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キリシタン用語(6) 地獄:インヘルノ(イヌヒルナ)

2017-08-24 18:27:16 | キリシタン用語
 死後、天国(ハライソ)に行ける人はいいが、悪人には地獄が待っている。
 「地獄」はキリシタン用語では「インヘルノ、イヌヒルナ」である。ポルトガル語 inferno(インフェルノ)に由来する。
  
 【川上澄生の版画より】
 英語も同形であるが、発音はカタカナ表記では「インファーノウ」となろう。英語の inferno には「地獄」のほかに「大火」という意味もある。
 
 そこで思い出すのが、1974年のアメリカ映画「タワーリング・インフェルノ」である。高層ビル火災を描いたパニック映画で、パニック映画の最高傑作と評されている。燃え上がる高層ビルが火炎地獄にたとえられているわけであろう。
 英語の「地獄」は普通、hell というが、inferno には「大火」の意味があるので、映画のタイトルが「タワーリング・ヘル」ではなく、「タワーリング・インフェルノ」になったのだろう。
 英語の inferno の発音は「インファーノウ」の方が「インフェルノ」より原音に近いが、キリシタン用語の「インヘルノ」に影響されたのか、それとも、単にローマ字風に読んだのかは定かではない(一例として、英語の男子名 Graham が「グレアム」ではなく「グラハム」とよく表記されていることを想起されたい)。
 スペイン語では「地獄」は infierno で、ポルトガル語とは少しだけ違うが、キリシタン用語の知識がなくても、「インヘルノ」が「地獄」を意味するであろうことは容易に想像できる。
 ところで、すでに述べたように、英語の「地獄」は hell というのが普通だが、罵り言葉に“Go to hell”はあっても、“Go to inferno”は聞いたことがない。罵り言葉は簡潔でなければならないと思う。inferno というラテン語由来の言葉は日本語の漢語に相当し、日常語彙ではなく、学術用語のニュアンスがあるのではないか。また、hell の1音節に対し、inferno と3音節になると、間延びして、言われたほうも罵られているような気がしなくなるのではなかろうか。


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