ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

続:消費税・地方消費税の税率引き上げ 「二度あることは三度ある」?

2017年04月25日 20時45分08秒 | 国際・政治

 今年の2月14日、私は、このブログで「消費税・地方消費税の税率引き上げ 『二度あることは三度ある』?」という記事を掲載しました。そこで「議会制民主主義と租税法(議会制民主主義と租税立法と言い換えてもよいでしょう)については『二度あることは三度ある』という言葉が妥当するかもしれない」と記しました。但し、あってよいこととあってはならないことがある訳で、先送りは後者に属することが多いでしょう。

 消費税・地方消費税の税率引き上げ(8%→10%)の実施は、これまで、2015年10月1日から2017年4月1日へ、および2017年4月1日から2019年10月1日へ、二度も延期されています。当初のスケジュールから考えれば4年も先送りされたのです。「二度あること」ですから「三度ある」としてもおかしくないのですが、こうなると対内的にも対外的にも様々な問題を引き起こします。

 さて、私のブログにある過去の記事を引き合いに出したのは、今日の朝日新聞朝刊7面13版に、編集委員の原真人氏による「波聞風問」の「消費増税延期 2度あることは3度ある?」(http://digital.asahi.com/articles/DA3S12908297.html)という記事が掲載されているためです。

 原氏は、「いま専門家たちの間で2019年10月に再々設定された増税時期についても『延期される恐れが強い』(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)との見方が広がっている」と述べています。

 その理由は何か。氏は3点をあげています。それぞれについて、私の意見も付け加えながら見ていきましょう。

 氏があげる第一点は、「長期政権化する安倍首相がそもそも消費増税に消極的なことがある」。果たして、「同じ政権が2回も不人気な消費増税をさせられることに不満らしい」か否かはわかりませんが、仮にそうであるならば、延期ではなく中止すればよいだけのことです。急いで付け加えるならば、消費増税を中止する場合には、社会保障・税一体改革(この改革はまだ続いているはずです)の実行のために、これまでとは全く別の財政健全化策、例えば所得税の増税、法人税の増税などを早急に検討し、実行しなければならなくなりますから、「だけのこと」で済まなくなるのは当然です。しかし、延期を繰り返すということは、中途半端な状態を何時までも続けることにつながります。或る意味で最悪の選択とも言えるでしょう。不人気な政策を何時までも続ける意味はないでしょう。続けるのであれば、国民に粘り強く説得するしかないのですが、そうなると選挙結果が頭をよぎる、ということなのでしょう。

 2012年、民主党政権末期に、社会保障・税一体改革については、当初、消費税のみならず、所得税、法人税、相続税など、あらゆる税目についての抜本改革が構想されていました。政権側はそのように考えて法律案を国会に提出しました。どなたの著書に書かれていたことか覚えていませんが、最近、財政再建などのために敢えて国民に不人気な政策を採ろうとした野田内閣を高く評価する見解があります。しかし、当時の野党(のうち、現在の与党)からの反発もあり、ほぼ消費税・地方消費税のみに限定され、税制の抜本改革からは程遠い内容の法律として成立しました。当初から社会保障・税一体改革は中途半端な形とならざるをえなかったのです。悔やんでも悔やみきれないし、そうしても仕方のないことでもありますが、消費税・地方消費税の税率引き上げに限定されず、あらゆる税の見直しを行おうとした当初の法律案が法律として成立したならば、二度の延期はなかったでしょう。2012年当時の判断が、現在にまで影響を及ぼした訳です。

 原氏があげる第二点は「2年半後の景気のゆくえ」です。氏は続けて「19年秋の増税は、翌年に開催される東京五輪で経済が盛り上がっているから大丈夫という前提だった。だがオリンピックバブルは往々にして前年にはじける。建設投資があらかた終わり、翌年の開催が終われば消費ブームも去ると知れているからだ」と述べています。原氏の展望が妥当であるかどうかは問いません。経済は生ものあるいは水物であるからです。2019年あるいは2020年の経済状況について正確に予測できる人は、おそらく、どのような賭け事にも強いことでしょう。

 そして、原氏があげる第三点(「これが一番大きい」とも記されています)は、「昨年の延期で『首相の公約』が簡単に覆される軽いものだとわかったこと」です。氏は朝日新書の「日本『一発屋』論」においても同旨を述べていますが、今日の記事のほうがより明確な主張となっています。字数の都合であるためかどうかわかりませんが、原氏は、一度目の延期については明確な法的根拠があったのに対し、二度目の延期についてはそれがなかったことについて記されていません。或る意味でどうでもよいことかもしれません。いずれにせよ、「これまでのお約束とは異なる『新しい判断』」であるからです。このようにすれば、過去のことなど簡単に打ち切ることができます。私も、この第三点については原氏の見解に賛同できます。それは、二度目の延期が表明される前に、平成27年度与党税制改正大綱および平成28年度与党税制改正大綱において、税率引き上げが「確実に」実施されることと明記されたからです。平成29年度与党税制改正大綱にも同旨が書かれているので、「二度あることは三度ある」と勘ぐられても仕方のないことです。ちなみに、昨年5月31日に開かれた自由民主党の政調税対会議において、小泉進次郎氏は「二度あることは三度ないという説明をどうやったらできるのか。おそらくできない」と指摘したとのことです〔産経新聞社「自民・小泉進次郎氏『そんなおいしい話に若い人たちはだまされない』」(2016年5月31日17時24分付。http://www.sankei.com/politics/news/160531/plt1605310047-n1.html)によります〕。

 原氏の主張はまだ続きますが、これ以上追うと全文(全体)引用になりかねないので、ここで止めておきます。

 今、日本人は、自分たちの得意なことが何かと問われたら、次のように答えるべきでしょう。

 「なしくずし」と「特例法」と「先送り」。 

 

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