どんぴ帳

チョモランマな内容

疾病王(その7)

2010-06-23 00:31:05 | 長七郎治療日記

 内科の若い医師が私に告げた病名は、『橋本病』だった。

「それで実際にはどんな状態なんですか?」
 私の質問に、医師はパソコンに表示されている血液検査の結果を指差す。
「この項目なんですけど、『フリーT4(遊離サイロキシン)』とありますね、この数値を見て下さい」
「えーとぉ、0.077?」
「そうです、ちなみに正常値は0.9〜1.8ng/dlです」
「正常値の1/10以下じゃないですか…」
「ええ、これは『甲状腺ホルモン』がほとんど出ていないと言うことです。そしてその下の『TSH(甲状腺刺激ホルモン)』の数値ですが、正常値は0.35〜4.0μU/dlです」
「私は132.8μU/dl、ってまた凄い数字ですね」
「これは甲状腺に『ホルモンが足りないからもっと甲状腺ホルモンを作れ!』という指令を出すホルモンの数値だと思って下さい。つまりどんどん甲状腺ホルモンを造る指令は出ているのに、甲状腺の機能が低下していて、ほとんどホルモンが造られていない状態なんです」
「えーとぉ、ホルモンが造られない原因は何ですか?」
 医師は少し難しい顔をして答える。
「自己の免疫機能が甲状腺を誤って攻撃していることが原因です。ただ、なぜそれが起きるのかはまだ明確になっていないんですよ」
「ふーん、なるほど…」
 どうやらちょっと困った病気らしい。
「それで、私の全身に現れている症状なんですけど、これはその甲状腺ホルモンの減少が原因なんですか?」
「ええ、全身の筋肉痛、浮腫み、眠そうな表情、無気力、倦怠感、体重の増加、肝機能の異常、コレステロール値の上昇、ろれつが回らない、声のかすれ、皮膚のかさつきなんかもそうですよ」
「あ…」
 ほぼ全てが当てはまっている。
「それから『うつ病』の原因にもなる場合が多いんですけど、その様な兆候はありませんか?」
 医師はじっと私の顔を見る。
「ええ、特に…」
 私が答える。
「ご自分でそういう症状を感じませんか?」
「そうですね、別段あまり変化はないですね」
「そうですか…」
 医師はまだ私の顔をじっとみている。
「こんな数値で、しかも全身に症状が現れているのに、よく『うつ病』にならないでいられますね…」
 とでも言いたげな表情だ。
 確かにここ最近の症状の酷さはかなりの物で、少し無理のある体勢を取ると身体のあちこちが攣りまくっていた。
 車のシートベルトを引き出そうとして右腕と背中が攣り、床に落ちた物を取ろうとすれば脚と腰が攣り、果ては背伸びをするだけで脇腹が攣ると言う、前代未聞の『筋肉痙攣祭り』状態だったのだ。

「それで、一体どんな治療になるんですか?」
 医師に核心の部分を質問する。実際、ソレが一番の問題だ。
「甲状腺機能低下症の場合はですね、甲状腺ホルモンが足りないのが全身の症状の原因です。従って薬で甲状腺ホルモンを補充することになります」
「薬ですか」
「ええ、甲状腺ホルモンの錠剤を毎朝飲んで頂くことになります」
「他には?」
「それだけです」
「それだけなんですか?」
「ええ、ただ定期的に血液検査を受けて頂いて、ホルモン量をチェックする必要性はありますけどね」
 もっともな話だ。
「あの、この病気は治るんですか?それとも一生その薬を飲み続けなければいけないんですか?」
「うーん、そうですねぇ、一部にはホルモンの分泌が正常値に戻って薬を必要としなくなる方もいらっしゃいますけど、基本的には一生飲み続ける場合が多いですね」
「…なるほど」
 どうやら甲状腺ホルモンの薬とは、生涯のお付き合いになる可能性が高いようだ。
「とりあえず最初の十日間は一日一錠にしましょうか、それから再度血液検査をして、薬の量を決めましょう」
「はい」
「それから、甲状腺の『エコー検査』も受けて頂きたいのですが、この日はいかがですか?」
「ええ、大丈夫です」
 医師はパソコンで検査の予約を入れると、改めて私に向かい合った。
「実は私、『橋本病』の治療は初めてなんです。ですが、私の後ろには『内分泌科』の医師がおりまして、きちんとその医師と相談して治療を進めて行きますので、どうかよろしくお願いします」
 そう言うと若い医師は私に丁寧に頭を下げた。
 例え経験の少ない若い医師であっても、患者ときちんと向き合う覚悟と、そのバックにきちんとした治療経験を持つ先輩医師が居るのであれば、私は信頼しても良いと思っている。むしろ高慢で思い込みの激しいベテラン医師に診てもらうよりは、遥かにマシだとさえ思うのだ。
「こちらこそ、これからお願い致します」
 私も頭を下げる。
「甲状腺ホルモンの薬は副作用が非常に少ない薬ですが、もし何か異常感じたら、すぐに診察を受けに来て下さいね」
 私は医師に頭を下げると診察室を出た。

 ちなみに若い医師が言った、
「もし何か異常感じたら、すぐに診察を受けに来て下さいね」
 という言葉は、あくまでも、
「診察時間内に!」
 という意味です。
 世の中には、ほんの少しの異常(なんとなく甲状腺が腫れている気がする)を感じただけで、
「心配で眠れないので、今から診て貰えませんか!?」
 と深夜二時半に診察を希望する人が居ます。

 一晩くらい寝なくてもイイから、翌朝病院に行きましょうね(笑)…いや、本当に。


ジャンル:
コラム
キーワード
甲状腺ホルモン エコー検査 甲状腺機能低下症 甲状腺刺激ホルモン サイロキシン
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2 コメント

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うそか本当かは知らないが… (カミヤミ)
2010-06-23 00:45:53
うそか本当かは知らないのですが、カミヤミが信じている話を…。中南米の人間は貧しくとも自殺率が低く、陽気なのは、なぜか?結論から言うと『トウモロコシ』を食べているから。恐竜絶滅の原因とも言われる隕石の落下地点に最初に育った食べられる植物が、トウモロコシの祖先に当たる植物だったとか。不毛の大地に逞しく育った植物を主食として食べているから、中南米の人間は、陽気でクヨクヨだとか。マラドーナ?
トウモロダシ (どんぴ)
2010-06-23 01:20:58
 原種らしい↓
http://www.asahi.com/special/dokonjou/TKY200911040499.html

 中南米の人たちって、確かに陽気なイメージがありますよね。
 トウモロコシ食べてお腹をモロダシにして、サルサを踊って酒を呷れば、自殺なんてする気がなくなるかもしれませんね。
 夏場に日本でナチュリバを20曲もやると、精神が壊れるらしいですけど…(笑)

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