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19~20世紀前半の西洋美術、日本近代美術などに興味があります。気になったことを調べつつ、メモしています。

美術館・等、鑑賞の記録(2024年版)

2024-03-31 21:10:05 | 展覧会・美術館・博物館
 
  2024年 
 

 
  1月 
 


 ◇ 企画展 ミュシャとパリの画塾@堺市文化館・堺アルフォンスミュシャ館
 ◇ テーマ展示 ミュシャLabo#04「文字」@堺市文化館・堺アルフォンスミュシャ館

 ◇ 決定版! 女性画家たちの大阪(前期)@大阪中之島美術館

 ◇ 企画展 藤田嗣治 心の旅路をたどる―手紙と手しごとを手がかりに@アサヒグループ大山崎山荘美術館

 ◇ 企画展 異界へのまなざし あやかしと魔よけの世界@京都府京都文化博物館
 ◇ 企画展 『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本(前期)@京都府京都文化博物館
 ◇ 総合展示 シュルレアリスムと京都@京都府京都文化博物館

 ◇ 企画展 若き日のロマン、大正時代の印象さん@京都府立堂本印象美術館

 ◇ コレクションルーム [2023年度・冬期] @京都市京セラ美術館
   ・特集:昭和前期の日本画と古典
   ・清らかな筆 梥本一洋の世界 ・茶碗の愉しみ:近代の共作を中心に ・雪月花-風雅な眺め-

 ◇ コレクション展 [2023年度 第4回]@京都国立近代美術館
   ・生誕150年/没後80年 千種掃雲(前期)  ・素材を愉しむ ・生誕130年 川端弥之助

 ◇ サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展(前期)@千葉市美術館
 ◇ 企画展 武士と絵画 ―宮本武蔵から渡辺崋山、浦上玉堂まで―@千葉市美術館
 ◇ コレクション選@千葉市美術館 
    ・特集:小林猶治郎 ・めでたい浮世絵 ・特集:日本版画倶楽部の作家たちⅡ

 ◆ 総合文化展 @東京国立博物館
   ・特集:博物館に初もうで 謹賀辰年―年の初めの龍づくし― [本館特別1室]  
   ・浮世絵と衣装(浮世絵) [本館10室]  ・歴史の記録 [本館15室] ・近代の美術 [本館18室]
 
 ◇ 五百城文哉生誕160年記念 文哉と放菴@小杉放菴記念日光美術館

 ◆ 皇室のみやび-受け継ぐ美- 第2期:近代皇室を彩る技と美 (前期)@皇居三の丸尚蔵館

 ◆ 所蔵作品展:MOMATコレクション [2023年度第3回](前期)@東京国立近代美術館
   ・1室 ハイライト(1室) ・2室「新か?旧か?」(前期)・3室 麗子、生誕110年
   ・4室 近代の役者絵 ・5室 アンティミテ ・6室 1941–1945|戦争/美術
   ・7室 存在と不在―見えるものと見えざるもののはざまに
   ・10室 芹沢銈介と、新しい日々
 ◆ 小企画:新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》@東京国立近代美術館

 ◇ 進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち(前期)@福田美術館

 ◇ 決定版! 女性画家たちの大阪(後期)@大坂中之島美術館

 ◇ コレクション展 日本画ことはじめ@西宮市大谷記念美術館

 ◇ 没後80年・生誕120年 安井仲治 ー僕の大切な写真@兵庫県立美術館
 ◇ 2023年度コレクション展Ⅲ 特集:美術の中の物語@兵庫県立美術館
    ・Ⅰ.私たちの物語 Ⅲ.私とあなたの物語 Ⅳ.関西写檀物語 Ⅴ.近現代の彫刻-彫刻の中の物語

 ◇ 常設展@三千院・円融蔵

 ◇ 特別展 漂泊の画家 不染鉄@奈良県立美術館

 ◇ 日本近代美術への誘い 日文研所蔵展覧会絵葉書の世界@京都駅ビル2Fインフォメーションスペース

 ◇ 藤島武二没後80年 鹿子木孟郎生誕150年 洋画の青春―明治期・三重の若き画家たち@三重県立美術館
 ◇ 特集展示:矢守一声展@三重県立美術館
 ◇ 美術館のコレクション [2023年度常設展示第4期]@三重県立美術館

 ◇ 企画展 奥田竹石と三重の近代絵画@石水博物館
 ◇ 館蔵品展 川喜田半泥子の作品と季節の館蔵品@石水博物館

 ◇ 企画展  明治・大正時代の超越した陶磁の美 ―瀬戸・美濃・萬古・常滑―@横山美術館
 ◇ 常設展@横山美術館

 ◇ ときめき 美人―培広庵コレクション名品展@佐野美術館
 ◇ 吉田博木版画の100年@MOA美術館

 ◆ 小さな版画のやりとり-斎藤昌三コレクションの蔵書票と榛の会の年賀状@茅ヶ崎市美術館

 
  2月 
 


 ◆ 邨田丹陵 ― 時代を描いたやまと絵師(前期)@たましん美術館

 ◆ HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美(後期)@三鷹市美術ギャラリー

 ◆ 冬期企画展 収蔵品展 はじめての日本美術@狭山市立博物館
 
 ◆ 企画展 画工 水島南平 花を描く@練馬区立牧野記念庭園記念館

 ◆ 生誕120年 古賀忠雄展 塑造(像)の楽しみ@練馬区立美術館

 ◆ 皇室のみやび-受け継ぐ美- 第2期:近代皇室を彩る技と美(後期)@皇居三の丸尚蔵館

 ◆ MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020@東京都現代美術館

 ◇ アートリンクとちぎ2023 石川寒巌 栃木生まれの近代南画家(前期)@佐野市立吉澤記念美術館

 ◇ 冬の展示 板極道@棟方志功記念館

 ◇ そのとき、岩手では ー展覧会でたどる、いわて美術の歴史ー@岩手県立美術館
 ◇ コレクション展 第4期 特集:空想の世界を描く(前期)@岩手県立美術館
 ◇ 常設展:萬鐵五郎展示室 / 松本竣介・舟越保武展示室@岩手県立美術館

 ◆ 総合文化展 @東京国立博物館
   ・浮世絵と衣装(浮世絵) [本館10室]  ・歴史の記録 [本館15室] ・近代の美術 [本館18室]

 ◆ 小企画展示 「出張!江戸東京博物館」@東京都美術館
 ◆ 印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵@東京都美術館

 ◇ アーツ・アンド・クラフツとデザイン ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで@千葉県立美術館
 ◇ 小企画展示 「千葉とアーツ・アンド・クラフツ -千葉県立美術館コレクションより-」@千葉県立美術館

 ◇ サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展(後期)@千葉市美術館
 ◇ [再] 企画展 武士と絵画 ―宮本武蔵から渡辺崋山、浦上玉堂まで―@千葉市美術館
 ◇ コレクション選 @千葉市美術館
     生誕140年 石井林響とその周辺/鳥文斎栄之とその時代/特集 日本創作版画協会の作家たちⅠ

 
  3月 
 


 ◇ 上田クロニクル(年代記) ー上田・小県洋画史100年の系譜ー@東御市梅野記念絵画館
 ◇ 常設展:梅野コレクション精選@東御市梅野記念絵画館

 ◇ 石井鶴三美術資料室@小県教育会館

 ◇ 上田クロニクル(年代記) ー上田・小県洋画史100年の系譜ー@上田市立美術館(サントミューゼ)
 ◇ コレクション展Ⅳ 山本鼎の手紙-@上田市立美術館(サントミューゼ)
 ◇ 常設展示 山本鼎コレクション@上田市立美術館(サントミューゼ)

 ◇ 生誕140年 知られざる光瑤の横顔@南砺市立福光美術館
 ◇ 冬の展示 棟方志功 / 石崎光瑤@南砺市立福光美術館

 ◇ 常設展示@竹内源造記念館

 ◇ 人物を描く@富山市佐藤記念美術館

 ◇ 常設展:バルビゾン派と写実主義@HOKUGIN GALERIE MILLET(ギャルリー・ミレー)

 ◆ 特別展 開館40周年記念 源氏物語 THE TALE OF GENJI 
    「源氏文化」の拡がり 絵画、工芸から現代アートまで(後期)@東京富士美術館
 ◆ 東京富士美術館所蔵 西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで@東京富士美術館

 ◆ 邨田丹陵 ― 時代を描いたやまと絵師(後期)@たましん美術館

 ◆ ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?
    ——国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ@国立西洋美術館
 ◆ 常設展 @国立西洋美術館
 ◆ 小企画展 真理はよみがえるだろうか:ゴヤ〈戦争の惨禍〉全場面@国立西洋美術館

 ◆ 版画の青春 小野忠重と版画運動展@町田市立国際版画美術館
 
 ◆ 生誕150年池上秀畝 高精細画人(前期)@練馬区立美術館

 ◇ 須田国太郎の芸術 ー三つのまなざしー生誕130年没後60年を越えて@西宮市大谷記念美術館

 ◇ 春季名宝展 四季折々の四天王寺 ~絵画に見る近現代の彩り~@四天王寺宝物館

 ◇ 企画展 「人間 栖鳳」 生誕160年 知られざる竹内栖鳳(第1期)@高島屋史料館

 ◇ 没後50年 福田平八郎展(前期)@大阪中之島美術館
 ◇ モネ 連作の情景@大阪中之島美術館

 ◇ 進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち(後期)@福田美術館
 
 ◇ 特別公開 南禅寺法堂天井 蟠龍図下絵@櫻谷文庫

 ◇ 春の特別公開@北野天満宮・宝物殿

 ◇ コレクション展 [2024年度 第1回]@京都国立近代美術館
    明治時代の京都・大阪の日本画 / 書を持って街へ出よう——引用・参照の美術
    / 明治の工芸―継承と変化 / 河井寬次郎作品選 / 鉄斎を慕う洋画家たち
    /自転車にのって ―乗り物の動力―

 ◇ 近代洋画の重鎮―日本独自の洋画発展に捧げた人生 黒田重太郎遺作展(前期)@星野画廊

 ◇ 総合展示:紫式部と『源氏物語』@京都文化博物館

 ◇ コレクションでつづる 印象派展@山王美術館
 ◇ 常設展:『印象派展』によせて 日本画コレクション / 日本洋画コレクション@山王美術館

 ◇ 嗣治と蓬春 二人の見た風景(後期)@山口蓬春記念館
 ◇ 大佛次郎没後50年記念事業 「大佛次郎と藤田嗣治」@山口蓬春記念館

 ◇ 芥川龍之介と美の世界二人の先達—夏目漱石、菅 虎雄(2期)@神奈川県立近代美術館・葉山
 ◇ コレクション展:木茂(もくも)先生と負翼童子 / 木村荘八と『大同石佛寺』@神奈川県立近代美術館・葉山

 

美術等鑑賞活動の記録(2022年)

2022-12-29 19:06:49 | 展覧会・美術館・博物館
 
  2022年 
 

 
  1月 
 

 ◆ アール・ヌーヴォーの華 アルフォンス・ミュシャ展~ミュシャとアール・ヌーヴォーの巨匠たち~@新宿・小田急百貨店

 ◆ ジャポニスム―世界を魅了した浮世絵(前期)@千葉市美術館
 ◆ 千葉市美術館コレクション選 布施コレクション〜版画の楽しみ/新春の寿ぎ 虎・とら・トラ@千葉市美術館

 ◆ 第4期コレクション展 「名品4 -ルノワールと女性をめぐるイメージ-」@千葉県立美術館

 ◆ 総合文化展 近代の美術 [本館18室]
         特集:博物館に初もうで 今年はトーハク150周年!めでタイガー!!
         [本館特別1室・2室] @東京国立博物館

 ◆ 常設展:美術展示 「近世絵画の世界」 (第1期)@埼玉県立歴史と民俗の博物館
 
  2月 
 


 ◆ 藤牧義夫生誕110周年特別展 藤牧義夫と館林@館林市第一資料館

 ◆ アートリンクとちぎ2021 小杉放菴生誕140年 放菴と寛方@佐野市立吉澤記念美術館

 ◆ 藤牧義夫生誕110周年特別展 藤牧義夫と館林(展示替)@館林市第一資料館

 ◆ 開館40周年記念展 扉は開いているかー美術館とコレクション 1982-2022(前期)@埼玉県立近代美術館
 ◆ MOMASコレクション 2021-22 第4期 たなごころの絵画 / 特集:末松正樹@埼玉県立近代美術館
 
  3月 
 

 ◆ 企画展「創作人形作家の雛とおもちゃ絵~人形の近代をめぐる~」@さいたま市岩槻人形博物館

 ◆ コレクション展:モネ-光のなかに 会場構成:中山英之 / ラファエル・コランと黒田清輝―120年目の邂逅 / 水の風景@ポーラ美術館

 ◆ 上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー(前期)@三菱一号館美術館

 ◆ 没後50年 鏑木清方展@東京国立近代美術館
 ◆ 所蔵作品展:MOMATコレクション [2021年度第3回] 美術館の春まつり@東京国立近代美術館
 ◆ コレクションによる小企画 ピエール・ボナールと日本近現代美術@東京国立近代美術館
 
  4月 
 

 
 ◆ 常設展示 「あの人どんな顔? 「肖像」の魅力に迫る」@旧多摩聖蹟記念館

 ◆ シダネルとマルタン展 ─最後の印象派、二大巨匠─@SOMPO美術館

 ◆ 時を旅する百段階段:春の見学会@ホテル雅叙園東京

 ◆ リニューアルオープン記念展Ⅰ 日本画トライアングル(前期)@泉屋博古館東京

 ◆ 常設展:新収蔵版画コレクション展@国立西洋美術館

 ◆ 総合文化展:[特集] 東京国立博物館の近世仏画―伝統と変奏ー(前期) / 浮世絵と衣装 / 歴史の記録 / 近代の美術
        / 創立150年記念特集 未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―、等@東京国立博物館

 ◆ 黒田記念室@黒田記念館

 ◆ 藝大コレクション展 2022:春の名品探訪 天平の誘惑@東京藝術大学大学美術館

 ◆ 没後50年 鏑木清方(展示替・後)@東京国立近代美術館

 ◆ リニューアルオープン記念展Ⅰ 日本画トライアングル(後期)@泉屋博古館東京

 ◆ 開館22周年 芸術家たちの住むところ(前期)@うらわ美術館
 
  5月 
 


 ◆ 華麗なるベル・エポック フランス・モダン・ポスター展 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館コレクション@横須賀美術館
 ◆ 所蔵品展 〔令和4年度第1期〕新収蔵記念:生誕150年 矢崎千代二展@横須賀美術館

 ◆ スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち@東京都美術館

 ◆ 総合文化展:[特集] 東京国立博物館の近世仏画―伝統と変奏ー(後期) / 浮世絵と衣装 / 歴史の記録 / 近代の美術
    / 創立150年記念特集 未来の国宝―東京国立博物館 書画の逸品―、等 @東京国立博物館
 
 ◆ メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 @国立新美術館

 ◆ 大英博物館 北斎 ―国内の肉筆画の名品とともに― (前期)@サントリー美術館

 ◆ TOPコレクション 光のメディア@東京都写真美術館
 ◆ アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真(前期)@東京都写真美術館

 ◆ 東京・区立美術館ネットワーク連携事業 東京の猫たち@目黒区美術館

 ◆ ただいま やさしき明治 発見された日本の風景 (前期)@府中市美術館
 ◆ 常設展: 牛島憲之の「かたち」、 府中・多摩を描く/府中・多摩で描く@府中市美術館

 ◆ 野田九浦 ー〈自然〉なることー@武蔵野市立吉祥寺美術館

 ◆ 出版120周年 ピーターラビット™展@世田谷美術館
 ◆ ミュージアム コレクションⅠ美術家たちの沿線物語 大井町線・目黒線・東横線篇@世田谷美術館
 ◆ コーナー展示 「黒船館をめぐって―吉田正太郎と小川千甕」@世田谷美術館

 ◆ 館蔵 近代の日本画展@五島美術館

 ◇ 生誕150年 山元春挙 (後期)@滋賀県立美術館
 ◇ 常設展: 名品選Ⅲ / 小倉遊亀コーナー 「達者と無垢なもの」@滋賀県立美術館

 ◇ 粋人画家 山元春挙 重要文化財 蘆花浅水荘 築101年記念特別拝観@蘆花浅水荘

 ◇ れきはく蔵出し展2022 (第172回ミニ企画展) 柴田晩葉と近代日本画家の大津絵@大津市歴史博物館

 ◇ やっぱり、京都が好き 〜栖鳳、松園ら京を愛した画家たち(前期)@福田美術館

 ◇ 花ごよみ ー横山大観・菱田春草らが咲きほこるー (前期)@嵯峨嵐山文華館

 ◇ コレクションルーム [春期] @京都市京セラ美術館

 ◇ 没後50年 鏑木清方@京都国立近代美術館
 ◇ コレクション展 [2022年度 第2回] 
  「没後50年 鏑木清方展」によせて / 坂本繁二郎と青木繁@京都国立近代美術館

 ◇ 特別展「華風到来 チャイニーズアートセレクション」@大阪市立美術館
 ◇ 併設展示「大阪市立美術館の歩みとコレクション」@大阪市立美術館

 ◇ 特別展「モディリアーニ ─愛と創作に捧げた35年─」@大阪中之島美術館
 ◇ 開館記念展 みんなのまち ⼤阪の肖像 [第1期]「都市」への道標。明治・大正・昭和戦前 <後期>@大阪中之島美術館
 
 
  6月 
 


 ◆ コレクション展 [第2期] :名品2 −浅井忠と工芸−/ 澤部清五郎とその周辺 / 春過ぎて夏来たるらし -夏の風物詩-
   @千葉県立美術館
 
 ◆ コレクション選:特集:椿貞雄 / 近代京都画壇の俊英たち / 京阪ゆかりの浮世絵 / 京都を描いた近代版画@千葉市美術館

 ◆ 松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.1「故きを温ねて」(前期)@松岡美術館

 ◆ リニューアルオープン記念展Ⅱ 光陰礼讃 ―モネからはじまる住友洋画コレクション@泉屋博古館東京

 ◆ 所蔵作品展:MOMATコレクション [2022年度第1回] @東京国立近代美術館

 ◆ Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展:藤井光、山城知佳子 / 藤井光 「日本の戦争画」
   @東京都現代美術館

 ◆ リニューアルオープン記念 自然と人のダイアローグ フリードリヒ、モネ、ゴッホからリヒターまで@国立西洋美術館
 ◆ 常設展:西洋版画を視る―エッチング:線を極める、線を超える@国立西洋美術館

 ◆ 模写の近代 模写の現代 公益財団法人芳泉文化財団10周年記念特別展@東京藝術大学大学美術館

 ◆ 黒田記念室@黒田記念館

 ◆ 総合文化展 特集:時代を語る洋画 ―東京国立博物館の隠れた洋画コレクション― / 浮世絵と衣装 / 歴史の記録
   / 近代の美術 / 創立150年記念特集 収蔵品でたどる日本仏像史、等 @東京国立博物館

 ◆ ただいま やさしき明治 発見された日本の風景(後期)@府中市美術館

 ◆ 企画展 「画家・河野通勢の表現」@調布市武者小路実篤記念館

 ◆ 津田青楓 図案と、時代と、(前期)@渋谷区立松濤美術館

 ◆ 企画展 「こ・と・わ・ざ — 風刺とユーモア」@明治大学博物館

 ◆ ジャム・セッション 石橋財団コレクション×柴田敏雄×鈴木理策 写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策
   @石橋財団アーティゾン美術館
 ◆ Transformation 越境から生まれるアート@石橋財団アーティゾン美術館
 ◆ 石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 ピカソとミロの版画 —教育普及企画—

 
  7月 
 


 ◆ 総合文化展 特集:時代を語る洋画 ―東京国立博物館の隠れた洋画コレクション― / 浮世絵と衣装 / 歴史の記録 /
   近代の美術 / 創立150年記念特集 収蔵品でたどる日本仏像史、等 @東京国立博物館

 ◆ 松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.1「故きを温ねて」(後期)@松岡美術館

 ◆ アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真(後期)@東京都写真美術館

 ◆ 津田青楓 図案と、時代と、(後期)@渋谷区立松濤美術館

 ◇ コレクション展 [2022年度第2期] :<前期> Collection Ⅱ 特集:小堀鞆音@栃木県立美術館
 
 ◇ 開館25周年記念 大観とその時代 光ミュージアム名品展@小杉放菴記念日光美術館

 
  8月 
 


 ◆ シアトル→パリ 田中保とその時代(前期)@埼玉県立近代美術館

 ◆ 常設展:美術展示「伊東深水と近代版画」@埼玉県立歴史と民俗の博物館

 ◆ 幽霊画展@全生庵

 ◆ 総合文化展 東博のガラスコレクションー明治期ガラス工芸の諸相 / 令和3年度新収品
         / 近代の美術 / 浮世絵と衣装 / 歴史の記録@東京国立博物館

 ◆ 東北へのまなざし1930-1945 (前期)@東京ステーションギャラリー

 ◆ 生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎(前期)@アーティゾン美術館
 ◆ 石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 田園、家族、都市@アーティゾン美術館

 
  9月 
 


 ◆ 日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱(後期)@東京藝術大学大学美術館

 ◆ 刺繍絵画の世界展 明治・大正期の日本の美@日本橋高島屋 S.C.

 ◇ 開館3周年記念 福美の名品展 〜まだまだあります未公開作品 (後期)@福田美術館

 ◇ どうぶつ美術館(後期)@嵯峨嵐山文華館

 ◇ 綺羅(きら)めく京の明治美術 ─ 世界が驚いた帝室技芸員の神業 (後期)@京都市京セラ美術館
 ◇ コレクションルーム (夏期)特集:幻想の系譜-西洋版画コレクションと近代京都の洋画
   @京都市京セラ美術館

 ◇ コレクション展 [2022年度 第3回]「伝統/革新」/ 「靉光と静物画」@京都国立近代美術館

 ◇ 企画展 「画工画 明治の画工、世界に挑む」〔第Ⅰ部〕 高島屋の画室@高島屋史料館

 ◇ 開館記念展 山王美術館 ベストコレクション展@山王美術館

 ◇ シダネルとマルタン展 最後の印象派@美術館「えき」KYOTO

 ◆ 日本の中のマネ―出会い、120年のイメージ―(前期)@練馬区立美術館

 ◆ 企画展 「軍事郵便絵葉書に見る 彩管報国の画家たち」@平和祈念展示資料館

 ◆ スイス プチ・パレ美術館展 -珠玉のフランス近代絵画-@SOMPO美術館

 ◆ 生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎(後期)@アーティゾン美術館

 ◆ 所蔵作品展:MOMATコレクション [2022年度第1回] (後期)@東京国立近代美術館

 ◆ 特別展 生誕150年 平櫛田中展@小平市平櫛田中彫刻美術館

 ◆ 原弘と造型:1920年代の新興美術運動から@武蔵野美術大学美術館・図書館

 ◇ コレクション展 [2022年度第2期] (後期) Collection 2 特集:小堀鞆音
   @栃木県立美術館

 ◇ 開館30周年・開館30周年・川上澄生没後50年 特別企画展 川上澄生の全貌(前期)
   @鹿沼市立川上澄生美術館

 ◇ 開館25周年記念 華厳社 ―下野の画人たち@小杉放菴記念日光美術館

 ◆ MOMASコレクション [2022年度第2期] (前期)
   :セレクション、さいきんのたまもの / 月を待つ─日本画の夜景@埼玉県立近代美術館
 ◆ シアトル→パリ 田中保とその時代(後期)@埼玉県立近代美術館

 ◆ 超絶技巧 明治期の工芸展@日本橋三越本店

 
  10月 
 


 ◇ 近代日本画コレクション 茂原の素封家と画家との交流@城西国際大学水田美術館

 ◇ 施行70周年記念事業 美術収蔵品展 速水御舟 ~初期作品と素描~@茂原市立美術館・郷土資料館

 ◇ 新版画 進化系UKIYO-Eの美 @千葉市美術館
 ◇ コレクション選:受贈記念 特集:板倉鼎 / 肉筆浮世絵の美人 / 美人画 / 特集:山本昇雲@千葉市美術館

 ◇ 松戸のたからもの 松戸市の美術コレクション@松戸市立博物館

 ◆ 松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.2 西洋絵画展-東洋のかおり@松岡美術館

 ◆ 明治の洋画家が愛した日本美術 久米桂一郎 日本絵画コレクション展(第1期)@久米美術館

 ◆ コレクション解体新書1  フジタが目黒にやって来た  ―作品収集のあゆみ―@目黒区美術館

 ◆ 没後80年記念 竹内栖鳳(前期)@山種美術館

 ◆ 國學院大學創立140周年記念展 「近代工芸の精華―有栖川宮家・高松宮家の名品と金子皓彦 寄木細工コレクション―」@國學院大學博物館

 ◆ 暮らしを彩るアートとの出逢い 東武秋の絵画市2022@池袋東武百貨店
     á Paris 白と線のエレガンス 藤田嗣治展 / 生誕140年―幽玄の画家 坂本繁二郎絵画展
      / 日本の原風景―生誕150年― 川合玉堂日本画展 / 自然賛歌近代絵画の先駆け バルビゾン派特集

 ◆ 2022 秋の教育資料展示 ― 平櫛田中コレクションを中心に@東京藝術大学大学美術館

 ◆  総合文化展@東京国立博物館
      歴史の記録 / 近代の美術 / 特集:東京国立博物館の模写・模造―草創期の展示と研究―(後期)
      / 浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)

 ◆ 常設展 / 小企画:版画で「観る」演劇 フランス・ロマン主義が描いたシェイクスピアとゲーテ@国立西洋美術館
 
 ◆ 鉄道開業150周年記念展 鉄道と美術の150年(前期)@東京ステーションギャラリー

 ◆ 日本の中のマネ―出会い、120年のイメージ―(後期)@練馬区立美術館

 ◆ 河鍋暁斎と陶俑@東京黎明アートルーム

 ◆ 装いの力―異性装の日本史(後期)@渋谷区立松濤美術館

 ◆ 所蔵作品展:MOMATコレクション [2022年度第2回](前期)@東京国立近代美術館

 ◇ 開館25周年記念展 Ⅲ 再興院展の立役者 齋藤隆三@茨城県天心記念五浦美術館

 ◇ 辻永 ふたつの顔を持つ画家 油彩と植物画@茨城県近代美術館
 ◇ 所蔵作品展:日本の近代美術と茨日本の近代美術と茨城の作家たち 秋から冬へ@茨城県近代美術館

 ◇ 常陽藝文センター開館40周年記念 小杉放菴と茨城の作家たち展(前期)@常陽藝文センター・藝文ギャラリー

 ◆ 市制施行100周年・開館20周年記念特別展 〈小江戸文化シリーズ〉5 小茂田青樹展 (前期)@川越市立美術館
 ◆ 常設展 [2022年度第3期] まるごと小茂田青樹 (前期)@川越市立美術館

 ◆ 特別展 江森天寿と石川梅子 夭折の画家と県内初の女流画家@遠山記念館

 
  11月 
 

 
 ◇ 生神女福音大聖堂 特別公開:イリナ山下りん小イコン展
   〔令和4年度 第58回 京都非公開文化財特別公開〕@京都ハリストス正教会

 ◇ 南陽院本堂 《 木島櫻谷 山水障壁画 》 特別公開@南陽院

 ◇ 南禅寺法堂・天井画 《 今尾景年 雲龍図 》@南禅寺

 ◇ 木島櫻谷 ― 山水夢中 〔Ⅰ期〕@泉屋博古館

 ◇ 秋季展2022 木蘭と琵琶行 ~関雪美人画礼讃@白沙村荘 橋本関雪記念館

 ◇ コレクションルーム 〔秋期〕 特集:身体、装飾、ユーモラス@京都市京セラ美術館

 ◇ コレクション展 〔2022年度 第4回〕(前期) 
   珠玉の日本画 / コレクターの眼 芝川照吉と川勝堅一 / 小出楢重と裸婦@京都国立近代美術館

 ◇ 総合展示:総合展示:ある画家による京都 西川純の素描@京都府京都文化博物館

 ◇ 蓮成院 特別公開 〔令和4年度 第58回 京都非公開文化財特別公開〕@蓮成院

 ◇ 円融蔵宝物館(三千院)

 ◇ 京都高等工芸学校 開校120周年記念特別展
    デザインの夜明け-京都高等工芸学校初期10年-(後期)@京都工芸繊維大学芸術工芸資料館

 ◆ 小茂田青樹写生画・山路真護油彩画展@所沢市生涯学習推進センター 3階 企画展示室

 ◆ 市制施行100周年・開館20周年記念特別展 〈小江戸文化シリーズ〉5 小茂田青樹展 (後期)@川越市立美術館
 ◆ 常設展 [2022年度第3期] まるごと小茂田青樹 (後期)@川越市立美術館

 ◆ 雰囲気のかたち(前期)@うらわ美術館

 ◆ 丸山晩霞 日本と水彩画 丸山晩霞記念館所蔵作品を中心に@中村研一記念小金井市立はけの森美術館
 
 ◆ 闇と光 ―清親・安治・柳村(前期)@太田記念美術館

 ◆ まなび、伝えた女性画家たち(前期)@実践女子大学香雪記念資料館

 ◆ つながる琳派スピリット 神坂雪佳(前期)@パナソニック汐留美術館

 ◆ パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂@アーティゾン美術館

 ◆ ヴァロットン―黒と白@三菱一号館美術館

 ◆ 柴田是真と能楽 江戸庶民の視座(2期)@国宝能楽堂資料展示室

 ◆ 川島理一郎 自然から得た生命の律動 @足利市立美術館

 
  12月 
 


 ◆  総合文化展@東京国立博物館
    歴史の記録 / 近代の美術 / 浮世絵と衣装―江戸(浮世絵)
 
 ◆ 足立区制90周年記念特別展「琳派の花園 あだち」(後期)@足立区立郷土博物館

 ◆ 楊洲周延(前期)@川崎浮世絵ギャラリー

 ◆ つながる琳派スピリット 神坂雪佳(後期)@パナソニック汐留美術館

 ◆ 柴田是真と能楽 江戸庶民の視座(3期)@国宝能楽堂資料展示室

 ◆ 闇と光 ―清親・安治・柳村(後期)@太田記念美術館

 ◇ ノスタルジックジャーニー 記録する眼 豊穣の時代 明治の画家 亀井至一、竹二郎兄弟をめぐる人々@郡山市立美術館
 ◇ 常設展:開館30周年名品選「旅をめぐるコレクション Collection×旅」@郡山市立美術館

【展覧会】 シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界 @Bunkamura

2014-02-15 20:08:52 | 展覧会・美術館・博物館
渋谷。Bunkamura。首都圏を覆った大雪が収束して間もなく。シャヴァンヌ展を見に。ピュヴィ・ド・シャヴァンヌという画家に関して、印象派画家たちのかかわりの中で、わずかに名前が出てくる程度で、8月にポーラ美術館の展覧会「モネ、風景を見る眼」で≪貧しき漁夫≫で実物を見るまで、ほとんど知らなかった。

 10月、「ぶらぶら美術館・博物館」(BS日テレ)で大原美術館の特集をしていて、シャヴァンヌと≪幻想≫という作品と画家について少し解説があって、フランスではとても有名な国民的画家だと知る。

 印象派と同時代の画家だけに、少し気になり始めたが・・・。美術全般に疎いので、正直、神話画は読み取りが苦手で、とっつきづらい印象がどうしてもある。この展覧会に行くかは、12月あたりから迷っていた。2014年、今年に入って、「美の巨人たち」(TV TOKYO)、「日曜美術館」(NHK)などで、暇を見つけて、予習。

 「美の巨人たち」、「日曜美術館」など”予習”でわかってきたのは、どうも従来の神話画ではなく「誰が見てもわかるように」という観点で描かれているという部分。少し興味をもった。

 そして、半分途中で読みかけになっている本『黒衣の女 ベルト・モリゾ』にも、シャヴァンヌはマネやモリゾの友達として登場する。そういった印象派と同時代の画家だったり、フランスでは有名な画家でもある、というちょっとミーハー的な部分が・・・。今は理解できないことが多くても、後々の記憶の財産になるかもしれないと、期待して。

 
 Bunkamura ザ・ミュージアムは初めてで、地下にあった。途中、中庭のようなカフェテラスがあって、上から日差しが入ってくるので地下にいることを感じさせない。

 
  第1章 最初の壁画装飾と初期作品 1850年代 
 


8.『自画像』 1857年 プティ・パレ美術館、パリ、フランス

 会場に入るとすぐ見えてくる、やや斜めを向いている自画像。黒ベースでところどころ茶色ががった、「闇」にちかい暗い背景。左半分がその「闇」に隠れているが、かすかに輪郭がわかるほど絶妙に描かれていた。専門家ではないので詳しくはわからないが、かなり技術レベルが高いのではないかと思わせる1枚。名刺代わりといったところだろうか。


 
  第2章 公共建築の壁画装飾へ アミアン・ピカルディ美術館 1860年代 
 



18.『瞑想』 1867年 個人蔵

 雰囲気としては「めまい」という印象で、ちょっと疲れているのかなぁと感じてしまう。そういった弱さ、はかなさのようなものを感じる。加えて、暗めの背景と対照的に、女神の白い衣服が神秘性を帯びて見える。

 女性彫刻家のマリー=ノエミ・カディオ[クロード・ヴィニョン夫人, 1832-1888]邸のために描かれた壁面装飾4点のうちの1つ≪瞑想≫の別バージョン。


19.『幻想』 1886-87 個人蔵

 大原美術館の≪幻想≫と同じ構図で、かなり小さいバージョン。描き方はちょっと違て、「塗ってます」というのがわかる感じ。


16.『幻想』 1866年 大原美術館

 とても大きく立派な作品で、劇的な構図。当初、ブルーがとても鮮やかな印象を持っていたが、実際に見てみると、色彩のトーンをかなり抑えめに描かれて、図版で見るよりも暗めの印象。

 クロード・ヴィニョン邸のために描かれた壁面装飾4点のうちの1つだという。残り3点の≪警戒≫、≪瞑想≫、≪歴史≫はともにオルセー美術館が所蔵しているというのが何ともすごい・・・。


 
  第3章 アルカディアの創造 リヨン美術館の壁画装飾へ 1870-80年代 
 


35.『諸芸術とミューズたちの集う聖なる森』1884-89年頃 シカゴ美術館

 リヨン美術館の壁画装飾の縮小版。穏やかで優しさを感じる光景。広々とした舞台に余裕をもって人物が配置されているので、どこか落ち着いて、ほんわかする。当時のパリって、現代の東京もだけど、近代都市化でこんな余裕を持ったスペースはなかったことを考えると、なおさらそう感じる。

 
28.『聖ジュヌヴィエーヴの幼少期』 1875年頃 島根県立美術館

 パンテオン(パリ)の壁画装飾として描かれている同作品の準備のための下絵。はっきりと表情が描かれているわけではないが、安らぎに満ちた佇まいの聖ジュヌヴィエーヴ。彼女を中心に、周囲の人物たちによるX字のような構図。これって、十字架のようにも見えてくる。

 
  第4章 アルカディアの広がり パリ市庁舎の装飾と日本への影響 
 


47.『メロンや桃などの果物と白い皿のある生物』 個人蔵

 パステル画。背景が暗く、全体的に明るさを抑えた色彩。果物の曲線が美しい。シャヴァンヌは立体を強調しない表現で描かれた作品が多いが、≪自画像≫と同じように、シンプルな静物画を見ても、確かな技術を持っていることがわかる。


 
  展覧会の感想 
 


 シャヴァンヌ展のキーワードに「アルカディア」という言葉が出てくる。ギリシャの地名であり、ここでは、「理想郷」を示す言葉だという。同時期の印象派画家、カミーユ・ピサロはこの「アルカディア」を農村の生活に見ていたことを思い出した。画家たちは、なぜ「アルカディア」を描いたのだろうと。


 19世紀後半のパリは、普仏戦争、パリ・コミューンといった戦争による荒廃、オスマンの都市改造や近代化の波で、生活環境が目まぐるしく変化する。そのなかで忘れ去られてしまったもの。ピサロとは違った形で、シャヴァンヌもまた、絵画表現を通じて、心の拠り所を探していたのかもしれない。

 ≪諸芸術とミューズたちの集う聖なる森≫に代表されるいくつかの作品では、「もや」がかかっていて柔らかく、写実的ではない表現がある。あえて写実的に描かないことで、誰もがその世界に入っていきやすくなるというか、そこに自分を重ねられるという効果もあるのかもしれない。そして、「もや」のような柔らかく抑えられた”甘さ控えめ”の色彩表現が、「現実」と「理想郷」とのフィルターの役割を果たしているようにも見えた。


 シャヴァンヌはどの派にも属さないといわれているが、象徴主義に近いという気もする。アルフォンス・ミュシャも晩年は、祖国愛や平和を願うメッセージのある作品を描いていたことを思い出した。画風は異なるが、雰囲気は似ているかもしれない。


 
 シャヴァンヌの代表的な作品は、リヨン美術館、パリ市庁舎、パンテオン(パリ)などに描かれた壁画装飾といわれている。「シャヴァンヌ展」では、画家自身が、それらを展示するための「絵画として再構成(縮小)したもの」、「準備段階の習作」、などが今回の展覧会に多く出品されている。

 
 オリジナルを目にしているフランスの美術好きの人にとっては、より興味深い展示ではないかと思う。その意味では、印象派やフランスの近代美術を知っていく中で、後々、貴重なものを見たのではないかと思えるような気もしている。「シャヴァンヌ展」のおかげで、今後どこかでシャヴァンヌの絵を見たら、以前よりも身近に感じることができそうだ。


 あとは、印象派や同時代の画家たちとの関連性がわかるとより魅力的だったかもしれない。印象派の流れでシャヴァンヌが登場するのは、エドゥアール・マネの友人として。そして、マネを通じて、知り合ったベルト・モリゾとも友人でもあった。また、マネの≪オランピア≫国家寄贈運動で、印象派の画家たちとともにシャヴァンヌもその名を連ねている。もうひとつは、ルノワールのモデル(恋人?)だったシュザンヌ・ヴァラドンがシャヴァンヌの絵画のモデル(恋人?)だった時期があるということ。


 また、今後、中心に見ている印象派の作品と比較してみたり、同時代の文献の中に出てくるシャヴァンヌの記述に関して、「こんな感じの作品だった」という、より具体的にイメージを持てるはず。その意味で、今回のシャヴァンヌ展が、これからの財産になってくれるとおもう。

 
 [展覧会] シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界
 [場所]  Bunkamura ザ・ミュージアム [東京・渋谷]
 [期間]  2014年1月2日(木)~2014年3月9日(日)*会期終了
 [入館料]  1,400円(一般)
 [巡回]  島根県立美術館 2014年3月20日(木)~6月16日(月) 


 「シャヴァンヌ展」は島根県立美術館に巡回。島根展では「モネ、風景を見る眼」で展示されていた≪貧しき漁夫≫(国立西洋美術館)が展示される。しかも、講演が充実してる。閉館時間が日没基準。美しい夕陽を見ることができる美術館らしくて、ステキだ。いつか行けるかな。

 
 -メディア-

◆ 「シャヴァンヌ展 水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」 Bunkamuraザ・ミュージアム

 監修者のエメ・ブラウン・プライス氏がシャヴァンヌを紹介するインタビュー動画があります。

◆ 日曜美術館 「世紀末 祈りの理想郷 ~ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ~」[NHK]

◆ 美の巨人たち 「ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ ≪諸芸術とミューズたちの集う聖なる森≫」 [TV TOKYO] 

【展覧会】[2度目] モネ 風景を見る眼 19世紀フランス風景画の革新 @国立西洋美術館

2014-02-08 02:23:09 | 展覧会・美術館・博物館
 1月。東京国立博物館で「クリーブランド美術館展」を見終わって、上野公園に来ると、どうしても行きたくなる国立西洋美術館。「モネ、風景を見る眼」を見ていこうということで。3回目になる。。しつこいようだけど、ポーラ美術館と国立西洋美術館の2館だけで、ここまで作品が揃うというのも、すごい。

 特に、国立西洋美術館でモネ・コレクションがすべて同時に展示されるということは、今後なかなかなさそうな気がする。そんな「見ておきたい感」がいまだに強く、時間があるときは、図録を眺めたり、テキストを読んだりしていたので、再訪。展覧会の入り口に展示してある≪睡蓮≫のパネルがカッコいい。

 前回、前々回と、帰宅してから、各作品、ひとこと程度、走り書きしたメモをベースに、さらにこの展覧会で新たに感じたことなどを記しておこうと思います。

 
 1. 現代風景のフレーミング



 4.『マルリーの水飼い場』 1873年 アルフレッド・シスレー ポーラ美術館

 これまで見たシスレーの中で、もっともサイズの大きな作品。これだけの大きさのカンヴァスって、結構お金かかるのでは?という気がする。誰かのために描いたのか、展覧会に出品するつもりだったのか。そういうところが気になる。

 「ちょっと雑じゃない?」というくらい、濃いグリーンでササッと描かかれている。筆触分割の傾向はなく、翌年に第一回印象派展が開催されることもあって、伝統的な自然主義の風景画から、「印象主義模索中」のような、過渡期の作品という感じなのだろうか。


11.『ロバンソンの散歩』 1878年頃 アルマン・ギヨマン ポーラ美術館

 国内でなかなか見る機会のない印象派の作家アルマン・ギヨマン。後半の作品は、色彩感が強くフォーヴィズム的な印象があるけど。この頃は、落ち着いた感じ。人や背景描写が印象派らしい。馬や建物の細かな線はしっかり描かれている。


16.『冬景色』 1873年 カミーユ・ピサロ 国立西洋美術館(松方コレクション)

 地面には雪が残り、冬の寒さ、空気感のある鈍色の空。ピサロの描く風景画で魅力のひとつだと思うのは、地形を描く俯瞰の構図。土手のような場所の上には道路か鉄道の線路がありそう。カーブして遠ざかっていく視点。

 過去3回見て、全く気が付かなかったけど、「これ送電線だよね!?」。電気や送電線の歴史ってまったく知識がないのだが、この電気が19世紀フランスの人々の生活にどのように影響していたのだろうと。

 ピサロの1870年代あたりの風景画って、単なる農村の風景画ではなくて、さりげなく「近代」というエッセンスが描かれているところ。何度か見て、「あれ?」って気づくこと。面白い。


 
 2. 光のマティエール




29.『収穫』 1882年 カミーユ・ピサロ 国立西洋美術館 (旧松方コレクション、1882年第七回印象派展出品) 

 ピサロの珍しいテンペラ画。色彩はとても優しい感じのイエロー、グリーン。横に長く、収穫の光景がワイド画面で描かれている。視線が、左手前の人物から右斜め上の積みわらの方向(農作業の光景)へ誘導される。俯瞰的構図で奥行きを感じる風景画。

 ≪エヌリー街道の眺め≫でも見られるように、ピサロもモネのように風景の一部として人物を描くイメージがある。ただ、≪立ち話≫や、(最近クリスティーズで落札された)≪りんご採り≫(1881年の第一バージョン、個人蔵)と同様に、このころは人物を中心に据えたドキュメンタリータッチの構図にこだわりを持っていたようにも感じる。


32.『プロヴァンスの風景』1879-82年 ポール・セザンヌ ポーラ美術館

 日差しを感じる。明るい風景。点・線の筆が同じ方向を向いているせいか、硬質感がある。でも、緑でも色彩が微妙に違っていたり、硬さの中にも、繊細さも感じる。


35.『ばら』 1889年 フィンセント・ファン・ゴッホ 国立西洋美術館(松方コレクション)

 絵の具が残って、立体的に隆起しているように感じるほどの、力強く厚塗り感のある背景。対照的に、小さい花は、野ばらだろうか?白くややピンクがかったところに繊細さ、生命感。



 
 3. 反映と反復 



64・『柳』 1897-98年頃 クロード・モネ 個人蔵(国立西洋美術館へ寄託) 

 常設展の見え方と、明らかに違った印象だった。照明の当たり方で、こんなにも違うのだろうか。若干、赤みがかっていた。そして、柳が風で揺れていて、水面もざわついている空気感が伝わってくる。

65.『セーヌ河の朝』 1898年 クロード・モネ 国立西洋美術館

 「朝もや」の空気が描かれている。風が伝わってくるような。


 
 4. 空間の深みへ 



73.『シャクヤクの花園』1887年 クロード・モネ 国立西洋美術館

 ぱっと明るくなるような鮮やかさ。それでも、眩しすぎず、やさしい色彩の作品。



◆  『日本人の肖像(黒木夫人)』 エドマン=フランソワ・アマン=ジャン 国立西洋美術館

  
 5. 石と水の幻影 




 
 展覧会全体の感想 


 あらためて、国立西洋美術館と民間のポーラ美術館が共同企画するというのはとても画期的だと思った。《舟遊び》と《バラ色のボート》など、展示の仕方も相当こだわりがあったはずで、そういった専門家の方々の活きた声が聴けたら、もっと魅力的だと思う。

 たとえば、企画から展示まで、どのようなやり取りがあったのか。ドキュメンタリーで見てみたいと思うくらい興味がある。あらためて、展覧会図録を見返して、ふと感じたこと。個別の作品に関しては解説がないということだった。

 珍しいことではないが、実は少しだけ、”新しい発見”などを期待していた。しかし、章ごとにあるテキストの中に、個別の作品がリンクするようになっている。広い視点から、「モネの”眼”を感じてください」というメッセージかもしれないとも思ったりもした。


 クロード・モネの作品の何が凄いのか。鑑賞歴が浅いので、うまく言えない。その感覚が伝わる作品を1枚挙げるとすれば≪エトルタの夕焼け≫。ここで表現されている光。モネの絵はある意味、光のリアリズムかもしれない。


 とにかく、これだけのモネや印象派を見ることができる機会は貴重なので、時間を空けて、また足を運んでみようと思う。



 
 [展覧会]   国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ 風景を見る眼 19世紀フランス風景画の革新
 [場所]    国立西洋美術館 [東京・上野]
 [期間]    2013年12月07日~2014年3月9日
 [入館料]   1,400円(一般)

【展覧会】[番外編] クリーブランド美術館展-名画でたどる日本の美@東京国立博物館

2014-02-02 22:10:56 | 展覧会・美術館・博物館
 1月。上野公園。国立西洋美術館では「モネ、風景を見る眼」が開催されているが、周辺でもう1ヶ所「モネ」を見ることができる場所があると知って、とても気になってしまった。東京国立博物館の「クリーブランド美術館展」。日本美術の展覧会だが、クロード・モネとベルト・モリゾの油彩画が1点ずつ来ているという。

 これまで、日本美術に関しては、前提知識にも乏しく、興味をもつことができなかった。この際だから、モネにつられて日本美術を見てみるのもよいきっかけかも。そして、日本画や浮世絵などと比較することで、印象派や近代絵画の新たな一面が見えてくるものがあれば・・・。そんな、ぼんやりとした動機と、期待をもって、クリーブランド美術館展へ。 


 東京国立博物館に入るのも初めてのことで、まず建物の大きさに圧倒される。展示室に入る。紙モノをということで、照明が抑えられている。そのせいか、ミレーやバルビゾン派の自然主義の風景画と比べても、日本画の色彩のトーンが格段に暗く感じる。印象派に目が慣れていくのと同じように、おそらく、日本画に、まだ目が慣れていないので余計にそう感じるのかもしれない。それでも、江戸時代から明治期にかけてはとても鮮やかな色彩になってく過程も見ることができた。

 

 展示を通じて驚いたのは、渡辺崋山の≪大空武左衛門像≫(1827年)。この絵の左横に等身大の肖像のパネルがあり、この絵と同じ大きさだという。力士だというが、本当に大きな人がいたのも驚きだが、またそれを等身大で描ける緻密さというのもすごい。 

 
 展覧会も終盤に差し掛かる頃、お目当ての西洋絵画が見えてきた。 


  
 特別展示 近代西洋の人と自然 



◆  『アンティーブの庭師の家』1888年  クロード・モネ  

 絵の具をやや厚めに、筆を重ねている感じ。地面の草のグリーンと海と空のブルー、屋根の肌色のようなオレンジ。家の壁に映る楽器りとした木の枝の影。地中海沿岸の南フランスらしい、明るい日差しと色彩が印象的。

 ≪アンティーブの庭師の家≫は2006年に森アーツセンターギャラリーで開催された「クリーブランド美術館展-女性美の肖像-」に出品された(らしい)。そして、同様の構図の別作品がもう1枚描かれていることが確認されている。個人蔵となっているその作品は、1973年の「モネ展 印象派100年光と色彩の交響」にNo.50で出品されている。


 それにしても、東京国立博物館にモネが展示されるというのも、とても珍しいのではないかと思う。


◆  『読書』 1873年 ベルト・モリゾ(1874年 第一回印象派展) 

 
 展覧会の解説によると、モデルは姉のエドマ・モリゾ。なんと、1874年の第一回印象派展に出品された作品。人物の描き方は、どちらかというとマネっぽい。前景の草は印象派のような省略した描写。後ろの風景はコロー、ドービニーのような自然主義の雰囲気もある。おそらくニスだろうか、全体的にツヤツヤ感があるのは、彼ら印象派以前の影響なのだろうか。


 
 展覧会全体の感想 


 ボストン美術館もそうだが、クリーブランド美術館も、どうやってこれだけの日本美術を収集したのか、自分にとっては、とても興味のわくところ。もしかしたら展覧会にそのことの説明書きがあったかもしれないが、見落としてしまったのかもしれない。


 展覧会の終盤にコレクターで東洋美術研究家のシャーマン・リー[1918-2008]氏の説明があったが、中国美術と日本美術をアジア美術としてとらえて収集していたという記述があって興味深かった。

 そして、ボストン美術館やクリーブランド美術館が、こうやって日本画などの東洋・日本美術に興味をもってくれて、大事にしてくれているというのが、とても有難いことだと思った。

 美術って、昔は王侯貴族や偉い人への贈り物として利用されたという。でも、現代は、海と言葉をこえて、人と人が仲良くなれる「きっかけ」として存在する一面があるのかもしれない。たとえば、クロード・モネが日本の浮世絵や日本の睡蓮が好きだったように、時代を超えて、それを描くモネの作品を日本人が好きになる。自分たちが思う「美」を他国の人が「いいね!」っていってくれたり、逆にそう言ってもらったりできるって素晴らしい。

 
 そう言っておいて、恥ずかしながら日本美術に関しては、全体的に、やはり知識が不足していた。。時代背景、作者のプロフィール、何をどう見てよいものか、と迷いながら鑑賞したというのが正直なところだった。ある程度は知っておかねばなぁ・・・と思う。


 ただ、その中でも非常に興味深かったのは「線」であり、「線で描かれた世界」。そこに意思があるかのような、繊細さと力強さを持った「線」の美しさ。線の自由な動き。想像でしかないが、西洋と違って、遠近法や立体という概念にとらわれることがなかったことが、より線をのびやかに、その表現を豊かにさせたのかもしれない。


 この「線」は、浮世絵に引き継がれて、さらにヨーロッパの近代以降の画家たちに影響を与えるわけだけど。展示されていたアンリ・ルソーの≪虎とバッファローの戦い≫(1908年)などは、もう線が自由。虎がその上にある木の葉とほぼ同じ大きさになっているくらい(笑)。

 この動きのある「線」とその自由さが、西洋絵画に「個性」を吹き込んでいったのかもしれない。


 *せっかく上野公園に来たのだから、「モネ、風景を見る眼」を見て帰ろう。

 
 [展覧会]   クリーブランド美術館展 名画でたどる日本の美
 [場所]    東京国立博物館 平成館 [東京・上野]
 [期間]    2014年1月15日~2014年2月23日*会期終了
 [入場料]  1,000円  

【展覧会】 モネ 風景を見る眼 19世紀フランス風景画の革新 @国立西洋美術館

2014-01-19 07:25:37 | 展覧会・美術館・博物館
 12月。秋も終わり、冬へ。上野公園。公園口付近、東京文化会館前。イチョウの葉落ちて風に舞っている。風が冷たく、日差しが強い午後、イチョウの葉が路面を輝かせている。デジカメを取り出して、写真を1枚。

 写真に、自分の影が映ってしまった。。”びよーん”と縦長に伸びて。右手にカバン、左手にデジカメ。撮るときに、無意識に首を右に傾けてた。。それがなんとなくモディリアーニのような不思議な感じで。

 国内屈指のクロード・モネの所蔵コレクションを誇る、国立西洋美術館とポーラ美術館。2館のモネ・コレクションを並べて展示してしまおうという、とても思い切った企画。国立西洋美術館は戦前・大正時代の実業家、松方幸次郎[1866-1950]のコレクションを核に、戦後、美術館が収集したものと寄託作品で構成されている。ポーラ美術館は戦後の実業家、鈴木常司[1930-2000]が収集したもの。収集時期・時代の異なる2人のコレクターのモネや印象派を見る”眼”を比較してみるのも興味深い展覧会。

 「モネ 風景を見る眼」8月に第一会場のポーラ美術館で見て以来。 同じ展覧会でも見せ方が変われば、「新たな発見」がちらほら出てくるはず。国立西洋美術館では、どんな”変化”を見せてくれるのか、そういうところも楽しみに。


 美術館につくと、ミュージアムショップがにぎわっていたり、人が多い。気になるのは、印象派関連の美術本、帰りに少しのぞいてみよう。企画展のチケットで常設展も見れるそうで、どちらから行こうか少し迷ったが、そのまま、地下の「企画展」へ。こっち側は初めて。

 まず、入り口を入ってすぐにある楕円形の立体的な「モネ 風景を見る眼」のロゴが不思議で、目を奪われる。どうなっているのだろうと、近づいてみたり。


 
 1. 現代風景のフレーミング


1.『サン=シメオン農場への道』1864年頃 クロード・モネ 国立西洋美術館(松方コレクション)

 道に映る木漏れ日が印象的。初期の段階でもう、早くも光の移ろいを追っているところが、何ともすごい・・・。今後の作風を暗示させるような、興味深い1枚。



3.『オーヴェール=シュル=オワーズの藁ぶきの家』1872-73年頃 ポール・セザンヌ ポーラ美術館

 色彩のトーンは抑え気味。時期は10月くらいだろうか、少し冷たい空気感のような、曇り空でどんよりとしている。肌寒さを感じる。

 この絵は3つ興味深いところがあって、第1会場のポーラ美術館で見た後に、この絵を調べてみると、ルノワールが所蔵していたものだった。そして、実物を見てみると、画家のサインがない。

 「光の讃歌 印象派展」で見た東京富士美術館所蔵の≪オーヴェールの曲がり道≫(1873年頃)のという同時期に描いた同じ構図の作品がある。それに比べると、ポーラ美術館所蔵のこの絵の厚塗り感はやや抑え気味。



5.『トゥルーヴィルの浜』 1867年 ウジェーヌ・ブーダン 国立西洋美術館

 モネを風景画の道に導いたブーダン師匠の1枚。水平線の低さが半端ない!空の大きさと人の小ささ。俯瞰で見る感じが心地よく、自然の大きさを表現する。人物描写も緻密。


9.『グランドジャット島』1878年 クロード・モネ ポーラ美術館

 パリ周辺のセーヌ川流域の「グランドジャット島」といえば、スーラが有名だけど、シスレーも描いていたりして、印象派とは縁がある場所。確認できる範囲でモネも何枚も描いていて、この作品と同じ場所から、位置をずらして3枚描いている。

 この絵で印象に残ったのは、舗装されていない土の道の”うねうね”ってした表現。人の後に続く、黒い跡はおそらく足跡で道の色が濃くなっている。そういう日常の道の色彩の濃淡を意識して描かれている。河岸にいる人が、黒く細い点や線でササッと描かれているが、なんとなく黒い服を着た女性たちではないかと思わせてくれる感じが凄い・・・。


◆ 『ブラン氏の肖像』1879年頃 エドゥアール・マネ 国立西洋美術館(旧松方コレクション) 

 海外への長期貸し出しで、なかなかお目にかかれなかったブラン氏。初めて見たが、かなりの大きさ。威厳を保とうとしているのに、どこか説得力のない、そんなおじさんのような・・・。マネはきっと真面目に描いたのだと思うが、ちょっとクスッとしてしまう”お茶目感”のある表情。


17.『セーヴルの跨線橋』1879年 アルフレッド・シスレー ポーラ美術館

 前景の草は実物では赤紫に近い色で、そこまで明るくはないけど、色彩豊か。とにかく、”内容満載”な作品。橋があって、人がいて、汽車が走っていて、鳥の群れが羽ばたいていく。瞬間を切り取った構図は、どこか写真的にも感じる。


19.『ヴィゲラ運河に架かるグレース橋』 1888年 フィンセント・ファン・ゴッホ ポーラ美術館 

 印象派絵画に比べると、格段に明るい。普段あまり絵を見ない知人が展覧会の印象派全体的に「暗い」らしく、その中で「印象に残った1枚」とのこと。そんなことを感じなくなってる自分は、印象派の色彩トーンに目が慣らされていたのかも。さすがにゴッホのこの作品は、他を寄せ付けないほどの鮮やかさ。


 
 2. 光のマティエール



28.『立ち話』 1881年頃 カミーユ・ピサロ 国立西洋美術館 (松方コレクション) 

 よくいう「井戸端会議」ってやつだろうか。木の柵がななめってる構図に、話し声が聞こえてきそうなドキュメンタリーっぽい臨場感を感じる。ピサロが人物風景画をどのように描いたのかは、知識不足でよくわからないのだが・・・、何かしらの記憶をきっかけに、作りこんだ構図という気もする。右の人物の足元にある朱色の小さな点で、靴の色を表現しているところも面白い。


31.『積みわら』 1890-91年頃 クロード・モネ 国立西洋美術館

 ≪積みわら≫の素描。さすがに油彩ほどの光彩感というか、雰囲気はない。ポーラ美術館で初めてお目にかかって、今回2度目。この作品が挿絵として、掲載された『両芸術の世界』という雑誌の一部も展示されていて、「なるほどー、これかー」と。1891年に、デュラン=リュエルがモネの「積みわら」を中心とした個展を開催するにあたって、プロモーションとして制作された模様。


36.『木かげ』 1880年頃 ピエール=オーギュスト・ルノワール 国立西洋美術館(松方コレクション) 

 相変わらず引き込まれる風景。好きな作品。1880年付近はルノワールが画風で悩んでいたといわれているが、クラーク・コレクションの≪日没≫(1879年頃)という海景画のように、この作品も実験的な印象を受ける。筆触分割による印象主義を追求した結果なのか。この時代、先駆けて、といえるだろうか、早くも点描に入っているのはちょっと驚き。

 ルノワールの≪木かげ≫にある小さな白い「点」。この作品に、惹きつけられる自分なりの理由がひとつわかった。過去に3回も見て気づかなかった。。


54.『ムール貝採り』1889年 ピエール=オーギュスト・ルノワール ポーラ美術館

 ”色彩の魔術師”と呼ばれるルノワールのらしい1枚。大人の女性のスカートと籠、海、淡いピンクやブルーと使った豊かな色彩。



 
 3. 反映と反復 



58.『エプト河の釣り人たち』 1887年 クロード・モネ 個人蔵(国立西洋美術館へ寄託) 

 水面や空がやや朱をおびているようにも見える。時間帯的には夕暮れ時だろうか。岸辺に茂る青々とした草の力強くシャープな線と釣竿の細い線の表現が心地よい。

 4月の常設展で見た時よりも、空と水面に夕暮れの雰囲気が出ている。企画展の照明の暗さやラベンダー色の壁の影響かもしれない。

 描かれた年は1887年とされているが、実際の作品は1889年と書いてあるところも興味深い。


67.『貧しき漁夫』 1887-92年 ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ 国立西洋美術館(松方コレクション) 

 この先、2人は元気に生きていけるのかな。ちゃんと食べていけるのかな・・・、とか。お母さんはどこへ行ったのだろう・・・。といった不安がよぎる。なんとなく悲しそうな感じ。とにかく「伝わってくる」絵。


 
 4. 空間の深みへ 



76.『睡蓮』1916年 クロード・モネ 国立西洋美術館(松方コレクション)

 いつみても、本当に見入ってしまうとても大きな睡蓮。一見して、感動するような劇的なものを感じるわけではないのだけど。モネの色彩は、淡いものが多いが、この濃いブルーがとても魅力的。パステルカラーのような淡い色彩は、水面ではなく睡蓮の花の方にちりばめられている。どこを切り取っても絵になる。



  
 5. 石と水の幻影 


89.『チャーリング・クロス橋、ロンドン』1902年頃 クロード・モネ 国立西洋美術館(松方コレクション) 

88.『ウォータールー橋、ロンドン』1902年 クロード・モネ 国立西洋美術館(松方コレクション) 

この2枚は、常設展で見た白い壁に掛かっている時よりも、企画展の暗め照明と暗いトーンの壁のほうが、描かれている淡い色彩をはっきりと見ることができる。



◆ 『松方幸次郎の肖像』 1916年頃 フランク・ブラングィン 国立西洋美術館(松方コレクション) 
 作品に描かれた松方は、面倒見のよさそうなおじさん、という感じ。


 余談だが、従業員の賃上げのストに対する対応とか、(当時、会社が傾きつつあったとき)「賃金上げられないけど、長く働いても効率よくないから、労働時間短くしよう」みたいな。スマートで大胆な人という印象で、興味を持った。


 
 展覧会全体の感想 


 12月。会場はやや混んでいたが、見づらいというほどでもなかった。ポーラ美術館の展示に比べて、照明はやや暗めだったかもしれない。じっくり見すぎ(笑)なせいか、やや目がつかれてしまった。

 章立てもあるので、おおまかには展示の順番は変わっていない。ただ、第1会場のポーラ美術館は、モネの≪舟遊び≫と≪バラ色のボート≫を中心に、ゴッホの≪ばら≫と≪草むら≫の対比で見せた。一方の国立西洋美術館は2つの館が所有するモネの≪睡蓮≫や≪柳≫と≪セーヌ河の朝≫の対比が印象的だった。また、松方コレクションゆかりの作品がいくつか加わったり、展示作品も微妙なところで変化はあった。変化といえば、ジャン=バティスト=カミーユ・コローの≪橋のたもと≫という作品が(新たに?)寄託されていた。

 
 台湾への貸し出しで、第1会場のポーラ美術館で見ることができなかった、同館所蔵のルノワール、≪ムール貝採り≫、≪エッソワの風景、朝≫を見ることができる。

 国立西洋美術館に関しては「らしい」、といえば「らしい」展示だった。第1会場のポーラ美術館の展示と違って、「松方コレクション」で見せるというコンセプト。特に、普段はお目にかかれない松方コレクションに関する貴重な書類関係を見ることができたのは、有意義だった。

 1959年の開館以降、松方コレクションの公開をひとつの存在意義としていた国立西洋美術館も、時代とともに、それをコンセプトをもって表現できる場って、実は少ないようにも感じる。

 日本に所蔵されている印象派に関しても、松方コレクションがなかったら、今日、もう少し縁遠いものになっていたように思う。たとえば、モネの≪睡蓮≫といったときにまず、数ある睡蓮の中でも傑作級の国立西洋美術館の≪睡蓮≫(Wildenstein 1800)を連想する人も少なくないはず。


 その意味では、「モネ展」のような多くの人の目に触れる機会に、「松方コレクション」を知ってもらうというのは国立西洋美術館のひとつの原点だったはずであり、有意義なこと。だから、こういう形も当然あるべきことかもしれない。


 いつか、「松方コレクション」で構成された展覧会が見てみたい。一度も日本の地を踏むことなく、ヨーロッパで売却された作品もある。国内外の松方ゆかりのコレクションを集めた「松方コレクション展」が国立西洋美術館であったらいいなぁと。

 

 この展覧会は、海外から作品が来るわけでもないし、さらにいえばモネだけの展覧会でもない。戦後の松方コレクション展や、モネや印象派の展覧会で多くの人が目にしたことがあるもので構成されている。たしかに、海外からこれまで見たことがない作品が展示されるのも魅力的。ただ、愛着のある作品を深く掘り下げたり、視点(見せ方)を変えて、1枚1枚を大事に、継続してみていくというのも、自分としては大好き。自分にとって”同じもの”、”見たことがあるもの”でも、見る時期、体調、視点、知識の積み重ね、などによって、新たに見えてくるものあるように思う。


 そういう意味で、こういった共同企画の展覧会があるのは魅力的だし、ぜひ大盛況のまま会期を終えてほしいと思う。特に、ポーラ美術館のモネ・コレクションを東京で見ることができる機会というのはなかなかない。そして、国立西洋美術館の常設展でも、モネの作品がすべて並ぶことは基本的にはないように思う。おそらく、あと1,2回は足を運ぶことになってしまいそう。

 
 [展覧会] 国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ 風景を見る眼-19世紀フランス風景画の革新
 [場所]    国立西洋美術館 [東京・上野]
 [期間]    2013年12月07日~2014年3月9日
 [入館料]   1,400円(一般)

【美術館】[2回目] ブリヂストン美術館・コレクション展示(カイユボット展 ― 都市の印象派)

2014-01-16 15:04:53 | 展覧会・美術館・博物館
 11月。2度目の「カイユボット展」のあとは、ブリヂストン美術館のコレクション展へ。前回に続いて、1か月くらいでまたお目にかかることになるとは。でも、何度見ても、楽しい。 


 国内にある印象派の中では、国立西洋美術館とブリヂストン美術館のコレクションは比較的足を運びやすく、また「定点観測」できるので、親近感を持ちはじめている。
「定点観測」って、絵画が変化するわけではないけれど、自分のその作品に対して、見方が変わったり、新たな発見をしたりと、印象派が微妙に変わってくるものもあるかもしれないと。特に、同じ作品を見て、以前気が付かなかったことを見つけた時は、結構うれしい。


 以前、NHKで『額縁をくぐって物語の中へ』という番組があったけど、まさに、近代絵画ってそのまま、近代への扉のような気がする。小さな発見、新たな視点に期待して。

 
 コレクション展示
 



◆ 『オペラ座の仮装舞踏会』 エドゥアール・マネ 1873年

 ワシントン・ナショナルギャラリーの≪オペラ座の仮面舞踏会≫の前段階の作品なのだろうか?これだけ見ると、前衛的というか、「なんじゃこりゃ!?」という感じ。でも、スキャンダラスな作品だけに、画家は、何かを探ろうとしていたのかなと・・・。そういう視点で見ると、ちょっとハマる。ブリヂストン美術館のほうは、オペラ座の≪仮”装”舞踏会≫になってる。
 


◆ 『ヴィル・ダヴレー』 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1835-40年頃

 林道にわずかに入ってくる陽光の描写がとても美しい。細かい部分まで、丁寧に描かれている。作品から、木かげの涼しさとか、森のすがすがしい木々の香りのようなもの。そういった澄んだ空気感が伝わってきそうな。


 まだコローの作品は10点程度しか見ていないが、そのなかでもこれは印象深い。また、日本の浮世絵をフランスに広めた林忠正のコレクションということで、明治期というとても早い段階から日本に入ってきた作品として知られる。日本でコローといったら、まずこの≪ヴィル・ダヴレー≫ではないかと思う。


◆  『睡蓮の池』 クロード・モネ 1907年 

 モネの睡蓮を見る上で面白いのは、水面に映る世界。その先には何が描かれているのか?そして、何時ごろなのか?・・・を想像する。この作品でいえば、まず水面に映っているのは柳の木だろうか?そして、やや赤みを帯びた水面は、夕日の反射だろうか。だとすると夕方の光景?

 1907年に描かれた有名な連作の1枚。この縦長の睡蓮の構図って14,5枚くらいあって世界中に散らばっている。国内で同一の構図の睡蓮を見ることができるのは、大阪和泉市の和泉市久保総惣記念美術館、千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館。確認できる範囲では、この2か所。


◆ 『サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール』1904-06年頃

 セザンヌが繰り返し描いた「サント=ヴィクトワール山」。そして、「シャトー・ノワール」も晩年にかけて、数枚描かれているテーマ。セザンヌがこの2つテーマを1枚のカンヴァスに描いているのは、おそらくこの1枚だけ。非常に珍しい。


 セザンヌの風景画って、初期は厚塗りだったり、中期は縦の線が多用されていたり、「硬質」な感じ。叩くと”カンカン”って音がしそうな・・・。セザンヌは1870-80年代を中心にまだ10点強しか実物を見ていないが、それらを通じて感じるのが、硬さ、硬質感。晩年のこの作品では、厚塗りもなく、緑を描く筆もほとんど縦に入れていない。ずいぶん柔らかくなったのかなぁという印象。円熟というのかもしれない。セザンヌの最晩年のこの作品は、「サント=ヴィクトワール山」の集大成のひとつといえそう。


 
  展示の感想など 
 



 ブリヂストン美術館の印象派を中心とする近代絵画は”粒ぞろい”。1枚1枚、すごいなって思う作品が多く、何度見ても楽しい。コローの≪ヴィル・タヴレー≫の木洩れ日だったり、クロード・モネの≪黄昏、ヴェネツィア≫の虹色のような色彩など、いつも、そこでしばらく足が止まってしまう。

 1年間で、画家ごとに各10点から50点くらい、おもな印象派画家たちの作品を見ることができたが、その中でも、ブリヂストン美術館のコレクションは”粒ぞろい”という感じ。「定点観測」でもあり、癒される感じがして、継続して見たくなる。


 そういえば、ブリヂストン美術館の印象派コレクションで、普段なかなかお目にかかれない?作品もいくつかあるようだ。特に見てみたいのは、アルフレッド・シスレーの≪レディース・コーヴ、ウェールズ≫(1897年)。過去の展覧会のカタログに掲載されていたが、現在も所蔵しているのだろうか?もう1点は。日本で一番最初に公開されたルノワール作品といわれる≪水浴の女≫(1907年頃)。これは2013年に石橋美術館で開催された「コレクション展示 画家のことば」で展示された模様なので、いつかは見ることができるかもしれない。


 ちなみに1月から開催されている「画家の目、彫刻家の手」ではルノワールのパステル画≪少女≫、ドガ≪踊りの稽古場にて≫ が展示されるらしい。

 
 [展覧会] ブリヂストン美術館 コレクション展示 (カイユボット-都市の印象派)
 [場所]  ブリヂストン美術館 [東京・八重洲]
 [期間]  2013年10月10日(木)~2013年12月29日(日)
 [入館料]  1,500円(一般)

【展覧会】光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅 @東京富士美術館

2014-01-10 21:31:05 | 展覧会・美術館・博物館
 常設展示の「ルネサンスから印象派まで」が終わると、「光の賛歌 印象派展」が始まる。

 そういえば。この美術館のロビーで展覧会のチケットを買おうとしていたら、スタッフの方に「割引券をお持ちですか?」と聞かれた。(どうも・・・、パンフレットの端が割引券になっていて何度も使えるのだという。)

 横にいた方が「これ使って」と僕にパンフレットをスッと渡してくださった。思いがけず、200円割引かれて1000円で入場。パンフレットをくれた方、ありがとうございました。


 
  序章 印象派の先駆者たち - 近代風景画の地下水脈
 (東京富士美術館コレクションより) 
 



 東京富士美術館コレクションがほとんどなので、感想は、東京富士美術館・常設展示 「ルネサンスから印象派まで」の項へまとめたとおり。


 
  第1章 セーヌ河畔の憩い - パリ近郊の川辺を描く画家たち
 



  8.『春の小さな草地』 アルフレッド・シスレー 1880年 テート(ブリテン)

 グワっとくる感じ。ダイナミック木の幹のタテ線。

 この構図の作品。以前、どこかで見たことがあると思っていた。「奇跡のクラークコレクション展」(2013年)の《ビィ付近のセーヌ川堤 / Banks of the Seine at By》[1880-81]と似ている。おそらく、この作品もセーヌ川河岸のビィという場所を描いたものなのだろう。


 グワっとくる感じで、木のタテの線がダイナミックに描かれている。

 
 16.『サン=マメス、朝』 アルフレッド・シスレー 1884年 ロサンゼルス・カウンティ美術館

 広角レンズのような。ぐっと惹きつけられるワイドな構図。手前の紫と白の材木がダイナミックにうつる。空のスペースを大きくとっているのはブーダンの影響か?


 17.『サン=マメスの造船所』 アルフレッド・シスレー 1884年 コロンバス美術館

 おそらく「No.16」の付近かな。点のような人の小ささが船の大きさを物語る。ここでも空のスペースは大きくとってある。
 

 31.『ブージヴァルのダンス』 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1883年 ボストン美術館


 かなり時間をかけて見た気がする。まず、想像以上のスケールに圧倒される。そして、色彩の美しさに見とれる。楽しそうな情景。

 39.『小川で足を洗う女』 カミーユ・ピサロ 1894-95年頃 シカゴ美術館

 全体が淡く、緑色がアクセント。透き通った水の表現に惹かれる。とても美しい構図。

 

 52.『ジヴェルニーの林、イーゼルに向かうブランシュ・オシュデと本を読むシュザンヌ・オシュデ』 クロード・モネ 1887年 ロサンゼルス・カウンティ美術館

 全体的に鮮やかな緑。モネが大きく描く人物と、その服の色彩が新鮮。



 53.『睡蓮』 クロード・モネ 1907年 サン=テティエンヌ近代美術館

 珍しい丸い作品。どういった意図で描かれたのだろう。建物の装飾の一部かなぁ?

 


 
  クロード・モネの制作風景の映像 
 


 モネの制作風景を映した1分程度の映像を見ることができる。煙草をくわえて、手にはパレットと数本の筆をもって、カンヴァスに向かっている。モネの動く姿というのはとても新鮮だった。



 
  第2章 ノルマンディ海岸の陽光 - 海辺を描く画家たち
 


 
 64.『セーヌ湾のヨット』 マクシム・モーフラ 1899年 ヴァルラフ=リヒャルツ美術館

 紫、ピンク、緑、淡く優しいグラデーションの美しい、海岸の風景。シスレーのような淡々とした風景画。マクシム・モーフラ[Maxime Maufra, 1861-1918]という画家の絵を初めて見た。印象派画家たちより世代が2回りちかく違ってポール・シニャックらと同世代。初めて知った。


 66.『荒天のエトルタ』 クロード・モネ 1883年 ヴィクトリア国立美術館

 
 白色の波しぶきの表現がすごい!波と岩がダイナミックに描かれている。小さく描かれているので、よけいにそう感じる。

 
 67.『アヴァルの門から見た針岩、エトルタ』 クロード・モネ 1886年 カナダ国立美術館

 大細い岩の間に映る夕日のオレンジの反射、光の表現がとてもリアル。

  
 76.『プールヴィルの上げ潮』 クロード・モネ 1882年 ブルックリン美術館

 断崖感があって、ダイナミックな構図。絶え間なく続いてゆきそうな気さえする、。


 77.『ディエップの港、夕暮れ』 クロード・モネ 1882年 ディクソン美術館

 夕暮れの港の光景。横の線を多用しているところに遊び心を感じる。空は、上から、紫、ブルー、黄緑、オレンジをやや太めに。塗り残しもある。海は、やや細目に、水色、オレンジ、ブルー、水色、黄色。港と陸との境は影の関係か、濃い緑。サインは黒なのが目立つ。


 79.『ディエップの外港、午後、陽光』 カミーユ・ピサロ 1902年 ディエップ城美術館

 ピサロ晩年の都市風景シリーズの1枚。全体にベタっと感がある。


 82.『トゥルーヴィルのレガッタ』 ギュスターヴ・カイユボット 1884年 トリード美術館

 
 薄紫の空から、ブルーの海まで、水平線がぼんやりと見える。空と海の境界が、わからないようでわかるような・・・。絶妙な色彩、淡くきれいなグラデーション。一方、建物の線などははっきりしている。前景の線を見ると、風は右から左に流れているような気がする。

 ブリヂストン美術館で開催されていた「カイユボット展」に肖像画が出品されていた、画家の友人のポール・ユゴーが所有していた。カイユボットのことだから、プレゼントかもしれない。

 88.『小舟と水浴する人々』 ポール・セザンヌ 1890年頃 オランジュリー美術館

 この作品は印象に残るが、最後ではなく、もう少し真ん中にもってきてもよかったかも。オランジュリーで常設されているのかな?横長で幅のある作品だけに(常設展示だとスペースを取りそう、上に追いやられそう・・・)。全体的に、色うすい。線でなく面で塗る。木の濃い緑。陸の薄い緑。など、いろんな色彩。

 珍しい作品。これを家のドアの装飾画にするなんて。しかも、同じサイズで庭園の噴水を描いたものがもう1枚存在して、2枚がヴィクトール・ショケ所有だった。セザンヌよっぽど好きだったんだなぁ。



 
  全体の感想
 


 
 まず、会場を出た瞬間に思ったのは、フランスにおけるセーヌ川流域の地域などの位置関係のこと。展覧会の序盤に大きなパネルを見てから入ったはいいが、もう少し頭に入れておくんだった・・・。特に、描かれた地域ごとに、こだわって展示してあるので、そこはおさえておきたかった。



 11月の半ば。若干、混雑していたが8月の「プーシキン美術館展」@横浜美術館のように鑑賞しづらいというほどでもなかった。また、子供や家族連れ、だったり。40~60代前後の女性の方が知り合い同士で来ている割合が圧倒的に多かったように思う。かなり話し声がざわざわと聞こえたのは、いままでの美術館の雰囲気とは少し違った。


 そうはいっても、自分自身、目の前の作品に夢中で「ここはこういう感じなんだなぁ」というくらい。


 また、この展覧会の特徴は、セーヌ川の周辺を描いた印象派作品展。特に、アルフレッド・シスレーの作品をまとめてみることができた。首都圏にあるシスレーの風景画を何点か見たが、どちらかというと色彩のトーンが暗い作品の印象が強く残っている。それは一面にすぎなかったようで、シスレーのメインストリームの色彩は、とても明るいものだということがよくわかる。

 今回の展覧会で、シスレーがブーダンのように空のスペースを広くとり、光と色彩に富んだ画家であることがよくわかった。シスレーの「サン=マメス」だけで数点展示があるので、当時の画風の変化や共通性などが比較できるようになっているところがとても面白い。また、特徴として、(実際、どういった理由かはわからないが)光の反射だろうか、淡い薄紫色を使っている絵が何点かあって、とても興味深い一面を見ることができた。

 
 あと、気づいたこと。残念ながら、(構図と違って)正確な色彩は、記憶からは薄れがち・・・。カタログなどで確認しても、おそらく厳密には違う色彩だったりすることが多い。しかし、それぞれの色彩が正確に何色にあたるのか・・・。作品との出会いって、ある意味、一期一会というか・・・。

 海外にある作品は特に、もう一生お目にかかれないかもしれない作品が多いだけに、色彩は、正確に記録しておきたいと思うことがある。そう思ったとき、色彩の知識や、表現できるだけの言葉を持っていないことに気づかされた。

 

 それとは別に、お目にかかる機会がある可能性もあるものも。感想にはしていないけれど、国内の美術館などの所蔵作品も何点か展示されているが、海外美術館の所蔵作品と比べても見劣りしないよいものが多かった。 

 
 純粋な風景画が多い中で、目を引く作品は、人物風景画の3点。《小川で足を洗う女》[カミーユ・ピサロ 1894-95年頃]、《ジヴェルニーの林、イーゼルに向かうブランシュ・オシュデと本を読むシュザンヌ・オシュデ》[クロード・モネ 1887年]。そして、やはり。

 ルノワールの《ブージヴァルのダンス》にぐっと惹きつけられた展覧会だった。色彩、サイズ、描かれたエピソードも含めると、画家の”傑作”の部類に入ってくる作品と言えるかもしれない。
 
 とにかく、モネ、シスレー、ピサロを中心に風景画をまとめてみることができる。巡回先の京都、福岡の印象派に興味がある方にはおススメ。

 
 [展覧会] 光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅
 [場所]  東京富士美術館 [東京・八王子]
 [期間]  2013年10月4日(金)~2014年1月5日(日)*会期終了
 [入館料]  1,200円(一般)
 [巡回]  福岡市博物館 2014年1月15日(水)~3月2日(日)
       京都文化博物館 2014年3月11日(火)~5月11日(日)



 カタログで確認する限り、東京会場では展示されていなかったが、他会場で展示されると思われるもの。一部を挙げると。

 《サン=シメオン農場への道》 1864年 クロード・モネ、泉屋博古館分館
 《モンソー公園》       1868年 クロード・モネ、泉屋博古館分館
 《アルジャントゥイユ》1874年 エドゥアール・マネ、トゥルネー美術館
  
  泉屋博古館分館の2作品は、日本に最初に入ってきたクロード・モネの2作品。一度はどこかで見てみたいのだが・・・なかなか機会に恵まれない。マネの《アルジャントゥイユ》は京都展で展示されるらしい。そのほかにも、東京展では展示されていない、モネ、コローなどが数点展示される模様。

2013年、印象派のあった展覧会のまとめ、など。

2013-12-31 21:31:22 | 展覧会・美術館・博物館


 ふと「ぶら美」の”大回顧展”を見たら、いろいろとまとめてみたくなりました。印象派を中心とした近代絵画に興味を持つようになって、1年半。今年から本格的に本だけで見ていた世界から、実物が見に行きたくなって、展覧会を見に行くようになりました。2013年に見た印象派関係の展覧会を振り返っておこうかなぁと思います。


 
   
  奇跡のクラークコレクション -ルノワールとフランス絵画の傑作-
  @三菱一号館美術館 (2013.2, 2013.4)
 
 


 素晴らしい印象派の作品群。特に、ルノワール関係の多くの本で引用される質の高いルノワール・コレクションの色彩の豊かさに、ゾクッときました。結局、2度足を運ぶことに。初めて、見に行った本格的な企画展。印象派を見るうえで、クラーク・コレクションが自分の中で教科書というか、基準になったというか、そんな貴重な機会になりました。


 <特に心に残った作品>

 
 『海景、嵐』 クロード・モネ 1866-67年頃

 『タマネギ』 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1881年

 『エラニー・サン=シャルル』 カミーユ・ピサロ 1891年
 

  
   
 エミール・クラウスとベルギー印象派
  @東京ステーションギャラリー
(2013.7)
 
  

 印象主義と写実性が絶妙なバランス、柔らかく優しい光を描く「ルミニスム」の画家、エミール・クラウスを初めて知ることができました。また、以前から見たかった、児島虎次郎の代表作《和服を着たベルギー少女》[1911年]を見ることができたのも収穫でした。

 
 フランス印象派の影響がベルギーに派生して、日本へ。それぞれの個性を出しながら、進化した印象派でした。


<特に心に残った作品>

 『霧の中の太陽(ウォータールー橋)』 クロード・モネ 1904年 個人蔵

 『レイエ川を渡る雄牛』  エミール・クラウス 1899年以降 個人蔵

 『和服を着たベルギー少女』 児島虎次郎 1911年 大原美術館



 
 モネ 風景を見る眼 19世紀フランス風景画の革新
   @ポーラ美術館・国立西洋美術館
(2013.8, 2013.12) 



 モネをたっぷり見ることが出来た展覧会。ヨーロッパ、アメリカ以外で、これだけモネが揃うというのは「この絵はどのあたりに太陽があるのだろう?」「モネが捉えた光」を追って見る眼。展覧会のコンセプトにあるように、そういうものを意識しながら見ていくと・・・、(自分の場合は)モネが凄くリアリズムのように感じてしまって、より楽しめました。

 
 同じ作家、同じ作品でも、まとめてみる、比較してみると感じることがあります。8月のポーラ美術館と、12月の国立西洋美術館(日記はまだ・・・)で、今のところ2回。2014年3月9日まで開催されているので、あと1,2回は足を運びそうな気がしています。


<特に心に残った作品>

『エラニーの花咲く梨の木、朝』 カミーユ・ピサロ 1886年 ポーラ美術館

『エトルタの夕焼け』 クロード・モネ 1885年 ポーラ美術館

『サルーテ運河』 クロード・モネ 1908年 ポーラ美術館

『ムール貝採り』 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1889年 ポーラ美術館


  
 プーシキン美術館展  フランス絵画300年 @横浜美術館 (2013.8)
 


 印象派というよりは、ロシアから見たフランス美術という感じの展覧会。印象派周辺の近代絵画も”粒ぞろい”でした。その中でも、特にルノワールの2作品はどうしても見ておきたかった。ルノワールの『ジャンヌ・サマリーの肖像』を見ることができたのは貴重な機会でした。


 <特に心に残った作品>

 『ジャンヌ・サマリーの肖像』ピエール=オーギュスト・ルノワール 1877年

 『セーヌの水浴(ラ・グルヌイエール)』ピエール=オーギュスト・ルノワール 1869年 


  
 モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち- フランスの美しき街と村のなかで -
 @ホテルオークラ東京 (2013.8)


 印象派からエコール・ド・パリと日本の洋画という感じの展覧会。個人コレクションの印象派作品だけでなく、また20世紀初頭の日本洋画を見れたことで、見る眼の幅を広げてくれる機会になりました。


  <特に心に残った作品>

 『菫の花束を持つカミーユ・モネ』クロード・モネ 1877年 個人蔵

 『残れる光』 斎藤豊作 1912年 


 
  印象派を超えて - 点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで
  @国立新美術館
(2013.10)
 


 印象派から点描へ。国内の印象派作品とクレラー=ミュラー美術館の新印象主義の画家の作品を見ることができました。特にシニャック以外のジョルジュ・スーラのみならず、マクシミリアン・リュス、テオ・ファン・レイセルベルへといった新印象派は国内でなかなか見ることができないので、興味をもって見ることが出来ました。


  <特に心に残った作品>


『レストランの内部』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1887年 クレラー=ミュラー美術館

『パリ・モンマルトルからの眺め』 マクシミリアン・リュス 1887年 クレラー=ミュラー美術館

『《読書する女》あるいは《青い帽子の女》あるいは《青い帽子》』
  テオ・ファン・レイセルベルへ 1887年 クレラー=ミュラー美術館


  
  光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅
   @東京富士美術館 (2013.11)
 
 


 
 まだ、日記が追いつけてないですが・・・(笑)。


  <特に心に残った作品>

 『ブージヴァルのダンス』ピエール=オーギュスト・ルノワール 1883年 ボストン美術館

 『サン=マメス、朝』 アルフレッド・シスレー 1884年 ロサンゼルス・カウンティ美術館

 『小川で足を洗う女』 カミーユ・ピサロ 1894-95年頃 シカゴ美術館


  
 カイユボット展 ― 都市の印象派  @ブリヂストン美術館 (2013.10, 2013.11)
 


 
 2月にブリヂストン美術館で知ってから、楽しみにしていた展覧会でした。カイユボットを知るにつれ、近代を通り越して現代に迫ろうとする”視点”と多才さに興味を持ちました。展覧会を通じて、自分の中で、さらに画家の作品の全貌が知りたいと思う画家の一人になっていました。そして、カイユボットを足跡知ることで、印象派をより深く知ることができるような気がしています。この展覧会も2度足を運ぶことになりました。図録意外にも、思い切って、いろいろと探して、ようやく欲しかった本を1冊買ってしまいました。


 カイユボット展のつぶやきをリツイートしていただいたことをきっかけに、「caillebotte.net」さんというもの凄いサイトがあることを知りました。また、海外ですが「GUSTAVE CAILLEBOTTE , painter」というサイトも。


<特に心に残った作品>


 『見下ろした大通り』 ギュスターヴ・カイユボット 1880年 個人蔵

 『ノルマンディーの風景 - 樹木の生い茂った谷の林檎の樹』 ギュスターヴ・カイユボット 1880年 個人蔵

 『キンレンカ』1892年 ギュスターヴ・カイユボット 個人蔵



  
  2013年から2014年へ 
 


 初めて尽くしの1年。絵画を見ること、特に色彩を見ることがこんなに面白いものだとは・・・。初めて見た印象派とその周辺の気になる作品を画家別に分類。



  
 カミーユ・ピサロ            39点
 エドゥアール・マネ            6点
 エドガー・ドガ              9点
 ポール・セザンヌ            13点
 アルフレッド・シスレー         33点
 クロード・モネ             90点
 ピエール=オーギュスト・ルノワール   51点
 ベルト・モリゾ              4点
 ギュスターヴ・カイユボット       65点
 メアリー・カサット            3点
 ポール・ゴーギャン           15点
 フィンセント・ファン・ゴッホ      16点
 ジョルジュ・スーラ            6点
 ポール・シニャック           21点   
 エミール・クラウス           29点
 マクシミリアン・リュス          4点
 テオ・ヴァン・レイセルベルへ       7点
 アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 33点
 山下新太郎                1点
 児島虎次郎               16点
 斎藤豊作                 4点


      *油彩・パステルだけでなく、版画・素描を含んだ総数。



 2013年は、首都圏の美術館の常設の印象派作品を含めると、多くの作品を見る機会に恵まれました。初めて見る絵の多かった1年。来年は、初めて見る印象派作品は少なくなっていくのかも。ただ、前半は何かと忙しそう。合間を見て、美術館の常設展など、同じものを定期的に見たりすることもありそう。まだまだ、知らないことばかりなので、書籍などの調べもので掘り下げつつ、知識を深められたらなぁと思います。


 2014年は、「ルノワール礼讃」@ポーラ美術館(遠いので行けるか微妙)、4月~「こども展」@森アーツセンターギャラリー、6月~「ボストン美術館 華麗なるジャポニズム」@世田谷美術館、7月~「オルセー美術館展 印象派の誕生-描くことの自由」、10月~「夢見るフランス絵画展 印象派からエコール・ド・パリへ 」@Bunkamuraミュージアム、あと2015年には、東京で、新印象派関係の展覧会がある?。などなど、楽しみです。


 2013年。弊ブログをお読みいただき、どうもありがとうございました。

【美術館】東京富士美術館 常設展示 「ルネサンスから印象派まで」

2013-12-29 21:21:11 | 展覧会・美術館・博物館


 11月、「光の賛歌 印象派展」を見に八王子の東京富士美術館へ。駅でバスの列に並ぶなかで、やや肌寒くなってきたことを感じる。


 八王子にはもうひとつ、村内美術館があって、半年前まで、豊富なバルビゾン派の絵画と印象派のコレクションを所蔵していたらしい。それらのコレクションの大半はもう見ることができないようだが、詳細は不明。残念ながら、印象派絵画に興味がでてくるのが、ここ1年のことだったので、見ることができなかった。


 東京富士美術館も、印象派コレクションはかなりありそうなので、一度は見ておきたかった。八王子は散歩にしては、ちょっと遠いこともあって、なかなか足が向かず・・・。今回、「光の賛歌印象派展」が開催されることもあり、思い切って行ってみた。


 常設展示の「ルネサンスから印象派まで」と特別展「光の賛歌 印象派展」の序章を続きで見たので、ここでは、東京富士美術館の印象派コレクションの部分を中心に。



 
 ルネサンス、バロック、ロココなど古典絵画 
 

 


 まず、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの《煙草を吸う男》[1646年]の暗闇に灯る煙草の火の光の光景が印象に残った。

 また、フランソワ・ブーシェ《田園の奏楽》[1743年]はなんかどこかで見たことあるな?と思っていた。8月に横浜美術館の「プーシキン美術館展」に展示されていた《ユピテルとカリスト》[1744年 フランソワ・ブーシェ]に構図が”そっくり”なのだ。両者の関係性はわからないが。年代からも、《田園の奏楽》は《ユピテルとカリスト》準備段階として描かれた作品なのだろうか。


 自分自身、19世紀以前の美術史や歴史や神話(アトリビュート)、自分自身詳しい知識が全くないので、詳しいことはわからないまま見ていた。何となくの印象でしかないが、肖像画や風景画ひとつとっても、当時の持てる技術の粋を尽くした感がある。その緻密さに、目を見張る。



 
 19世紀フランス近代絵画 
 




 19世紀フランス絵画になってくると、自分もほんの少しだけわかる部分もあって、より興味がわいてくる。イギリスやフランスのアカデミーの絵画などを中心に展示されていた。その中に、印象派に影響を及ぼした画家たちの作品もちらほらと。


◆ 『書斎のドン・キホーテ』 ウジェーヌ・ドラクロワ 1824年


 ウジェーヌ・ドラクロワの3点が、何気なく部屋の隅に追いやられるように、まとめて飾られてて、ちょっと凄いなと。フランス本国から見れば、小品かもしれない。ただ、《書斎のドン・キホーテ》のように、小さな作品だからこそ、細部まで行き届く画家の表現力をより感じることができる。


◆ 『ユディト』 ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 1872-74年頃

 コロー晩年の作品。8月に横浜美術館で見た、ウジェーヌ・フロマンタン《ナイルの渡し舟を待ちながら》[1872年 プーシキン美術館]を思い出す。オリエンタリズムの雰囲気のある作品。印象派に入っていく時期のルノワールによる《アルジェリア風パリの女たち》[1872年 国立西洋美術館]など。”東方趣味”は当時の流行だったようだ。


 人物がかなりアップで描かれていること、そして(印象主義的と捉えてよいのかはわからないが)背景の描写をかなり省略していること。この絵が描かれる少し前には、モネやルノワールと一緒に絵を描いたりもしているので、何らかの影響をうけたのだろうか。この2点は今まで見てきたコローの緻密な風景画のイメージに無かった傾向なので、とても興味深い。


 そのほか、ジャン=フランソワ・ミレーが2点やコンスタン・トロワイヨンが1点などバルビゾン派の作品も見ることができる。
 
 
 印象派、ポスト印象派 
 




◆ オーヴェールの曲がり道』 ポール・セザンヌ 1873年頃

 1874年の第1回印象派展に参加したセザンヌ。この作品は、仲間の影響か、どこか印象主義的な雰囲気を感じる。ただし、印象主義的な視点に限って言えば、描き方は同時期のシスレー、モネらのそれほど洗練されてはいないように見える。絵具の塊が少し残るほど濃く、ぎこちないようにも見える。当時、印象派になりきれないセザンヌの葛藤のようなものがあるように感じた。

 しかし、”印象主義”という視点を外せば、この「ぎこちなさ」、「硬質感」がセザンヌの個性というか魅力と思えるところ。


 これと似た構図でポーラ美術館所蔵の《オーヴェール=シュル=オワーズの藁葺きの家》[1872-1873年頃]は、国立西洋美術館で開催されている展覧会「モネ 風景を見る眼」で見ることができる。


◆ 浴後の女』 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1896年,


 とてもインパクトのある斜め後姿の裸婦像。ふくよかなモデルの圧倒的な重量感。それとは対照的に、つるつるとシルクのような、ふわっとした感じがそれを感じさせない。不思議な作品。

 何かの本に「よく食べる女性が好き」と書いてあったのを思い出した。「奇跡のクラーク・コレクション」展で見た《金髪の浴女》[1882年 クラーク美術館]でもそうだったが、ルノワールがふくよか女性の姿に”美”を感じていたようだ。

 


◆ バラ色の服の少女』 ベルト・モリゾ 1888年

 ベルト・モリゾの人物画の実物は初めて見る。現在、『黒衣の女 ベルト・モリゾ 1841-95』という本を3分の1ほど読んだままになってしまっているが・・・。前半生は、まだ社会的に認知されていない女性画家の道を歩む中での、意志の強さというか。アカデミック画風な時代背景もあったにせよ、硬い感じの作品が多い気がする。


 一方で、結婚して子供を授かった時期と完全にはリンクしないまでも、後半生はパステル画などの影響もあって、柔らかくて、優しい印象の作品も残している。この《バラ色の服の少女》も、そんなモリゾの後半生に描かれた作品。ピンクの女性の服。縦線で服のしわをやわらかく表現。


 印象派の中にあって、ベルト・モリゾもまた、とても興味深い存在。



 
  光の賛歌 印象派展 序章 印象派の先駆者たち - 近代風景画の地下水脈(東京富士美術館コレクションより) 
 




常設展示 「ルネサンスから印象派まで」が終わると、今度は「光の賛歌 印象派展」に続いていく。と言っても、最初の部屋は東京富士美術館の所蔵コレクションで構成されていた。


24.『散歩』 エドゥアール・マネ 1880年頃


 黒い服と印象主義的な背景のグリーン。女性であっても容赦なく?特徴を前面に出して描くマネにしては、大人しいようにも感じる。黒い衣装とモデルの表情に、上品さがあって惹かれる。


71.『海辺の船』 クロード・モネ 1881年


 傾いている、大きな船。人物はとても小さく描かれていて、いっそう船のダイナミックさが引き立つ。水色の空とややピンクがかった雲の色彩が鮮やか。


(特別出品)『ロンドン、ハイドパーク』 カミーユ・ピサロ 1890年

 
 時期は、秋だろうか、道に映る木漏れ日、時間は朝だろうか?。木にあたる陽光を緑の色彩のグラデーションで表現していて清々しい。作品の世界に入って、散歩したくなる。そんな風景。

 『カミーユ・ピサロと印象派 永遠の近代』展カタログの図版で見た以来、この絵は一度見てみたかった。デトランプというあまり耳慣れない絵具を使っている。絵具の性質による保管の関係だろうか、やや照明が当たりづらいところに展示されていたようにも思えた。


(特別出品)『レディース・コーヴ、ヘイスティングス』 アルフレッド・シスレー 1897年

 シスレーの晩年の作品。明るい光を感じる、海岸の風景。海岸の淡い紫色が特徴的で、思い切った色遣いをするなぁと。この後の「光の賛歌 印象派展」のシスレー作品を見て、後でわかることだが、この淡い紫色の表現は、いくつかの作品で見られるシスレーの特徴だった。

 同年にさらに近くの岩場を描いた《レディース・コーヴ、ウェールズ》という作品がブリヂストン美術館にあるようなのだが。常設展示されてないせいか?(*)、まだ見たことはない。いつか、お目にかかれるだろうか。

 
 (* 古い資料で確認したため、現在も所蔵されているのかは不明)



 シスレー、ピサロの「特別出品」とされた作品は、イギリスで描かれたため、セーヌ川の水辺をコンセプトにした「光の賛歌 印象派展」ではリストアップされなかった。ココで見ることが出来て、とてもよかった。

 このブースが終わると、ここから「光の賛歌 印象派展」に入っていく。



 
  東京富士美術館所蔵作品の感想(印象派とその周辺を中心に) 
 



 印象派以外のところでは、8月にホテルオークラ東京で見た展覧会「モネ ユトリロ 佐伯と日仏絵画の巨匠たち」で印象的だった作品《森の小憩、ジェルブロワ》[1925年]に再会することができた。

 また、《水平線上のスコール》[1872-73年頃]。そして、何故かここに出品されていた、新潟県立近代美術館・万代島美術館所蔵の《エトルタ海岸・夕日》[1869年]のクールベの2枚。気持ちいいほどの硬派なレアリスム、カッコいいなぁと。


 「光の賛歌 印象派展」の出品作を含めた、東京富士美術館所蔵の印象派とその周辺の作者と作品の内訳は、おおまかにこのような感じだった。

 ブーダン  2点
 ピサロ   2点
 ドガ    1点
 セザンヌ  1点
 シスレー  2点
 モネ    3点 
 ルノワール 2点
 モリゾ   2点
 カサット  2点
 ゴッホ   1点

 
 印象派やその周辺の画家の作品を、各作家1,2枚程度見ることができた。そして、印象派周辺の所蔵作品はほとんど見ることができたように思う。そして、ベルト・モリゾやメアリー・カサットといった国内でなかなかお目にかかれない印象派の女性画家の作品を見ることができるのはこの美術館の特徴かもしれない。



 とにかく、ひとつひとつ”粒ぞろい”という感じがある。印象派周辺の作品の所蔵作品に関して、国内で充実している美術館の一つかもしれない。


 
 そういえば、ルノワールの《赤い服の女》[1892年頃]に関してだけは、展示してなかった。どこかの展覧会で出会える機会を楽しみにしたい。


 
 [展覧会] 東京富士美術館 常設展示 「ルネサンスから印象派まで」
 [場所]  東京富士美術館 [東京・八王子]
 [期間]  2013年10月4日(金)~2014年1月5日(日)
 [入館料]  1,200円(一般)*「光の賛歌 印象派展」のチケットで見ることができる

【美術館】 ブリヂストン美術館・コレクション展示(カイユボット展 - 都市の印象派)

2013-11-30 22:23:26 | 展覧会・美術館・博物館


 「カイユボット-都市の印象派展」が終わると、ブリヂストン美術館所蔵のコレクション展示に続く。「カイユボット展」内の展示を含めて、ブリヂストン美術館の所蔵作品の雑感を。ブリヂストン美術館の印象派コレクションを見るのは、2月に所蔵作品展『筆あとの魅力─点・線・面 印象派から抽象絵画まで』を見に行って以来。

  
  カイユボット-都市の印象派展 参考作品 
 



 カイユボット展の各部屋で、カイユボットの作品と比較するという意図だと思うが、「参考作品」として、ブリヂストン美術館所蔵作品がいくつかが展示されていた。



 ◆ 『帽子をかぶった自画像』 ポール・セザンヌ 1890-94 


 セザンヌは自画像を何枚も描いている。そのなかで、どうしても自分の頭の中で勝手に「いや、これは”アゴの自画像”だろっ!」と記憶してしまっている。そのくらい尖ったアゴが強調されていて忘れられない。

 セザンヌって、僕のような素人からすると、ちょっと画風がとっつきづらい気もしていたが、よく見ていくと味があるというか・・・。少し、面白いなと感じ始めている。



 ◆ 『自画像』 エドゥアール・マネ 1878-79年頃 (旧松方コレクション)

 2月には展示されていなかったので、ひそかに楽しみにしていて見たかった作品(やっと見ることができた!)。マネは自画像を2枚しか描いていないようで、これもその1枚。背景上部は黒を使ってベタ塗り。背景下部は、黄土色のような色彩で地面を設定。人物を、平面から3次元に、立体的に見える工夫が見て取れる。。ズボンはタテの線で描かれていて、スッと立っている印象を受ける。

 この絵の右側に展示されているカイユボットの《ポール・ユゴーの肖像》の背景を見ると興味深い。


 
 コレクション展示
 



 ◆ 『レオポール・ルヴェールの肖像』エドガー・ドガ 1874年頃 

 ドガは目を患った関係でパステル作品が多い。その中で「油彩」でこれだけ大きいものが日本にあるというのも珍しい気がする。まだ絵画鑑賞歴が浅いので、ドガの「油彩」って「奇跡のクラークコレクション展」(2013)で4点見た以来。



 ◆ 『黄昏、ヴェネツィア』 クロード・モネ, 1908年頃

 「黄昏」。虹のような色彩が美しい作品。また、この虹色のような美しさ。この絵が描かれた背景、モネ自身にとっての「黄昏」の意味を考えると、よりその輝きを増す。見れば見るほど、魅力ある作品。


 
 ◆ 『雨のベリール』 クロード・モネ, 1886 (旧松方コレクション)

 相変わらず、とても鮮やかなマリンブルーが飛び込んでくる。松方コレクションとして、戦前に来日した作品。

 僕の勝手イメージだと戦前はモノクロのイメージ(もちろん実際はそんなことないけれど。笑)がある。あたりまえだけど、当時の人も、同じ色彩を見ていたのだなぁと思うと、不思議な気分。この”モネの鮮やかなマリンブルー”って、いや、印象派の画家たちの色彩感覚ともいえるかもしれないけど、時代を越えた新鮮さがあるように感じてしまう。

 


 
  展示の感想 
 



 ブリヂストン美術館のコレクションは、国立西洋美術館(松方コレクション)や大原美術館のコレクションと並んで、とても興味深い。戦前に日本にあった印象派などの西洋絵画を買い取ってコレクションにしているからかもしれない。


 ホームページなどであまり紹介されないが、ブリヂストン美術館の印象派絵画はわりとエピソードのあるものが多いことを知った。


 『巴里・印象派・日本 "開拓者"たちの真実』[吉川節子 日本経済新聞社 2005]


 『西洋絵画の到来―日本人を魅了したモネ、ルノワール、セザンヌなど 』[宮崎克己 日本経済新聞出版社 2007]


 どちらも、西洋美術(印象派を中心に)を日本人が受容してきた歴史を知るうえで、貴重な本。この2冊のおかげで、日本にある印象派絵画を見る眼が広がった。


 どんな作品にも、1枚1枚にその絵を好きだった人々のエピソードがあるように思う。ブリヂストン美術館でいえば、クロード・モネの《黄昏、ヴェネツィア》は、黒木竹子さんがいなければ。ポール・セザンヌの《帽子をかぶった自画像》でいえば、白樺派の運動がなければ、それぞれの絵ははたして、日本に来ていただろうか・・・。


 黒木竹子さんの名前を覚えていると、今度は国立西洋美術館の常設展でちょっとだけ「おお、この方か!」って思えるかもしれない。その逆もあるかも。



 西洋美術史としては、もっと昔からの一連の流れがあるけれど。「印象派とその周辺」だけでいえば、どうしても1874年のパリの写真家ナダールのスタジオを起点に、個々の画家たちの動きを追ったり、遡ったり、進んで広がっていくイメージがある。

 でも、戦前の日本から、モネ、ルノワール、セザンヌを見てゆくというのも、とても興味深いということを、ブリヂストン美術館の石橋コレクションは教えてくれる。だから、これは、「日本人が好きだった印象派」。当時の日本人の印象派の”審美眼”という視点でみると、同じ絵であっても、何度見ても飽きない。

  

 現在、時代背景もあって、どこの美術館も、印象派に関しては、新たな収蔵品を期待することはできないかもしれない。ただ、印象派が関係する展覧会が、国内のどこかで定期的に、開催されるおかげで、あまり残念という気もしない。


 それよりも、今ある作品をもっともっと掘り下げるような展覧会が見ることが出来れば、量でなく質的に、印象派絵画や画家の人生、美術に関する”眼”が深まっていくのかもしれない。

 たとえば、大原美術館のホームページの個別の作品に対する「エピソード」は1枚1枚の作品をすごく大事に考えていることがよく伝わる。


 また、国立西洋美術館のホームページのように”カタログレゾネ風”に「来歴」、「文献歴」、「展覧会歴」を掲載するテータ重視のものも面白い。


 展示で言えば、この夏にあった埼玉県立近代美術館のドラクロワの《聖ステパノの遺骸を抱え起こす弟子たち》(1860年)という1枚の絵を掘り下げた「リサーチ・プログラム ドラクロワをめぐって」という企画展示も、素晴らしいものだった。


 その意味で「エピソード」をもった作品が多く所蔵されているブリヂストン美術館の印象派コレクションは魅力的に映る。その意味で、もっと、「エピソード」を前面に出してもいいのかなと思う。絵画を一つの「点」とすると、そのエピソードは「線」。これらが繋がっていくと、印象派とその時代が、とても身近なものに感じる。


 ブリヂストン美術館、国立西洋美術館、大原美術館などを中心に、いつか「戦前に日本に入ってきた印象派絵画展」(「日本人が好きだった印象派展」でもいい)なんてやってほしいなぁと思ってしまう。

 
 [展覧会] ブリヂストン美術館 コレクション展示 (カイユボット-都市の印象派)
 [場所]  石橋財団ブリヂストン美術館 [東京・京橋]
 [期間]  2013年10月10日(木)~2013年12月29日(日)
 [入館料]  1,500円(一般)

【展覧会】 三菱一号館美術館名品選2013- 近代への眼差し 印象派と世紀末美術 -

2013-10-26 22:29:12 | 展覧会・美術館・博物館



 国立新美術館のあと(もう2週間くらい前のこと)は、丸の内の三菱一号館美術館。2月4月の「奇跡のクラークコレクション展」(感動のあまり2度見した)以来で、印象派の展覧会に行くようになって日が浅い自分の展覧会デビュー?の場所。

 今回もルノワールやモネなど、印象派絵画をある程度見ることが出来るということにつられて・・・足を運んでみた。ただ、展示のみどころは世紀末美術の版画。新たな関心事を見つけられたらと期待している。

 
1章 ミレーと印象派
 




3.『窓から見たエラニー通り、ナナカマドの木』 カミーユ・ピサロ 1887年 (寄託)

 ピサロが点描にこだわっていた時期の作品。エラニーの建物のカラフルさに惹かれる。


5.『ラファエロ《アテネの学園》の模写』 エドガー・ドガ 1857-58年頃 (寄託)

 これ珍しいのでは?とおもう。ラファエロ・サンティの『アテネの学童』(1509-1510年頃)の右端の人物2人の顔の部分をドガが模写したもの。油彩画。


6.『麦藁帽子の女性』ピエール=オーギュスト・ルノワール 1888-90年 (寄託)

 凄いの持ってるなぁと。ルノワールが試行錯誤から抜け出した時代のもの。背景の色彩が鮮やかさは絶妙。人物も”ふわっと”感がある。ルノワール必殺の背景の色を人物にも取り込む感じに惹かれる。


7.『長い髪をした若い娘(麦藁帽子の若い娘)』ピエール=オーギュスト・ルノワール 1884年 (寄託)
 人物に”つるつる”感があるアングルに影響を受けた時代のルノワール。こちらも、実物を見ると、背景の色彩が絶妙。

 *ちなみに、『ルノワール 幸福の画家』(ジル・ネレ TASCHEN, 2010)の中で、見開きでこの6,7の2枚の図版が、「アングル時代」と「真珠色の時代」の画風の比較として掲載されている。

8.『りんごとテーブルクロス』 ポール・セザンヌ 1879-80年 (寄託)

 初めて見たセザンヌのりんご。セザンヌでよく見る筆を縦に重ねて描く硬質な感じと、対照的なりんごの絶妙な丸み。


9.『草原の夕暮れ、ジヴェルニー』 クロード・モネ 1888年 (寄託)

 のどかなジヴェルニーの夕暮れ。どことなく心地よい風か入ってきそうな、ふわっとした美しさ。



 
2章 ルドンの「黒」
 


 オディロン・ルドンに関しては印象派展にも出品歴がある同時代の画家。ちょっとグロテスクで悪夢のような、個人的にはとっつきづらい作風だけど、花瓶の花の絵はいいなぁというイメージ。


 作品に関しては、”目玉の”ものとか・・・。結構あったと思うのだが、量もあったので、記憶から飛んでしまった。

 ルドンの版画が多く展示されていた。それにしても、この”想像力”、”発想力”はどこから生まれてくるのだろうというのはとても気になる。ルドンに関する本があったら、部分だけでも読んでみたいとおもった。


 
3章 トゥールーズ=ロートレックと仲間たち
 



 ロートレックの版画がコレクションされているブース。


29.『アリスティド・ブリュアン』アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 1893年

30.『アリスティド・ブリュアン』アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック 1893年

 一見、同じ版画なのだが、そこに書かれている文字など、デティールが異なる。版画ってこういうタイプが違うのがいくつもあるのだろうか?細かく見ていくと結構面白いかも。


52.『トゥールーズ=ロートレックの肖像』シャルル・モラン 1893年


 似てる。


55.『前向きのピエール・ルノワール』 1893年

 ルノワールのリトグラフも見ることができた。鋭い感じの目をした赤ちゃん。

 そういえば、これ、以前、あまりに格安だったので、興味本位で買った90年くらい前のルノワールの書籍。あの中にあったなぁ。これが、本文の図版と独立してて、いくつか一緒に閉じ込んである。あれもリトグラフなのか?と気になる。切り離したりはしないけど、飾ってあるリトグラフって、どのように流通していったものなのだろうかというのは気になるところ。


 
4章 『レスタンプ・オリジナル』
 




59.『アンリ・ベックの肖像』 1893年 オーギュスト・ロダン

 ロダンも版画作品を手掛けてたのかと、新鮮に感じた。知っている人は知っているのかもしれないけど、自分のように、知らないことが多いと、結構いろんなことが新鮮に感じる。笑。


66.『聖アントニヌスの誘惑』 1893年 アンリ・ファンタン=ラトゥール


 アンリ・ファンタン=ラトゥールがこのテーマ(構図は異なる)の油彩画が国立西洋美術館にあるらしいが、そちらもいつか見てみたい。




 
5章 版画家ヴァロットンの誕生
 



86.『息づく街パリ Ⅲ「ブタ箱送り」』フェリックス・ヴァロットン 1893年

 題名が面白い。何かをやってしまったのか?どこかへ、連れていかれてしまう様子。


98.『信頼する人』 フェリックス・ヴァロットン 1895年

 これ、「信頼し合う人」じゃなくて、「信頼する人」になっているのは、特に意味がないのかな?とふと考えてしまった。「信頼する人」だとしたら、この男女のどちら目線での話になるのだろうかと・・・。

 


 
6章 ルドン、夢の色彩
 


114.『グラン・ブーケ(大きな花束)』オディロン・ルドン 1901年

 幻想的なルドンの花の絵。想像上に大きな作品。しかも、パステル×カンヴァスという珍しい組み合わせ。


 
7章 ルノワールとモネの後半生
 




116.『パリスの審判』ピエール=オーギュスト・ルノワール 1908年 (寄託)


 ルノワールの『パリスの審判』はひろしま美術館にあるということは知っているけど、ここにもあった。ルノワールは晩年になると、神話のテーマをよく描く中で、「パリスの審判」はも主要テーマだった模様。

 そういえば、梅原龍三郎[1888-1986]もルノワールの「パリスの審判」を模写した絵があったような・・・と引っかかっていて。帰宅して、『梅原龍三郎とルノワール』という本を見てみると、まさかの、これでは!。たぶん、だけど。そう見ていくと、また違った趣がある。


 
8章 画商ヴォラールと画家たち 出版業界を中心に
 




147.『婦人、秋』エドモン=フランソワ・アマン=ジャン 1924年頃


 エドモン・アマン=ジャンの絵画は国立西洋美術館の『黒木夫人』以来。前者がアカデミックな感じだったのに対して、こちらは、わりと柔らかい感じの色彩と作風。とても大きな油彩画。背景の色抑えたトーンで、秋の少し冷たい感じが出ている。

 
展覧会の感想
 



 バルビゾン派だとミレーが1枚あった。2014年10月17日から『ボストン美術館 ミレー展―傑作の数々と画家の真実』という展覧会がある。ボストン美術館のミレーコレクションって、きっとすごいのだろうなぁ。

 印象派絵画に関しては、シスレー1枚、ドガ1枚、ピサロ2枚、ルノワール4枚、モネ2枚、だったか?展示数は決して多くはないが、個人的に見たことがなかったもの、いいな、凄いな、と思う作品が多くあった。この美術館の油彩画は個人所蔵による寄託作品になっているのが興味深い。

 これって、個人のコレクターが美術館に預けてくれているということだと思う。”プライベート・コレクション”って、文字通り個人所有なので、研究者や画商、知人でもない限り、実物を一生見ることができない作品もあるかと思う。そう考えると、このように「寄託」という形で、人の目に触れる機会があることをありがたいと思う。


 印象派絵画に興味があるので、自分はどうしても油彩画の色彩や落ち着いたテーマを好んで見がち・・・。ただ、画家の人生に興味がわいてくると、どうしても19世紀フランスはどういう時代だったのかという周辺の興味につながってくる。この展覧会で、ロートレック、ルドン、ヴァロットン、普段触れることのない作家たちの作品を見ることができたのはとてもよかった。


 とくに版画を通じて、感じたのは”時代”。ロートレックやヴァロットンの版画は、当時の人々がどのような生活をしていたのか、その一面が垣間見える。また、ルドンのようにどのようなことを考えてのか、だったり。油彩画よりも、より突っ込んだ”時代”が見えてくるという意味で興味深かった。それが約140点、15人前後の様々なアーティストの視点、作品を見ることができる。


 『レスタンプ・オリジナル』は実に多くのアーティストの作品を見ることが出来て、とても面白い。だが、『レスタンプ・オリジナル』とは何なのか?、本なのか、雑誌なのか、展示作品はそれを切り取ったものなのか?そのあたりをいまいち理解してきれていない自分もいて。笑。もうすこし、ちゃんと調べようと思った。


 
 また、たった1枚のオリジナルの絵画から、多くの人の目に触れる商業・広告ポスターへ。版画ひとつとっても、同じものを(厳密には違うかもしれないが)複数・大量生産していくことで、より多くの人に見て欲しいというツールでもある。そもそも、ポスターやリトグラフ自体が、印刷技術の革新という点で、近代化・工業化の象徴でもあるといえるかもしれない。

 たとえば、(今回展示はない作家だが)アルフォンス・ミュシャが描く世界観(たとえば女優のサラ・ベルナール)と、同時代の印象派画家、たとえば、ルノワールが描く世界観(たとえば、女優のジャンヌ・サマリー)は当然ながら異なる。

 でも、同じ時代を生きていたわけで、そういった様々な世界観を持った画家たちが、19世紀後半から20世紀の初頭のパリに存在して、様々な表現をしていたという感じが、とても魅力的に映る。

 興味の幅が広がりそうな、そんな展覧会だった。

 この展覧会の書籍と小冊子があったが、残念ながら、本格的な図録はなかった。とてもよい展覧会だったので図録があればよかった。とりあえず、記念に、小冊子を購入。そのかわり、なぜか、フィナベルのキャンディーを買ってしまった。。。

 最後は、とても楽しみにしていた、ブリヂストン美術館のカイユボット展へ。


 [展覧会] 三菱一号館美術館名品選2013- 近代への眼差し 印象派と世紀末美術 -
 [場所]  三菱一号館美術館 [東京・丸の内]
 [期間]  2013年10月5日(土)~2014年1月5日(日)
 [入館料]  1,300円(一般) 


【展覧会】 印象派を超えて - 点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで @国立新美術館

2013-10-25 22:24:45 | 展覧会・美術館・博物館


 もう2週間も前のこと。10月のこの日は、印象派関連で気になる展覧会がいくつかあったので、半日都内の美術館巡り。まずは、乃木坂の国立新美術館へ。

 六本木の国立新美術館には、初めて足を運んだ。ここは、展覧会専門の美術館のようだ。ガラス張りで流線型の建築物は、黒川紀章[1934-2007]の設計。2007年開館。ガラスを多用しているので、内部も、明るすぎず、暗すぎず。適度な光が入ってくる。


 『クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に「印象派を超えて―点描の画家たち」ゴッホ、スーラからモンドリアンまで』


 点描画にスポットをあてた印象派の周辺の展覧会ということで、気になっていた。ゴッホが前面に出ているが、個人的には印象派絵画と、スーラやシニャック以外で、日本ではなかなか見ることのできないオランダの美術館ならではの、気になる画家がいればいいなぁという出会いに期待して足を運んでみた。

 
 Ⅰ 印象派の筆触
 


 国内の美術館の印象派コレクションで構成されている。


1.『茅ぶき屋根の家』 クロード・モネ 1879年 上原近代美術館

 家の壁の色彩がどこかおしゃれな感じ。


2.『サン=ジェルマンの森の中で』 クロード・モネ 1882年 吉野石膏株式会社(山形美術館 寄託)

 美しい。。。早くも来てよかったと思えた作品。ルノワールの『木かげ』(1880年頃 国立西洋美術館)、斎藤豊作の『残れる光』(1912年)など、回廊風になっている緑道の絵画に惹かれる。

 この絵も色彩が絶妙で、とても美しいモネの油彩。


5.『舟遊び』 アルフレッド・シスレー 1877年 島根県立美術館

 まず、川の鮮やかな濃いブルーが目に飛び込んでくる。国立西洋美術館にモネがジヴェルニーの庭で船を浮かべて遊ぶ家族を大きく描いた『舟遊び』(1886年)があるが、シスレーのものは、その様子は小さく描かれている。なんとなく、控えめ?なシスレーのイメージにぴったり。


7.『モレのポプラ並木』 アルフレッド・シスレー 1888年 吉野石膏株式会社(山形美術館 寄託)


 とても明るい並木を描いた作品。それにしても、以前見た、ピサロの『ポントワーズの橋』(1878年)もそうだけど、年代を見ても、吉野石膏コレクションってすごいものあるなぁと少し気になった。



 
 Ⅱ スーラとシニャック - 分割主義の誕生と展開
 


 スーラとシニャックを中心に、19世紀フランスで活躍した点描画家の作品を中心に構成。スーラとシニャックに関しては、素描や作風の変化など、国内では見ることのできない一面を見ることができた。


18.『ダイニングルーム 作品152』 ポール・シニャック 1886-87年 クレラー=ミュラー美術館

 いままで見たことのあるシニャックの作品は、1900年初頭の点が太くて鮮やかな風景画。この作品は、自分の中でのシニャックのイメージに無かった人物が描かれていて点も細かく少し驚かされた。どちらかというとスーラが描きそうなイメージ。


23.『オレンジを積んだ船、マルセイユ』 ポール・シニャック 1923年 松岡美術館

 よく見るシニャックの太い点と鮮やかな色彩。構図も含め、とても惹かれる。


26.『エラニーの農園』 カミーユ・ピサロ 1885年 サントリー・コレクション

 ピサロが点描に入っていく時代の作品。


28.『サン・トロヴァ―ソ橋(ヴェニス)』 アンリ=エドモン・クロス 1903-1905年頃 クレラー=ミュラー美術館


30.『パリ、モンマルトルからの眺め』 マクシミリアン・リュス 1887年 クレラー=ミュラー美術館
 書籍で何点か見たことがるが、初めて見るマクシミリアン・リュス。点が細かいが、立体感が出ている。そういえばゴッホも、似ている風景を描いていたような。


31.『鋳鉄工場』 マクシミリアン・リュス 1899年 クレラー=ミュラー美術館
 なんか肌が焼けてきそうな・・・。構図というかテーマだったり、この大きさで点描だったり、凄みを感じる。



 
 Ⅲ ゴッホと分割主義
 


  オランダ屈指のゴッホ・コレクションを所蔵するクレラー=ミュラー美術館。ほんの一部だと思うが、点表現を中心としたゴッホ作品をまとまって見ることができた。


37.『自画像』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1887年 クレラー=ミュラー美術館

 初めて見たゴッホの自画像。


38.『レストランの内部』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1887年 クレラー=ミュラー美術館
 
 ゴッホも点描をしてたのかと、新鮮な感じ。室内の壁に部分的に使っている。時期的には、パリ滞在時代。しかも、スーラが出てきた時期でもあり、そういった影響を受けているのだろうか。


41.『種まく人』 フィンセント・ファン・ゴッホ 1888年 クレラー=ミュラー美術館

 太陽も描くし、ミレーもダイレクトに取り入れて、影響を受ける力というか、ゴッホって素直なんだなぁと思わせる作品。


43.『若い女の肖像』フィンセント・ファン・ゴッホ 1890年 クレラー=ミュラー美術館

 顔の色が緑って・・・。背景にも同色の点々を描いている。ルノワールの肖像画はよく、人物の一部と背景の一部に同じ色をつかって綺麗に調和させていたりする。ゴッホの色彩って独特、どういう感情でこういう色遣いになるのか、気になるところ。



 ゴッホの作品をまとめてみることができた。ゴッホに関しては、晩年のエピソードがある程度知られているせいもあるが、どこか”影”があるように見えてしまう。明るい色彩ひとつとても、ルノワールとは対照的に、怖いくらいと感じるくらいの凄みを感じてしまう。


 また、ゴッホ作品がすべて、シンプルで新しい木の額で統一されていたことが新鮮だった。華美な額で飾るよりも、ゴッホの素朴さがより伝わってくる。ゴッホを知り尽くしたクレラー=ミュラー美術館ならではの視点かもしれない。
 


 
 Ⅳ ベルギーとオランダの分割主義
 


 オランダ周辺の点描画家たちの作品群。特に、ヤン・トーロップの作品を多く見ることができる。 

62.『テムズ河畔の工場』ジョルジュ・レメン 1892年頃 クレラー=ミュラー美術館
 グラフィック感のある点描画。スーラに近い感じ。


53.『《7月の朝》あるいは《果樹園》あるいは《庭園に集う家族》』テオ・ファン・レイセルベルへ 1890年 クレラー=ミュラー美術館
 テオ・ファン・レイセルベルへは7月の『エミール・クラウスとベルギー印象派』展、以来。その時を彷彿とさせる柔らかい光を、きめの細かい点描で表現。


54.『ブローニュ=シュル=メール』テオ・ファン・レイセルベルへ 1899年 クレラー=ミュラー美術館

 海の”点”とそれ以外の”点”、形を変えることで海の水面が揺らめく感じが出ている。
 


55.『《読書する女》あるいは《青い帽子の女》あるいは《青い帽子》』テオ・ファン・レイセルベルへ 1900年 クレラー=ミュラー美術館


 少し太めのとても鮮やかで美しいな点。個人的にはこの描き方が一番好きかも。描き方は違うのだが、ルノワールの『縫い物をするマリー=テレーズ・デュラン=リュエル』(1882年)の背景の鮮やかさと印象が重なる。



70.『L ラウルセンの肖像』ヤン・トーロップ 1911年 クレラー=ミュラー美術館


 点というよりも太い線がベースの肖像画。これだけ太い線の集合で肖像画が描けてしまうというのが凄い。



89.『午後の太陽』レオ・ヘステル 1908年 クレラー=ミュラー美術館


  黄緑の緑道に、木の影を濃い緑で。フォーヴィズムっぽい色づかいだが、描き方はどこか、印象派に近い感じの風景画。





 
 Ⅴ モンドリアン - 究極の帰結
 


 10点以上の作品で、ピート・モンドリアンという画家の作風の変化の軌跡がよくわかる展示構成。「風景画から始まって、抽象画、現代アートのようなところまでいってしまうのか・・・」という面白さがあった。

 点描の究極形ってこれなの?という。あまり知識も深くなく、印象派を好んで見ているせいか、現代アートに近づいていくと、ちょっと目がついていけない感じもあった。

 
 展覧会の感想
 


 印象派については展覧会のメインではないが、国内の印象派作品を見に行きたくても、普段、なかなか日本各地の美術館に足を運ぶことができないので、こうやって貸し出してくれるのはありがたい。

 国内の印象派に関しては、図録で確認すると、東京展では展示されてなかったものも数枚あった。おそらく、国内美術館所蔵の印象派に関しては、各会場で展示構成が異なるのかもしれない。クロード・モネの『ジヴェルニーの草原』(1890年、福島県立美術館 蔵)は東京展には展示されていなかったが、いつか見てみたい。


 オランダのクレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に、よく知られている画家だと、フィンセント・ファン・ゴッホやジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックの絵画を見ることができた。


 特に、シニャックに関しては、1900年以降のいままで「太めの点」の作品しか見たことがなく、そのような印象だったが、いろんな作風の作品を見ることができた。個人的に、気になった画家は、マクシミリアン・リュスとテオ・ファン・レイセルベルへ。


 ただ、展覧会のみどころは同時代のオランダ・ベルギーの点描画家たちの軌跡にあるかもしれない。同じ点描と言っても、画家たちのテーマは様々で、肖像画や風景画だけでなく、象徴主義のようなテーマまで幅広い。特に、ヤン・トーロップという画家の作品は10枚以上あって、モンドリアンと同じくらい作風の変化を見ることができて興味深かった。

 この展覧会を通じて、印象派から点描を通じて現代へ向かっていく画風の変化を見ていくことができる。


 見たい本があったので、アートライブラリーにも寄ってみた。次は、三菱一号館美術館へ。




 
 [展覧会]  クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に
        印象派を超えて―点描の画家たち」ゴッホ、スーラからモンドリアンまで
 [場所]   国立新美術館 [東京・乃木坂]
 [期間]   2013年10月4日(金)~12月23日(月・祝)
 [入館料]  1,300円(一般)
 [巡回]   広島県立美術館 2014年1月2日(木)~2月16日(日)
        愛知県美術館 2014年2月25日(火)~4月6日(日)
 [備考]   クレラー=ミュラー美術館 [オランダ・オッテルロー]


 
 - TV番組 (2013.11.14 付記) -

◆ 日曜美術館 「“魂”を見つめたコレクション クレラー=ミュラー美術館・画家たちの色彩革命」 NHK, 2013.11.17 


【美術館】 横浜美術館コレクション展 (2013年度第2期) @横浜美術館

2013-10-13 12:17:45 | 展覧会・美術館・博物館


 大混雑の「プーシキン美術館展」を見終わった。横浜美術館のコレクションに関して、事前に調べていたものの、特に楽しみにしていた絵画があったわけでもなく、朝から箱根に行ってきた疲れで、もうこのまま帰ろうかと思っていた。

 ただ、「プーシキン美術館展」のチケットでそのまま常設展も見れるという説明もあり、折角だから、もうすこし落ち着いて絵を見たいと思い常設展へ。

   
 展示室3 木村希八コレクション
 


 ◆ 『パリ』 小野州一 1967年 

 色彩が鮮やかで、絵の雰囲気がどことなくラウル・デュフィを彷彿とされる。


   
 展示室4 大佛次郎コレクション(没後40年 大佛次郎記念館連携展示)
 
 

 ◆ 『ドレフュス事件』シリーズのエッチング ポール・ルヌアール 1895-99, 1907年


 作家の大佛次郎[1897-1973]氏のコレクションのポール・ルヌアールのとてもリアリティのある銅版画。「ドレフュス事件」シリーズはとても興味深かった。当時の法廷の様子、弁護士のオーバーリアクションのような姿。その時代の注目度を感じる。

(余談)

 普段目にしている印象派やモネの時系列にも、この事件のことが出てくる。


 ドレフュス事件に関しては、19世紀絵画の流れて触れる程度で、本格的に書籍を読んだことはないのだけど。ユダヤ人に対する認識について、特にその後のドイツとの比較において、この事件が分岐点だったようにも思う。

 

 
 この事件に詳しいわけではないが、大まかな背景を把握していれば、とても楽しめる。大佛次郎の著作『ドレフュス事件』があった。この版画コレクションは資料として使ったのだろうか。読んでみたくなった。


   
 展示室5 坂田武雄コレクション
 
 


 種苗業を営んでいた実業家・坂田武雄[1881-1984]氏が寄贈した19世紀西洋絵画コレクション。 
 


 ◆ 『オランダ運河』 ヨハン・バルトルト・ヨンキント 制作年不詳

 ◆ 『牧舎』 シャルル=エミール・ジャック 制作年不詳


 印象派以前のバルビゾン派で、ちょっとマニアックなシャルル=エミール・ジャックの”羊”。

 
 ◆ 『海岸の竜巻(エトルタ)』 ギュスターヴ・クールベ 1870年頃


 ◆ 『農婦』 カミーユ・ピサロ 制作年不詳

 
 ピサロの素描。

 
 
 ◆ 『東京の雨の日』 アルフレッド・イースト 制作年不詳

 
 明治の日本を描いたイギリス人画家、サー・アルフレッド・イーストの水彩。初めて見た。西洋絵画であって、日本が描かれているという珍しい感覚。もっと見てみたい。


 
 ◆ 『岩の上の女神』 ギュスターヴ・モロー 1890年頃


 国立西洋美術館の素描展以来のギュスターヴ・モロー。装飾の色彩が鮮やか。


 ◆ 『ニンフ』ジャン=ジャック・エンネル

 暗いトーンの背景と対照的にターコイズ・ブルーが鮮やか。旧松方コレクション


 ◆ 『ロシアの少年』 イリヤ・レーピン 1883年

 どことなく愛嬌のある表情をしている、とてもリアルの少年の肖像画。  


  
 展覧会全体の感想 
 
 

 全体的に、国内外の20世紀美術から、19世紀まで、著名な画家の絵が基本1点ずつ展示されていた。そして、何より”寄贈”されている作品の多さに気づかされる。

 印象派周辺の「ドレフュス事件」やバルビゾンなど自然主義の画家の絵画を見ることができた。「プーシキン美術館展」だけでなく、横浜美術館のコレクション展のほうも、有意義だった。とても心地よく快適に絵画を見ることができた。常設展のいいところは、いろんな絵画が見ることができるので、興味の幅も少し広がる。

 セザンヌやウジェーヌ・カリエールといった近代フランスの画家の絵画も所蔵しているようなので、次に展覧会で横浜美術館を訪れるときは、また常設展ものぞいてみたい。

 
 [展覧会] 横浜美術館コレクション展
      2013年度第2期 収集のよろこび
      -美術館にみる個人コレクション
 [場所]  横浜美術館 [神奈川・横浜]
 [期間]  2013年7月6日~9月16日
 [入館料] 500円(一般)*プーシキン美術館展の入場券で入場可能 

【展覧会】 プーシキン美術館展 フランス絵画300年 @横浜美術館

2013-10-09 22:21:23 | 展覧会・美術館・博物館


 箱根のポーラ美術館から午後は横浜美術館へ。8月のこの日は猛暑日で、箱根と違いまさに”ヒートアイランド”。横浜美術館前の噴水広場付近では、冷却ミストが出迎えてくれる。

 例にもれず、ルノワールの『ジャンヌ・サマリー』が来るということで、個人的にどうしても外せなかった展覧会。ただ、美術館には入って「やってしまった・・・」と。チケット購入に並びが出来ていて、10分~15分、ほど並んだ。

 実際入ってみて・・・、大混雑。これは落ち着いて見るには厳しい。1枚の絵に人がギッシリ、古典絵画が多く解説のイヤホンの方も多いのも仕方のないことだが、これがなかなか容易に前に進まない。これはもうある意味お互いさまの世界なので、仕方がない。古典絵画と19世紀前半一部はゆっくり見るのはあきらめて、遠目から眺めるだけにとどめ。ピンポイントで見たいところに時間をかけることに。


  
 17-18世紀  古典主義、ロココ
 




 07 『蝋燭の前の少女』 ジャン=バティスト・サンテール 1700年頃

 蝋燭の光の効果と少女の穏やかな表情とてもリアルに見えた。絵のイメージが、どこか、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの『灯火の前のマグダラのマリア』と重なった。 


 12 『ユピテルとカリスト』

 BS日テレ『ぶらぶら美術・博物館』で予習?したときに出てきた絵。当初はなんか、もっと微笑ましい風景という印象だったのだが・・・。背景をちょっと知ると、なんかイメージが変わって見える。


  
 19世紀前半  新古典主義、ロマン主義、自然主義 
 


 19世紀前半は、印象派に影響を及ぼしたバルビゾン派やルノワールが参考にしたアングル、ドラクロワ、あたりはじっくり見ようと。


 25 『聖杯の前の聖母』 ジャン=オーギュスト・ドミニク・アングル 1841年

 ルノワールが研究した画家の一人。アングルはラファエロに学んだだけあって、古典に忠実というか、ルネサンス感が出ている。同時に、浮き出るような、グラフィック感が凄い。


 31 『難破して』 ウジェーヌ・ドラクロワ 1840-47年頃

 アングルとは対照的に、ドラクロワはデッサンが影響してか、絵に”動き”を感じる。そして、全体は暗めに抑えながらも、海のマリンブルーが浮き立つ。この海の色は、当時からしたら、かなり思い切った色彩ではないかと思う。


 33 『ナイルの渡し舟を待ちながら』 ウジェーヌ・フロマンタン 1872年

 薄い水色で、目に留まった。遠目に見ていたので、ラクダが小さくて。それでもしっかりラクダだと分かるほど、細かく丁寧に描かれている。

 1872年といえばルノワールが『アルジェリア風パリの女たち』[国立西洋美術館]を描いた年でもある。描き方はまったく違うが、地中海の向こう側のエジプトやアルジェリアといった”東方趣味”がこの時代のひとつのトレンドであり、主題だったのだろうなぁと想像させる。


 35 『突風』 ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 1860年代半ば


 繊細なタッチで右から左へ流れる強風。人がその強風に逆らいながら歩く。コローの表現力、凄い。


 

  
 19世紀後半  印象派、ポスト印象主義 
 



 とにかく混雑でなかなか前に進まずとも、ここは根気強く見ていく。クロード・モネの『草上の昼食(習作)』はぜひ見てみたかったが、来ていなかったようだ。まぁ、かなり大きい作品のようだから、持ってくるのは無理かもしれない。


 37 『アントナン・プルーストの肖像』 エドゥアール・マネ 1877-80年頃

 マネの肖像画。アントナン・プルースト!?。マネに関する本書いてる人では!(『マネの想い出』実際には死後、彼の原稿を、他の人がまとめたものだけど)。

 マネの親友で政治家のアントナン・プルースト[1832-1905]。マネが描くと、ちょっとほのぼのとした優しい人に見えてくる。他にも、マネらしくない”癖”のないカッコいいプルーストの肖像も残っておりそちらの方が有名かも。


 38 『陽だまりのライラック』 クロード・モネ 1872-73年

 
 展示位置が角だったこともあり、ここも大混雑。ピンクとブルーのライラックの花が”ふわっ”としている感じに惹かれる。最初はなんとなく気がつかなかったけど、人物画が日陰で休んでた...。ライラックの木?ってデカい。


 40 『ジャンヌ・サマリーの肖像』 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1877年

 背景ピンクをイメージで”バーン!”と持ってくるところが、この時代、斬新というか、ある意味クレイジーの域なのかも。想像だけど、すごく感情的に、熱中して描いてたんじゃないかなと。”色彩家”としてのルノワールは、かなり引き寄せられるものがある。

 実際、画集でよく見ていたせいもあって、特段新たな発見もなかったのだが、なんとも”引力”があって、離れられない感があった。


 39 『セーヌの水浴(ラ・グルヌイエール)』 ピエール=オーギュスト・ルノワール 1869年

 これも、見たかった1枚。実物は想像以上に鮮やかだったことに少し驚く。


 41 『バレエの稽古』 エドガー・ドガ 1875-77年

 初めて見た。ドガのパステル。光がカーテンを通じて入って、床にうつる部分をピンクで描いている柔らかい感じが印象的。この時代「ピンク」を使って光の効果を表現したのは、もしかしたらルノワールに先駆けていたのかもしれない。

 ピンクという色を、光の効果として使ったドガと、(おそらく)イメージで使ったルノワール。なんとなく、そんなことを思う。


 43 『夜明けのパリ』 ルイジ・ロワール 1880年代後半-1890年代前半

 
 暗く冷たそうな街並みに灯る暖かそうな明かりが特徴的。ルイジ・ロワール、初めて知った画家。気になる。


 46 『パイプをくわえた男』 ポール・セザンヌ 1893-96年頃

 
 とても大きな作品で圧倒される。特に、机の形が独特。この後の、”キュビズム”の到来を予感させる。


 47 『水浴』 ポール・セザンヌ 1890年代
 
 風景がほぼ一貫して、縦めの短い線で描かれてるので、とても硬質なイメージ。セザンヌのイメージの中ではやや明るい色彩の絵。作品というよりは、習作のような実験的な要素が強い。
 

 54 『水浴のあと』 アンリ・ルバスク 1906-07年頃
 
 新印象派的で、柔らかい色彩で描かれている絵に惹かれる。女性の体にうつる木漏れ日の光を描いているように見える。アンリ・ルバスク、ちょっと気になる。


 
  
 20世紀後半  フォービズム、キュビズム、エコールド・パリ
 



 59 『マジョルカ島の女』 パブロ・ピカソ 1905年頃
 
 アングルの『聖杯の前の聖母』、ルノワールの『ジャンヌ・サマリー』ともう1枚
、この絵も十分に表紙になりそうな気がする。そして見てみたかった1枚。ちょっとセザンヌっぽく、人の”カタチ”を無機質に描いているような。対照的に、背景のブルーは感情的な。。惹かれる肖像画。


 64 『少女の顔』 モイーズ・キスリング 1924年
 
 これまで、キスリングの絵を何枚見て、何かしら印象に残ってきた。そのなかでも、この絵の不安そうな、憂いのある表情のインパクトはもの凄い。




  
 展覧会全体感想 
 


 基本的に画家1人につき1作品なので、とにかく幅広い時代の多くの画家の作品を見ることができる。ただ、ルノワールが”ずどーん”と前面に出ているからといって、印象派絵画が多く展示されているわけではない。ただ、それでも印象派時代の1枚1枚の作品は、どれも素晴らしいもの。

 

 どうも、行く時期を間違えてしまったようで、混雑で落ち着いてみることが出来なかったことは残念だった。どうも、自分が印象派などの絵に興味を持ち始めて1年くらいで展覧会慣れしていないので、なおさらそう思うのかもしれないが・・・。

 ただやはり、これだけの絵画を見る機会というのは、貴重な時間だった。だからこその混雑だったのかもしれない。

 この展覧会自体、2011年に企画されていたが、一度は震災で中止になった。そこから、こうやってまた世界遺産級の美術品を貸し出してくれた、ロシア・プーシキン美術館の方々と、日本の関係者の方々に改めて感謝したい。







 
 [展覧会] プーシキン美術館展 フランス絵画300年
 [場所]   横浜美術館
        [神奈川・横浜]
 [期間]   2013年7月6日~9月16日
 [巡回]   愛知県美術館 2013年4月26日(金)~6月23日(日)
        神戸市立博物館 2013年9月28日(土)~12月8日(日)
 [入館料]  1,500円(一般)


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 《国立プーシキン造形美術館のアントノワ総裁に日本から旭日重光章》 [The Voice of Russia (2013.12.19)]