一日四弦

デカダンレトリヲおかげさまで全員元気だった

夜の散歩に行かないか

2017-07-31 23:31:00 | 日々の事柄
千葉の蒸し暑い夜は、時々海の匂いがすることがあります。よどんだ海の匂いですよ。
たまった憂さは晴らしましょう。
少し街へ出よう、いいものを観に行きましょう。


昔々、私がまだドクタースランプのアラレのような姿だったころ、父がふとした昼下がりや、夕飯までのちょっとした時間に、私の名を呼んでこう誘いかけたものです。
『○○○、コイをみにいこう』


そうしてふたりがホテホテと道路を渡り、坂をのぼって見に行くのは、思いっきり人ん家の鯉でありました。
坂の途中のフェンスの下に見渡せるよその家があり、そこの庭には池がありました。電動の灯籠みたいなのからチョロチョロ流れる水を巡らせ、たくさんの鯉がゆうゆうと泳いでいるのです。
がきの体感サイズでは池も鯉もとても大きく見えて、緑色のフェンスをすかして、結構な時間をそうしてふたりで過ごしていたように思います。



今にして思えば、父はどのような心持ちでどのようなタイミングの時に、私をあの散歩に連れ出していたのでしょう。 あのささやかな試行錯誤は、一体なんであったのか。

人の根っこは、わからない。何かに捕まっていることは果てしなく自由でもあり、不自由でもある。 そのはざまの、試行錯誤よ。

たとえばあの頃の私は、たとえば父の自由と不自由、どちらに貢献してきたのかな、と今になって考えます。




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