忍足伝のブログ

使用者の「労働コンプライアンス違反」は許さないをモットーとし、ブラック企業の悪事を専門家の立場から考察する。

日本郵便 自爆営業

2016年10月29日 | ブラック企業
私の手元には、日本郵便のコンプライアンスハンドブックがある。ハンドブックを開きページをめくっていくと、自爆営業を禁じる旨を記した文章が目に飛び込んでくる。その文章は次のように記されている。

○自社商品購入の強制の禁止
社員等に対し、「事業に貢献するため(または営業目的達成のため)、社員が自社商品を買うことは当然」等と、自社商品の強制的な購買(いわゆる自爆営業)を促すことを行ってはいけません。
郵便局で販売する商品(葉書、切手等)を自爆営業して金券ショップに持ち込む行為は、当該商品の市場価値を減じるばかりか、お客様へのセールスチャンスを失う等、会社に損害を与えかねず、特に組織的に行われれば、背任罪にあたる可能性もあります。
社員等の自爆営業により営業収支を上げることは、経営のみならず監督官庁、持株会社、委託元、社員等の判断を誤らせることにつながります。

日本郵便は、自社商品の強制的な購買を促すことを禁ずるとしているが、職員の中には業務上、客と接する機会のほとんどない者がいる。そのような職員に販売ノルマを課すことは、結果として強制的に購買を促すことになっており、コンプライアンスブックで自爆を禁じたところで、効果がないことは経営陣も分かっているはずだ。
要するに経営側としては、自爆営業を禁じていることを対外的にアピールするため、コンプライアンスブックに記して表面上は禁止しているだけであり、実態は達成不可能なノルマを課して自爆を推奨しているのだ。
しかも日本郵便は自爆営業を背任罪であると理解していながら、自爆営業をおこなった職員や放置した管理職、また加担したといわれるJP労組を刑事告訴したという話を聞いていない。日本郵便が本気で自爆営業を背任として禁ずる意思があるのなら、自爆営業が発覚した際に刑事告訴を含めた厳しい姿勢で臨む必要があるはずだ。特に一郵便局が組織的に自爆営業をおこなったことが判明した場合、局長以下の管理監督者への処分はもちろんのこと、自らを律して再発防止のために経営陣の報酬を返上するぐらいの態度を示すべきである。しかしそうした気概は今のところ日本郵便からは一切感じられない。

さて、ここ数年の日本郵便は、持ち株会社の日本郵政が株式上場を控えていたために自爆営業をメディアに騒がれないよう、各郵便局に対して次のような文書を通知した。その文書には「不適正営業の撲滅」という項目があり、内容は以下のとおりである。

(1)各種報道機関等により、社員による金券ショップへの持込みが報道されるなどしていることから、金券ショップに持ち込まれた年賀葉書の出所の追跡調査を行うため、自局が販売する年賀葉書(無地・インクジェット紙)の箱の適宜の場所に、切手庫から払い出すまでに、又は到着した都度、日付印(局名が分かるゴム印等も可)を押してください。
(2)金券ショップへの持込みについて、コンプライアンス統括部がモニタリング調査を実施します。

何と無意味な通知であろうか。年賀状が梱包されている箱に日付印を押印したところで、職員が自爆により購入した後に別の箱へ入れ換えてしまえば、出所が不明のままではないか。また組織的に自爆営業をおこなっていた場合には、所属長が故意に押印をおこなわないことで、出所を隠蔽することさえできる。本気で自爆を抑止するのであれば、日本郵便のしかるべき立場にある者が、押印を現認すべきであるし、文書で「押してください」とお願いしてはならない。それでは何ら抑止にはならないだろう。
この程度の対策では、どんなに金券ショップへのモニタリング調査を実施したところで、自爆営業を根絶することはできないのだ。しかも埼玉の某郵便局では、JP労組と共謀して組織的に自爆営業がおこなわれた話もある。組織的におこなわれている自爆営業の抑止には、抜本的な対策を講じなければならない。前述したように、刑事告訴がおこなわれていない現状では、自爆営業の抑止は難しいといわざるを得ない。
また文書の(1)を見ても分かるように、この対策は報道されることへの恐怖心から出されたものである。そこには自爆営業を強いられている一般の職員や期間雇用社員を救済する目的など一切ないのだ。
 
日本郵便が「不適正営業の撲滅」という項目を含んだ文書を出した後も自爆営業は続き、金券ショップでは職員たちの持ち込んだ年賀はがきが、48円前後(都心部の価格)で販売されていた。そこで日本郵便は「不適正営業に関する内部通報窓口への通報について」と題する文書を出して、前回よりも少し突っ込み自爆営業へつながる行為を示した上で、内部通報を促している。内部通報の対象となる行為は以下のとおりである。

1 社員の実績や、従事する業務態様に見合わない過度の目標を課す。
2 年賀販売が低実績の社員に対し、人事上、業績評価上の不利益取扱いをほのめかす。
3 年賀販売が低実績の社員に対し、他の社員への見せしめとなるような営業指導を行う。
4 販売実績を急に伸ばしたが販売先が不透明な社員及びそれを黙認している管理者がいる場合、販売所に対し想定される販売実績よりも異常に多くの年賀ハガキを購入させている郵便局があれば、内部通報する。

私が日本郵便に在職している職員に話を聞いたところ、この内部通報が出された後も、管理職は低実績者に対して恫喝に等しい暴言を浴びせていたという。暴言を受けた職員が内部通報を利用したのかは、残念ながら不明であるが、現在も管理職はその地位に留まっているというから、内部通報されていない、もしくは不問に付された可能性がある。
尚、この管理職に関しては、極めて問題がある人物として、私は現役の職員から話を聞いている。その職員は神奈川県西北部に位置する郵便局で、問題の管理職(局長)と約3年間共に働いてきた。職員が異動して来て間もなく、局長は部下である営業社員に対して耳を疑う言葉を吐いたという。その内容は

「お前は○○出身者だ。昔ならば郵便局に就職などできなかったのだぞ」

というものだ。どうやら営業成績が伸びないことに苛立ち、叱責する中で差別的な言動も発したらしいが、常識では考えられない発言だ。日本郵便には、いまだに被差別部落出身者に対して差別的言動を発する人間が存在するのだ。しかも相手は部下である。差別的言動を受けた営業社員は、ショックで事務室を施錠した上で閉じこもってしまったという。局長が扉越しに営業社員へ謝罪(おそらくは表面上だろうが)したことで、事態は収拾したとのことだが、多くの利用客が訪れる郵便局に、こうした暗愚な局長が存在することに驚きを隠すことができない。
このような現状を耳にすると、郵便局という数少ない職員で運営されている閉鎖的なスペースでは、私たちが知りうることができないような、常軌を逸したハラスメントが日常的におこなわれている可能性がある。こうした事態を日本郵政の相談窓口へ通報したところで、自爆営業すら満足に解決できないのだから、ハラスメントも解決されずに隠ぺいされるのは目に見えている。

余談であるが、日本郵政の広報室長村田秀男氏は毎日放送の取材に対して、「(自爆営業が)局部的な話であるのか、大勢の話であるのか、それが我々にはよく分からない」と使用者たる日本郵政の広報として信じられない発言をしている。何事もよく分からないまま大した調査をせずに、売上を職員の自爆に依存しようという考え丸出しではないか。このような企業に現場で繰り返される歪な営業手法の改善はできないであろう。
 
ところで日本郵便の職員は、年賀状だけを自爆しているのではなく、カタログ商品と呼ばれるものも自爆により購入している。読者が郵便局を訪れた際、入口付近や窓口の横などに「郵便局のお中元」などと題した冊子を何度か見たことがあるはずだ。それがカタログ商品と呼ばれるもので、お中元だけではなくお歳暮はもちろん、バレンタインや子供の日など、1年を通じてイベントに合わせた商品をカタログで販売している。その商品にもノルマが課せられているのだ。前出の現役職員の話では、カタログ商品の販売額を支社が個人別に順位を出し、各郵便局へ閲覧として回しているという。当然、客と接する機会のない職員の名前も下位に掲載されており、晒し者になっている状態なのだ。
年賀状もカタログ商品も、職制によってノルマの額に違いはあるものの、その価格は決して少額ではない。期間雇用社員などは、賞与も時給額も極めて少額である。そのために無期雇用の社員と収入格差は大きく、その差は半分以上である。にもかかわらず、年賀状やカタログ商品の売り上げノルマを無期雇用社員と同様に課せられ、目標額を達成できない場合には、自腹で購入しているのである。支給される給与額が少ない彼ら、彼女らにとって、自爆営業は死活問題であり、日本郵便によって生存権が脅かされているのだ。
IT技術が普及し、メールやクラウドなどにより、郵便の需要が少なくなる一方なのに、株式を上場したことで売上目標は下げることができない。それは必然的に商品の売り上げを社員に依存することになり、日本郵便で働く約20万人の労働者こそが顧客となっているのが現状だ。また郵便局を訪れても10年以上前から提供するサービスがさほど変わった様子もなく(グループにおいては医療保険や住宅ローンを扱うようにはなったが)、衰退産業であることは否めない。定額貯金などは金利低下の影響を受けて、満期を迎えても再度預けてもらうことは難しい。また少子高齢化社会で、かつ保険の加入率が90%で推移している我が国においては、かんぽの新規加入も限界がある。
今のままでは、日本郵便の労働者20万人の雇用を維持することは不可能であろう。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日本郵便 異常な企業風土 | トップ | 日本郵便 さいたま新都心郵... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ブラック企業」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事