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パプアの森の勇者デメギョ 1

2017-08-09 08:50:47 | 青春時代の思い出
いつもの様に、米の部屋でゴロゴロしていると、テレビでは、兼高かおるの世界の旅が始まっていた。

パプアニューギニアの成人の儀式、バンジージャンプ、蔓で足を縛り、10メートルぐらいの高さから飛び降りる、若者の緊張感が、画面を通して伝わってくる。
「米、バンジージャンプ飛びきるかー。」
「飛びきるさー、パプアの人は誰でん、飛んだとやろもん。」
米は、チラッと僕を見ただけで、すぐにエレキギターの練習をはじめた、なんてことないという態度、確かに米はやるだろう、後先考えない男なのだ。
テレビの中の若者は無事ジャンプを終え、長老や、他の大人達も笑顔で迎え、今日からお前も大人の仲間入りだ、よし、酒でも飲むかと、言っている様だった。パプアニューギニア語分からんけど。
「米、ジュースば飲もうだい。」というと、面倒くさそうに立ち上がり、
「チョット待ちょって。」
ガタゴト、古くなった引き戸を開けて店の方へ、米とは家が近いこともあって、小学一年生の頃からずっと友達、今度高校三年生になるからえーと、とにかく長い付き合いだ。
米屋の跡取り息子だから、あだ名は米、自動販売機の鍵をジャラジャラ鳴らしながら。プラッシーを二本抱えてきた。
「プシュー、プシュー。」と、手慣れた手つきで栓を開け、一本をくれた。
「デメギョ、明日何時に出発する?」と、聞いてきた、あ、そうそう、僕のあだ名は、
デメギョ、目がデカイから。
「朝一の、フェリーで行こう。」
明日は、熊本に遊びに行く、僕らの住んでいる深江町は、歴史の教科書で有名な島原の乱のあった場所、島原半島にある、半島というだけあって、離島みたいなものでJRも通っていない、要するにド田舎、でも明日は憧れの大都会熊本、DCブランドのメッカ、シャワー通りに出陣ダー。
「早う、鍵を返して来いよ。」と、僕が気を利かして言うと、
「よかさー。」と、米。
「またじいちゃん怒らるっど。」と、僕が言うと、黙ってグビグビジュースを飲んでいる、米は懲りない男だ、毎回金も入れずにジュースを飲むもんだから、よく、じいちゃんに怒らている、でも全く気にしない肝の据わった男なのだ。
プラッシーは、米屋にしか置いてないオレンジジュース、スーパーで見かけたことは一度もない、またこれか、たまにはコーラでも飲ませろよと思いながら、ありがたくいただいた。
番組が終わるとやることか無くなった、米はまだギターをかき鳴らしている、辺りを見回しても、米の部屋には、エロ本が一冊もない、あるのはファッション雑誌チェックメイト、パラパラめくって可愛い子ちゃんを探していた。
米はどうやらファッションに興味があるらしい、どちらかというと女の子に興味がある僕は、米という人間が不思議でしょうがない。
「そしたら、明日にゃー。」
見るべきもののない米の部屋を後にした。
米はいつもギリギリまで寝ている。
「秀行君遊ぼー。」
とりあえず、米の家に行った時は正式名称で呼んでいる、これは、高校三年生になろうとしている僕の礼儀だ。
ドタバタと、階段を降りてきて「行こうか。」
めずらしく早めに起きたのだろうか、髪がボサボサじゃない、オシャレをしているようだ、僕にはイマイチ伝わらないけど、チェックメイトで研究した成果だろう。
国道のバス停まで商店街を歩いていく、何軒もないお店のひとつ、上田衣料品店のおばちゃんが、店の前で水を撒いていた。
「おはようございます。」と、声をかけてみたけど、返事はない、ひょっとしてというか、嫌われているようだ。
実は僕達二人組、町で評判の悪ガキで、小学3~4年の頃がピーク、店の前の下水道を探検している時に、おばちゃんに見つかって学校に通報されたことがある、その他にもいろいろ日々イタズラに勤しんでいた、当時PTA役員だったおばちゃんにとっては、宿敵二人組なのだ。
今では、立派に更生しているつもりだけど、まあいい、気にしちゃいない。
白地に赤のラインの入ったオンボロバスがやって来た、いつもだったら学生でいっぱいだけど、春休み中の朝一のバスはガラガラだ、一番後ろの席が僕らの指定席、座ると早速チェックメイトのシャワー通り特集のページを開き、目的の店のチェックに忙しそうだ。
「ブー。」ブザーが鳴り、「プシュー。」と、圧縮音、折りたたみドアが開く、松ちゃんが学生服で乗ってきた。「オー。」と、笑いながら米の隣の席に、小中は同じ学校で、高校は僕らと違って進学高、補習授業のため休み無しみたいだ、今でももちろん友達。
そして我らがエッチビデオ同好会の会長だ、別に頭がいいから会長って訳じゃない、松ちゃんの父ちゃんは、会社の社長、要するに金持ちだから、友達の中では唯一、SONYのベータのビデオを持っているプリンスだ。
それに、特殊なルートを持っていて、裏ビデオを入手した時は必ず連絡をくれる、とっても会員思いの、優しい一面も持っている。
僕が「熊本に行ってくっけん。」と、言うと、米のチェックメイトを見て。
「シャワー通りにいくとー、よかなー。」と、羨ましそうに、米とファッションについて語り合っていた。
松ちゃんもファッションに興味があるようだ、僕は洗濯バサミのような金具をつまみ、窓を開けた、いつもの匂いがした、この辺には豚小屋があって、キョーレツな匂いがする、これこそ、我が故郷深江の匂いだ、鼻をつまむ代わりに金具をつまみ、窓を閉めた。
「ブー。」島原港に着いた。
「なら、行ってくっけん。」と、松ちゃんに別れを告げた。
ここから対岸の熊本港まで、フェリーで1時間、優雅な船旅、船に乗り込むと米が売店で、デッカイ竹輪買ってきてくれた。
「やっぱ、フェリーでかぶりつく竹輪が一番うまかね。」早速食う、米も旨そうに食ってる、
食卓に並んだときは興味はないけど、フェリーで握って食うのはなぜか旨い、今日の米は気前がいい、熊本への期待に胸を膨らませ、お財布も膨らませてきたのだろう。
船上デッキに出ると、少し残して置いた竹輪を手の平に乗せた、カモメの大群に襲われ、あっという間に竹輪がキレイに無くなった、カモメのいなくなった目の前は、深い緑色の海と、真っ青な空が広がっていた。
熊本港が近くなると、竹の棒がニョキニョキ現れた、数百本、いや数千本、等間隔で海に刺さっている、海苔の養殖用だ。
その竹林を抜けると着岸、「ゴトン。」一番に船を降りる、走ってバス停に行くと、すでに交通センター行きのバスが僕らを待っていた、整理券を取ると一番後ろの席に陣取った。
走り出してしばらくは、見渡す限りの田園風景が広がる、真っ直ぐな一本道、徐々に辺りが賑やかになってきた、そろそろだ、でもまだ10時前、まだ店は開いてない、米は隣を走るチンチン電車を見ながら、
「地下街の宝来饅頭ば買いに行って、食いながら行こう。」
竹輪を食ったばかりだけどもう腹が減ってきた、地下街に降りて、白あんと黒あんを買い、米に黒あんを渡し、食べながらサンロード新市街を目指した、僕は、この回転焼きの(要するにタイ焼きの丸いバージョンが、宝来饅頭だ)白あんが好きだ、米は黒あんが好きかどうかは、わからない、旨そうに食ってる、良かった、饅頭にファッションほどのこだわりは無いようだ、目の前はデッカイ横断歩道、歩行者専用の信号機は30秒前の表示、少しずつ目盛り減って行く、僕にとっては、スクランブル交差点、大都会、熊本だー。
サンロード新市街を突き当たって右に行くとシャワー通り、メンズビギ、コムデギャルソンパーソンズ、シップス、ビームス、ポールスミス、右も左もDCブランドらしき看板、高級そうで入れない、僕らは古びた細長いビルの、二階とか、三階に入っている古着屋さんとか、アメリカンカジュアルの店を見て回った、破れて擦り切れたリーバイス501が好きだ、チンコ出しの所が、チャックじゃなくボタン式になってるやつ、いい色に色落ちした物が見つかった、4800円、思い切った、瓦屋でバイトした金を三万円持って来ている、まだ買える。
次に、下通りのベイブルックに寄った、アメカジのお店、シャツやトレーナーを買い、近くの靴屋さんで黒の革靴を物色、通学用のカッコイイのを欲しかった、リーガルのウイングチップにしようかと思ったけど、先生に怒られそうで(表面にディンプル加工してあるので)BIGBENの靴にした、表面上普通の革靴に見えるけど、靴底がラバーソールになっていてカッコイイ、今日の買い物に満足した、米も両手に袋を抱えて、満足の笑みを浮かべているように見える、懐具合も寂しくなってきた。
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