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DOZING GREEN(UROBOROSの12曲目)の感想・レビュー

2016-10-22 19:52:49 | DIR EN GRE...

ウロボロスとは、自分の尻尾を食べた竜とか蛇のことである。
「循環」とか「永遠」とか、そういうのを表現している神話である。
お腹が空いて自分の尻尾を食べちゃうなんて可愛いですよね。

DIR EN GREYがUROBOROSで表現したかったのは人類普遍の痛みである「生と死」であり、
神話のウロボロスは表現のモチーフに用いただけである。
しかしDIR EN GREYは素晴らしいバンドなので、単なるモチーフに留まらず、
徹底的にUROBOROSをウロボロスしている。


DOZING GREENのPV(プロモーションビデオ)のテーマは「飢餓」だと思う。




自らの足を切り落としている人形や、這いずるムカデが印象的だ。
だが、詞世界はそれ以上に「飢え」ている。

「蟲食う」、「開けた傷口」、「涙もろい首」。
短い歌詞の中にこれでもかというほど空虚や飢えを連想させる言葉がある。
DIR EN GREYの曲はメッセージソングではないので、歌詞を具体的な意味に解釈することは無意味であるが、
曲自体が表現したいのは「飢餓」であると解釈するのが自然だろう。

DIR EN GREYは何に飢えているんだろうか?
歌詞の最後らへんの「Love Me」につられて、「愛に飢えているんだ」と解釈するのはあまりにも短絡的です。GReeeeNとかを聴いててください。
ヒントはDOZING GREEN発売前のDIR EN GREYの活動状況にあると思う。

DIR EN GREYは2005年頃から急激に海外での活動が増え、音楽フェスで海外のメタルバンドと共演する機会も多かった。
その頃の最新アルバムである「Withering to death.」は繊細な表現の映える、まさに「枯れ果てた名盤」であったが、
当時の彼らはそれをライブで十分に表現できるほどの技術や経験が足りなかったように思う。
自然体かつパワフルなパフォーマンスで聴衆を沸かせるメタルバンドを横目に悔しい思いをしたのではないだろうか。
その結果、やたらフィジカル的な表現に終始した次作「THE MARROW OF A BONE」に繋がったのだろう。
THE MARROW OF A BONEは怒りに満ちた表現のアルバムだったが、反面「一体何に怒っているんだろう。」と思ってしまう問題作であった。
まるで『吐き気は催すんだけど胃の中がカラッポだからダラダラ胃液を垂れ流している』ようなアルバムである。

大変下品な喩え話で恐縮だが、思春期のころに異性と一切関わりを持てなかった中年男性が、
女装とかロリコンとか歪んだ性癖に没頭することで、性欲の衰えを補おうとする現象に似ている。
要するに、肉体的性欲のピークと精神的性欲のピークのズレが「変態」を生むのである。

DIR EN GREYの肉体的性欲のピークはまさに「Withering to death.」の頃である。
あの頃の彼らは「今すぐにでも解散するんじゃないか」というくらいの気迫に満ちていた。
表現したいコトはいくらでもあっただろう。
しかし彼らの生の表現は海外に上手く伝わらなかった。
表現内容とかコンセプトとかよりもっと手前の問題。技術とか、経験とか、人間関係とか、そういう大前提の話。
そういったわけで自分たちのこれまでの活動自体に疑問が芽生え、メイクをやめたり、やたらハードな曲調に変化したりした。歌詞カードも見にくくした。
THE MARROW OF A BONEでの「カラッポの表現」、「表現したいことがない表現」を経験した彼らは、
「表現する意味」、「表現するもの」に飢えていたのである。

DOZING GREEN、直訳で「まどろむ緑」。
彼らは穏やかな草木の中に包まれたとしても、優し気な愛情に抱かれたとしても、
深い眠りにつけないほどの焦燥感、飢えを感じていたのである。

ウロボロスは自らを食べなければ完成しない。永遠の始まり、罪の始まりは飢えなのである。
だからUROBOROSの実質的な1曲目はSA BIRでもVINUSHKAでもなく、DOZING GREENである。
DOZING GREENで永遠が幕を開け、INCONVENIENT IDEALがその罪と共に世界を浄化し、SA BIR、VINUSHKAで生まれながらの罪、「原罪」を背負ったまま生まれ変わるのがUROBOROSの序章なのだ。
この曲がシングル一発目で発売されたのはそういうわけだ。

ちなみにDOZING GREENは発売形態によって何種類かパターンがあるのだが、私の一番のオススメはシングルCDバージョンである。
ギターの音が非常にフラットで、イントロの最高のリフが心ゆくまで楽しめる。
京の「In The Sun」もエコーが抑えられ、鋭さ、艶やかさが強調される。



ありがとうございました。




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