日本の報道環境では稲田といえば教育勅語になっているが、こっちも大問題。
教育勅語云々は、意図するとしないとに拘らず日本国民の目を逸らすための仕掛けだったのかもしれない。とはいえ、だからといって教育勅語の復権問題をおろそかにすることも悪手すぎて放置できない。
両方いけばいいだけだが、日本のマスコミは、くいつきやすい方によっている模様。というわけで、ブルームバーグが日本語にしていた。私はFTで見た。
稲田防衛相：敵基地攻撃能力の検討「排除せず」－北朝鮮ミサイル
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-09/OMJ1DE6JIJUP01
後藤氏が「さまざまな検討」の中に敵基地攻撃能力保有の検討は含まれるのかとただしたのに対し、稲田氏は「どのような方法であるかということは排除せず、もちろん、国際法とわが国の憲法に合致した範囲内において、さまざまな検討を行っていく」と述べた。
Japan raises stakes to counter ‘real threat’ from North Korea
Tokyo refuses to rule out acquiring capacity for pre-emptive strike against Pyongyang
https://www.ft.com/content/4b22523c-04a8-11e7-ace0-1ce02ef0def9
つまり、敵基地攻撃能力保有に前向きである、という話ですね。
で、折からのTHAADと組み合わせて、全体的に中露に対する米の攻撃能力強化を日韓の地面を使って行うって話でしょうね。
そのためにこそ北朝鮮の暴発は存在しているってところか。
米韓軍事演習→北朝鮮ミサイル→他に手はないですね、では敵基地攻撃能力を、という流れ。その間に北朝鮮のまさお問題だの森友、教育勅語で日本のメディアは手一杯。
それで一体日本にとって何が安全になるのか全くわかりませんが、構造として、日本がルーマニアになるだけって気がする。地面続きの韓国がポーランドで、海側の日本がルーマニアみたいな。
だけどこれが米による極東支配の確立バージョン2であることは明白。バージョン1は日本にも独自性があったが、バージョン2はポーランド的な独自性以外ないって感じでしょうね。
で、東アジアが欧州より危険なのは、欧州は「かませ犬」をポーランドにして、ドイツ、フランスがロシアとの協調路線を提唱してみたりするという二段構えになっているが、東アジアにはそのメカニズムがないこと。
ドイツは70年代は今よりずっと平和愛好的だった。それは米ソ対立の前線が自分たちだったので、エラーや誤解に基づくものであっても一旦戦争になったら自国が戦場になるという危機意識があったから。最近はそうでもないのは、前線が東にずれてポーランドが戦場予定地になったからだと思う。
■ THAAD配備に対する環球時報Op-ed
チャイナ環球時報のTHAAD韓国配備に対する論説。
アメリカに経済制裁なんかしたって意味がないし自分にも不都合だ、だが韓国には効果がある。
アメリカに対しては、この配備は中露にとっての脅威を示しているんだから、ここからチャイナはこのロスをリカバリーするだけでなくもっと強化してやる。
THAADに対する中露の共同作業は中露の包括的戦略的協調を強化することになり、それは米にとっての痛打となるだろう。
http://www.globaltimes.cn/content/1037016.shtml
だそうです。
新しいことは何もないんだけど、韓国が弱体化していった場合、最終的には北主導の統一が目算に入る。問題はその北が、海を向くのか、それともかつての日本の傀儡政権のように陸に対しての攻撃拠点となるのか、どっちにできるだろう、ってのがまぁなんてかここ20年ぐらい揉めてるホントの理由ですよね。
■ ロシアの反応
THAADの韓国配備は軍拡競争を引き起こす恐れがある－露外務省
https://jp.sputniknews.com/politics/201703103415167/
外務省の声明では「このような出来事の発展は、国際的および地域の戦略的安定性にとって最も深刻でネガティブな結果を伴う。安全保障分野で複雑な状況が形成されたアジア太平洋地域には、朝鮮半島の核およびその他の問題の解決をさらに複雑にし、地域でミサイルを含む軍拡競争を引き起こす恐れのある新たな破壊的要因が生まれつつある」と述べられている。
北朝鮮をきっかけとした日本の第一撃能力獲得の話は、こっち。
既に一撃能力獲得の話はパブリックではあまり語られないが日本のリーダーたちは既に準備しているといった感じの記事。つか、ロシアはとっくにこの線を見切って対応していると思う。
Japan Considers First Strike Options Against North Korea
https://sputniknews.com/military/201703081051385805-japan-considers-strike-options-nk/
日本の高官の一人はロイターの取材に対して匿名で、「私たちは攻撃能力をどうやって獲得できるかについてのグランドワークは既に完了している」と語ったそうだ。
The growing North Korea threat has had leaders in Tokyo contemplating defense options, even if those discussions have not always been public. "We have already done the groundwork on how we could acquire a strike capability," an anonymous official familiar with Japan’s defense planning told Reuters.
■ 追記
撃つには撃っても、それで一体どうするつもりなんだろうと誰しも思うところですが、この提案は稲田氏一人のものではなく、自民党が提言している模様。2月28日付けの日経の記事にあった。装備の費用がかさむ、どころの話じゃないと思うわけだが・・・。
敵基地攻撃能力の検討を、自民が提言へ 北朝鮮を念頭
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS26H08_W7A220C1PP8000/
2017/2/28 0:05日本経済新聞 電子版
自民党の安全保障調査会（今津寛会長）は春にもまとめる提言で、海外の敵基
地を攻撃できる能力を日本が持てるよう政府に検討を求める方針だ。ただ敵基地攻撃能力を日本が持てば、自衛隊と米軍の役割見直しにつながるうえ、装備品導入には費用がかさむ。実現は容易ではない。
 |
文明の衝突 |
| Samuel P. Huntington,鈴木 主税 | |
| 集英社 |
 |
中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 |
| 與那覇 潤 | |
| 文藝春秋 |
日本は既に緩衝地帯を失っているので危ないです。北朝鮮のミサイルは在日米軍の基地（特に横田でしょうか）を意識しているようですし、なんとも物騒な時代になったものです。中国の軍事的脅威も大したもので、米軍も作戦を変更しているのです。
まぁ、しかし、半分は「やらせ」「八百長」でしょう。何しろ、中国は「戦勝国」ですし、北朝鮮は「残置諜報者の国」との噂ですから。
日本にも良質な国民政治家が出てほしいものです。
撤退の理由を「治安悪化」ではないとしているが、これは「治安悪化」が原因と言ってるのに等しい。犠牲者が出ると、反安保の時のような状況になりかねないからだ。
森友の申請取り下げにも圧力があったはずだ。この籠池というおっさん、放っておくとどこで何を言い出すかわからないから、冷や冷やしてたんだろう。
私は、安倍がいつもこういう姑息な手で逃げるのが許せない。歴代の首相、色々いたけど、一番嫌いだ。ブログ主さんが以前、安倍後の首相について、まともな候補がいないと言ってらして、私も同感なのだけど、それでも、安倍には官邸から出て行ってほしい。もうたくさんだ。敵基地攻撃能力の検討だなんて、テレ朝さん、また東方からの三博士のような憲法学者（長谷部先生、小林先生、木村先生）をよんで、とことん憲法上の議論をさせたらどうですか。
逃がすんじゃない、尻尾をつかんで放すな、今度こそ引きずりおろせ。
お気持ちは私も理解します。私の友達なんか、気持ち悪いから見ない、安倍、みたいな感じになってるみたいです。
が、しかし、気持ち悪いことがうようよしていることが見えるようになったことを私は積極的に評価したい（耐えられない！と思いつつも）。実際気持ち悪い乗り切り方で150年やってるんですから。
だから、逃さない、明日になったら忘れちゃう、みたいにさせないようにすることが肝要かと思う。
イスラエル軍みたいに戦闘機飛ばして北朝鮮の軍事施設を爆撃とか、そりゃ物理的には今でもできるんでしょうし、法的にも何とかするつもりなんでしょうが、先制攻撃した後どうやって後始末をつけるつもりなんでしょう。
そう。これってとっても重大な決断だと思うんですが（実際には米のコントロール下だとしても）、話題にならないどころか、上で書いたように自民党としてそうするつもりらしいです。
グランドワークはあるが、グランドデザインはない、みたいな感じだったらどうしよう。