福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院生募集中:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

地下生物圏で活躍する主役たち:SulfuritaleaとSulfuricella

2017-06-22 12:34:12 | 微生物から学ぶ
地球上の様々な環境に微生物が生息していて生態系を構築していますが、その微生物を人為的に培養しようとしてもほとんどが困難です。これを「微生物のダークマター」と呼んでいますが、この問題を克服するためのアプローチとしてメタオミクス手法(メタゲノム、メタプロテオーム、メタトランスクリプトームなど)が近年急速に発達しています。

さて、南アフリカのウィットウォーターズランド盆地地帯は世界最大級の金鉱床としても知られています。その地下1.3kmという深い層では、スライム(SLiMEs; subsurface lithoautotrophic microbial ecosystems)と呼ばれる無機独立栄養微生物生態系が形成されていることが知られています。温度38℃、pH8.6、汽水性かつ貧酸素環境です:水素濃度8.9nM、メタン濃度1.3mM、硫酸塩濃度623μM、硫化物濃度14.9μM。

プリンストン大学の研究グループが調べたところ、このスライムは脱窒硫黄酸化によって駆動されており、その主役がSulfuritalea(サルフリタレア)とSulfuricella(サルフリセラ)であることが明らかにされました。これらの菌は、小島久弥さんが山梨県のみずがき湖から単離し、新種として記載したものです。

Lau et al. An oligotrophic deep-subsurface community dependent on syntrophy is dominated by sulfur-driven autotrophic denitrifiers. PNAS 113: E7927-E7936. DOI: 10.1073/pnas.1612244113

こうしたメタオミクスを駆使した研究が進展するほど、生態系を構成している微生物の単離培養の重要性がいっそう増すことが再認識されます。

それにしても、Sulfuritalea(サルフリタレア)とSulfuricella(サルフリセラ)。私たちの予想を超えて、さまざまな生態系での報告が増えて来ています。その下支えになっていることの一つは、両菌の完全長ゲノム解読にも成功していることです。

改めて、小島さんの不断の努力に脱帽です。

*. Hisaya Kojima, and Manabu Fukui. Sulfuricella denitrificans gen. nov., sp. nov., a novel sulfur-oxidizing autotroph isolated from a freshwater lake. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 60:2862-2866. 2010.

*. Hisaya Kojima, and Manabu Fukui. Sulfuritalea hydrogenivorans gen. nov., sp. nov., a novel facultative autotroph isolated from a freshwater lake. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 61: 1651-1655. 2011.

*. Tomohiro Watanabe, Hisaya Kojima, and Manabu Fukui. Draft genome sequence of a psychrotolerant sulfur-oxidizing bacterium Sulfuricella denitrificans skB26 and proteomic insights into cold adaptation. Applied and Environmental Microbiology 78: 6545-6549. 2012.

*. Tomohiro Watanabe, Hisaya Kojima, and Manabu Fukui. Complete genomes of freshwater sulfur oxidizers Sulfuricella denitrificans skB26 and Sulfuritalea hydrogenivorans sk43H: Genetic insights into the sulfur oxidation pathway of betaproteobacteria. Systematic and Applied Microbiology 37: 387-395.2014.
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