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佐藤きむ著「おッ!見えた、目ん玉が!」八十路の入院体験記

2017年06月09日 | 日記
 平成29年6月2日 金曜日  東奥日報 より

 
 病院の風景前向きに描写  吉田 豊

 郷土の一冊  

  読者はこの本のタイトルを見て、これ何、と訝しがる。私も同じだった。しかし、ぱらっと十頁ぐらい読むと、意味がわかる。そして病院の職員なら、先を読みたくなり、一冊買うことになる。
 著者の佐藤きむ氏は文才のマギ(家系・津軽方言)で知られる佐藤マギの代表の一人である。曾祖父の甚内氏、祖父の弥六氏をファミリーの頂点に、洽六(紅緑)、八郎(サトー・ハチロウ)、そして93歳で今日なおかくしゃくとベストセラーを二弾も続けている佐藤愛子、と列ねればこのマギの筆の力の大きさが分かる。
 きむ氏もこれまで「学問のすすめ」の現代語翻訳、自信の教育経験からの著書など、多数の本を著し、佐藤マギの面目躍如たる文櫃活動をしておられる。
 さて、本書は、著者が不覚にも路上で転倒し、大腿骨骨折で、急遽、手術の為入院となったことに端を発している。五十日間の術後リハビリ生活が始まるが、著者はそれを嘆くどころか、これまでと全く異なった環境に目が移り、この病院風景をまとめて一冊の本にしたいと思うようになる。早速メモをとり始め、リハビリの毎日と周りの人々の動きを佐藤マギの一員らしく丹念に書き留め、退院とほぼ同時に整理、出版にこぎ着けた。
 佐藤マギの特徴と言えるかも知れないが、感じた通り、思った通りのものを直截的に解説していることである。だから理解し易く世間にも広く受け入れられる。本書も、ご多分に漏れず、病院の中で交わされている言葉、それが標準語であれ津軽弁であれ、それぞれに品性があることを指摘し、言葉遣いに少しの心くばりがあって周りが明るく、和やかになることをすすめている。医療畑に身を置く私にも助詞の使い方やイントネーションのあり方で少なからず教えられた。著者はやっぱり国語教師であると沁み沁み感じた次第である。
 人はどんな病気であれ、入院となると、不安で眠れなかったり、孤独感に陥ったりするものであるが、この著者にはそれが片鱗さえ見えてこない。年末の入院であったので、病院での初めての大晦日の夜であるが、何年かぶりにイヤホンで紅白歌合戦を楽しみ、ぐっすり眠れたという。八十四歳の超高齢のどこからこの驚くべき平静心とバイタリティーが出てくるのか不思議である。恐らく本人が普段も言っておられる、物事はすべて前向き、ポジティブ思考で、との考えが生活にも人生にも沁みついているのであろう。病院関係者だけでなく、広く一般の人々にも読ませたい。
 最後に亡夫への鎮魂歌を付しているが著者の深い人間愛が伝わってくる。

                        吉田 豊(弘前大学名誉教授)


*佐藤きむ氏は日本エッセイスト・クラブ会員。弘前市在住。

 弘前読書人倶楽部 会員でもある。
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