 『中国人の本音』って、有名編集者の堀田純司さんが執筆段階で担当してくれたお蔭で、
 すごくきれいな内容にまとまったし、中国情報としても良い本だったと思うんだけど、
 「著者の意見」はあんまり無いんですよ。
 紙の媒体で書くのが初めてのブロガーが、何をどう書けばいいのかわからないまま、
 序論から結論まで堀田さんにおんぶされてゴールに連れて行ってもらった感がある。

 もちろん、当時の自分の実力では
 編集者に思い切り助けてもらわなきゃ1冊の本は書けなかった。
 でも、完成した本からは著者自身の姿はあまり見えてこないし、
 アクがなくてノッペラボーな印象もあったのも事実なんです。(略)

 ただ、それでも「自分は『中国人の本音』での役割を守らなきゃいけないんだ」とか思うわけです。
 100%自分の力で作ったわけでもない本に囚われすぎた。
 「借り物の力なんか全部捨てちまえ!」と思い切るのに1年かかりました。


  29歳の「中国ネットウォッチャー」がなぜ独裁王国に潜入したのか?安田峰俊『独裁者の教養』出版記念インタビュー(1)


要は、第一冊目の『中国人の本音』。
本のなかで出てくる個々の事例は正しいし、確かに俺が拾ってきて俺が書いているのだけれど、
「ネット(orアニメ)で民主化」とか「民間ベースでの日中相互理解」とか
「目覚めた中国人は徐々に増えていく」みたいな論そのものは、
ぶっちゃけた話、執筆の時点で自分自身が必ずしも明確にそういう主張を持っていたわけではないのだ。

  ※とはいえ、当時の自分がそれ以外に何か確固たる考えがあったわけでもない。
   いまだから言うけれど、あの当時の時点では、 バリバリの日中友好論を掲げろと言われても“シナ人”排斥論を掲げろと言われても
   おそらく「商売」として受け入れて、指示に従ってそういう本を作っていた可能性が非常に高い。
   ただ、幸い当時の編集者の方は自分にとって比較的受け入れやすい論を提示してくれたので、それに従って書いたということなのだ)



しかし、編集者の方に序論から結論まで作ってもらって書いた本は、
当然ながら一冊の書籍としての出来は非常によいものになったものの、
その編集者が身辺からいなくなれば次の本では何も書けなくなる。
自分の本当の内面から、モノを考えて書いていたわけではないからだ。

それでしばらく困ってたんだが、最近いろいろやっていて
何となく自分の主張を形にできるようになったし、難しいことを考えるようにもなった。

そこでできたのが今回の本で、
自分の見解にもとづいた「中国論」を書いてみたのだ。


  

≪目次≫
◆はじめに

◆第1章 「日中アニメ文化交流」の嘘
辺境の街の「昇龍拳」/「日中文化交流」は本当に可能か?/宇多田ヒカルを歌う「反日」青年/
事実の本当、願望の嘘/「民工」たちの見るアニメ/「消費対象」としての外国文化/
ゼロコンマ以下の変化/思い入れ日中文化交流論

<コラム>「蒼井そら」ブームを斜め読みする

◆第2章 「対日感情」の嘘
骨董商のピンチ/「対日世論」をつくるもの/「反日」の背景/
「政治(ヂェンヂー)」としての反日デモ―2005年―/「政治(ヂェンヂー)」としての反日デモ―2010年―
/大きくブレる「ネット世論」/「親日」ネット世論の背景/蛇口が握られる「対日感情」

<コラム>「信頼できる」中国ネット世論

◆第3章 「ネット世論」の嘘
高速鉄道衝突事故、現地報告/中国世論の「分裂」 /「いちびり精神」の体制批判/
中国「ネット世論」の限界/中国版“ウェブはバカと暇人のもの”/
「ネット右翼」と「新意見階層」/開き直る中国政府と踊る日本人

<コラム>パクリかインスパイアか? 中国国産系ウェブサービスの怪

◆第4章 「ツイッター革命論」の嘘
あるギークとの出会い/「紅い万里の長城」に囲まれて/中国ネットユーザーの「超」最先端/
中国ツイッター民の素顔(一) ネット大好きの「ITオタク」/
中国ツイッター民の素顔(二) 外資企業社員と共産党員、現代中国社会の「エリート」たち/
中国ツイッター民の素顔(三) 「反体制派」の女性/
「IT人」たちの限界/「洋秀才」と「皇帝」

<コラム>辛亥革命とは何だったのか? 一〇〇年前の大事件を考える

◆第5章 「変化する中国」の嘘
「中国人民の性質」とは何か/韓寒・劉暁波・魏京生・魯迅・孫文・陳独秀・鄒容/
「バカばかり」の国――孫文とジャッキー・チェンの共通点とは?/
一〇〇年間、変われない中国人/「中国蔑視論」の誘惑/カン違いした人々/
「無限回廊」から脱出する処方箋

<コラム>「保守」と「革新」から考える日本人の中国観

◆おわりに


……けっこうハードな「中国本」だけれど、ご興味がありましたらどうぞ。
読み終わった人の感想を聞いていると、そう評判が悪いわけではないみたい。



――――――――――――――――――――――――

次は告知。

安田の本に加えて、
年末に福島香織さんが石平さんと対談本を出されることもあって、
12月23日にひとまず『KINBRICKS NOW』主催で、
出版記念パーティー&みなさま感謝デーを企画しています。

日時:2011年12月23日
場所:未定(池袋か新宿あたり)
時間:午後7時頃

詳細こちら:https://plus.google.com/109836385916922365839/posts/RN9WDNKdo2Q

俺はともかく、キンブリの管理人氏とか福島香織さんを生で見られるチャンスです。
ご関心ある方は、ツイッターのDMかmeirojin@gmail.comまでどうぞ。
(コメ欄やツイッターで絡みがまったくない方でもOKです)
人数は多いに越したことは無いので、振るっていらしてください。



……宣伝と告知にエントリーを使ってしまって正直すまんかった。
では、また。

コメント (26) | 

「新浪微博が実名制になるんだってねえ……」→ユーザーの反応

2011-12-18 03:22:45 | 言論統制/ネット規制/緑bar娘
長らく更新が空いてしまったのは、
例によってサボっているからでもあるのだけれど、用事で3週間も中国へ行っていたからでもある。
雲南・広東(深セン)・マカオ・上海・北京と巡って、
「中国でかすぎありえねえワロタw」という取材になった。

  


ところで、今回の中国滞在でものすごく困ったのがネットだ。
どうやら今年の夏ごろまでよりも規制が更に厳しくなっているらしく、
Gmailの接続速度がえらい遅いし、Googleで検索自体がおこなえないこともしばしば。
(いっぽう、あまりの遅さにむかついて百度や優酷その他の中国サイトにつなぐと、
 あまりにもあっさりと繋がって拍子抜けしたりするw)


……まあ、とはいえこれは当たり前っちゃあ当たり前のことなのだ。
日本ですらこれだけ「ネットは中国に自由と民主主義をもたらす!」とか
色々その手の言説が本屋にズラズラと並ぶ状況になってしまった現在、
中国共産党様がネットへの管理統制に本腰を入れるのは当然ではある。

もっとも一方で、実は中国の一般的なネットユーザーは、
ツイッターやフェイスブックはもちろん、意外とGmailやアマゾンなんかも使っておらず
かわりに中国国内のサービスを使っているため、
この規制にそれほど大きな不便を感じていない人もそれなりに多くいたりするのも事実だ。

 ツイッター   ⇒ 新浪微博、騰訊微博
 フェイスブック ⇒ 人人網、QQ空間
 ようつべ    ⇒ 優酷、土豆ほか
 Gmail     ⇒ なんぼでもかわりのメールサービスがある
 Google    ⇒ 百度、捜狗
 アマゾン    ⇒ 当当網、タオバオ

 

中国のネット人口は5億人。
といっても、これは日本のネット人口「9900万人」と同じく、
グ●ーとかモ●ゲーの釣りゲームに10万円課金しちゃうアホな中学生とか、
携帯でワ●ワクメールしか使ってないヒャッハーなDQNとか、
孫に一週間に一回だけメールを打つのが楽しみのお婆ちゃんとか、
「店のHP作りました!」とマイドキュメントの場所名を壁に貼っちゃう食堂の店主とか、
そんな感じの(世間の圧倒的多数を占める)膨大なライトユーザーたちを包括した数字であって、
Googleやツイッターが使えなくて本気で困って悲しむような人たちは
ネット人口全体の(おそらく)2〜3割程度かそれ以下でしかない。

一昔前の日本で、少なからぬ人が
Gooとかニフティとかの検索やメールサービスを使っていて、
それはそれで不便を感じていなかったのを思い出してほしい。
現在の中国における「Googleが無い世界で不便を感じない人々」の存在というのも
それなりには想像できるのではあるまいか。

ライトユーザーというのは、
便利な国外サービスよりもわかりやすい国内サービスを使いがちであり、
国外のサービスが使えなくなっても意外と困らないものなのだ。

(余談だが、俺のオカンはいまだにGooで検索しているw)



……だが、だ。
どうやらGoogleやツイッターなどの国外サイトだけではなく、
ライトな人を引き寄せて現在はわが世の春を謳歌している中国国産ウェブサービスの世界にも、
当局の規制の波が押し寄せつつあるらしい。

それが「ミニブログ(微博)実名必須制」である。

中国・北京市、中国版ツイッター「微博」で実名登録を義務化(サーチナ)

  中国・北京市政府は16日、“中国版ツイッター”と呼ばれる短文投稿サイト「微博」(ミニブログ)で実名登録を義務化
すると正式に発表した。即日施行され、ユーザーは3カ月以内に本当の個人情報で登録しなければ「つぶやく」ことができな
くなるという。中国各メディアが同日伝えた。
  北京市政府は16日、「微博の発展管理規定」を公布、即日施行した。「規定」によると、個人もしくは団体ユーザーは住
民登録や法人登録といった本当の身分情報でなければ「微博」アカウント登録ができない。つまり北京市が管轄する新浪ネッ
トや捜狐ネットでは実名登録が必須になる。
  「規定」によると、ユーザーは公布から3カ月以内に北京市インターネット情報内容主管部門に関連手続を申請しなけれ
ばならない。違反者は処罰されるとしている。報道によると、実名登録しなければ発言サービスが利用できなくなる。ただし
閲覧サービスのみ利用する場合は、現在のところ制限はないという。
  中国インターネット情報センター(CNNIC)によると、中国のインターネットユーザーは6月末時点で4億8500万人、
「微博」ユーザーは約2億人。「微博」は急速に普及し、7月に起きた高速鉄道事故のように、ユーザーが事件事故の現場から
情報を発信するなどの“活躍”も多い。
  北京市インターネット情報内容主管部門は、「微博の発展とともにデマや虚偽情報、ネットを利用した詐欺も現れ、公共
の利益を損なっている」とし、「規定」制定の理由を「インターネットの健全な発展を保障するため」だと説明している。
  実名制導入について、中国ネット上ではさっそく物議をかもしている。「発言に責任を持つようになる」と評価する意見
もあるいっぽう、事実上当局による管理強化と受け止め、「ユーザーに孫悟空の緊箍(きんこ)をはめるようなもの」との批
判も出ている。
  また、新浪など「微博」運営企業の業績に大きく影響し株価は下落すると見られている。(編集担当:阪本佳代)



こちらの問題について、
以下に「新浪微博」の利用者たちの反応を見てみることにしよう。






――――――――――――――――――――――――――
【微博の実名制、はじまる】12月16日 15:30
「南都週刊」公式アカウントのツイートへの反応より
http://www.weibo.com/1641532820/xChsdaXxL

@南都週刊 
【北京市、微博実名制をはじめて推進】
北京市人民政府新聞弁公室・北京市公安局・北京市通信監理局・北京市互聯網信息弁公室は、
本日付で≪北京市微博発展管理若干規定≫を発表。
あらゆる組織と個人が微博のアカウントを作成する際には、
身元を証明しておこなわねばならず、
身元の証明ができない者は、閲覧のみが許可され発言は許されないこと、
各微博サイトは今後三カ月以内にユーザーに対する規定を完成させることを規定した。
http://t.cn/SciyVb



@安徽chaolei (12月16日 17:52)
これはまた、すさまじい影響が出そうだなあ……。



@譚昊TanHao (12月16日 19:02)
これまで、微博は自由な言論の場になれるんじゃないかって願っていた。
そして、微博は長らく圧迫に晒されすぎてきた
中国人の小さな息抜きの窓となっていた。
でも、もしもこの小さな窓ですらも閉じられてしまうとするならば……。
巨大な反発が、予想だにしないような勢いで噴き上がるかもしれない。




@myakb (12月16日 19:08)
(今回の指示を出した)後ろにいる人たちも実名制にしてくれ。



@莫邪xyj (12月16日 19:18)
予測はしていたことだが、ついに始まったな……。



@宦九歌兒 (12月16日 19:27)
やったぜ! これでもう遊ばなくなるよ!

  ※確かに、ソーシャルサービスが無くなった方が仕事の単純な効率は上がるよなw



@FHM占春苗 (12月16日 19:43)
ははは。政策というのは素早く決まるものだねえ。



@shu棠君 (12月16日 19:45)
言論の自由には、
もちろん匿名で言論を発表する自由だって含まれるはずだ。


  ※「実名アカウント以外はブロックします!」とか言ってる、
   ちょっと気持ち悪いツイッターユーザーたちにぜひ聞かせたい言葉w




@無關註無粉絲無微博 (12月16日 19:52)
(偽アカウントを売る)ダフ屋がいい仕事になるだけじゃねえか。
(中国の体制は)まさにこのように各方面でダフ屋に福利厚生を施してあげる体制だよね。

  ※中国はデフォルト設定では行政その他のサービスがよろしくないが、
   ワイロその他人脈背景によって、生活上の問題が日本以上に便利に解決されることもあるのが中国というもの。
   ちなみに今回俺が中国でやった取材でも、「この地域では”殺し”以外は何をやってもフリー」という、
   ものすごすぎる背景を持っている人に会っている。




@小浚子Fucky (12月16日 19:52)
この規定は北京市民に対してのものか、全国の人民に対してのものかどっちだ?
もしも全国の人民に対して課すものだったら、全人代(=中国の国会)はどこに行ったんだ?
全人代の常務委員会はどこへ?
こういうのって、ひとまずは名目上であっても全国組織で決定されるべきものでは?


  ※ここが今回、中国当局のズルいところかもしれない。
   中国だってひとまずは法治国家を自称しているため、こういうことは本来、
   やはり形式的とはいえ国会で法律として決まった上で全国に施行されるべき。
   もしくは(これはすでに民主的なプロセスではないが)少なくとも国家機関が「通達」を送ることで
   民間にそれを順守させるという手順を、最低限踏むべきではあった。

   だが、言論弾圧法案なり通達なりを、国が責任を負う形で議論したり決めたりすると、
   アメリカ様やEU様がお怒りになって面倒くさいし、声の大きいネット民も騒ぐしで面倒だ。
   別にその気になれば中央から通達出したったっていいんだが、より面倒くさくない手法の方がいい。
   そこで、新浪微博の本社が置かれている北京市で、「街の条例」として制定することにしたのだろう。
   本社の運営規定として「実名必須」となれば、ネット実名制は事実上は実現できてしまうからだ。

   ちなみに(意図的になされたものかは別として)似たような事例は日本にもないわけではない。
   日本の出版社の9割が集中してコミケも開催される東京都で「ロリエロ漫画禁止条例」を制定すれば、
   日本国内で流通する漫画の表現を事実上は大きく規制できてしまう……、という困った話は、
   読者各位もどこかで聞いたことがあるのではないだろうか?
    参考:「非実在青少年」(同人用語の基礎知識)http://www.paradisearmy.com/doujin/pasok_hizitsuzai.htm



@Joe胡振邦(12月16日 19:53)
>@軍械所樂隊 絶対に反対だ。非常に憤慨している。
>@劉立新-公民 言論の自由こそ栄誉、ネット実名制の強制は恥だ。

民主主義への距離がまた一歩遠のいたか……。



@小魚愛宸 (12月16日 20:18)
いつも弱者にばっかり刀を振るいやがって……。



@-笨peng蟹- (12月16日 20:33)
官僚の財産は一人として公開されないのに、
ネットの発言は実名必須だとか、なんとも不思議な国もあったもんだ。



@EmbraceTheDarkness (12月16日 21:05)
党の皆さんは俺たちに、
街に出てデモをやってくれって言ってるんだよ。
ネットでガーガー喚くだけなのはやめようぜ、オイ。







――――――――――――――――――――――――――





ふむふむ。
やはり微博上においては不平不満を訴える声が非常に多く出ているのか。


……ところで話が変わって先日。
北京で別件の取材をしていて、
偶然に現在40歳の頭脳労働者(記者とかそこら辺の仕事のサラリーマンだと思われたし)と
一緒にごはんを食べる機会があった。

  


祖母が満洲族だったという彼は生粋の北京っ子であり、
北京の胡同の風情や、肉を食いまくる北方中国人の習慣の素晴らしさを力説していた。

正直、彼とは意気投合した。
ガツガツと飯を食ってビールとタバコをバカバカ開けながら
話をしているうちに、彼はこんなことを語りはじめた。


――――――――――――――――――

北:あのさ、1989年の六四天安門事件な。
  俺は当時は18歳で大学に上がる前だったが、いやー、街に出てガンガンにデモをやったもんだ。
  こうしないと中国は生まれ変わることができない、
  そのためには俺たちが共産党を倒さなきゃ、ってね。

俺:あー、そういうご世代なんですね。なぜ当時はそう考えたんですか?

北:まさにそんな時代だったのさ。
  文革が終わってまだ10年ちょっとくらいで、庶民の生活は貧しい。
  だが、改革開放で官僚やら太子党やらだけが大金持ちになって贅沢をしている。
  社会への不満は現在よりもずっと大きかった。俺たちは貧乏だったからね。

俺:なるほど。

北:あと、時代が時代だよね。当時のソ連や東欧に元気がないのは、俺たちにだってわかった。
  やっぱり社会主義は間違いで、人間を貧乏にするだけなんだ。
  逆にアメリカの価値観は何でも正しいはずなんだ。
  民主主義になれば俺たちも豊かになれるんだぞ、と。
  はは、単純でかわいいもんだろ? あの頃は若かったよなあ。

俺:当時の記録映像を見たことがありますが、やっぱりそんな印象でした。

北:ああ。それで人民解放軍の兵士に散々ぶん殴られてね。 
  6月4日の清場(=天安門事件)があった後には、俺も他の市民もみんな怒っていて、
  大通りを走る解放軍の戦車に石をぶつけていた。
  でも、あの時に石を投げていた連中、前の方にいたやつらは捕まってどこかに連れて行かれたな。
  いまだにわからないんだけれど、あいつらどこに行ったんだろうなあ……。

俺:……。

北:もうね、共産党が憎くて仕方なかったよ。
  庶民に不公平で貧乏な暮らしを強いてきて、それに文句を言ったら「戦車」だ。
  なんて非道い連中なんだってね。
  ……でもな、最近はそうも言えなくなってきた。

俺:言論の引きしめですか?

北:違う、逆だよ。
  中国に民主主義や言論の自由は相変わらずさっぱり無いのだけれど、
  経済改革に成功したことで、俺たちは豊かになれてしまったんだ。
  そりゃあ貧富の格差は非常に大きいし、社会問題は多いけれど、
  天安門の時よりも社会が格段に良くなっていることも確かではある。
  民主主義じゃないのに、俺たちは豊かになれてしまった。

俺:北京の街を見ていると説得力がありますね。10年前と比べるとすごい変化だ。

北:そうさ。民主主義体制の下で現在のような経済建設ができたか? 
  都市を発展させられたか? 14億人にとりあえずメシを食わせる政治を実現できたか? 
  それができた日本や台湾は幸せだよ。
  でも中国大陸において、そんなことはやっぱり無理だったと思うんだ。
  そして、中国共産党は経済発展を成し遂げて「功績を作ってしまった」。
  その功績もまた決して小さくないんだよ。

俺:自分たちの生活を良くするために、民主主義は絶対の条件ではなかった。

北:……ああ。
  自分の世代も、もちろん現在の中国の20代や10代も、
  そんな中国を本気で変えたいとは思っていないはずさ。
  いまの若者はネット上ではいろいろ言っているけれど、実際にデモはしない。
  だって、そこまで追い詰められてはいないじゃないか。
  天安門の頃は、もっと本気で社会がどうしようもなくて、貧しかったんだ。


俺:いま、再びああいう運動をやれるとしたら?

北:俺は勘弁だなあ。
  現在の中国で『民主』や『リベラル』を気取っている著名人の多くは、
  虚栄心やカネや世間体から、ポーズとしてやっていると感じるよ。
  俺だって、そりゃあ昔は戦車に石を投げていた人間さ。
  でもね、家のローンとか老後の蓄えとか子どもの教育とか現実的な問題を考えたら、
  現在の体制の崩壊なんて本気で望めるわけがない。

俺:少なくとも、いまの中国はそういう「現実的な」問題を考えられるくらいには
  都市市民が豊かになっていて、それなりの日常が存在する……。


北:ああ。それは若い連中だって同じだと思うなあ。
  彼らは、今の中国で大学に入れて、ネットができる子たちなんだから。
  それに、俺たちの時代と違って彼らは一人っ子だ。
  俺たちは兄弟が誰か死んでも親を養えたけれど、一人っ子は簡単に死ねない。
  われわれ中国人の孝道の問題からして、親に迷惑はかけられないだろう。

俺:説得力ありますね。
  
北:まあそういうもんなんだよ。もう一本、燕京ビールを注文したから付き合いたまえ。


――――――――――――――――――




北京の夜は氷点下だが、熱い話をしてくれた人であった。

……そこで元の話題に戻るのだが。
はてさて、新浪微博の実名化に怒りの声を上げるネットユーザーたちは、
何らかの行動を起こせるのだろうか。

せいぜい、北京市当局を萌えキャラにしたり、
どこかに「微博の墓」とかを作ってみんなで献花したりしながら、
諸外国からクレームが入るのを待つというあたりの、
良くも悪くもいつものパターンなヌルい抗議がなされて、
あとは何となく有耶無耶になっていくような気がしてならないのだがなあ……。

実名制。
前々から当局がやりたがっていたことではあるし、なかなかこの流れは覆らないような気もするのだ。






  

    ↑次の本出ました。

コメント (77) | 

湖南省の山奥の小学校が『おしん』状態→中国ネット民「かわいそうだ」「いや、俺がガキの頃だって…」

2011-11-15 15:24:24 | その他の少数民族

先日、『独裁者の教養』の刊行前に
ツイッターでだらだら宣伝を流していたのをまとめてくれていた方がいらして、
そちらから「少数民族ネタでやってください!」とリクエストいただく。

最初はチベットだのウイグルだのを探していたものの、
一昔前と違って規制が厳しくてなかなか漢語の掲示板が引っかからないし、
たまに引っ掛かるものがあっても、記事にしたいほど面白い内容がない。

なので、「苗族(ミャオ族)」で検索してみたところ、
個人的に興味深い動画を見つけたのだ。




今回の場所は、
湖南省湘西トゥチャ族ミャオ族自治州鳳凰県禾庫鎮にある某小学校。
この場所は貴州省・重慶市(旧.四川省)・湖南省の三省境界地点に位置する
交通が至極不便な山岳地帯で、中華民国時代までは山賊の巣のような場所であったという。

けっこう前の記事に登場した、
大中華佛国とか中原皇清国とか、謎のインディーズ皇帝が活躍したのも、
きっとこんな感じの場所だったのであろう。


  


そんな湘西トゥチャ族ミャオ族自治州鳳凰県禾庫鎮で
中国で近年流行している「拍客(趣味の動画撮影)」で撮られた
2歳の弟を背負って学校に通う苗族の女の子の姿の動画が興味深い。

(趣味の撮影とはいえ、めちゃくちゃ動画のレベルが高い。
 いまはその気になれば、こういうジャーナリズムが個人でできる時代でもあるのだ)

以下に、動画とそれへのコメントを紹介していこう。





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【ミャオ族の9歳の女の子が弟を背負って学校に】
原題「視頻: 【拍客】實拍苗族九?女生帶弟上課 哄弟弟嫻熟如媽媽」 
youku「生活資訊」 2011/10/25

元動画はこちら↓
http://v.youku.com/v_show/id_XMzE1ODkyMjcy.html

 
  チャイムの代わりに鉄棒をカンカン叩く。

 
  教室の天井。

 
  2歳の弟を連れて学校に通う、ミャオ族の麻珍妹ちゃん。

 
  子どもをあやしながら授業。

 
  背負ってあやしていたら寝てくれたので、授業に集中できる。

 
  実は、麻ちゃんみたいな児童は、この学校では珍しくない。

 
  学校の年季が入った黒板。



1 名無し人民@ようくー(zxzgm)
赤なんとか十字会とか、そういうのってどこいったん?



2 名無し人民@ようくー(「?相如」)
いや……、泣かないぞ。



3 名無し人民@ようくー(地方2色粉)
こういうのを見てて思うけど、
毎年の「中国のGDP額が!」とかいうアレって、何に使ってるんだろうな。



4 名無し人民@ようくー(蕭蕭好可愛哦)
自分が子どもの頃、
こうやって弟や妹を背負って学校に行く子を見たことがあって
考えさせられるところがあったんだけどさ。

あれから15年も経つってのに、
まだこういうことがあるんだな……。




5 名無し人民@ようくー(泉莫客)
あきらめなよ。
官僚のお父さんお母さんがいなかったのが悪いんだ。



6 名無し人民@ようくー(wsyboss00)
心が重い。
数十年前みたいな光景が現在でもなお残っている。
これって、社会の進歩なんだろうか、
それとも退歩なんだろうか。



7 名無し人民@ようくー(13366075185)
これが中国ってやつさ。
こういう子たちが「祖国の未来を担う」と……。



8 名無し人民@ようくー(leonjlm)
指導者たちの豪勢なメシ1回のカネで、
学校をひとつつくれるかもなあ……。
やれやれ。



9 名無し人民@ようくー(小彬斌杜)
うちの地元もこうだよ。
俺はがんばって、たくさんお金を稼ぐんだ。

誰かお金持ってる人間が、
こういう子たちを助けて学校を修理してあげてくれないかなあ。



10 名無し人民@ようくー(水旁青竹)※ミャオ族
かわいそうな子……。

俺たちミャオ族が現在これほど苦しんでいるのはなぜか、
知る人はきっと少ないのだろうな。
俺たちはずっとこうして落魄して、現在に至っているんだ。

祖先たちの栄光の歴史は埋もれてしまった。
もう返って来ない……。




11 名無し人民@ようくー(5K小飛)
こんな光景が現在もあるなんて信じられない。
うちの母さんは小学校のときに俺のおじさんやおばさんを抱えて、
面倒を見ながら学校に通っていたそうだけど。

あれからずいぶん経ったのに、まだ同じようなことが……。
「祖国は強大にして豊かである」じゃなかったっけか!?



12 名無し人民@ようくー(齊??)
いやいや、我が国は既に豊かだよ。アフリカに小学校を建ててあげるくらいだ。
ところで国内の子どもの現状を見ると……、
俺は何かに憤ってしょうがない。

  参考:アフリカで小学校寄贈、北京では農民工の学校を強制閉鎖 (日経BP)
      中国で“希望工程”と言えば、「貧困児童就学援助プロジェクト」を指し、募金によって貧困地域の学童教育を
     支援する事業を意味し、この事業を通じて建てられた小学校は「希望小学校」と呼ばれる。これをアフリカで展開
     しようというのが“中非希望工程“であり、今後10年以内に総額20億元(約250億円)を投じてアフリカの各国で
     1000校の希望小学校を建設して寄贈するというものである。(引用終わり)




13 名無し人民@ようくー(memexinmeng)
なんと言うべきかなあ。
本当に尊い人間とは善良な人間のことだよな。
でも、いまどきの社会では金持ちだけが尊いんだ……。



14 名無し人民@ようくー(黄海暖流)
アフリカの援助やってる場合じゃねえだろ。



15 名無し人民@ようくー(嘿o烏鴉)
中国国家統計局発表。

吾々ノ収入ハ極メテ高ヒノデアル。
人民ハマコトニ幸福ナノデアル……。




16 名無し人民@ようくー(明ぬ明)
動画の最初に流れる鐘の音がすごく懐かしい。



17 名無し人民@ようくー(文嘉思)
子どもの頃、わたしもお姉ちゃんに背負われて何年か学校に行ったなあ……。



18 名無し人民@ようくー(秋妖無歡)
悲しすぎる!
うちの母もそうやって学校に通ったらしいけれど、
それって1950年代の話だよ……。

きついな。




19 名無し人民@ようくー(kkkk000011)
俺が小学校三年の時までは似たような状況だったな。
でも、あれって1990年代の初め頃の話で、
その後は改善したぞ。



20 名無し人民@ようくー(小女子笑笑)
貧富の差が激しすぎるよ。
国家が強大になったって、民が豊かになるとは限らないんだ。



21 名無し人民@ようくー(215740251)
俺の子どもの頃みたいだなあ。特に、あのスリッパ。
俺が中学に上がる頃になっても、この動画みたいな感じだったよ。

いま、もうじき大学を卒業するんだけどさ。
自分の子どもの頃を考えると、
こういう「苦しい」とされる環境って、別に苦しくもなんともなかったんだよな。
むしろ、現代の(都市部の)社会に対して、
どんどん信じる気持ちを失ってきている。






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どうやら動画への反応は2パターンにわかれるようで、
「こんなのかわいそう!」という、
ほっとけない世界の貧しさ的というか、自国批判的な意見がひとつ。
もうひとつは、そんな貧しさにどこかでノスタルジーを持つような意見だ。

(もっとも、元の書き込みを見ると両者の割合は7:3くらいである。
 あと、「昔はこういう話もあったが、現在も変わらないのか!」と憤る意見も散見されるが、
 そこでいわれる「昔」は1950年代だったり、1990年代だったりするのが面白い)



山奥で変わり者が勝手に皇帝を名乗ったり、
女の子が弟をあやしながらボロボロの学校に通わなきゃいけないけれど、
都市部の近代的懊悩などというものとは
さっぱり無縁な(と、ならざるを得ない)人々が暮らす「停滞した」旧中国と、
就職とか金儲けとか個人の権利とか自由とかいろんな抽象的な問題を考えざるを得ず、
貧しい農村にノスタルジーを覚える奴まで出てくる、「病んだ」現代中国。


こんにちの中国は、こういう面倒くさくて相反する要素が
いっこの国にどちらも同時に存在しているだけに、
いろいろ大変なのであろうと考える次第。




……ところで、俺も地元帰りたいなあ。
(年末に帰るけど)


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