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GPIF年金運用損「5.3兆円」よりも深刻な問題

2017-02-24 00:53:02 | 日記
今週もナナメに考えた  鈴木貴博 [百年コンサルティング代表]

【第27回】 2016年8月5日

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2015年度の運用実績が5.3兆円の赤字になったと発表した。

 GPIFは一昨年11月に運用資産に占める株式の割合の上限をそれまでの2倍にあたる約50%に拡大し、実際に株式の運用比率を44%にまで買い進めたが、そのタイミングで昨年後半にチャイナショックなどのグローバルな経済危機が表面化した。そして運用結果が危ぶまれていたなか、実際に3月末時点では5年ぶりに運用実績は赤字になったことが今回発表されたわけだ。

 この赤字が巨額だということで「問題だ」と声高に叫ぶ政治家も出てきたが、実際の問題はそこではない。GPIFの資産運用については後述するように大きな別の問題がふたつあり、赤字を出したこと自体は実は問題ではないのだ。まずはその話から説明しよう。

長期運用の視点で見れば
損失5.3兆円は大きくない

 なぜ5.3兆円もの損を出したのにそれが問題ではないのか?それは巨額な資金を運用していけば「そういう結果になる年はかならず出てくる」からであり、かつ「累積の運用実績でみれば吸収できる範囲内の損失」だからである。

 実際、2012年度から2014年度にかけては3年連続して運用収益は10兆円を超えている。円安とアベノミクスで株価が上昇したからだ。その前の民主党政権時代でも震災で経済が停滞したにもかかわらず3年間合計すれば10兆円規模の黒字と、過去の実績は悪くない。

 2001年度に年金資産の自主運用を開始してからの成績を見れば、134兆円の運用資産の累積収益額は45.4兆円の黒字で年率2.7%の運用収益を上げている。単純計算では年金の運用資産の3分の1は運用収益という計算になるから、これは資産運用として考えれば堂々たる好成績だ。

 昨年度の損失5.3兆円は運用収益率で計算すればマイナス3.8%という運用成績で、長期運用をしている場合の単年度の損失としてはそれほど大きな数字ではない。単年度の赤字が巨額に見えるからといって、その結果だけを非難するのは、運用を知っている者からみればナンセンスな話なのである。

GPIFの株式での運用比率増に
“政治利用疑惑”も

 しかし実は今回の年金の損失については、それとは別にふたつ大きな問題点がある。今回はその話をすることにしよう。

 ひとつは2014年11月に発表されたGPIFの運用比率変更が“政治的に利用された疑惑”が強いことだ。ちょうどこの時期は、アベノミクスに翳りが見え始め実体経済が不況に向けてすべりだしていた時期に相当する。国内経済の停滞は中国経済の減速などグローバルな経済の状況を反映したもので、実際に日本同様にそれまで上昇してきていた米国の株式指数は、2014年11月をピークにそこからの1年半、ほぼ停滞する。

 ところが2014年11月末に1万7459円だった日経平均は、GPIFが株式での運用比率を倍にすると宣言した後、世界経済の実態とは関係なく上昇を続け、2015年4月には2万円台を回復し、そのままの水準を夏まで維持することになる。

 GPIFのような巨大な機関投資家が株式を買い集めていけば相場が上昇するのは当然だ。GPIFが購入するとわかっているから他の機関投資家も先回りをして優良な日本株を買い上げていく。その相乗効果で株価が上がっていく。

 そして2015年11月に政府が肝いりで実行した日本郵政の株式放出が行われる。それを成功させるために株価を政府が高く維持したのではないかと勘ぐられるのはこのイベントがあったからだ。この翌月が日経平均の上昇劇のピークになって、それ以降、日経平均が下落し現在の1万6000円台に落ち着いているのは、みながよく知っているとおりの結末だ。

 さらに今回の損失額の発表時期が、本当はもっと前からわかっているのにもかかわらず参議院議員選挙の後に発表することが決められたことを含めて、本来は独立して運用すべき公的年金が“政治利用されている”という疑惑が持ち上がっていること。これが第一の問題だ。

 ただこの点だけで言えば実は「済んだ話でこれ以降は起きない問題」だと捉えることもできる。現在のように株式の運用比率を5割程度、債券の運用比率が5割程度というのは長期的な資産運用としてはかなりリスク資産に振った状態だ。

 まだここからもう少し株式の運用比率を上げようという議論はありうるかもしれないが、現実的には限度がある。つまり年金の運用資金による莫大な日本株の買い上げは、それがたとえ政治利用だったとしても今回一回っきりしかできない。

 年金のような長期運用資金は投資した株式をずっと持ち続けるのが基本だ。売ったり買ったりして資金を減らすような運用はできないので、その意味では運用の総量を増やすという手口を政治利用するというリスクは今後は大きくはない。

 むしろもうひとつの問題はGPIFがその多くの資金を日本株に投資していることである。

日本株と国債に偏った投資は
年金の最適なポートフォリオなのか

 繰り返しになるが年金の運用は長期運用が基本である。売ったり買ったりではなく、一度買った長期的に有望な資産をずっと持ち続けるという、かのウォーレン・バフェットの資産運用術とまったく同じ形になることが理想である。

 そしてそのポイントは、投資をした会社が長期的に成長するので、結果として運用した資産も長期的に増えるという点だ。

 つまりGPIFが投資をして、それが長期的にいい結果を生むためには、日本の大企業がこれから数十年にわたって成長をしてくれないと困るのだ。私はここが難しいと思っている。

 実際にはグローバル経済の中で日本企業が米国、中国、ヨーロッパ、インドなどさまざまな国の企業と戦っている。勝ち残る企業もいれば、その中では沈んでいく企業も当然出てくるだろう。

 日本政府であれば日本企業に肩入れした育成をするというのは許されるが、GPIFは年金である。投資が長期的に最適な形で増えていくようにするのであれば、正解は世界株ポートフォリオに投資をすることだ。

 その観点で見て、明らかに日本株と日本の国債に偏った現在の運用方法を見ると、現在のポートフォリオ自体が「やっぱり政治利用されているのではないか?」と思われてしまう。

 年金は政治から独立すべき。ここに問題の深淵があるのだ。


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「株高」の正体はただの「官制相場」:「GPIF」改革見送りの問題点 (投稿日: 2015年02月25日 13時41分 JST)
2017-02-24 01:14:11
 東京株式市場で2月23日、日経平均株価の終値が1万8466円を付け、2000年4月以来14年10カ月ぶりの高値を付けた。「円安による日本企業の好業績を背景に、海外投資家が買っている」といった解説が新聞・テレビを通じて一斉に流れた。それが事実ならば、アベノミクスの成功を見越した海外投資家が積極的に買っているということになる。これは本当なのだろうか。


買い本尊は「年金資金」

 実は、統計で判明している年明けから2月13日までの間、海外投資家は買っていない。東京証券取引所が発表している投資部門別売買動向によると、逆に1兆1138億円を売り越しているのだ。年初から2月20日まで、日経平均株価は約1000円上昇しているが、少なくとも13日までの600円分の上昇には海外投資家は寄与していないのである。

 ではいったい、誰が今の株高を支えているのか。個人投資家は1月は買い越したものの、2月に入って大幅に売り越しており、2月13日までの累計では1851億円の売り越し。個人も買っていないのだ。

 この間せっせと買っていたのは、「信託銀行」部門である。7037億円の買い越しだった。このほか、事業会社の買い越しなどもあるが、圧倒的に信託銀行が目立つ。背後には年金資金があると見られる。年金基金などが株式運用をする場合、運用委託先が信託銀行などを通じて売買するため、投資主体は信託銀行ということになるのだ。

 年金基金といっても、企業が持つ厚生年金基金などは、年金の支払いが増えて運用資産が減少する傾向にある。運用難から基金を解散する動きも活発だ。つまり、株価を押し上げているのは民間にある年金資金ではないと見られる。


GPIFの巨額資金によるPKO

 可能性が高いのは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金だ。GPIFは国民から預かった130兆円を一手に運用しているが、昨年10月に運用ポートフォリオ(資産構成割合)の見直しを発表した。

 それまで60%を日本国債などの「国内債」で運用するとしていたものを35%に引き下げる一方で、国内株式を12%から25%に、外国株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%にそれぞれ引き上げた。債券中心、国内中心から運用方針を劇的に転換して、株式と債券を半々とし、海外投資へと大きくシフトしたのである(2015年1月26日「低迷『日本株』は海外投資家に見捨てられるのか」参照)。

 実は、投資部門別売買動向の月間統計をみると、「信託銀行」は2014年5月以降、今年1月まで毎月、買い越しを続けている。GPIFの資料を見ると、2014年9月末段階でGPIFは保有する130兆円の運用資産の18.23%を国内株に投資していた。基本ポートフォリオでの国内株式は12%だったが、「上下乖離幅」として6%が認められていたが、すでに、その上限いっぱいまで買っていたのだ。

 新しいポートフォリオでは、上下9%の乖離幅が認められている。つまり、2015年3月末までに標準まで買ったとして25%、上限いっぱい買えば34%まで買うことが可能になった。仮に昨年9月末に18%だった国内株を半年後に25%にするとすれば、それだけで9兆円以上の資金が株式市場に流れ込むことになる。

 これを見ればお分かりの通り、今の株価を支えているのはGPIFマネーで、しかも安倍晋三内閣が進めたポートフォリオ見直しによって、それに拍車がかけられている。一部の識者から「官制相場」だと言われるのはこのためだ。アベノミクスの成功を演出したい官邸の意向によって、GPIFの巨額資金を使った株価維持策が取られているというわけだ。いわゆるPKO(プライス・キーピング・オペレーション)である。


不確実性の高い「いびつな市場」

 そんな政府の意向に左右される市場の株式を、海外投資家が本腰を入れて買うことは、残念ながら、ない。2013年に15兆円も買い越した海外投資家は、昨年2014年1年間でわずか8526億円しか買い越さなかった。これに対して、GPIFの資金が流れ込んだと見られる「信託銀行」の2014年の買い越しは2兆7848億円に達したのだ。海外勢は日本株の先行きに慎重姿勢を取り続けており、冒頭に見たように、その傾向は今年に入っても変わっていない。

 政府の意思で株価を支えるということは、逆に言えば、政府の方針が変われば株が売られるということ。経済のファンダメンタルズ(基礎的要件)や国際情勢など通常、投資家がリスクと考える要因よりも、「日本政府の意思」の方が大きなリスクになる。

 例えば、安倍内閣が株式シフトで仮に失敗したとしよう。次の内閣が方針を全面的に見直して、GPIFの運用を国債中心に一気に戻す可能性もなくはない。そうなれば、日本株は間違いなく暴落する。そんな不確実性の高い「いびつな市場」で運用するのは危ない。海外投資家の中でも、年金資金など長期の資金を運用する機関投資家はそう考える。

 そんな長期資金を運用する海外投資家が注目してきた事がある。GPIFのガバナンス改革だ。


塩崎大臣を怒鳴りつけた菅官房長官

 9月に厚生労働相に就いた塩崎恭久代議士は繰り返し、ポートフォリオの見直しとガバナンスの強化は車の両輪だと発言してきた。現在のGPIFでは理事長1人が最終的な決定権限を握る。理事長の任免権は政府が握っているから、130兆円の運用が、事実上、政府の思いのままになってしまう。塩崎氏はこれを、日本銀行のような独立性・専門性の高い審議委員によって運用方針を決める合議制に改革すべきだというのが持論だった。塩崎氏は大臣になると、GPIFを合議制に変える法案の作成に熱を上げた。

 ところが、この方針が、官邸と真っ向からぶつかったのである。官邸にとっては現在の意のままに操れる体制が好都合なのだ。さらに、今年1月にはGPIFのCIO(最高投資責任者)というポストを新設、水野弘道という人物を据えた。

 水野氏は英国の投資会社コラーキャピタルでパートナーを務めていた人物で、安倍内閣の官房副長官を務める世耕弘成議員と旧知の間柄。官邸の意向でポートフォリオ運用などに何の実績もない水野氏が送り込まれたのだ。

 これに激しく反対した塩崎氏と官邸の菅義偉官房長官、世耕副長官の「バトル」の様子を、2月19日発売の週刊文春が5ページにわたって報じている。記事は塩崎バッシングになっているが、官邸が株価を自由に動かすために、塩崎大臣が主張したGPIF改革に真っ向から反対したというのだ。

 すでに官邸は塩崎氏が厚労相に就く前の段階でポートフォリオを見直して株式へのシフトを進める一方で、ガバナンスについてはCIOを置くことなどでお茶を濁す方針を決めていたという。それに抵抗してガバナンス強化に動こうとする塩崎氏に、菅氏は以下のように指示したと文春は伝えている。

「ポートフォリオを変更しないまま年を越すと、マーケットの期待を裏切る。これまでのGPIFの改革の方針に添って、改革を遅滞なく、3月31日までにスケジュール通りやってほしい」

 それでも言うことを聞かない塩崎氏を菅氏は怒鳴りつけたという。

 その後、どうなったか。官邸の関係者によると、菅氏と世耕氏は安倍首相を動かし、塩崎氏に対して最後通牒を突き付け、ガバナンス強化に向けた法改正を断念させた、という。2月上旬のことだ。これで、GPIFの運用はCIOが一手に権限を握る体制が続くことになりそうだ。あとは3月末で任期を迎える三谷隆博理事長の後任にCIOの意向に異を唱えない人物を据えれば、官邸が目指す"ガバナンス"体制は出来上がることになる。


「官製相場」の弱点

 GPIFが仮に許容される上限の34%まで国内株式を買い増したとすれば、20兆円近い資金が株式市場に投入されることになる。前述の通り25%としても、9兆円である。そうなれば、市場関係者が期待する日経平均2万円も早晩実現するに違いない。

 一方で、外国株式や外国債券への投資も増やすことになっており、これによって円資金が外貨資産に変われば、円安要因にもなる。これはつまり、為替介入以外にも円安を演出する手立てができたことを意味する。GPIFの130兆円を政府が意のままに動かした場合、円安株高は続きそうに見える。

 だが、マーケットはそんなに甘くない。株式市場は実態経済を映す鏡だ。実態価値以上に株価が上がれば、海外投資家は必ず日本株を売って来る。2013年に15兆円買い越した日本株を、一転して売り浴びせる可能性があるのだ。

 昨年4月の消費増税の影響が長引き、個人消費は足踏みを続けている。円安による企業業績の好調によって給与が増えるという「経済好循環」を安倍内閣は訴え、ムード作りに必死だが、実際にどれぐらい賃上げされるか不透明だ。つまり、景気の実態は芳しくないのである。

 加えて、アベノミクスの「本丸」だと安倍首相自身が言う3本目の矢である規制改革もなかなか進まない。

 結局、海外投資家が本格的に日本株を買う動きにはなっていないのだ。個人投資家も短期の売買が中心で、長期にわたって株式を保有しようというムードは出ていない。

 株高を演出する「官製相場」の弱点は、いずれ弾が切れることだ。GPIFがどんなに買い続けても、一方で海外投資家や個人投資家が売り続ければ、相場は思ったほど上がらない。少子高齢化の中で、年金資産は取り崩しが増えてくるのは明らかで、中長期で見れば、GPIFが日本株を買い続けるのは難しくなるのだ。その時点で、日本経済が成長軌道に乗っていなかったらどうなるのか。誰も買い手がいない相場が下落するのは火を見るより明らかだ。GPIFの130兆円頼みの「官製相場」の終わりが始まったのかもしれない。


1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト。著書に『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)などがある。
年金7兆9000億円、運用損で消えていた 証券アナリストが試算 ( The Huffington Post | 執筆者: Kosuke Takahashi )
2017-02-24 01:16:35
投稿日: 2015年10月23日 17時26分 JST

140兆円を超える公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2015年7-9月期の年金運用損失が、約7兆9000億円に上っていることが大手証券会社のアナリストの試算でわかった。世界的な株安が年金運用損を膨らませた格好だ。

野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリストが10月23日、ハフポスト日本版の取材に対し、試算を明らかにした。それによると、GPIFの7-9月期の運用損は、国内株が約4兆3000億円、海外株が約3兆7000億円などとなった。この間、TOPIXは13.4%、日経平均は14%それぞれ下落した。

このため、四半期ごとでは、リーマン・ショックの影響が大きかった2008年10-12月期(損失額約5兆7000億円)を大きく上回る損失額となる見込みだ。GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金をマーケットで運用している。

株高が追い風となった2014年度のGPIF全体の収益額は、過去最高の15兆2922億円を記録し、収益率は12.3%に達していた。

資産全体に占める国内株と海外株の割合は2015年3月末時点で、それぞれ22%、20.9%だったが、株高を受け、同年6月末時点ではそれぞれ23.4%、22.3%に引き上げられていた。7-9月期の大幅な運用損は、この株式比率の引き上げの影響をもろに受けた格好だ。

GPIFによる公的年金の運用問題を追及している、民主党の山井和則衆院議員は23日、ハフポスト日本版の取材に対し、「国民の年金保険料をこのようなリスクにさらすのは大問題だ。実態経済以上に、官製相場で株価を無理に上げてきたツケが回ってきている」と話した。山井議員によると、GPIFは11月末に7-9月期の運用実績を発表する予定。
「年金制度は破綻しない」 慶應大の清家篤塾長が語る (投稿日: 2015年05月19日 14時49分 JST )
2017-02-24 01:27:00
少子高齢化が急速に進む日本。既に4人に1人以上が65歳以上という高齢社会に突入している。年金、医療、介護など社会保障の費用が増え続け、そのツケが赤字国債などの形で将来世代に先送りされるなか、日本の社会保障制度は大丈夫か。

政府の社会保障制度改革推進会議で議長を務める慶應義塾大学の清家篤塾長は5月13日、ハフィントンポスト日本版のインタビューに応じ、「日本は世界に類をみない高齢化を経験しつつある」と話した。同会議は日本の社会保障制度の青写真を描いているとされる。

清家塾長は、今から20年後には3人に1人が65歳以上の高齢者になると指摘。保育施設や保育サービスの整備など幅広い少子化対策を強力に進めることで、高齢化の進展をできるだけ緩やかにする必要性を訴えた。また、増大する社会保障費については、歳出削減など大幅な改革が避けられないとの見解を示した。

現行の年金制度については「破綻することはない」と述べ、若い世代はむしろ「医療や介護の仕組みの将来を心配した方がいい」と話した。
■日本の高齢化は「フランスの4倍以上のスピード」


――日本の高齢化の現状や先行きについてどのようにごらんになっていますか?

日本の高齢化には3つの特徴があります。1つは高齢化のレベルについてです。高齢化というのは、65歳以上の人口が総人口に占める割合です。直近の統計では、日本は26%に達しました。つまり、人口の4人に1人以上が高齢者にあたります。これは世界のどんな国よりも高齢者の人口比率が高くなっています。日本に次いで高いのは、おそらく先進国の中ではドイツとイタリアになると思いますが、まだ20%台の前半です。ですから、日本は世界に類をみない高齢化を経験しつつあるということです。

ただ、これはまだ途中経過で、今から20年後、つまり、今産まれた赤ちゃんが成人になる頃の2035年ごろには、この比率が33%を超えて日本の人口の3人に1人が高齢者になります。

さらに言えば、今の大学の学部生が65歳以上の高齢者になる頃の2060年ごろには、日本の人口の40%、つまり、5人に2人が高齢者になります。日本はおそらくその頃までずっと高齢人口の比率が世界一であり続けると思います。この高齢化のレベルが非常に高いというのが第一の特徴です。

2つ目の特徴が高齢化のスピードです。日本は非常に速いスピードで高齢化が進んできました。そして、これからも進んでいきます。どれぐらい速いかというと、例えば、高齢化のスピードを計る尺度に、65歳以上の高齢人口比率が7%になった時から14%になるまでに何年かかったかをみるものがあります。日本は1970年にこの比率が7%になってから1994年に14%を超えるまで、たったの24年でした。「たったの24年」というのは、日本よりも少し早く、この7%から14%へと突破したヨーロッパの国々では、この期間というのがだいたい50年から100年なのです。フランスなどは115年をかけて、ゆっくりゆっくりと高齢化していきました。つまり、日本はフランスに比べると、7%から14%になる速度が4倍以上の速さでした。この高齢化のスピードの速さが2つ目の特徴です。

3つ目が、高齢化の奥行きの深さです。奥行きの深さというのは、高齢人口の中に占める、さらに高齢の人の割合です。具体的に言いますと、高齢人口の中に占める75歳以上の人の割合の増加がこれから顕著になっていきます。

先ほど65歳以上の人口が今は総人口の26%と申しました。仮に65歳から74歳までの、比較的若い高齢者をyoung-oldと呼び、75歳以上のより年を取った高齢者をold-oldと呼びましょう。両者の比率は今、1対1なのです。

ところが、今からちょうど10年経ち、2025年になると、団塊の世代の人たちがすべて75歳以上になります。2025年の高齢人口比率はだいたい30%ぐらいですが、その中で、65歳から74歳までの比較的若い高齢者と、75歳以上のより年を取った高齢者の比率が2対3と75歳以上がより多くなります。

さらに言えば、今の学生が高齢者になる2060年ごろには、日本の高齢人口の比率が40%になっていますが、そのときには65歳から74歳までの比較的若い高齢者が1に対して、75歳以上の高齢者が2の比率になります。より年を取った人の比重が高くなってきます。

これは社会保障の問題を考えるときに重要です。少なくとも今までの経験から言うと、75歳を超えると、医療サービスや介護サービスを受給する確率が格段に高くなります。日本は単に高齢者が増えるということではなく、その中でも75歳以上の高齢者の比重が特に急ピッチで増えていくということで、それは医療や介護の支出が急ピッチに増えていくことにつながります。
Unknown (Unknown)
2017-02-24 01:27:41
「人類史上初めての経験」


――これは、かつて人類が経験したことがないことですか?

ないです。人類史上初めての経験です。非常にチャレンジングです。人類が初めて入っていく未知の世界に我々は足を踏み入れます。

――これに対する方策としてはどのようなものがありますか?

大きく分けて3つあります。1つは高齢化そのものを、できるだけマイルドなものにしていく。元には戻せないとしても、高齢化のスピードを緩める。あるいは高齢人口比率を今、予想されているよりも低い数字に押さえるということです。

どうしたらいいのか?答えは1つしかありません。高齢化は2つの理由で起きています。1つは長寿化です。人が長生きするから、65歳以上の人口が増えています。もう1つは少子化です。子供の数が減るから、65歳以上の人口が相対的に比重として高くなっている。

このうち、寿命が長くなることについては、もちろん元に戻してはいけません。寿命が長くなるのは良いことですから。ということは、高齢化を少しでもマイルドなものにするためには、我々がとるべき方策というのは出生率をできるだけ回復させるということに尽きます。

日本の出生率は2005年の底打ち時には1.26まで下がってしまったのですが、その後少し少子化対策が効いてきて、今は1.43まで戻ってきました。人口を維持するためには出生率は少なくとも2が必要です。お父さんとお母さんと同じ数の子供が産まれてこないと今の人口は保てません。ですから、できるだけ早く出生率が2に回復していくように、強力な少子化対策をとらなければならない。そのためには、子供を産み育てたいと思っている人が子供を産み育てられるような環境を強力に整備していく必要があります。

具体的には、保育施設を早急に整備する。あるいは、様々な保育サービスを早急に整備する。あるいは、子供を産み育てやすいような働く環境、いわゆるワーク・ライフ・バランスを整える。つまり、長時間労働を是正し、子育て世代のお父さんやお母さんが子育てと仕事を両立できるような働き方というものを職場でもって速やかに実現する。このようなことをできるだけ早く進めることが大切です。

2つ目は、今、出生率が急速に回復したとしても、今産まれた赤ちゃんが大人になって日本の経済社会に貢献するまでにはあと20年とか25年かかります。そうすると、少なくともそれまでの期間は、もう既に進んでしまった少子高齢化の下での、人口の減少は避けられない。その中で、少しでも「労働力人口」が減らないようにする。たとえ、人口が減ったとしても、働く人口が減らないようにする。そうすれば、社会保障を負担する人たちも維持できる。人口が減ること自体も問題ですが、一番大きな問題は、労働力人口が減ることにあります。

労働力人口が減ると、1つにはその人たちが社会保険料や税金を収めて、年金、医療、介護のコストを負担しているわけですから、その負担者が減ってしまいます。同時に、労働力人口が減るということは、生産に従事する労働者の数が減る訳ですから、サプライサイドの生産がその分減ってします。また、働いていた収入というのは年金よりも多い訳ですから、その多い収入で、より多くの消費をしていたはずの人たちが消費をしなくなってしまいます。これはデマンドサイドでの成長の阻害要因になります。

このように労働力人口が減るということは、社会保障の持続可能性を低下させます。同時にサプライサイド、デマンドサイド両方で成長の制約要因になります。

そこで2つ目の方策としては、人口がかりに減ったとしても労働力人口が減らないようにする。つまり、労働力率を高めるということです。人口の中で、働く人たちの比重を高めないといけない。20代後半から50代後半までの男性はほぼ全員働いていますから、この部分は労働力率をこれ以上高めようがない。労働力率を高める余地があるのは、1つは女性です。

女性はまだ100%働いていませんから、特に30代の女性は結婚子育てのため、労働力率が下がっています。この人たちの労働力を上げる。

もう1つが高齢者です。引退する高齢者が、もう少し引退の時を先に延ばす。高齢者がもっと長く働き続けることによって、高齢社会を高齢者自らが支える側に回ってもらう。これがもう1つ必要になります。

そういう意味では、女性と高齢者の労働力率をできるだけ高め、人口が減っても、労働力人口を維持する、あるいはそれが減ることはやむを得ないとしても、その減り方が人口の減り方よりもマイルドなものになるようにする。これが2つ目です。

3つ目は、社会保障制度の改革です。今、年金、医療、介護を中心とした、社会保障の給付総額は110兆円ぐらいです。GDPの約5分の1です。これが今のままですと、団塊の世代が75歳以上になる2025年には、150兆円ぐらいになると見込まれています。順調に経済が成長したとしても、おそらくその頃のGDPは600兆円くらいでしょう。つまり、150兆割る600兆で、GDPの4分の1ぐらいの規模の社会保障費用の総額となります。

人口が少なくなる中で、このまま増え続けたら、社会保障制度そのもの持続可能性が低下します。社会保障はどういう収入で支えられているかといいますと、約6割は保険料ですが、残りは税財源です。ただし、税財源とは言っても、税収は歳出をまかなうほどありませんから、かなりの部分が国債という形で将来の世代にツケが回されています。

実は過去20年、社会保障給付が急速に伸びたために、それを賄うための国の借金が増えた結果、今やご承知のように、日本の公的債務残高は、GDPの2倍以上になってしまいました。

そういう意味では、社会保障制度が適切に改革されないと、高齢化が進む中で、社会保障制度の持続可能性が維持できなくなるだけではなくて、日本全体の財政の持続可能性が維持できなくなります。そこで、どうしても社会保障制度改革が必要になっています。

従って、世界に類を見ないレベルと速さと奥行きで進んでいく高齢化に対処するためには、高齢化を少しでもマイルドにするための強力な少子化対策、人口が大きく減少したとしても労働力がそれほど減少しないように女性や高齢者の労働力率を高める、そして、その上で社会保障制度や財政制度の持続可能性を高めるために、社会保障制度改革を強力に行う。この3つが必要となります。

――議論の前提となっている、人口の今後の推移についてはどう見通されていますか?

2012年に1億2800万人というピークを迎え、今のままですと、今世紀の半ばには1億人を割り込みます。そして、今世紀の終わりの2100年ぐらいには今の半分の6000万人ぐらいになると推計されています。
■「年金は大丈夫」


――若い世代は現行の年金制度がいずれ行き詰まるのではないか、と不安を抱えている人も多いかと思います。年金制度は大丈夫でしょうか?

年金は大丈夫です。なぜかといいますと、年金の問題は単純だからです。年金と医療、介護では、問題の難しさの程度が格段に違います。年金というのは給付が増えるといっても、年金をもらう高齢者の数が増えるのと同じ程度にしか、総額は増えません。

また、すでにマクロ経済スライドが導入されていて、物価が上昇していけば、物価の上昇以下にしか年金の給付額は上がりません。つまり、給付額は実質、どんどん抑制されていきます。そういう面で、年金給付総額はたかだか高齢者の人数が増えるペースか、それ以下のペースでしか増えません。

さらに年金は単なるお金の問題です。保険料をとって給付を払う。保険料の改定と給付水準の改定によって、年金制度の持続可能性は維持できます。実際に年金については2004年改定で、保険料の上限が決まり、マクロ経済スライドで給付の抑制が決まっています。給付額が減ることはあっても年金制度そのものの破綻はあり得ません。ところが、医療、介護は全然違います。さきほど申しましたように、これから75歳以上の高齢者が特に増えてきますから、高齢者の増加ペース以上に、医療や介護を受給する人のウエイトが増えてきます。医療と介護の給付はノンリニア(非線形)に増えていきます。

また、医療と介護は、単なるお金だけの問題ではありません。コストは保険料で徴収しますが、給付はお金で払うものではないからです。医療サービスや介護サービスとして提供します。サービスを提供するお医者さん、看護師さん、薬剤師さん、介護士さんといったサービス提供者が不可欠です。介護労働者をどう確保するのか、といった深刻な問題も出てきます。

年金に比べれば、医療や介護はそのサービスを提供する人の問題がかかわってくるだけに、ずっとずっと難しくて複雑なのです。

そういう意味でいえば、若い人は年金制度の持続可能性について、そんなに心配する必要はありません。むしろ医療や介護の仕組みの将来を心配した方がいいと思います。

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