スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

pork は pig の戒名?

2017-08-10 22:02:14 | トリビア
 スペイン語ではブタや牛や羊は生前も、死後、食卓に上ってからも名前は変わらないが、英語ではご存知のように ox や cow は beef になり、pig (かつては swine とも呼ばれていた)は pork になる。日本の外国語教育というと、まず英語なので、他の言語を知らないと、どうしても英語が標準的なものと思ってしまうのだろう。スペイン語では beef や pork に当たる語はないかと聞かれたことがある。
 しかし、生前と死後で名前が変わる英語のほうが例外的なのである。
 「牛」を例に取ると、ox や cow はゲルマン系の語である。beef はラテン語bōs(牛)に由来する。ラテン語から古フランス語 boef に変化し、それが英語にも取り入れられたというわけである。
英語にラテン系の語彙が大量流入したのは「ノルマン・コンクェスト(Norman Conquest)」がきっかけである。支配階層のノルマン人はフランス語系統の言語を話す一方、被征服者のイングランド人は従来のゲルマン系の言語を話していた。
 もともと、ox(cow)も boef (のちに beef と変化)も生前、死後に関わらず「牛」を表していた。
 食糧事情が今ほどよくはなかったと思われる時代なので、牛を飼育する庶民(被征服者)の口に牛肉が入ることはあまりなかったかもしれない。一方、征服者であるノルマン人にとって「ウシ」はもっぱら食卓に上る食肉だったのだろう。そこから家畜である ox (cow) と 食肉の beef の使い分けが生れたらしい。

 ところで、生前と死後の名前の違いというと、戒名を連想するが、本来、戒名(法名ともいう。詳しくはウィキペディア「戒名」を参照)は得度出家者の諱(いみな)で、生前からつけられていた。武田「信玄」や上杉「謙信」も言ってみれば戒名である。
 
 その後、時代が下って、死者に戒名をつける習慣が生れたとのこと。 
 かつて、某大学で留学生と日本人学生の合同クラスで「多文化コミュニケーション」という講義を受け持っていたとき、戒名の話になったことがある。そこで、ox (cow) の戒名が beef で、 pig の戒名が pork で、sheep の戒名が mutton だと思ってほしいと、とんでもない喩えをしたことがある。


ポチッとクリック、お願いします。
↓↓↓

スペイン語 ブログランキングへ

スペイン語とともに考える英語のラテン語彙の世界 (開拓社言語・文化選書)
好評発売中!!こちらは、このブログとは別物です。もちろん、トリビア満載です。


コメント
この記事をはてなブックマークに追加