どんぴ帳

チョモランマな内容

続続・くみたてんちゅ(その1)

2010-08-26 23:38:24 | 組立人
 久しぶりに重量屋(工場の大型加工機械などを移設する仕事)社長の佐野から電話があった。

「キーちゃん、今度の日曜日は暇かい?」
「ええ、あらゆる意味でフリーですよ」
「ふははは、あらゆる意味でね。ちょっと手伝って欲しいんだけどイイ?」
「もちろん!」
 中国であれだけメタメタな仕事をしたにも拘らず、佐野は懲りずに私に仕事を頼んでくれる。
「今度は何の仕事ですか?」
「粉屋さんの工場の屋上に、空調機の室外機を設置するだけ」
「重いんですか?」
「200kgくらいかな」
「それだけ?」
「そう、それだけ。午前中で終わりそうだよ」
「それをやるためにK県からA県まで来るんですか?」
「そうだよ」
「別にA県の重量屋に頼めばイイじゃないですか」
「前はA県の重量屋を使ってたらしいんだけど、仕事が乱暴で困ってたらしいよ。最近は何をやるにもウチに使命が掛かるんだよ」
「なるほど、その気持ちはわかりますけどね」
 私も以前は遠方の運送屋を使っていたので、佐野に仕事を頼む顧客の気持ちは理解できる。
「朝九時に来られる?」
「もちろん!」
 久しぶりに佐野と仕事をすることになった。

 当日、先に現場に着いていた私の前に、佐野の2tユニック(車載クレーンの俗称)車が現れた。
「おはよーっす!」
「おはよう、キーちゃん」
 やや眠そうな顔の佐野が運転席から降りて来る。
「四時に起きて走って来たよ」
「うはは、お疲れ様です。室外機、あそこにありますよ」
 私はパレットに載っているクリーム色の箱型を指差した。
「うん?手前のは架台か?」
 早くも佐野がその存在に気付いた。
「そうみたいですね」
 二人で室外機に歩み寄る。
「おはようございます、これは架台?」
 室外機の前に居た空調機のダクト設置業者に確認をする。
「ええ、こいつに載せるみたいですね」
「そうなんだ、聴いてないけどね」
 早くも予定外だ。
「ハンドリフター(手動の簡易フォークリフト)で運ぼうと思って持って来たけど、これじゃ使えないな」
 佐野はステンレス製の架台を眺める。
「ずいぶん立派なのを造ったねぇ、しかもこのアングル(L型の鋼材)なんか磨き(ピカピカに研磨してある状態)だよ」
「余ってた材料を使ったんですね」
「キーちゃんの大好きなオーバースペックだべ」
 佐野が私を見て笑う。私が過剰な性能の製品を愛していることを知っているからだ。
「その架台に比べて、こっちの室外機本体は吊上用のフラットバーが変形しちゃってるんですけど」
「本体の天板も変形した跡があるな、ここのネジも一度飛んじゃってるみたいだし…」
 三人で室外機本体を見て笑う。
「うーん、明らかに架台の方が立派ですね」
「架台はこんなに立派じゃなくてもいいよなぁ。ま、とりあえずユニックで吊るから、架台を付けちまうべ」
 佐野は2tトラックをそばに乗りつけると、室外機を空中に吊り上げた。
「キーちゃん、架台を入れちゃおう」
 二人で架台を持ち上げると、吊荷を潜って真下に置く。
「わはははは!吊荷の下には入らない!」
 佐野が笑いながら言う。
「入らなきゃ仕事にならないし」
 私も笑いながら答える。
「これでどうするんだ?」
「このアングルで固定して下さい」
 ダクト屋の担当者がステンレスのアングルを指差し、ボルトを差し出す。
「ほいほい」
 室外機を架台に下ろし、アングルで脚を挟み込んで架台に固定し始める。
「あれ?」
「どうした?」
 前方で佐野が返事をする。
「なんか穴位置が…」
「どうせ本体が歪んでるだべ」
「適当に合わせてねじ込みますよ」
「ああ、それでイイよ」
 佐野は工具箱からモンキーレンチとラチェットを取り出し、ボルトを締め始めた。
「佐野さん、屋上の横移動は?」
「なんか15mくらいはあるらしいよ」
「コローラー(重量屋が使うローラーが付いた小型の台車)でやります?」
「それしかないね」
 今度は架台付きの室外機をユニックで吊り上げ、2tトラックの荷台に載せる。
「お、丁度良い所にクレーンも来たねぇ」

 佐野が10時に手配しておいた25tラフター(四輪操舵の自走タイヤ式クレーン)が粉屋の工場に現れた。



 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
9月 (カミヤミ)
2010-09-07 00:29:13
30日に出廷します。
9月 (どんぴ)
2010-09-07 23:35:33
17日は博多にいます。

ちなみに今は東京です(笑)

ババンバ裁判、頑張って下さい!

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