にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

流行していない病気のワクチンは不要?

2017-09-06 16:19:30 | 病気のはなし
子育て中のお父さん・お母さんの中には、予防接種に不安を持っていたり、接種を回避している方がいます。
漠然とした不安の方もいますが、「ワクチンを打ってはいけない!」という主義主張の医師(医療関係者)を信じて拒否するケースも少なくはありません。
ワクチンを否定する理由の多くは「ワクチンには重大な副作用がある」と「流行がない疾患の予防は無駄」というものですが、これはいずれも物事の一面しか見ていない(あえて見ようとしない)ことによる誤解や間違いです。

まず副作用について考えてみましょう。

ワクチンも薬の一種ですから、全くの副作用のない薬がない(そもそも全く害のない食品だってありません)のと同様に、ワクチンにも多かれ少なかれ副作用(予防接種では副反応と呼びます)はありえます。
行政が発行している予防接種の手引きなどを読めば、どんな副反応がどの程度起こるのかや、出現した場合にどうすればよいかなども書かれていますが、その多くは一過性の症状で特に処置等を必要とすることもなく、ワクチンが直接の原因(因果関係有り)で命にかかわったり、後遺症が生じるようなことが起こることは極めて少ないと考えて構いません。

では、なぜ副反応が問題視されるのでしょう?

それは「ワクチンをしなければ起こらなかった」という接種のデメリットだけを取り上げ、「ワクチンを接種せずに病気に罹ってしまった場合に起こる」接種をしないことのデメリットを無視してしまうからです。
例えば麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を考えてみましょう。
麻疹(はしか)は、ワクチンができる前は「命定め」などと呼ばれたこともあるように、罹れば命を失っても不思議はない上に、たとえ治癒しても何十年か後に脳炎が起こることもあるという重篤な病気です。
また風疹は、別名「三日ばしか」と呼ばれ、症状そのものは比較的軽いのですが、血小板減少性紫斑病を引き起こしたり、妊婦さんが感染して赤ちゃんが先天性不振症候群になったりすることもある病気です。
MRワクチンが持つ様々な副反応と比べる必要があるのは、このような実際に病気になってしまった時に起こるかもしれない重篤な合併症です。

次に流行の有無とワクチンの関係について考えてみましょう。

流行がないということには、二つの要因があります。
一つ目は、病気(病原体)そのものが存在しなくなることです。
その代表が天然痘です。
天然痘ウイルスによって起こる、昔は誰もが罹る病気でしたが、ワクチンによって自然界からはウイルスが根絶され、今では研究用に保存されているのみになりました。
この場合はもちろん免疫を持つ必要性が無くなったので、ワクチン接種も不要です。

二つ目は、病気は存在するが、免疫を持つ人が多くなって感染しても発病することが少なくなり、流行があっても小規模で済んでいるというものです。
免疫を得る方法には、自然に感染する、予防接種をするの二つがあります。
自然に感染した場合の免疫はとても強力で、ほとんど一生続くものになりますが、その代わりに病気によって命を奪われたり、合併症による後遺症に苦しむことになる可能性もあります。
しかしそれ以外の人は免疫を持たない状態のままのため、病気が存在する限り流行を繰り返すことになります。
また破傷風などのように、発病しても免疫ができない病気もあります。
一方で予防接種による免疫は、病原体を弱毒化したり(生ワクチン)、免疫を作るのに必要な成分のみを取り出したり(不活化ワクチン・トキソイド)して人工的に作られたものなので、一定の年月で効果が弱まることが多いため定期的に接種を繰り返す必要がありますが、一度に多数の人に免疫を与えることができるので、社会全体を見ると免疫が行き渡っていて大きな流行を防ぐことができます。
今の麻疹、風疹、水痘、破傷風、ジフテリアや、乳幼児の重症結核などは、こうした予防接種の集団効果によって流行が抑えられているのであって、もし予防接種を行わない人が増えれば、当然大流行が引き起こされる可能性が出てきます。
実際に、政変で不安定となり予防接種が困難になったロシアやその周辺国で1990年台前半にジフテリアが大流行があったり、日本でも麻疹や風疹がワクチンの未接種や1回のみ接種の成人で流行を繰り返していることがありますね。

こうして考えると、予防接種は個人を守るとともに、予防接種の対象とならない人(例えば0歳児の麻疹や風疹、水痘など)を含めて社会全体を守ることに繋がっているので、ワクチンのデメリットだけを考えて接種を控えることは、決してプラスにはならないことがお分かりかと思います。

予防接種法が改正されて、以前のような接種義務から国が接種を勧奨する(勧める)というように変わりましたから、接種をしない判断をすること自体は間違い(違法)ではありませんが、「不安があるから接種しない」ではなく、正しい知識を得て、本当に不必要なのかを自分の頭でしっかり考えることが大切ですね。

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