にれっちのつれづれ日記

本州最北端の小児科医にれっちの独り言(^^)

大学や専門学校が要求する麻疹・風疹等の抗体価検査について

2017-04-11 15:31:50 | 病気のはなし
子どもの麻疹・風疹(MR)ワクチンと水痘ワクチンが2回接種になり、この3つの疾患を小児科で見ることが極めて少なくなりました。
任意接種のおたふくかぜワクチンも認知が進み、むつ市をはじめ費用助成をしてくれる市町村も増えてきて、いずれは小児科医が治療を担う疾患ではなくなっていくものと思われます。
一方で、ワクチン接種が不十分にしか行われていなかった成人の間での流行が止まず、昨今では大学や専門学校等の入学の際にワクチン接種歴や抗体価の測定を求められるようになってきました。
ただ、この学校側が要求してくる中身に「なんだこれは??」と首をかしげるようなものが散見されています。
その多くは、
●ワクチン接種歴を無視した抗体検査の要求
●一定の抗体価を満たさない場合のワクチンの追加接種要求
です。
これは、多くの学校が、2009年に日本環境感染学会が発表した「院内感染対策としてのワクチンガイドライン(第1版)」という古いガイドラインを見直さないまま利用しているためと思われます。
このガイドラインでは、予防対策のフローチャートが「3年以内の抗体検査の有無」から始まってしまっているため、抗体価ありきで、その数値が独り歩きしてしまっていました。
日本環境感染学会もその問題点を認め、2014年に「医療関係者のためのワクチンガイドライン(第2版)」を発表し、フローチャートの始まりを「ワクチン接種歴2回の有無」とし、2回接種済みの場合は特段の処置不要、1回の場合は追加接種1回、未接種もしくは不明の場合のみ抗体価測定(もしくはワクチン2回接種)に改めました。
これに従えば不要な検査やワクチン接種を防ぐことができますから、一日も早く国が主導する形で標準化するようにしてほしいものです。
このガイドラインは、一般の方でもダウンロードすることが可能ですので、ぜひご覧になってみてください。
  >>> ガイドラインはここをクリック