崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

送別会

2009年01月24日 07時19分17秒 | エッセイ
 下関韓国教育院の李永松院長の送別会は異例のものであった。普通の送別会と言えば功労を褒め称え別れの寂しさを語るものであろう。その予想をひっくり返したものであった。1978年全南大学校に在学中、キリスト教クラブの会長であった彼は反政府運動者として3年刑を受けて刑務所にいた体験を生々しく語ってくれた。私は彼の父親が囚人の彼に送った手紙を読み上げる時、涙を抑えるのに苦労をした。
 韓国では植民地日本の残虐だけを展示、強調しているが、実は自民族を虐待した軍事政権の負の遺産が隠れ消えていく。彼はただ悲惨な歴史を語ろうとしたわけではない。また彼の恨みや鬱憤を払うために語ったわけでもない。正義のために闘って犠牲となった数多い人のおかげで、民主主義を手に入れることができたと証言したのである。彼が残してくれた生の証言は残されるわれわれに大きな力になっていくに違いないと思った。