美しい言葉たちに敬意をこめて

日本語の詩歌(詩、短歌、俳句)を英訳します。たまに英語の詩を和訳します。スピーチや対談を書き起こすこともあります。

紀貫之☆花の香に

2016年10月14日 | 新古今和歌集
花の香に衣は深くなりにけり木の下陰の風のまにまに

紀貫之


Floral aroma
Deeply immersed in my cloths
Along with
The wind coming through
Under the cheery tree


鈴木祐子さんにリクエストいただいた短歌の翻訳です。

【歌意】衣は花の香に深くしみてしまったよ。桜の木の下陰を吹く風につれて。

【類歌】さくらいろに衣はふかくそめてきむ花のちりなむのちのかたみに(古今・春上・66・紀有朋)

【コメント】

さわやかな春、いい匂いのする春です。
なんだか少し色っぽい意味がありそうな気もします。紀貫之さんだから。

それが春です!

よろしければ、
も見てみてくださいね。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

中納言家持☆かささぎの

2016年10月14日 | 新古今和歌集
かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば 夜ぞ更けにける

中納言家持


Bridge of magpie wings
Covered with the frost-
I look up
Its whiteness
As the night wears on



小松さんにリクエストいただいた短歌の翻訳です。

【歌意】かささぎが翼を重ねて天の川に渡した橋に置いた、霜が白いのを見ると、夜が更けたのだなあ。

【語意】かささぎの渡せる橋:かささぎが七夕の世天の川に渡した橋。七夕の夜、かささぎが翼を連ねて天の川に橋を架け、織女を渡すという伝説がある。

夜ぞふけにける:夜が更けたのだなあ。

【コメント】
かささぎとはこんな↓鳥です。(ウィキペディアより)



当時の日本にはかささぎはいなかったそうです。

中国の七夕の伝説では、このかささぎがたくさん集まって橋をつくり、それを渡って織女と彦星が会うことができた。

だから、中納言家持さんは、中国の伝説に思いをはせながら白い霜が降りる寒い冬の夜を過ごしたのでしょう。なんかちょっとさびしい!?


よろしければ、
新古今和歌集:もくじも見てみてくださいね。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ホセ・マルティ☆I Have a White Rose to Tend

2016年09月16日 | 
I Have a White Rose to Tend
José Julián Martí Pérez


I have a white rose to tend
In July as in January;
I give it to the true friend
Who offers his frank hand to me.
And for the cruel one whose blows
Break the heart by which I live,
Thistle nor thorn do I give:
For him, too,
I have a white rose.


-------------------------------------

白い薔薇を育てている
ホセ・マルティ

白い薔薇を育てている
7月に 1月と同じように
本物の友人に贈るために
いつでも助けの手を差し伸べてくれる彼のために
そして私の心を引き裂く残酷な者のためにも
アザミでもイラクサでもなく
彼のためにも
白い薔薇を

-------------------------------------


米大統領オバマ氏がキューバを訪問して、キューバ国民に向けて演説したときに引用した詩です。

原文はスペイン語です。それを英訳したものをさらに和訳しました。

詩人のホセ・マルティは、味方だけでなく敵にもバラをあげると言います。
白いバラ、というメタファーはキューバの人の心情に訴えかけますね。
私はオバマ米大統領のスピーチを聞いて何度泣いたかわかりません。感動します。

参考:
ハバナ大劇場からキューバ国民に向けたオバマ大統領演説 概ね好評のうち、無事閉幕

ホセ・マルティ(ウィキペディア)


『父ゲバラとともに、勝利の日まで』星野弥生

★このブログを読んで、詩歌の翻訳または【新古今和歌集プロジェクト】を支援してもいいよという方は、
アマゾンで買い物をする際は下記よりお願いいただけると嬉しいです。
アマゾン
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ロバート・フロスト☆Stopping by Woods on a Snowy Evening

2016年05月13日 | 
とある人の通訳をしていたときにこの詩の一部分が引用されていました。

有名な詩ですが、とっさに日本語にできなかったので、こちらに和訳して載せました。

英米では、洗練されたスピーチは有名な詩を引用していることが多いですね。今回はその解釈も書きました。

まずは英語の原文から、次に日本語の翻訳文をどうぞ。

------------------------------------------------
Stopping by Woods on a Snowy Evening
Robert Frost


Whose woods these are I think I know.
His house is in the village though;
He will not see me stopping here
To watch his woods fill up with snow.

My little horse must think it queer
To stop without a farmhouse near
Between the woods and frozen lake
The darkest evening of the year.

He gives his harness bells a shake
To ask if there is some mistake.
The only other sound’s the sweep
Of easy wind and downy flake.

The woods are lovely, dark and deep,
But I have promises to keep,
And miles to go before I sleep,
And miles to go before I sleep.

------------------------------------------------
雪の夜、森の側に佇む

この森が誰のものが知っている
持ち主は村にいるが
彼は私がここに立っていると知らないだろう
彼の森が雪に埋もれている様を見ていることを

私の馬はなにか変だと思っているようだ
農家の近くでもないのに立ち止まっているから
森と凍った湖の間に
一年のうち最も暗い夜

馬は引綱についた鈴を鳴らす
何か間違いがあったかどうかと
他に聞こえる音は
優しい風と柔らかな雪

森は美しく暗く深い
しかし私には守るべき約束がある
眠る前に 長い道のりを行かなければ
眠る前に 長い道のりを行かなければ

--------------------------------------------------
解釈

解釈① 北米の美しい冬の自然を謳った詩。


解釈② 森、夜、雪といった暗いモチーフは人生における苦難を示す。
眠るというのは死の隠喩です。
死ぬ前にやることがある、守るべき約束がある、という人間の意志を強調する詩。


解釈③ 作者の心境と経済状況を知ると、一個人の感情は普遍的な芸術に昇華できるのだとわかります。

下記は『ロバート・フロスト詩集―愛と問い―』からの引用です。


----
この詩が書かれた当時の「一年中で一番暗い」12月22日、冬至の日のことであった。

その日は、フロストの農場の経営状態と同様に、冷え冷えとした冬の日で、クリスマスが近づいているというのに、フロストの心は厳しい天候と同様に打ち沈んでいた。

その日彼は自分の農場の収穫物を荷馬車に積んで、遠い町まで売りに行った。

しかし収穫物は全く売れず、子供たちへのわずかばかりのプレゼントすら買えずに戻ってきた。

家が近づくにつれて、心はいよいよ重くなり、手綱を取る気分もなく馬の進むにまかせていた。

馬は家路を知っていた、また、フロストの失意落胆の気持ちを感じ取っていた。

家族の失望を思うと合わせる顔もない。

馬にはフロストの心が分かっていて、家の見える曲がり角まで来ると、馬はゆっくりと荷車を止めた。

フロストは、その場で、涙が涸れるまで声を上げて泣いた。

---
『ロバート・フロスト詩集―愛と問い―』安藤千代子著 pp.127
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

旅立ちの日に

2016年05月13日 | 歌詞
Marieさんからリクエストをいただいていた、『旅立ちの日に』(作詞:小嶋登 作曲:高橋浩美)の英訳です。

原文はこちら(→J-Lyrics.net『旅立ちの日に』

Youtubeではこちら↓

『旅立ちの日に』 作詞:小嶋登 作曲:高橋浩美

-----------------------------------------------------
On the day to take off

In the white light, Mountain rages are fresh in sprout
To the far end of the sky, You are flying off
The endless blue sky, Your heart trembles
Birds winging the freedom, Without looking back
With all your courage, Ride on the wind of hope
To the wide sky, Leaving your dreams

Familiar voice of my friend’s, Suddenly flash back
Meaningless quarrels, We both cried
Joy to understand, We hugged each other
All those are gone, Holding good memories
With all your courage, Ride on the wind of hope
To the wide sky, Leaving your dreams

Now is the time to depart
Fly off, Believing in the future
Believing in the lively young strength
The wide
To the wide sky

Now is the time to depart
Fly off, Believing in the future
Believing in the lively young strength
The wide
To the wide sky

-----------------------------------------------------
解説
むかし、英語のネイティブスピーカーで短歌を翻訳している方が「日本語の詩を訳すときは、語順はそのままで訳します。これは私のスタイルなので、人によって違うかもしれないけれど」と言っていたのを思い出しました。今回はその翻訳者と同じように、そのまんま訳しました。

直訳すぎる!すぐにわかりやすく伝わるように工夫した翻訳になっていない!と怒られても仕方ない。

感想

感想というか、言いわけなのですが、この歌詞のスタイルは日本語だから活きるのであって、英語では伝わりにくいのかもしれないと私は思いました。

卒業、旅立ち、鳥、自由、思い出、信じる、大空、といった単語が連想させる、少し寂しい気持ちと明るい進路先を連想させるのが上手くできなかった。

また、歌詞というジャンルは詩とはだいぶ違うなあと思いました。歌い手を連想して訳さなければなりません。今回は、先生からの目線と、生徒からの目線が混在している気がしました。私は生徒が歌う姿を考えながら訳しましたが、彼らが発する英語かなあと思うと、多分違う。

こんなケースもあるんだよ、ということでご容赦ください。なお、修正案があれば歓迎いたします!ぜひコメントください。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

イチロー選手インタビュー『無駄なことって無駄じゃない』

2016年04月12日 | インタビュー
Youtubeで見つけた、稲葉篤紀氏がイチロー選手にインタビューしていた内容がとてもよかったので、一部分を書き起こしました。

遠回りすることは無駄じゃないというメッセージです。

イチロー、大谷翔平やダルビッシュの肉体改造に苦言


6分05秒から10分45秒の箇所です。

--------------------------------------------------

稲葉:
自分のクセってありますよね?やっぱそういうのは、みんなわかってたほうがいいですよね?

イチロー:
もちろんです。基本的には人体の動きを理解しながらプレーすれば、怪我を防ぐこともできるし。

例えば「肩の力が入っているよ、お前、リラックス、リラックス」っていわれても、ここだけやっても無理なんです。これは僕の感覚ですけど、膝の力を抜かなきゃいけない。膝の力をぬけば肩もぬける。そういう事を理解しているかどうかっていうのはものすごく大事です。
でも目に見えた部分しか言えない、というか、目をつけられない人が多いです。
そういう事を理解している人はほとんどいないように思います。

稲葉:
今、トレーニングで、身体を大きくてしてそれを活かすみたいなのが結構流行ってる。

イチロー:
いやいや、全然ダメでしょ。
自分が持って生まれたバランスが絶対ありますから、それを崩しちゃだめですよ。
だって、そんなトラとかライオンとかウエイト(トレーニング)しないですからね。
人間知恵があるからいろんなことやっちゃう。

本来のバランスを保っていないと。

だって筋肉は大きくなるけど、それを支える筋肉とか腱とか鍛えられない。だから壊れちゃうんですよ。だって重さに耐えられない。大きくしたら膝にくるし、関節にきますよ。当たり前のことなんですよ。

だから、人体を理解することが一番、動きとかトレーニングにだいぶ差が出る。

稲葉:
それがわかったのって、いつぐらい?

イチロー:
僕も結構(ウエイトトレーニング)やりました。やって、身体大きくなって。バカだから嬉しいとか思うじゃないですか。やった、いいな、俺も大きくなったって春先とかなりがちなんですけど。でも、スイングスピードが落ちるんですよ。まわらなくなっちゃうから、この辺が。

そういう失敗を毎年僕も重ねて。何年くらいですかね、92(年)に入団だから、やっぱ6~7年は同じことを繰り返してました。その時、ふと気が付いた。

毎年不思議だったんですけど、春先、僕全然動けない。痩せてくるじゃないですか。シーズン入ったらそんなトレーニングできない。がんがん。春作った身体をキープできない。
だんだん痩せていく。そうすると、スイングスピードが上がってくる。

無駄なところが省かれてくる。それが答えじゃないですか。
だから本来のバランスを崩しちゃダメなんですよ。
情報が多すぎて、どれをピックアップしていいかという問題があります。

稲葉:
みんな今、そういう時代になってきてる。知識がすごくこう、ありすぎる。

イチロー:
頭でっかちになる傾向はあるでしょうね。今の時代は確かに。

稲葉:
でも、最短で行ける可能性もあるじゃないですか。下手したら。

イチロー:
無理だと思う。無理だと思う。

失敗をしないでたどり着いたところと、全くミスなしで、間違いなしでたどり着いたところ、まあたどり着けないけど、たどり着いたとしても…深みはでないですね。

単純に野球選手としての作品がいいものになる可能性は、可能性ですよ、僕はないと思う。

あったとしても、やっぱり遠回りする事はすごい大事ですよ。
僕は無駄なことって無駄じゃないっていう考え方が大好きで。

でも今やってることが無駄だって思ってやってるわけじゃないですよ。
無駄に僕はとびついているわけじゃないですけど、後から思うとすごく無駄だなっていうことはすごく大事だと思います。

だから、合理的な考え方ってすごく僕は嫌いです。

稲葉:
遠回りしてもいろんな経験をするってことはすごく大事?

イチロー:
僕は遠回りすることは近道だと信じてやってますけどね、今も。


--------------------------------------------------
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

THE BOOM☆島唄

2015年12月04日 | 歌詞
Shima-uta


Deigo the flower is blooming, invites the wind, and the storm has come

Deigo the flower is blooming wildly, invites the wind, and the storm has come
Repeated sorrows are like waves washing the island's shore

In a sugarcane field where I met you for the first time
Under the sugarcane field where I say goodbye to you forever

Shima-uta the island song: ride the wind
together fly with birds cross the ocean
Shima-uta the island song: ride the wind
deliver my love please

Deigo the flower have fallen
Only small waves ripple
Our modest happiness is like
foam between the waves

In a sugarcane field where my friend and I sang together
Under the sugarcane field where we parted for ever and ever

Ocean, the Universe, Gods and Life
Let us carry on the eternal evening calm--

Shima-uta the island song: ride the wind
together fly with the birds cross the ocean
Shima-uta the island song: ride the wind
deliver my tears please


歌詞の原文はこちら(→島唄

ザ・ブーム 島唄 Live


解説:

前回の記事(『沖縄県知事の翁長雄志氏の意見陳述』)を書いているうちに、島唄の英訳がひらめきました。

既にいくつか歌詞の英訳はされているようでしたが、私なりの解釈をまぜて英訳しました。どうしてもオリジナルのメロディーにのせて歌えるようにしたいけれど、言葉を増やさないとむりですね。理想的には、翻訳者と歌手が同じ視点に立てるといいのですが。作詞家ってすごいな。

DeigoとShima-utaは、日本語のままです。そのすぐ後に説明をつけて、Deigo the flower, Shima-uta the island songとしました。デイゴは沖縄県の県花だそう。ちゃんとした英語名称があります(→Wikipedia "Erythrina variegata")が、デイゴの「デ」の音がこの歌に深みを与えている気がして、音として残したかった。

「ウージの森」を「In a sugarcane field」としたのは、ウージがサトウキビのことであり、森は文字通りの意味ではなく、たくさんある、という意味で使ったんだろうなと思いました。「ウージの畑」というのは情緒が足りないから森にしたのかな。

「ウージの下」については、最初「Under the sugarcane tree」にしていたのですが、サトウキビの茎は長いけれど、下だったら、前出の森の中と同じ意味じゃない?という疑問がありました。同じ場所で別れるのではなく、「ウージの畑の土の下、つまり洞窟(沖縄ではガマといいます)」で別れるという解釈を知り、Under the sugarcane fieldとしました。本当は、英語としてはIn the cave underneath the sugarcane fieldがきちんとしてるんですけれどね。

「千代にさよなら」「八千代の別れ」は、昔からある「千代に八千代に」というフレーズからきています。君が代の英訳を参考にしようかと思ったのですが、やはりthousand, eight thousandsという表現しか見つからず、英語らしくforever, for ever and everとしました。聖書からよい表現がとってこれそうだったのですが、見つからなかった。

「ささやかな幸せはうたかたの波の花」は「Our modest happiness is like foam between the waves」としました。Our(私たちの)としたのは、私たち(沖縄)と貴方たち(本土)の幸せは違うのだと、短い一文に込められているようでした。

「海よ宇宙よ~」のくだりは、
Ocean, the Universe, Gods and Life
Let us carry on the eternal evening calm--
としました。英語で歌っている動画をみると、この部分は歌われていません。動画にのっていないだけかもしれませんが、1人しか神様を認めない宗教もあるので、「神」という言葉は英語の音楽では使いづらいのかな。琉球は多神教なので、複数形のGodsにしています。

感想:
このブログを始めてからずっと、訳したいと思っていた「島唄」が訳せて嬉しいです。質問、感想、ダメ出し、なんでもOKですのでコメントいただけると嬉しいです。


参考:

島唄 Island song Greg Irwin グレッグ・アーウィン


沖縄の海(BGMは英語の島唄)


うた‐かた【泡=沫】
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

沖縄県知事の翁長雄志氏の意見陳述

2015年12月04日 | スピーチ
沖縄県知事の翁長雄志が意見陳述がネットに公開されていました。(→辺野古埋め立て代執行訴訟 翁長知事の意見陳述全文)「意見陳述」ではありますが、「スピーチ」のカテゴリとして記事にしました。

歴史から語りはじめ、誤解をとくための説明をし、問いかける。すばらしいスピーチだと思いました。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 沖縄県知事の翁長雄志でございます。本日は、本法廷において意見陳述をする機会を与えていただきましたことに、心から感謝申し上げます。

 私は、昨年の県知事選挙で「オール沖縄」「イデオロギーよりアイデンティティー」をスローガンに、保守・革新の対立を乗り越えて当選をいたしました。

 本件訴訟の口頭弁論にあたり、私の意見を申し上げます。

 歴史的にも現在においても沖縄県民は自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされて参りました。私はこのことを「魂の飢餓感」と表現をしております。政府との間には多くの課題がありますが、「魂の飢餓感」への理解がなければ、それぞれの課題の解決は大変困難であります。

 簡単に沖縄の歴史をお話ししますと、沖縄は約500年に及ぶ琉球王国の時代がありました。日本と中国、朝鮮、東南アジアを駆け巡って大交易時代を謳歌(おうか)しました。

 琉球は1879年、今から136年前に日本に併合されました。これは琉球が強く抵抗したため、日本政府は琉球処分という名目で軍隊を伴って行われたのであります。

 併合後に待ち受けていたのが70年前の第2次世界大戦、国内唯一の軍隊と民間人が混在しての凄惨(せいさん)な地上戦が行われました。沖縄県民約10万人を含む約20万の人びとが犠牲となりました。

 戦後は、ほとんどの県民が収容所に収容され、その間に強制的に土地を収用され、収容所からふるさとに帰ってみると普天間飛行場をはじめ米軍基地に変わっておりました。その後も、住宅や人が住んでいても「銃剣とブルドーザー」で土地を強制的に接収をされたわけです。

 1952年、サンフランシスコ講和条約による日本の独立と引き換えに、沖縄は米軍の施政権下に置かれ、日本国民でもアメリカ国民でもない無国籍人となり、当然日本国憲法の適用もなく、県民を代表する国会議員を一人も国会に送ったことはありません。犯罪を犯した米兵がそのまま帰国することすらあった治外法権ともいえる時代でありました。

 ベトナム戦争の時は沖縄からB52爆撃機の出撃をはじめいろいろな作戦が展開をされております。沖縄は日米安保体制と、日本の平和と高度経済成長を陰で支えてきた訳であります。

 しかし、政府は一昨年、サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日を「主権回復の日」として式典を開催し、そこで万歳三唱まで行われたのです。沖縄にとっては悲しい、やるせない式典でございました。全く別々の人生を歩んできたような感じがいたします。

 1956年、米軍の施政権下で沖縄の政治史に残ることが起きました。

 プライス勧告といって、銃剣とブルドーザーで強制接収した土地を、実質的な買い上げをするという勧告が出されました。当時、沖縄は大変貧しかったのでのどから手が出るほどお金が欲しかったはずですが、県民は心を一つにしてそれを撤回をさせました。

 これによって、基地のあり方に、沖縄の自己決定権を主張できる素地がつくられ、私たちに受け継がれているのです。

 沖縄が米軍に自ら土地を提供したことは一度もありません。そして戦後70年、あろうことか、今度は日本政府によって、海上での「銃剣とブルドーザー」をほうふつさせる行為で美しい海を埋め立て、私たちの自己決定権の及ばない国有地となり、そして、普天間基地にはない軍港機能や弾薬庫が加わり、機能強化をされ、耐用年数200年ともいわれる基地が造られようとしております。

 今沖縄には日本国憲法が適用され、昨年のすべての選挙で辺野古新基地反対の民意が出たにもかかわらず、政府は建設を強行しようとしております。米軍基地に関してだけは、米軍施政権下と何ら変わりはありません。

 米軍施政権下、キャラウェイ高等弁務官は沖縄の自治は神話であると言いましたが、今の状況は、国内外から日本の真の独立は神話であると思われているのではないでしょうか。

 辺野古新基地は、完成するまで順調にいっても約10年、場合によっては15年、20年かかります。その期間、普天間基地が動かず、危険性が放置される状況は「固定化」そのものではないでしょうか。

 本当に宜野湾市民のことを考えているのであれば、前知事の埋め立て承認に際して、首相と官房長官の最大の約束であった「普天間基地の5年以内の運用停止」を承認後着実に前に進めるべきではなかったでしょうか。しかし、米国からは当初からそんな約束はない、話も聞いたことはないと言われ、前知事との約束は、埋め立て承認をするための空手形ではなかったのか、それを双方承知の上で埋め立て承認がなされたのではないか、いろいろな疑問が湧いてまいります。

 日本政府に改めて問いたいと思います。普天間飛行場は世界一危険だと、政府は同じ言葉を繰り返しておりますが、辺野古新基地ができない場合、本当に普天間基地は固定化できるのでしょうか。

 次に基地経済と沖縄振興策について述べたいと思います。

 一般の国民もそうですが、多くの政治家も、「沖縄は基地で食べているんでしょう。だから基地を預かって振興策をもらったらいいですよ」と沖縄に投げかけます。この言葉は、「沖縄に過重な基地負担を強いていることへの免罪符」と「沖縄は振興策をもらっておきながら基地に反対する、沖縄は甘えるな」と言わんばかりであります。これくらい真実と違い沖縄県民を傷つける言葉はありません。

 米軍基地関連収入は、終戦直後にGDPの約50%、基地で働くしか仕方がない時代でした。日本復帰時には約15%、最近は約5%で推移をしております。

 経済の面では、米軍基地の存在は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因になっています。

 例えば、那覇市の新都心地区、米軍の住宅地跡で215ヘクタールありますが、25年前に返還され、当時は軍用地料等の経済効果が52億円ありました。私が那覇市長になって15年前から区画整理を始め、現在の街ができました。経済効果としては52億円から1634億円、32倍。雇用は170名程度でしたが、今は1万6千名、約100倍です。税収は6億から199億円と33倍に増えております。

 沖縄は基地経済で成り立っているというような話は今や過去のものとなり完全な誤解であります。

 沖縄は他県に比べて莫大(ばくだい)な予算を政府からもらっている、だから基地は我慢しろという話もよく言われます。年末にマスコミ報道で沖縄の振興予算3千億円とか言われるため、多くの国民は47都道府県が一様に国から予算をもらったところに沖縄だけさらに3千億円上乗せをしてもらっていると勘違いをしてしまっているわけです。

 沖縄はサンフランシスコ講和条約で日本から切り離され、27年間、各省庁と予算折衝を行うこともありませんでした。ですから日本復帰に際して沖縄開発庁が創設され、その後内閣府に引き継がれ、沖縄県と各省庁の間に立って調整を行い沖縄振興に必要な予算を確保するという、予算の一括計上方式が導入されたのです。沖縄県分は年末にその総額が発表されるのに対し、他の都道府県は、独自で予算折衝の末、数千億円という予算を確保していますが、各省庁ごとの計上のため、沖縄のように発表されることがないのです。

 実際に、補助金等の配分額でみると沖縄県が突出しているわけではありません。例えば、地方交付税と国庫支出金等の県民一人あたりの額で比較しますと、沖縄県は全国で6位、地方交付税だけでみると17位であります。

 都道府県で、国に甘えているとか甘えていないとかといわれるような場所があるでしょうか。残念ながら私は改めて問うていきたいと思います。沖縄が日本に甘えているのでしょうか。日本が沖縄に甘えているのでしょうか。ここを無視してこれからの沖縄問題の解決、あるいは日本を取り戻すことなど、できないと確信をいたします。

 沖縄の将来あるべき姿は、万国津梁(しんりょう)の精神を発揮し、日本とアジアのかけ橋となること、ゆくゆくはアジア太平洋地域の平和の緩衝地帯となること。そのことこそ、私の願いであります。

 この裁判で問われているのは、単に公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではありません。

 戦後70年を経たにもかかわらず、国土面積のわずか0・6%しかない沖縄県に、73・8%もの米軍専用施設を集中させ続け、今また22世紀まで利用可能な基地建設が強行されようとしております。

 日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常といえるのでしょうか。国民のみなさますべてに問いかけたいと思います。

 沖縄、そして日本の未来を切りひらく判断をお願い致します。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
メモ:

万国津梁(しんりょう)の精神 spirit of bridging all nations

沖縄・琉球国の象徴といわれる万国津梁の鐘に刻まれた文章からとった言葉です。

参考:
万国津梁(ばんこくしんりょう)の鐘
Central and Okinawa governments clash in court in Futenma base row
Hearings begin in battle over relocating US base on Okinawa
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

あなたの詩歌を翻訳します

2015年09月26日 | 翻訳について
翻訳のご依頼を受けた詩歌のリストです。



1.『秋の祈り 』 高村光太郎

2.『旅立ちの日に』 作詞:小嶋登 作曲:高橋浩美 →翻訳しました。『旅立ちの日に』



歌が途中までですが、初演 合唱曲「旅立ちの日に」↓



3.『Hallowed Ground』Thomas Campbell




タイプ1(無償)なのでかなり時間がかかってしまうかと思いますがご理解ください。


【2015年9月26日更新】
--------------------------------以前の記事---------------------------------

現在、多忙により、詩歌の英訳のお仕事をいただく際、有償か無償かお伺いしています。

1.無償の場合
・納期は未定(1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれない)
・ブログに公開する

2.有償の場合
・納期は2~4週間程度
・ブログには公開しない
・1頁(英文)10,000円+消費税

翻訳をご希望される方は、メール(deviliana1[at]gmail.com)
する際に1、2どちらかを教えてくださいね!

詩歌に限らず、翻訳は言葉を置き換える(ワードで置換する)わけではなく内容をきちんと伝えるため、リサーチ、翻訳技術、伝え方の推敲、等のスキルが必要なのです!ご理解いただけると幸いです。

【2015年7月4日更新】
--------------------------------以前の記事---------------------------------


2~3ヶ月前にある方から、書いた詩を英語に翻訳して欲しいというメールを頂きました。

そこで、詩を送ってもらい、こちらから見積もりをだして、と話が進んでいたのですが、途中でメールを送ってもエラーで返って来てしまうようになりました。

実はその時点で既に、関係ありそうな書籍を3冊予約していたので、ちょっとがっかり。

それからもずっと気になっていました。やっぱり見積もりが高過ぎたかなあ、と。私は詩歌の翻訳の相場が分からなかったので、普段の仕事で扱う特許翻訳と同じレベルで提示したのです。

うーん反省…。

そこで、もしまだこのブログを読んでくださっていたら、またご連絡いただきたいなと思うのです。

今度は、詩ならA4サイズで1枚、短歌なら三首まで無料で翻訳します。

せっかくのご縁ですし、お試しの意味もあります。deviliana流の翻訳でよろしければ、その方だけでなく、どなた様もご応募ください。deviliana1[at]gmail.comまでメールしてね。

【2009年6月12日】
コメント (4)
この記事をはてなブックマークに追加

映画『Tokyo Tribe』

2014年09月21日 | 映画
『Tokyo Tribe』という、バトル・ラップ・ミュージカル映画を観ました。(→公式サイト。音が出ます)

TOKYO MXテレビ「バラいろダンディ」での特集を見て以来ずっと気になっていました。園監督がつくる映画はいつも見なきゃと思います。なぜかわからないけれど、あの強いメッセージを浴びたいと思うのです。

でも、ストーリーには着地点がない。定型的な感想が提供されない。観る人に委ねられる範囲が広い。何事にも解答があるはずだという受け身の姿勢だと楽しめないです。それは、他の園監督の映画(→過去記事・映画『希望の国』)からも同じような印象を受けます。

観客席は10代~20代男子が多かった。そこをかきわけて三十路女がひとりで座る。この勇気。もはや「観たい」という衝動だけでございます。


☆感想☆

<ラップがいい>

出演者のほとんどが本物のラッパーのようです。私は『8 mile』(→wikipedia 『8 mile』)というエミネム主演の映画が好きなのですが、『8 mile』の暗さと比較すると、『Tokyo Tribe』は明るい。最後はマイルドヤンキー(いつも仲良し。情に厚いぜ。根城はファミレス)が勝つところなんて、まさに日本。日本語と英語が融合すると、怒りや焦りといった攻撃的なラップがマイルドになっちゃう。でも本物のラッパーが刻むとマイルドラップという個性になるんだと思いました。

<染谷将太(MC SHOTA)と、窪塚洋介(ンコイ)の演技力がいい>

恐らくラッパーと新人俳優がメインキャストだと思うのですが、その中で染谷将太さんと窪塚洋介さんの演技が重石のようになり、光ってました。
染谷さんのナレーション・ラップは、半身スクリーン内に、半身観客席にいるようで安定感がありました。
窪塚さんの狂気は自然な感じ。普段からあんな感じで暮らしてそう。いやまさか…。


<裸と若さとマイノリティ>

鈴木亮平(メラ)のシャワーシーンから清野菜名(スンミ)のパンチラまで、でるわでるわの裸体の嵐。年取るとわかるのは、若いことは美しいことだという事実です。それは、肉体に表れる。男目線が全開の本作において、一般的に男性は若い女性が好きだということに納得します。だってきれいだもんねえ。若さは命の輝きみたいなことをお肌を見て思いました。

もはや人口の4分の1が65歳以上になった日本(→総務省統計局 統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで-)では、若い人たちは実際にマイノリティです。そのマイノリティが東京を奪いあうってなんかコミカルかもしれない。マイノリティたちの争いではあるけれど、悲壮感がないというか。バトルというより激しいじゃれあい?


<英語字幕が楽しみ>

字幕のお仕事をいただくようになってから、映画の見方が変わりました。どのように字幕を作っているか、どうすれば映画の魅力をそのまま訳出できるかについて考えながら観るようになりました。

ラップは聞き取りにくいので、画面右に縦で日本語の字幕がついていました。これあるとすごい助かる。ラッパーはもちろん滑舌がいいんですけど、私はラップを聞きなれていないので聞き取れないんですよ。

ただ、これを英語にすると横になるじゃないですか。その時はどこに置くんだろう?たぶん考えて作られているだろうとは思うのですが、画面右に縦で置いていた字幕を画面下に横で置いた時にどうなるのか。おもいきって画面の中にしちゃうとか。そうすれば字幕を読みながら絵も見れる?

でも本作では、脚本とラップの歌詞をつくる時点から並行して英語にしてたんじゃないかな?そんな気がする言葉の選び方でした。鈴木亮平さんとYOUNG DAISさんは英語できそうだし。日本で上映されてすぐにトロント国際映画祭に行ってますしねえ。

DVDになったら英語字幕でみられるのかな。どんな感じか楽しみです。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加