クリエイティブビジネス論!~焼け跡に光を灯そう~

元コピーライター・境 治が、焼け跡になりつつあるこの国のクリエイティブ業界で、新たな理念を模索するブログなのだ!

テレビに欠けてるのは信頼・・・ホントにそうなの?

2011-08-01 08:00:00 | テレビの未来
テレビについて、前回の記事に続いてもう少し考えてみたい。

このところのテレビ批判の中に、こんな言い方がよくある。「テレビのことを視聴者が信頼しなくなっている。少し前にも番組の情報がいい加減だったと話題になったが、震災後はとくにひどい。政府側の発表をそのまま伝えているだけだ。ネットには政府の見解を批判するブログなどがちゃんとあるのに。テレビは視聴者の信頼を取り戻す努力をしないとまずいだろう」・・・こんな感じ。

政府の発表をそのまま伝えちゃうのはよくないと、ぼくも思う。大本営発表とあまり変わらないからね。でも一方で、こうも思うんだ。「んーっと、でも、ぼくはもともと、テレビのことを信頼していないし、信頼できなくてもぼくはテレビ大好きっすけど・・・まずいすかね?」

テレビが、昔は信頼できるメディアだったのに堕落したから信頼できなくなった。そんなこと言う人がいたら、ぼくはホントに聞きたい。あなたはそんなに信頼してたんですか、テレビのこと。だって、テレビですよ!

テレビの信頼を脅かす事件はこれまでもいっぱいあった。何度も起きてた。ぼくは、テレビが犯した最大の罪は、松本サリン事件の時の無実の人を犯人扱いしたことだと思う。あれはホントにひどかったし、テレビはその無実の人にろくに謝ってもいないと思う。

だから、テレビを信頼できなくなったという人は、松本サリン事件の時はどう思ったのか聞きたいな。

テレビが考えるべきは、信頼を失ったとか取り戻すとか、そんなことじゃないと思う。それより、テレビはもっとムチャクチャなことできないのか、って考えた方がいい。世の中を騒がせるのがテレビなんじゃないの?

80年代のテレビは、スゴかった。ムチャクチャだった。象徴的なのは、フジテレビの「笑っていいとも」や「ひょうきん族」といったお笑い番組、それに日本テレビの「元気が出るテレビ」とか「電波少年」などのバラエティだ。

これらの番組は、テレビの限界みたいなものに挑戦していた。はじまって数年間の「笑っていいとも」は、言葉は悪いけど、非芸能人の中からフリークスを抽出して電波にのせていたようなもんだ。もう、見ていてハラハラしたし時には不快でもあった。下品きわまりない場面もいっぱいあった。何というか、世の中の”たが”みたいなものをどんどんはずしていた気がする。

ドラマだってね。いまでこそフジテレビのドラマ制作のレベルは高いと思う。でも80年代前半のドラマはホントにひどかった。そしてそのひどさが面白かった。

テレビはまともじゃないメディアだった。だから面白かった。そこが最大の魅力だった。新聞ほど知性はないし、映画ほど上質でもない。その中途半端さがよかった。質なんていいよ、いらないよ、そんな姿勢だからこそエキサイティングだった。

前回の記事では、テレビは20年前と変わらないと書いたけど、ひとつ変わった点をあげるとすれば、まともじゃないのが魅力だったテレビが、まともな態度をとろうとするようになったこと。あれ?テレビってそんなにえらかったんだっけ?そんな感じ。

テレビはもう一度信頼を取り戻す、なんてやらなくていいよ。それより、もう一度ムチャクチャやろう、って考えた方がいい。そのムチャクチャの方向性のひとつが、ネットを利用すること。ネットやアプリと番組をどう組み合わせるのか。ムチャクチャなこと考えて欲しいな。

なんだったら手伝ってもいいよ。ムチャクチャなこと、やろうよ、やってよ!

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
時代の変化 (猫大好き)
2012-02-26 00:41:04
テレビが信頼を失ったのは、多数視聴者の「素朴な疑問」にほとんど答えないからだと思います。
マスというくらいですから多数の視聴者に発信することを業務にしていますが、ある時期から多数の視聴者が一つの放送局:一つの番組に問い合わせが来るようになった、
それが今のところ「物理的に出来るわけ無いだろ」と無反応を正当化していますが、大手通販会社だのアメリカのコンピュータ会社のコールセンターはさまざまな方法を採っています。
質の高い低いを基準にする時代はとっくに終わっていて、視聴者一人一人が「こいつは俺の話を聞いてくれるか?」になっていると思います。
Unknown (苅田 實)
2012-07-09 15:18:16
 おっしゃるとおり、テレビをそんなに信頼してはいないのですが、しかしテレビはいっぽうでれっきとした報道機関です。そして影響力の強いメディアです。メディア学者によりますと、メディアの発する情報は、わたしたちをとりまく「擬似環境」をつくるといわれています。テレビはその意味で信頼が必要だと思うのですが…。

コメントを投稿